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見えない困窮
朝起きて、朝食や洗濯を手早く済ませると、自宅近くのオフィスに徒歩で向かう。3階分のフロアに掃除機をかけてモップを走らせる。トイレは便器をブラシで磨いた後、しゃがみ込んで床を隅々まで拭く。休憩なく4時間かけて掃除をしていると、腰や膝には痛みが出てくる。
関西地方で一人暮らしをする70代後半の高崎千枝さん=仮名=は週4日、パートで清掃の仕事をしている。高齢の身にはこたえ、帰宅後は疲れてソファでぼーっと過ごすことも少なくない。それでも「体が動くうちは働かなくちゃ。年金だけでは生活できないから……」と次の日も仕事に向かう。
株式市場は史上最高値に沸いているが、物価高や伸び悩む賃金で生活を圧迫されている人は少なくない。困窮していても助けを求められるとは限らず、存在は見えなくなりがちだ。当事者の暮らしや思いをリポートする。
第1回 奨学金や学費免除を失った大学生
第2回 低年金のため働き続ける70代
第3回 年収300万円台、大学非常勤講師
第4回 十分な生活費をもらえない子育てママ
第5回 病身でも「休めない」非正規公務員
「自分の食いぶちは自分で何とかする」。シングルマザーになってから30年以上、歯を食いしばってきた。
20代の頃、大学の同級生と結婚したが、夫は育児や家事に非協力的で心がすれ違い、40代の時に高校生の長女を連れて離婚した。
結婚後は専業主婦か、短時間のパートでしか働いたことがなかった高崎さん。友人宅に間借りをしながら安いアパートを探し、仕事は新聞の求人欄で見つけた。正社員として営業事務の職を得たが、家族経営の零細企業だった。同僚の男性とは賃金に差があり、当初の手取り月給は14万円ほど。養育費は初めのうちしか支払われず、長女が「勉強は嫌い」と高校卒業後に働き始めた時には、内心ほ…(以下有料版で,残り1945文字(全文2695文字)
毎日新聞 2024/3/1 15:45(最終更新 3/1 17:18)
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