22/05/07 14:05:01 rWtDdhSo9.net
「1カ月以上前から夫が出勤しなくなり、一日中ずっと陰謀論仲間と連絡を取り合っています。
たぶん会社を解雇されたか辞めたのだと思います。今は私の収入でやりくりしていますが、これからどうなるのかわからず不安です」
陰謀論集団「神真都Q(ヤマトキュー)」の本部に公安部の家宅捜索が入った4月9日、筆者が運営するブログにそんなメールが届いた。
差出人はある地方都市に暮らす、神真都Qの構成員の妻を名乗る人物だった(構成員の名を仮にAさんとしておく)。
新型コロナワクチンの接種を妨害するため東京・渋谷区のクリニックに侵入したとして、神真都Qの構成員4人が現行犯逮捕されたのは4月7日。
20日にはリーダー格のイチベイ(岡本一兵衛)こと倉岡宏行容疑者も、建造物侵入の疑いで逮捕された。
以前から筆者のもとには、同団体の関係者やその親族からの相談が寄せられてきたが、メンバーの逮捕後はその数がいっそう増えている。
今回はその中から、相談者に了承をいただいた分について、本人特定を避ける形で、お伝えしたい。
夫が神真都Qに入れ込むようになった背景には会社での立場の変化があったと、Aさんの妻は考えている。
仕事ではやり手だったが、あるときパワハラでトラブルを起こした。その結果、閑職に追いやられたうえ、後輩が上司になった。
家庭内での態度は、見る見るすさんでいった。
「パワハラでつまずいた後は、階段を転げ落ちるような感じでした。新型コロナがらみの自粛、マスクやワクチンにもいらだっていました。
そんな中、あるとき神真都Qのデモに参加し、ひさしぶりの達成感があったみたいで、そこから何もかも変わっていきました。
夫にとって、神真都Qが『職場』になったのだと思います」
神真都Qの構成員になったAさんは、イチベイのファッションをまねしはじめ、まるで自分自身を新しく作り直しているかのようだった。
会社で失脚して以来口にしがちだった卑屈な言葉が減り、顔つきまで変わったが、やがて会話が成立しなくなっていた。
出勤しなくなったAさんに妻が働いてほしいと言うと、「もっと大事なことをしている。邪魔をするな」と怒鳴り、
スマートフォンに没頭したり、どこかへ出掛けたりしてしまう。さらに、妻の見ていないところで陰謀論を子供にまで吹き込もうともしていた。
反論や注意をすると、髪をつかまれるなどの暴力を振るわれる。
「何カ月もこんな感じなので、精神的に限界です。いつ死ぬか、どうやって死ぬかしか考えられません。
離婚したいのですが、同意してもらえるとは思えません」(Aさんの妻)
警察の介入を受け、神真都Qという組織が今後どうなっていくのかはまだわからない。
だがたとえ神真都Qがなくなっても、変わり果てた夫の人格はもとには戻らないだろうと、Aさんの妻は言い切った。
もう1人、やはり神真都Qの構成員になった独身女性(仮にBさんとする)のケースを紹介する。
筆者にはまず、彼女の親族の1人から相談が寄せられた。「悪いのは神真都Qと信者なので、彼女も批判されて当然だと思います。
でもわかっていただきたいことがあるのでメールを送ります。被害者とは言いませんが、食い物にされていると思います」
一人暮らしをしているBさんは、以前から仕事や生活の中で微妙な「生きづらさ」を抱えてきた。ゴミ出しの細かい仕分けルールや曜日指定をうまく理解できず、近隣トラブルを起こす。
スーパーの値札に表示されている「30%引き」などの意味が理解できず、金額を計算しようと考えるだけで頭がいっぱいになり、いつも買い物に失敗する。
職場でも製品名や作業手順が覚えられず、病院で検査を受けたところ「境界知能」と診断された。
障害者支援の対象外だが、コミュニケーション能力や事務処理能力の要求レベルが高い現代社会ではさまざまな困難を抱えがちで、日本人のおよそ7人に1人が相当するとされる。
コロナ禍発生直後の不織布マスクの品不足が解消されていた2020年の冬、Bさんはだまされて5枚5000円相当のマスクを買ってしまい、周囲の人々にとがめられた。
買い物とマスクが怖くなった。マスクを使い果たした後に次のマスクをなかなか買えず、ノーマスクで仕事場に出てひんしゅくを買ったが、口ごもって理由を説明できなかった。
ワクチン接種のお知らせが届いたときは、書式が見るからに複雑で、コロナ禍の何もかもが嫌になった。
こうした経験が、神真都Qの前身集団にBさんが親近感を覚えるきっかけになった。
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