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龍馬の家は元は農民。質屋を手始めに商売を広げて大商人になった。
曾祖父の時に金納郷士になった。
じゃ、その時から武家としての生活を始めたのか?
質屋や酒屋や呉服商という商売をしているわけだが、頭は武家風のまげを結い、大小を
差し、「左様でござる」などと喋ってたのか?
そんな商人があるわけないだろ。
田舎に行くと、うちは士族だなどと言っている家があるが、そういう家はたいがいが
同心などの株を買った商人や豪農の家だ。龍馬の家もその類。
だいたい、商人なら商売であっちこっち行かなきゃならない。たとえば龍馬の親父とか
兄貴が大阪に商売の話で行くとして、行ったら「脱藩」になるのか?
あと、勝海舟の家は旗本だ(男谷、勝両家とも)。親父の勝小吉の自伝「無酔独言」に
子供のときに家出した話がある。ある侍の家に世話になっているとき馬に乗り、
「侍の子だろう」とズバリ当てられている。乗馬の稽古までさせられた子供だったのだ。
これは騎乗の武士としての訓練を受けていたことを意味する。
「無酔独言」では、小吉の家には庭に大きな池があったこともわかる。池泉式の庭園を
構える旗本屋敷だったのだ。
旗本の株を買うということは、具体的には養子に入ることだ。莫大な持参金付きの養子。
養子になることによって現役の旗本になる。だからどういう家の出身かが大事であり、
いくら金を積んでも商人などは駄目。勝海舟の曾祖父は検校という盲人最高の地位にあり、
これは大きな宗派の大僧正ぐらいの地位だった。その息子が養子に入るということだから
養家の親戚も納得したのである。