12/05/01 00:28:06.44 o5rp7jV30
そう言い放つ平嶋。
平嶋「AKBの下っ端でありながら、劇場を大切にせず、テレビや雑誌の仕事を最優先に考える。神戸コレクションモデルオーディション受賞という、華々しい経歴があり、素人っぽさは全くない」
平嶋「成長の姿を見ていく、ということがAKBのコンセプトとするならば、君の場合はまるで完成品をいきなり観客に見せているようなものだ。これを異質と言わずして何という」
続ける平嶋。
平嶋「今までゴリ推し、と言われてきたメンバー、―私の記憶が正しければ前田敦子、指原莉乃、横山由依、松井珠理奈の4人が主要メンバーとしてあげられる」
平嶋「しかし、あっちゃんはAKBの1期、珠理奈はSKEの1期生なので研究生は経験していないが、それでもこの4人は公演に出続けファンの反応を見ながら少しずつであるが、成長していった」
平嶋「しかし君は違う。他の4人のゴリ推しとはまた違うゴリ推しだ。一体、今年に入ってチームBの公演に何回出た? テレビとかの仕事の方が圧倒的に多かったんじゃない?」
光宗「はい・・・正直、言いますと」
平嶋「君のことを調べていくと、どんどん不思議になってくる。AKB48の主戦場は「劇場」であり、これは変わらない。テレビの露出が多くなっていくにつれ、勘違いしてくる人もいるが、これは真実だ」
平嶋「会いに行けるアイドル―これは握手会で会いに行けるから、ではない。その一面もあるが、握手会でそればかりマスコミに取り上げられて勘違いしている人も多い」
平嶋「今までのアイドルは全国どこにでも飛び回って、CDを売るため、カラオケで歌わせるために、ライブで歌を披露してきた」
平嶋「全国どこに現れるか分からないため、追っかけでもしないと全てのライブを見る、といった行為は到底不可能だった」
平嶋「しかしAKB48は違う。AKBは言い換えれば地域密着型アイドル。本拠地を決め、そこで毎日歌ってますから、いつでも見に来てください、という劇場に来てくれるお客さんのお金で経営しているビジネススタイル」
193: ◆Q5rNtE.wug
12/05/01 00:29:32.19 o5rp7jV30
光宗「・・・」
平嶋「これは新しいビジネススタイルだ。最早、情報が溢れかえていって一つのものを選ぶ、なんてものが時代遅れになった現代に合っている」
平嶋「さらにネットにいけば、動画サイトでAKBの曲は流れる時代に、最早曲だけにCDを買う必要性はない。なのでCDをおまけとして、握手券を売る、という手法」
平嶋「これはあまりにも時代を読み過ぎている。AKBとはただのアイドルグループではなく、歴史を動かす一現象。AKB48とは―あくまで劇場と共に歩んできた」
だが、君は違う。
平嶋は言う。
平嶋「君は劇場を軽視している」
194:名無しさん@お腹いっぱい。
12/05/01 00:43:10.18 r9H3rpYZi
この作者っていつもJを悪い役にするよね?
Jアンチ?
