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福澤先生誕生記念会の記念講演は、猪木武徳さん(国際日本文化研究センター 所長)の「福澤諭吉における国法と道徳」だった。
慶應義塾の講演会、演説会 で、いつも違和感を感じるのは、外部の方が講師の場合の紹介の仕方である。 女性の司会者が「猪木武徳君」と言う。
猪木武徳さんは、京都大学経済学部 卒、MIT大学院修了で、大阪大学経済学部教授・学部長を経て、国際日本文化 研究センター教授になり、所長になった方だ。
慶應義塾とは関係がない。
私は志木の高校から7年間、慶應に学んだから、塾内では福沢先生一人が「先 生」で、教職員も塾員も塾生も等しく「君」と呼ばれる伝統は、よく知ってい る。
それが清家篤塾長の年頭挨拶にも出て来た「半学半教」の考え方から来 ていることも、知っている。 「
半学半教」は、学生の身分でありながら、教 師を兼ねる教育形態で、「究めていよゝ遠」い学問に完成はなく、教員も生徒も 共に教え合う立場にあるという考えが根底にある。
それに加えて、人間の権 利の平等を大切にした福沢の思想と実践もあって、慶應では教員も「君」や「さ ん」で呼ぶ習慣で、掲示板には「○○君休講」の貼り紙が出る。
だが、それは慶應義塾の内部、いわゆる社中の話だろう。 「猪木武徳君」 と紹介された猪木武徳さんは、どう思われただろうか。
伝統に凝り固まって いて、自由な配慮が出来ず、お招きしてお話し頂く遠来の講師に対して、失礼 ということはないのか。
三田演説会の司会者なども、建前から「君」で紹介 を始め、経歴を述べている内に、面と向かって「君」とは言いづらくなってき て、「さん」や「先生」に変わって行ったりする。
あれあれ、と思う。
「猪木武徳君」という紹介
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