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三橋貴明氏 日本が韓国と同じ轍を踏まないよう警告する
【書評】『サムスン栄えて不幸になる韓国経済』(三橋貴明/青春出版社/1575円)
【評者】森永卓郎(エコノミスト)
* * *
いま私は、ソウルに来ている。ソウルの街をみていると、本書に書かれていることが実によ
く分かる。確かに経済は繁栄していて、摩天楼が乱立し、道路や飲食店がどこも混雑して
いる。
ところが、一歩路地に入ると、昭和30年代のような時代に取り残された店舗がたくさん残っ
ている。先進国と途上国が同居しているのだ。また、いまの韓国経済には、多様性がない。
自動車は現代と起亜ばかりだし、家電製品はサムスンとLGばかりだ。だから、数少ない大
企業に勤められれば天国だが、それを逃すと貧困が待ち受けている。
なぜ、そんな経済構造が出来上がったのか。きっかけは、1997年の経済危機だったと著者
は言う。通貨危機に見舞われた韓国は、IMFの支援を受けざるを得なかった。その際、要求
されたのが経済のモデルチェンジだった。
財閥企業の負債比率が200%に制限され、資産売却を余儀なくされる。財閥間の事業交換
によって得意分野への事業集中が行なわれる。緊縮財政のあおりを受けて効率の低い中
小企業が次々に破綻していく。そうした構造転換で、韓国の大企業は国際競争力を強め、
韓国経済は急回復を成し遂げた。
しかし、それで韓国の国民が幸せになったのかというのが、著者の問いかけだ。韓国は、か
つて日本と同様に、多数の中小企業が活躍する平等な社会だった。それが、大企業が経済
を支配するアメリカ型社会に変貌した。そのなかで、労働者の実質賃金はどんどん下がって
いった。