12/05/20 23:07:13.77 vsaI3m1v0
本拠地、西武ドームで迎えた中日戦
中継ぎ陣が大量失点、打線が勢いを見るも惨敗だった
スタジアムに響くファンのため息、どこからか聞こえる「また俺達だな」の声
無言で帰り始める選手達の中、今日の先発投手西口は独りベンチで泣いていた
西武黄金時代で手にした栄冠、喜び、感動、そして何より信頼できるリリーフ投手・・・
それを今の西武で得ることは殆ど不可能と言ってよかった
「どうすりゃいいんだ・・・」西口は悔し涙を流し続けた
どれくらい経ったろうか、西口ははっと目覚めた
どうやら泣き疲れて眠ってしまったようだ、冷たいベンチの感覚が現実に引き戻した
「やれやれ、帰ってマッサージをしなくちゃな」西口は苦笑しながら呟いた
立ち上がって伸びをした時、西口はふと気付いた
「あれ・・・?お客さんがいる・・・?おいおい、屋根が無くなってるぞ!?」
ベンチから飛び出した西口が目にしたのは、外野席まで埋めつくさんばかりの観客だった
千切れそうなほどに旗が振られ、地鳴りのように地平を駆ける獅子を見たが響いていた
どういうことか分からずに呆然とする西口の背中に、聞き覚えのある声が聞こえてきた
「フミヤ、投球練習だ、早く行くぞ」声の方に振り返った西口は目を疑った
「い・・・伊東さん?」 「なんだフミ、居眠りでもしてたのか?」
「わ・・・渡辺監督?急に髪が生えたんですか?僕が寝てる間にどんだけ痩せたんですか!?」 「なんだフミ、勝手にナベを監督にするな」
「東尾さん・・・」 西口は半分パニックになりながらスコアボードを見上げた
1番:松井 2番:大友 3番:高木 4番:マルチネス 5番:鈴木健 6番:佐々木 7番:垣内 8番:伊東
ブルペンでは森 橋本 石井といった強力リリーフ陣が待機している
暫時、唖然としていた西口だったが、全てを理解した時、もはや彼の心には雲ひとつ無かった
「勝てる・・・勝てるんだ!」
ペンバートンからグラブを受け取り、マウンドへ全力疾走する西口、その目に光る涙は悔しさとは無縁のものだった・・・
翌日、ベンチで冷たくなっている西口が発見され、岡本と星野は病院内で静かに息を引き取った