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世界で人口急増が続く地域と、減少が加速する地域との間で労働力の不均衡が広がる中、移民を含む労働力の国際移動は対処法の一つだ。この中で、日本を含め先進国では高度な知識や技能を持つ「高度人材」の受け入れ優先が叫ばれることが多い。しかし、やっと育てた高度人材を先進国に取られた発展途上国はどうなるのか。問題を示す典型的な事例がナイジェリアにあった。
ナイジェリアは人口がアフリカ最多の2億1800万人で、「アフリカの巨人」とも呼ばれる地域大国だ。1人の女性が平均で5人以上の子供を産む人口急増国でもある。ところがある分野では人手が余るどころか人材不足が深刻で、大きな社会問題になっている。
7月中旬、首都アブジャにある大学病院は診察を待つ患者であふれかえっていた。医師の休憩室のドアを開けると、室内は電力不足による慢性的な停電で薄暗い。最高気温は30度に達するのに冷房は入らず、ソファに座っているだけで汗がにじんでくる。
人口1万人あたり医師数は日本の27分の1
「医療器具や設備が不足して、人の命を救えない。多忙な上に給料も低すぎる」。昼休みを取っていた40代の男性医師は嘆いた。「自分は年齢的に厳しいが、多くの同僚は海外に渡って働きたいと考えている」。この病院では最近の半年で、若手医師200人のうち15人が辞めた。
ナイジェリアでは今、医師不足が深刻だ。世界保健機関（WHO）の統計では約8万4000人の医師がいることになっているが、その半分以上は待遇が良い欧米諸国や中東の産油国などに流れてしまい、国内で実際に診察しているのは2万人台と言われる。人口1万人当たりの医師数はおよそ1人だ。これがいかに少ないか、同約27人の日本と比べれば明らかだ。
アブジャの別の総合病院で勤務する2年目の若手医師（26）は、連日18時間勤務して月給は18万8000ナイラ（約3万4000円）で、「普段の生活費すらまかなえない」。同僚医師の9割が、10倍以上の給与が見込める海外移住を希望しているという。「資金を準備して来年には渡航したい。母国を離れることに罪悪感も少しあるが、自分が生きていくためには仕方がない」
人口急増、業務過多、人材流出の連鎖
根本的な原因は…(以下有料版で， 残り1271文字)
毎日新聞 2023/8/14 06:00（最終更新 8/14 06:00） 有料記事 2194文字
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