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ファイザーはワクチンを開発すらしていない
世界のリーダーたちがひっきりなしにアルバート・ブーラCEOに電話をして入手しようとしているそのワクチンは、ドイツのライン川沿いにある中世の町マインツの企業ビオンテックの研究室で発明されたものだ。
2020年1月下旬、ビオンテックの最高経営責任者ウグル・シャヒンは、中国で発生した新型コロナウイルスに注目し、それが世界的な大惨事になると考え、同社のリソースを結集してワクチンの開発に力を注いだ。
ファイザーは世界を「救っていない」
ファイザーのアルバート・ブーラCEOは、自分が注目しているのは収益だけではないと主張する。「当社が財政的にとても順調であることには満足しています。しかしより満足を覚えるのは、私たちが世界を救ったと皆が感じ、一斉に称賛をいただくときです」と、彼は2021年7月に語っている。
国連合同エイズ計画（UNAIDS）トップのウィニー・ビャニーマは、そのインタビューを読んで身震いしたという。「彼は世界を救っていません。救うことができたはずなのにそうしなかったのです」と、アフリカでのワクチン接種率が非常に低いことを指摘した。
ファイザーは、低所得国でのワクチンの販売価格を引き下げた。最貧困国には投与1回あたり6.75ドル（約770円）、中所得国には約10～11ドル（約1150~1250円）で販売する。これはモデルナの価格よりは低いが、アストラゼネカより高価だ。
しかし、たとえそれでワクチンをより入手しやすくなったとしても、多くの国家リーダーは、ファイザーがワクチン入手を困難にさせていると感じている。欧米のリーダーたちはブーラに直接電話をかけられたが、それができない国々は、ブーラやファイザー側の人間と話す場を持つのにまず苦労したのだ。
「ファイザーに連絡をしても返事がないと、さまざまな国が訴えて来ました」と、アフリカ連合のワクチン購入に詳しい人物は話す。
圧倒的に優位な立場を濫用
ファイザーは、各国との売買取引成立前に、国内法を改正してワクチンメーカーを訴訟から守るよう政府に要求した。欧米ではすでに実現していた国が多かったが、レバノンからフィリピンまで、多くの国がワクチン確保のために法律を改正した。
汎米保健機構（PAHO）の副所長であるジャーバス・バルボサによれば、ファイザーの出してきた条件は、「緊急事態下で、各国政府ともノーと言う選択がない状況を濫用するものでした」と述べる。
特に緊張が走ったのは南アフリカ共和国との交渉だった。南アフリカのズウェリ・ムキゼ前保健大臣は、ファイザーが「不合理な要求」を突きつけ、ワクチンの提供を遅らせたと訴えた。
利益の少ない貧困国は後回し
さらに同社は、超低温保存のワクチンを輸送・保管できるインフラを持つと確認できた国にしかワクチンを提供しないと言い出し、さらなるひずみを起こした。それは同社が実際に心配すべき点であった。欧米の医療機関でさえワクチンの保管に苦労していたからだ。
責任ある行動を取らない原因を貧困国のせいに
最初の新型コロナワクチンの承認から約1年、ワクチンによって世界の半数以上の人々の生活は変わった。約54％の人々が少なくとも1回の接種を受けたが、低所得国の住民の94％の元には届いていない。
アメリカ疾病予防管理センター（CDC）の元所長トム・フリーデンによると、各国政府は必要な量のワクチンを確保するため、ワクチンメーカーに「甘い取引条件」を提示することが少なくないという。研究資金を提供し、臨床医に研修をさせ、国民に対し情報を提供し、そして何十億回分もの投与分を購入するのだ。
その見返りとして政府はワクチンメーカーに責任ある行動を求める。しかし、ファイザーとモデルナがその責任を果たさなかったことは「驚くべきこと」だと彼は言う。
「ワクチンメーカーと政府がそれぞれどう行動すべきかについては、ある種の不文律があります。しかしワクチンメーカーがこのルールを破ったのですから、ルールを書き換えるべきでしょう」と、彼は話す。
ブーラは、2021年第三四半期決算説明会で、ファイザーはどの製薬会社よりも多くの人の命をこれまで救ってきたと述べた。一方、2021年の収益は、製薬業界としては記録的な800億ドル（約9兆1500億円）を予想していると語った。
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