12/04/12 15:16:30.59 ZkN33qRO0
本拠地日本ガイシホールで迎えたコンサート
リーダー梅本の持ちネタがダダ滑り、MCも勢いを見せず惨敗だった。
スタジアムに響くファンのため息、どこからか聞こえる「今年はE公演なしだな」の声。
無言で帰り始めるメンバー達の中、昨年の新人王原は独りベンチで泣いていた。
中野ブロンディーズで手にした栄冠、喜び、感動、そして何より信頼できるチームメイト……
それを今のSKEで得ることは殆ど不可能と言ってよかった。
「どうすりゃteamEから選抜は増えるんだ……」
原は悔し涙を流し続けた。
どれくらい経ったろうか、原ははっと目覚めた。
どうやら泣き疲れて眠ってしまったようだ、冷たいベンチの感覚が現実に引き戻した。
「やれやれ、帰ってダイエットをしなくちゃな」原は苦笑しながら呟いた。
立ち上がって伸びをした時、原はふと気付いた。
「あれ……?お客さんがいる……?」
ベンチから飛び出した原が目にしたのは、スタンド席まで埋めつくさんばかりの観客だった。
千切れそうなほどにサイリウムが振られ、地鳴りのようにovertureが響いていた。
どういうことか分からずに呆然とする原の背中に、聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「ミナミ、円陣だ、早く行くぞ」
声の方に振り返った原は目を疑った。
「え……えりたん?」
「なんだミナミ、居眠りでもしてたのか?」
「お……大岩監督?」
「なんだ原、かってに大岩さんを引退させやがって」
「中村くん……」原は半分パニックになりながらスコアボードを見上げた。
1番:松井玲 2番:大矢 3番:松井珠 4番:高柳 5番:木崎 6番:原 7番:木本 8番:金子 9番:柴田
暫時、唖然としていた原だったが、全てを理解した時、もはや彼の心には雲ひとつ無かった。
「勝てる……勝てるんだ!」
間野ちゃんから風船を受け取り、ステージへ全力疾走する原、その目に光る涙は悔しさとは無縁のものだった……
翌日、ベンチで冷たくなっている原が発見され、石田と湯浅は病院内で静かに息を引き取った。