12/01/17 21:04:30.50 0
--残る4作品の選評を
「伊東さんの作品は1回目投票では桜木さんと同点でした。
ある委員からは、関東武士というテーマを選んだのはユニークで、よく挑戦している、という応援の声がありました。
歌野晶午(しょうご)さんについては、私が思うに上質のミステリーだったが、
全体的にネガティブなイメージのある作品で、もう一工夫があればいい作品になったのではないかと思います」
「恩田陸さんは熱狂的なファンをお持ちですが、今回の作品は、これまでの候補作と比べて今回のものが特別にいい、
というほどではないとの意見が多かった。ただ天性の発想力は、余人をもって代えがたい才能で、私も一ファンです」
「真山仁さんの作品は、3・11以前に書き上げられていたものを、大震災後に改稿されたとのこと。
大変なご努力で頭の下がる作品ですが、文学賞という小説ではないように思います。
ただ読みものとしては上質で、その時代に一つはなくてはならない小説だと思います」
--葉室さんに対する過去の選評では、会話の中で説明が多すぎる、
また主人公が現場に立ち会うことが多すぎるとの指摘があったが、その点は
「今回作では設定を非常にスマートに提示され、登場人物の視点の転換を巧みに使っており、
以前とは手法を変えてきたのがよくわかりました。葉室さんは風景描写、季節描写をきちんとされる手堅い方。
今までのものにはわざとらしいところもあったが、今回はそれがこなれている。
登場人物の余命がなくなっていくのを季節を追うことで追いつめていくという、大変高度なテクニックを使われています」
--今回、葉室さんの作品で架空の藩を登場させているが、その評価は
「私も小説を書いていて実在の藩を登場させると、郷土史家の方など、読者から山のように投書が来るんですね。
私もこの葉室さんの手法をまねていきたい。私は葉室さんと同じ年ですが、そろそろ余命を数えるようになり、
するとこの小説はひしひしと重く感じられる。みなさんももうじき、わかるようになると思いますが。
葉室さんの作品は昔から見てきましたが、受賞はわがことのようにうれしいですね」