12/03/30 07:12:32.63 L1Dxh9IH0
オシムさんは俺をボランチではなく2列目のトップ下で起用した。
最初言われた時は「なんで俺が?」と思った。
本心は、やりたくなかった
トップ下は、よりゴールに絡む仕事が求められる。
でも俺は、ボランチとしてゲームをコントロールしたり、ゲームメイクにこそ持ち味を発揮できるという自負があった。
ゴールを奪う、ゴールに絡む仕事は俺以外にもっと適任者がいると思っていたのだ。
しかし、オシムさんは妥協しなかった。
だったら言われらポジションで結果を出すしかない。
「出来ません」といえばその席に他の誰かが座ることになるからだ。
そこで、まずはトップ下で結果を出し、次に自分本来のポジションをつかめばいいやと考え方を変えた。
最初はいつもと見える風景が違うし、何となく違和感があったけど、
一生懸命プレーしているうちに、ゴールへの意識が高まって行った。
オシムさんにも、「ゴールに絡め」としつこく言われた。
どんなボールでもペナルティボックス内に飛びこむようにしていたら、いつの間にか、
ボールが来なくても飛びこむようになっていた。
中に入って行けば、「何かが起こるかもしれない」、と思えるようになったのだ。
また、それまで試合中にスプリントなんて、ほとんどしたことがなかったのだが、
何回もすることで身体にすごくいい刺激になった。
すると、素早い動きがスムーズにできるようになった。
嫌なポジションでも挑戦し続けることで、確実に選手としての容量が大きくなったのだ。
きっと、オシムさんは、「そうなるだろう」というのがわかっていたんだと思う。
だからあえてしんどいポジションに置き、俺がやれるかどうか、走れるかどうかを見ていたんだと思う。
経験豊富な監督がやることは、俺らの考えが及ばない。
それが「名将」たる所以なんだろう。
遠藤保仁 「信頼する力」より