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■産経新聞(2021/11/26 18:49)
低体重で生まれた女児に医療を受けさせず、自宅に置き去りにして死なせたとして逮捕、起訴された母親の裁判員裁判判決公判が26日、東京地裁であり、懲役3年執行猶予5年の有罪判決が言い渡された。一人暮らしで、健康保険料の滞納により保険証を持っていなかった母親は、一度も病院へ行かずに自宅で出産。その後も仕事などで頻繁に家を空け、女児は生後5日目に死亡した。公判で浮かび上がったのは、母親が陥っていた「貧困」と「孤立」だった。
保護責任者遺棄致死罪に問われたのは、池田知美被告(33)。冒頭陳述や被告人質問によると、定時制高校を卒業後、レストラン勤務を経て飲食店での接客業に従事。令和元年夏ごろ、妊娠に気付いたが、相手とすでに破局しており一人で出産しようと決めた。
ただ、3~4年にわたり健康保険料を滞納していた被告は保険証を持っていなかった。母子健康手帳の交付も受けておらず、「病院に行っても取り合ってもらえない」と考えた末、自宅出産を選択した。
「子供のためにもっと稼がなければ」。出産直前には接客業と掛け持ちで、パチンコ店のホールスタッフとして働き始めた。
元年12月28日、被告は東京都足立区の自宅で約1500グラムの女児を出産した。妊娠約30週の早産だったとみられる。だが医療措置を受けさせることなく、半日後には、おむつや哺乳瓶、ベビー服を買うため外出。その後もベッドに女児を残し、何度も仕事に出かけるなどしていた。
生後5日目の2年1月1日。帰宅した被告は、女児が息をしていないことに気づき、自ら119番通報した。女児は急性肺炎で死亡。警視庁は翌2日、被告を逮捕した。
今月17日から始まった公判で争点となったのは、女児に適切な医療措置を講じる必要性を被告が認識していたかどうかだった。
検察側は「必要性を認識していたが、医療機関を受診するなど、当然の行いをしなかった」として懲役4年を求刑。これに対し弁護側は「育児用品を購入するなど、一人で育児をしようとしていた。女児がまだ元気だと思い、受診の必要性を感じていなかった」などと無罪を訴えた。
公判では、被告の貯金が事件当時、わずか2万5千円だったことも明かされた。被告は別居していた実母らと折り合いが悪く、妊娠や出産について、家族に相談することもなかったという。被告人質問では「保険証を持っていたら、病院に連れて行っていたと思う」とも打ち明けた。
こうした事情を総合的に勘案し、地裁が下したのは、執行猶予付きの有罪判決だった。
野村賢裁判長は「家族に相談せず、保険証がないから医療機関を頼れないなどとして適切な準備を行わず、独りよがりな選択をして犯行に至っている」と指摘。一方で「育てる努力を重ねるなど、女児の生命をまったくないがしろにしたとまでは評価できない」とも述べ、「相談する人、頼りにする人をぜひつくってほしい。今回のようなことは二度と起こさないように」と被告に説諭した。
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