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【焼き豚親父の悲劇】
読売新聞夕刊 2011年6月4日(土)3版 10面
夏便り
久々に会った兄が浮かぬ顔をしていた。
話を聞くと小学4年生の長男(9)が野球をやってくれないからだという。
兄は小学校から大学まで野球一筋。野球に携わる仕事にも就いた。
心から野球を愛する兄は長男に「しょうと」(short)と名付けた。
米大リーグで2632試合の連続出場記録を持ち敬愛する名遊撃手
カル・リプケンのような野球選手になってほしいという願いからだ。
誕生日には名前の刺繍が入ったグラブを贈った。
彼に将来何になりたいのかを聞いた。
固唾を呑む父と叔父を前に答えは明確だった。
「サッカー選手になりたい。」
兄が大きなため息をついた。
我が身を振り返ると、警察官だった父は兄にも私にも
警察官採用試験の受験を勧めたが2人とも父と違う道を選んだ。
「因果応報みたいなものか。」
兄が寂しげにつぶやいた。
「『しゅうと』(shoot)にすべきやったな…」
現在このような悲劇が日本中の家庭で日々繰り返されている…