23/02/09 06:37:35.19 YgoTA0i+9.net
日本では手術だけに限られてきた人工妊娠中絶の方法に、ようやく飲み薬という選択肢が加わりそうだ。
英国の製薬会社が製造販売を申請していた経口中絶薬「メフィーゴパック」について、厚生労働省の専門部会が先日、承認して差し支えないと判断した。社会的関心が高いため意見公募を行い、3月にも結論を出す。
対象は妊娠9週までで、認められれば今春にも使えるようになる。嘔吐(おうと)など副作用のリスクはあるものの、女性の心身への負担軽減を進める一歩として歓迎したい。
ただ、中絶を巡る医療や制度は戦後から大きくは変わっておらず、女性のニーズを踏まえた検討が十分になされてきたとは言い難い。
世界保健機関(WHO)は現在、妊娠初期の効果的な中絶方法として「経口薬」か、内容物を管で吸い取る手術「吸引法」を推奨している。同じ手術でも金属製の器具でかき出す「掻爬(そうは)法」は子宮内に傷をつける恐れがあるため時代遅れとの見解だ。
中絶薬は35年前、フランスなどで初めて認可された。WHOの「必須医薬品」に指定され、既に70以上の国・地域で使われている。手術に関しても同時期から世界では吸引法に切り替えが進んだ。
日本での主流はいまだ掻爬法である。吸引法への置き換えも数年前に始まったばかりで、心身への負担がより少ない薬の早期承認を求める声が高まっていた。
国内の2021年度の人工妊娠中絶は約12万6千件だった。全体では減少傾向とはいえ、若年層を中心に母体の健康問題や経済的困窮、性暴力による妊娠などを理由にやむなく中絶を選ぶ女性は少なくない現状がある。
一方で、母体保護法が、中絶に配偶者の同意を得るよう定めていることは問題と言えよう。この要件があるために、厚労省が近年、未婚やドメスティックバイオレンス(DV)の場合は例外との見方を示したにもかかわらず、医療機関が相手の男性の同意を求めたり、中絶を諦めたりするケースは後を絶たない。
そもそも本人の意思だけで中絶できないのは性差別に当たるとして、国連の女性差別撤廃委員会が規定を廃止するよう日本政府に勧告している。厚労省によると中絶薬についても規定が適用されるというが、見直しの議論を進めることも必要だろう。
もう一つ心配なのが費用だ。手術は原則保険適用外で10万~20万円程度かかる。中絶薬は世界平均卸価格が約800円で、郵送を利用して自宅で飲める国もある。だが専門部会は当面は通院、入院で投与することなどを確認しており、金銭的負担がどうなるかは見通せない。
女性たちの「自分の体のことは自ら決める」という権利を守るためにも、必要な人が薬にアクセスできるよう検討が求められる。
(2023年02月08日 08時00分 更新)
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山陽新聞