195: ◆Q5rNtE.wug
12/05/01 00:48:11.08 o5rp7jV30
光宗「そ、そんなことありません!」
平嶋「いや、しているね。こんな新人がドラマに出演したり、雑誌でソロ飾ったりは今まで有り得なかったことだ。あの指原や横山でさえ、長い下積み経験をしている」
光宗「それは・・・」
平嶋「私は君はAKBのコンセプト、「会いに行けるアイドル」に喧嘩を売った、アンチテーゼのような存在だと思う―これからはテレビを主導にして、劇場を蔑ろにしますか、といった類のな」
光宗「・・・」
平嶋「ごめんごめん、厳しいこと言ってしまってね。スキャンダル起こして、辞めた私に偉そうなこと何一つ言えないはずなのにね」
光宗「いえいえ・・・」
平嶋「ここからは、少し話が変わるんだけど・・・薫ちゃんは努力って何だと思う?」
光宗「えっ?」
いきなり質問されて、戸惑う光宗。
光宗「・・・報われるかどうか分からないけど、しなくてはいけないもので、自分と他人を信じ続ける糧となるもの」
平嶋「惜しいね。正解は、努力は必ず報われる。だけどそれは報われるフィールドがあってこそ、だよ」
196:名無しさん@お腹いっぱい。
12/05/01 00:48:25.36 t3tMA9Zo0
客観的にビジネス論を展開する平嶋にワロタ
197: ◆Q5rNtE.wug
12/05/01 00:50:19.73 o5rp7jV30
光宗「・・・? それってどういう・・・」
平嶋「例えば、たかみなを例にとって説明しよう。たかみなは私とよく似ているタイプであるが、天と地ほどの知名度の差がある。果たしてそこの差は何だったんだろう」
平嶋「私も、まだよく分かっていないけど、私に言わせれば、たかみなは努力して報われるフィールドがあって、私にはなかった、そういうこと」
光宗「・・・」
平嶋「たかみなは努力すれば、努力すればするだけ人気もあがるし、後輩から尊敬される。そう、努力を知ってもらえるんだよ、秋元先生に限らず、色々な人に。でも私は何?」
平嶋と光宗の会話を尻目に公演は続けられていく。
シアターの女神公演なので、アンコールがお決まりのように流れ、お決まりのように「オネストマン」が披露される。
平嶋「私はいくら努力しても、誰にも知ってもらえない」
光宗「・・・他人に知られるために努力するわけじゃないでしょう」
平嶋「いや、現実は、いやこの世界は特にそれを知ってもらわなければならない。努力している姿を見て、優先的に仕事を回してあげよう、と思ったり、ファンの人達も成長している、って思うわけ」
光宗「そんな・・・例えば歌のレッスンをしたら、少しずつですけど上手くなっていくじゃないですか。そうすれば実力がついてきて」
平嶋「ははは。まあ実力つくか、でも実力ついて結果出したとしても、その結果を見てもらわなければ意味ないんじゃない?」
光宗「それは・・・」
平嶋「簡単にいうと、「眼中になかった」。秋元先生の目には「私」という姿が眼中に入っていなかった。でも、私は、努力は【絶対に】報われない、と思いながらもAKBを続けてきたし、辞める気もなかった。どうしてか分かる?」
198: ◆Q5rNtE.wug
12/05/01 00:52:34.38 o5rp7jV30
光宗「・・・やっぱりファンの人達が応援してくれるから、ですか?」
平嶋「初めて正解」
平嶋はこの日、初めて優しげな表情を見せる。
公演の方は「チームB推し」が流れる。
平嶋「26位。3年連続26位。これはファンの人達が私を見てくれている証明でもあった。秋元先生やスタッフの目に私は映っていなかったかもしれないけど、ファンの目には確かに映っていた」
平嶋「私は―」
ステージの方を見て言う。
平嶋「私はもう一度、あのステージに立てるなら、あのステージでファンの人達に応えられるなら、どんな代償も惜しまない。今まで863回という公演回数」
平嶋「もう一度、ステージに立ちたい。でもそれは決して許されないこと。犯してはならない禁忌に触れた私にとって、あのステージに立つことはもう不可能でしかない」
平嶋は席を立つ。
光宗「帰るんですか? もう少しで終わりますよ・・・」
平嶋「もう十分。これ以上見ると―涙が出そうになるから」
あーもういっちょいくぞー!
あなたは今日でなっちゃん推し、ほらチームB―なっちゃーん!
