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1 求めるものは「絶対的な忠誠」
イチローは、淀むことなく胸のうちを吐き出した。
「今の僕に必要なのは危機感。すべてを出し切らなきゃ、メジャーでやっていけないという、切羽つまった気持ちが欲しいんです」
イチローは唇を結ぶと、こちらを睨めつけた。彼の黒目がまさった眼には、反応を窺うだけでなく、挑発や値踏みの気配もちらつく。
「僕がメジャーでどうこうより、もっと大きなこと、日本野球が通用するかどうかを感じてもらいたい」
イチローと語り合う場に漂うものは、包み込む温かさや、気の置けない睦まじさとはほど遠い。喉笛に、切っ先を突きつけられたような緊張感がみなぎる。
「野球だけじゃなくて、日本の国自体が、世界でどう評価されるかという時代にきています。僕はそこも意識して乗り込むんです」
1999年4月23目、イチローは私にこう語った。その翌シーズン、彼は7年連続でパ・リーグ首位打者を獲得、
オフにシアトル・マリナーズヘ移籍した―日本では満たされなかった、さまざまな渇望を抱えて。
あれから9年、イチローは今年35歳となった。メジャーリーガー・イチロー人気は、とどまるところを知らない。
中央調査社が今年実施した「人気スポーツ調査」で「好きなスポーツ選手」の1位に輝き、この部門において“4連覇”を達成したほか、
他社のアンケートでも、ことごとくトップに立っている。