12/02/06 14:28:31.08 7O+1qgQk0
第三国、ヨルダンで迎えたシリア戦
先発権田が大量失点、前線も勢いを見せず惨敗だった
スタジアムに響くファンのため息、どこからか聞こえる「ロンドンは無理だな」の声
無言で帰り始める選手達の中、昨年の新人王酒井は独りベンチで泣いていた
柏で手にした栄冠、喜び、感動、そして何より信頼できるチームメイト・・・
それを今の代表で得ることは殆ど不可能と言ってよかった
「どうすりゃいいんだ・・・」酒井は悔し涙を流し続けた
どれくらい経ったろうか、酒井ははっと目覚めた
どうやら泣き疲れて眠ってしまったようだ、冷たいベンチの感覚が現実に引き戻した
「やれやれ、帰ってトレーニングをしなくちゃな」酒井は苦笑しながら呟いた
立ち上がって伸びをした時、酒井はふと気付いた
「あれ・・・?お客さんがいる・・・?」
ベンチから飛び出した酒井が目にしたのは、2階席まで埋めつくさんばかりの観客だった
千切れそうなほどに旗が振られ、地鳴りのように日本代表の応援歌が響いていた
どういうことか分からずに呆然とする酒井の背中に、聞き覚えのある声が聞こえてきた
「ヒロキ、守備練習だ、早く行くぞ」声の方に振り返った酒井は目を疑った
「な・・・中田さん?」 「なんだアゴ、居眠りでもしてたのか?」
「ま・・・松田コーチ?」 「なんだ酒井、かってに松田さんを引退させやがって」
「稲本さん・・・」 酒井は半分パニックになりながらスコアボードを見上げた
GK:楢崎 DF:松田、中澤、森岡 MF:明神、稲本、酒井宏、中村、中田 FW:高原、柳沢
暫時、唖然としていた酒井だったが、全てを理解した時、もはや彼の心には雲ひとつ無かった
「勝てる・・・勝てるんだ!」
三浦からグラブを受け取り、グラウンドへ全力疾走する酒井、その目に光る涙は悔しさとは無縁のものだった・・・
翌日、ベンチで冷たくなっている酒井が発見され、吉村と村田は病院内で静かに息を引き取った