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コロナ死亡率ワーストでも在阪テレビは吉村ヨイショ祭りの怪
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大阪府のコロナ禍は国内ワーストの悲惨さだ。3月はじめまでの1週間では、人口10万人あたりの感染者数が唯一600人を超え、東京や神奈川をはるかに上回っている。人口当たりの死者数は実に東京の2倍近い。ややセンセーショナルな言い方だが、同じコロナに罹っても、大阪府民は東京都民より2倍死にやすいということになる。
それは医療体制の違いが大きい。病床使用率はやはり全国ワーストで、あおりを受ける京都、兵庫、奈良など近隣府県も軒並み医療逼迫に苦しんでいる。それなのに、吉村洋文・知事が「野戦病院を作る」と意気込んで開設した1000床の「大阪コロナ大規模医療・療養センター」は不人気で利用されていない。府は「自宅療養やホテル療養を選ぶ府民が多いから」と説明するが、その通りだとしても行政の判断ミス、政策ミスであることは明らかだ。そのカネと人員を別のところで活用すれば、こんなに死者を出さずにすんだ可能性は高い。
普通なら、吉村知事は失政で府民の命を犠牲にしたと糾弾されてもおかしくないが、一向に支持率は衰えず、むしろ評価する声が多い。人望があるのは誇るべきことなのだが、その理由は褒められたものではない。在阪メディアの多くが吉村氏や同氏が代表を務める大阪維新の会と“近すぎる関係”になり、一切批判しないから、そうしたヨイショ報道を目にする府民は、「吉村はん、ようやってはるわ」と思い込まされているというのだ。ジャーナリストの吉富有治氏が語る。
「もちろんすべてのメディアが吉村ヨイショしているわけではありません。会見で厳しい質問をぶつける新聞記者もいます。ひどいのはテレビのバラエティ番組です。お笑い芸人が司会をしている情報番組などでは吉村さんは決して批判されませんから、本人もそういう番組に好んで出演しているように思えます。実は彼は気持ちがすぐに顔に出るタチで、会見でもフリーライターなどから厳しい質問が出ると、顔を歪めたり、ふてくされたりすることがよくありました。テレビの生放送でそんな態度を取れば人気が落ちますから、本人としても批判されないとわかっている番組は出やすいのでしょう」
例えば吉村シンパといわれる週末の情報番組で、大阪のコロナ死者が多いことが話題になった際には、吉村氏は「高齢者と若い世代の生活圏が非常に近いから」と言ってのけた。“お年寄りに寄り添う街だから仕方ないよね”という論理なのだろうが、本当にそうだという根拠も因果関係も示さないのだから、その場しのぎの言い訳と取られても仕方ない発言だ。ところが共演した芸人は、「東京との違いが出てきてるということですよね」と相槌を打って吉村氏を擁護した。ことほどさように、バラエティ番組に出づっぱりの吉村氏は、共演者とスタッフに守られて自分たちに都合の良い解釈やデータを垂れ流し放題なのだ。
「テレビ局は最近、スポンサー離れが顕著で収益が下がっている。いかにコストを下げて視聴率を上げるかが至上命題になっています。その点、吉村さんは出演料がかからないし、視聴率も稼げて、頼めばホイホイ出てくれるのだから、うってつけの“コンテンツ”なんです。それらの番組は構成作家、放送作家が台本を書きます。彼らは普段から政治動向を追っているわけではないし、専門的な知識があるわけでもない。報道機関として政治的に中立であるべきと考える前に、いかにおもしろい番組にするか、楽しい構成を作るか、視聴率を稼ぐかという発想になるわけです。吉村さんを批判するような台本は作りませんよね」(吉富氏)
吉村氏の知名度と人気が上がったのは、明らかにコロナ禍になってからだ。初期の頃は休みも取らずに働く姿に府民が共感して「吉村寝ろ」がトレンドワードになったように、その奮闘ぶりは確かに目立った。しかし、「うがい薬でコロナは防げる」とか「大阪発のワクチンができる」などと大言壮語しては修正を迫られ、何度も感染の波が来ているのに医療崩壊を繰り返す失政ぶりは厳しく問われていいはずだ。府民の感染者と死者が増えるほど吉村氏と維新の支持率が上がるというブラックジョークは、在阪メディアの責任でもある。