199:名無しさん@お腹いっぱい。
12/05/01 00:52:37.60 ouK5MowuO
後で全部一気に見るからまとめんばーちゃんとまとめとけよ
200: ◆Q5rNtE.wug
12/05/01 01:00:11.05 o5rp7jV30
平嶋「でも君はまだ大丈夫。君はまだこれから公演に一杯出れる。テレビの仕事なくして劇場に行け、とまでは言わない」
平嶋「ただ知って欲しかった。AKBにとってファンと繋がれるところ、それはテレビでも雑誌でもなく、ここ劇場だ。大切にしなさい。一度一度のファンとの出会いを大切にしなさい」
そう言って、平嶋は出口の方に向かっていく。
光宗「ちょっと・・・平嶋さん・・・!」
平嶋「あーっ、光宗薫だ! みなさーん! スーパー研究生でテレビにも引っ張りだこの光宗薫がいますよー! あれー、何でこんな観客席にいるのかなー!」
平嶋が―声量ある大声で叫び、ちょうど曲も終わったとなって、場内は騒然とする。
光宗「ちょ、ちょっと・・・」
平嶋「さようなら、薫ちゃん。私はあなたは決して交わらない。もうあなたの前には姿を現さないでしょう」
そう言い残して、平嶋は去っていった。
201: ◆Q5rNtE.wug
12/05/01 01:01:31.14 o5rp7jV30
■5になっちゃん!■
平嶋「流石に悪いことしたかな・・・」
平嶋は先程、やったことで少し自己嫌悪に陥る。
平嶋「まあ、いずれ気付かないといけないしね。薫ちゃんがAKBとしてやっていくためには、考えなければならない道だから・・・」
こうして、というか只文句を言うだけ言って平嶋夏海の物語は終わる。
AKB48の《夢》とは高橋みなみのことである。
AKB48の《現実》とは平嶋夏海のことである。
一見、華やかに見えるが、そこには光と影が確かに生まれている、ということ。
あまりにも寂しい、そして救われない物語であった。
202: ◆Q5rNtE.wug
12/05/01 01:03:22.22 o5rp7jV30
■古いページは破り捨てろ■
ファン「何で、光宗がいるんだー?」
光宗「ちょ、ちょっと・・・押すのは止めてください」
まるで押しくらまんじゅうとなって、会場は混乱の渦となる。
その渦の中心にいるのは何を隠そう光宗本人である。
光宗「あ、あの!」
ファン「お前に一言、言っておきたかったんだよ!」
怒りが込められた大声によって、騒然としていた会場が水を打った静けさとなる。
ファン「お前、劇場を馬鹿にしてんだろ」
光宗「い、いえ、そんな」
ファン「いや馬鹿にしている。こうやって、研究生の公演を見に来る、っていうことが馬鹿にしてるんだ。多分、心のどこかで思っているんだろ」
ファン「あー、大変そう。けど私はテレビとか出まくって、目立っているけどね。って」
光宗「そんなこと・・・!」
ファン「じゃあ、お前にとって劇場とは何なんだ。お前にとって、劇場とは邪魔なものなんじゃないのか?」
劇場とは何なのか―。
AKBの原点。
これだけテレビや雑誌に引っ張りだこの現状において、残念ながら休演してくるメンバーも少なくない。
正規チームの公演であっても、殆どが代役として研究生が出演していて、一体何をしているのか分からない状態になることがある。
劇場とは何なのか―。
そんな空中戦の最前線にいる、光宗が「原点です」といっても誰も信じないし、一笑して終わるだろう。
光宗「私にとって・・・劇場とは・・・」
203: ◆Q5rNtE.wug
12/05/01 01:05:11.17 o5rp7jV30
ファン「そうだ、お前にとって劇場とは!?」
光宗「劇場とは・・・」
光宗は必死に声を絞り出す。
光宗「私にとって劇場とは、努力を見せるフィールドです! 確かにこの世界では「努力は報われるとは限らない」「絶対報われない」かもしれません、ですけど!」
光宗「私達には劇場があります。努力してそれを披露できる、努力が報われるフィールドがあるんです! これだけ幸せなアイドルは他にはいません」
光宗「もちろん、そこでミスするかもしれません。しかし会場の雰囲気や反応を見て自分で修正することができ、努力をすることが出来ます!」
光宗「だから私は努力し続けていきたい―テレビや雑誌の仕事が多くなると思うけど、私にとって劇場とは努力した結果を最大限に発揮できる場所です!」
ごめんなさい―そう続ける。
偉そうなことを言ったが、現実的には殆ど公演にでれない日々が続いている。
そんな気持ちが、最後にそう言わせたのだろう。
ファン「・・・分かった・・・じゃあ、今からステージに上がりなさい」
204: ◆Q5rNtE.wug
12/05/01 01:06:47.63 o5rp7jV30
光宗「えっ」
ファン「俺達は、何だかんだお前を認めている。神崩し―AKBの新世代を切り開く、一人の主要メンバーだと思っている。だからステージに上がりなさい。そしてステージで努力の結果を見せてください」
