08/06/28 19:31:52
俺は或山林の奥の茂みに座り込んだ。俺は大学の朋友と一緒に
ここまでエアーガンの撃ち合いに来たのだ。今まさに、それの真
っ最中だった。俺はこのゲームの前に4度は同じようにゲームを
した為に、このとき既に疲労していた。俺は普段なら、水気を含
む不愉快なこの土草の上に座りはしないが、その時たまたま座っ
た先の疲労の所為であろう。俺は近くにも朋友のいる気配を感じ
なかった。唯、感じたのは薄気味悪さだった。俺は上下の木の葉
からもれる空と土、そして木にさえも気味の悪さを感じた。俺は
できれば早々と、朋友に出くわして騒ぎたかった。然し、出来か
ねた。―俺は突然心臓の辺りにまるで人掌で握りこまれるよう
な恐怖を覚えた。のみならず手足が冷え切り、動きが鈍くなった。
俺はこの状況から抜け出したいことともあいまって、やっと早く
自分が移動すればいいことに気付いて、その動きの鈍い手を支え
に立ち上がろうとした。俺は不図、手の隣に目を落とした。顔だ。
そこには顔があった。その顔には皮膚が千切られ、薄く黄色い脂
肪が覗いていた。それの目はどこか空中に向けられ、焦点も合っ
ていなかった。が、その目が徐に俺の目に焦点を合わせた。加え
てそれの表情に怒りが込み上げ、唇が腐って剥き出しとなった歯
で俺の指に食らい付いた。バサバサと音を立てて後ろから何かが
倒れてきた。俺の背中に倒れかぶさったのは体だった。もはや男
性か女性かも分からない、虫や獣に半ば食われた惨めな死体だっ
た。俺は心も失せ果てて、それらを振り払って夢中で逃げた。何
度か俺はそれの叫び声を聞いた気がする。
以後は何もなかったが、俺の心は大きく深く傷つけられた。こ
の頃の不愉快な湿気高い梅雨の最中の出来事だった。