12/03/05 15:10:23.66 Ck0bppVa0
>>291
中野剛志『日本思想史新論』、読んだ。
福沢スレなんで最終章だけをとりあげるが、子安批判については妥当と思うが、
どうもオリジナリティがねえ。
この部分は参考文献に上がっている渡辺浩の『日本政治思想史十七から十九世紀』と、
あがっていない西部邁の『福沢諭吉その武士道と愛国心』を下敷きにしているように
思われる。
また、水戸学は狭隘な排他主義ではない、というコアになるところは、
吉田俊純によるようだ。
他の部分も、大幅に他人の論が引用されていて、ようするにつぎはぎ細工。
古学から水戸学へという日本のプラグマティズムの系譜(その延長に福沢がいるわけ)
を強調するあまり、その論の流れに不都合な思想家は切り捨てられている。
横井小楠や佐久間象山といった朱子学から実学へという系譜には、まったく触れていない。
これはまずいだろ、と…。
結論だけ言えば、別に悪いというわけではないが、どうも優秀学生の卒論みたいな感じだ。
同じ東大教養学部出身の與那覇潤の朱子学再評価のほうが、
はるかに地に足がついている。
中野と與那覇、同い年くらいかと思っていたら、與那覇のほうが
8歳も年下だった。オソロシいほどの早熟。