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(>>1の続き)
日本の食卓に突如として並び始めた「Made by KOREA」。これを韓流ブームの影響ととらえる向きは多い。
確かに、2011年も韓流ブームは健在だった。男性アイドルグループ「東方神起」に続き、2010年8月には女性ユニット「KARA」
「少女時代」がデビュー。仕掛け人の小池一彦ユニバーサルミュージック社長でさえ「ここまで早く火がつくとは思いもしなかった」と
驚く速さで、次々と海外女性グループの歴代記録を塗り替えた。羽田空港の再国際化も韓国ブームに拍車をかけたであろう。
だが、事情はそれほど単純ではない。
東日本大震災、原子力発電所の事故、節電、歴史的な超円高、タイの洪水にギリシャ危機―。2011年に日本列島を襲った
様々な事象は、これまで当たり前だった考え方を覆されるものばかりだった。それらの出来事がもたらした消費の変化は、「節電関連
商品のヒット」といった分かりやすいものばかりではない。深く静かに、しかし日本の消費を根底から揺さぶる変化も起こっている。
「面白い商品が全然作れなかった」。ある中堅コンビニチェーンの幹部は漏らす。震災後の混乱が落ち着くと、この幹部は取引先に
秋冬向けに独自商品の開発を打診した。例年は喜んで提案を受けるメーカー各社が、今年は歯切れが悪い。「ちょっと今は…」。
曖昧な返事を繰り返し、結局オリジナル商品は出せなかった。
「世間の注目を集める新商品がほとんどなかった。例年の半分程度かもしれない」(日用品などの卸大手、パルタック・商品本部
MDの村川俊之マネジャー)。こう嘆く流通関係者は多い。
震災後、メーカーのモノ作りは一変した。商品の安定供給を最優先し、まずは需要が大きく確実に売れる定番商品を店頭に
並べることに力を注いだ。そのため震災前に予定していた新商品の多くは発売延期。「予定していた新商品のうち、発売できたのは
半分以下。他はすべて2012年度以降に回った」とある食品メーカー幹部は話す。同様の事情を抱える企業は少なくない。
その結果、コンビニやスーパーの店頭には、定番商品ばかりがずらりと並んだ。代わり映えのしない単調な売り場。ここで光ったのが
韓国製品だ。高級ブラウニーやダイエットに向く飲用酢、自宅で気軽に飲める缶入りマッコリ…。売り場作りに頭を悩ませた流通の
バイヤーがこれらの商品を積極的に並べ、ちょっとした珍しさや面白さに消費者が飛びついた。
(中略)
新しい生活を予感させるワクワク感のある近年のヒット商品の多くは、海外企業が作ったものになっている。一方、技術を追求し、
多彩な機能を盛り込むことで進化させてきた日本製の商品は、どこか面白みがない。
代表例は米アップルの「iPhone」をはじめとするスマートフォンだろう。2010年後半には日本メーカーからも、電子マネーやワンセグ、
赤外線通信などを盛り込んだ「和製スマホ」が相次ぎ発売。だが結局、iPhoneシリーズの背中ははるか遠く、韓国サムスン電子の
「ギャラクシー」シリーズも好調。日本勢ではシャープが善戦した程度で、面目躍如はかなわなかった。
■「日本製」への忠誠が薄れる
こうした消費の底流にあるのは、「日本製」に対する無条件の信頼がなくなりつつあるという事実だ。かつては、日本メーカーの商品
に比べ、海外の商品は安全・安心面に不安があり、使い勝手も悪いという思い込みがあった。
「日本製」への忠誠心がじわじわと薄らいでいたところに、先の震災が起こった。原発事故によって日本の技術に対する安全神話は
崩れ、震災とタイの洪水では商品供給のもろさも露呈した。震災によって消費も変わった。多くの人たちがこれまでの生活を見つめ
直したからだ。2011年の海外勢の躍進はこうした背景によって起こった。
この潮流は2012年も止まらない。「日本製」への忠誠が薄らいだ今、日本勢はどんな道を取るべきか。今までの商品作りを根底から
見直す局面に立たされていることは間違いない。
(終わり)