光宗「でも・・・」
ステージ上では研究生のみんなが手招きをしている。
殆ど交われなかった、異質な存在としての光宗なのに―。
ファン「そうだ、そうだ! 何だかんだいって、アンチも多いと思うけど、みんなお前のことを認めてるから言ってるんだ。ルックスもスタイルも良い」
ファン「身長が高くてダンスで見栄えが良くて、目立つ―まだ未熟かもしれないけど、これから経験を積めばきっと全員を魅了出来るようなダンスが出来るはずだ」
光宗「・・・はい!」
205: ◆Q5rNtE.wug
12/05/01 01:08:09.61 o5rp7jV30
こうして光宗はステージに向かって走り出す。
いつか前田敦子は言っていた。
―全員が全員、敵じゃないから。温かい言葉もたっくさんある―。
アンチが生まれてスターは育つ。
もちろん、光宗のことを嫌いな人もたくさんいる。しかし反対に自分のことを期待してくれる人間もたくさんいる。
自分には味方がたくさんいるんだ―。
そんな自信に光宗は包まれていた。
光宗「はい・・・では最後の曲、聞いてください。Beginner」
206: ◆Q5rNtE.wug
12/05/01 01:10:03.56 o5rp7jV30
■だけどアンコールが、どこかで聞こえた■
柏木「どうしたの! 薫ちゃん。その大量の荷物は」
光宗「決めました。私、今日から四天王のリーダーになります」
いきなり言い放ち、固まるチームBメンバー達。
柏木「えっ?」
光宗「だって、佐藤亜美菜さんが止めてからリーダーいなくなって、実質四天王解体されそうになったじゃないですか。だから私が引き継ぎます。私が今日からリーダーとして頑張ります」
柏木「って、ちょいちょーい! おっかしいでしょー!」
北原「まあ、私はお腹一杯ご飯食べられればそれでいっか」
宮崎「ということはその荷物は、もしかしてハンバーガーとか? もう涎が出て止まらないよ」
増田「楽しみやなー」
光宗「いえ・・・食べ物であることには変わりないのですが・・・」
光宗は意を決してその荷物を開ける。
そこには―。
宮崎「えっ、これって、煮干し?」
207:名無しさん@お腹いっぱい。
12/05/01 01:10:11.68 Ca5FEFmI0
光宗って劇場6周年のお披露目で言ってたとおり目立つよな
SSAのRIVER 全体の完成度高かったのに光宗悪目立ちでワロタwww
208: ◆Q5rNtE.wug
12/05/01 01:11:39.48 o5rp7jV30
光宗「はい煮干しです。これから四天王は「ご飯を一杯食べて太ろう」ではなく、「常識的にご飯は食べるが痩せよう」というコンセプトにしたいと思います」
宮崎「えー! そんなー!」
光宗「泣き出さないでください! 宮崎さん。この煮干しを噛むことによって、満腹中枢が刺激されあんまりご飯を食べなくて済むようになるらしいです。これでみなさんダイエットしましょう!」
北原「私、ちょっと急用が」
光宗「そして!」
光宗は続ける。
光宗「ダイエットと一緒に、一番後輩を仲良く出来るような、そんなチームにしていきましょう。まずはその意識作りからです。もちろん、派閥とかではなく―」
こうして光宗薫の物語は終わる。
AKBの新世代を担っていく、一人の少女の物語は終わった。
これは努力と才能の話。推されと干されの話。そしてファンを大切にする少女の物語であった。
こんな彼女達がいるAKBは、きっとどこよりも輝いてて強い―。
渡辺美「おはようございまーす。今日からレッスンに参加させていただく、渡辺美優紀と言います。みるきー、って言ってください―」
《終わり》
209: ◆Q5rNtE.wug
12/05/01 01:15:40.10 o5rp7jV30
>>1です。
これで一応、終わりです。
色々とグダグダだったと思いますが、最後まで読んでくれた方がいるとするなら・・・ありがとうございました。
48グループには《推され》と《干され》が確かに存在します。その推されグループには前田敦子や指原、干されグループには平嶋や佐藤亜美菜がいました。
光宗薫は他の推されとは、また違った《推され方》をされていますが、彼女のAKB、人生の成功を祈って・・・という締めでいきたいと思います。
最後に、ここまで読んでくれた方は本当にありがとうございました!
210:名無しさん@お腹いっぱい。
12/05/01 01:18:43.08 D9cN4THJ0
14期生オーデションを受けに来た元AKBの森杏奈がチームBで電撃昇格(´・ω・`)
211:名無しさん@お腹いっぱい。
12/05/01 01:20:22.12 s7ODjALz0
>>209
乙
読めた。
212:名無しさん@お腹いっぱい。
12/05/01 01:21:08.71 Gi+ILWuFO
お疲れ様。ストレートでちょっと青臭いプロットに好感です。