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千葉大学病院で新型コロナ治療の最前線にある、感染症専門の谷口俊文医師に聞いた。
発症したら「なるべく死なないようにする」しかない現実
新型コロナの治療法は確立されておらず、暗中模索だった。パンデミックから1年以上経った今、新型コロナの治療法は進歩したのか。
その中で唯一の治療が「抗体カクテル療法」なのだろうか?
「アメリカでは感染者が3700万人を越えています。その治療に当たった見地からガイドラインを公開しており、
当院でもそれに沿って治療方針を決めています。肺炎はあるけれど酸素投与の必要ない人は、ベクルリー(レムデシビル)という抗ウイルス薬を使います。
バルスオキシメータで体内の酸素濃度を測り、93%以下になったら酸素を開始します。
2リットルくらいから始めて、4リットルを超えたらマスク型の酸素吸入、酸素の投与が10リットルを超えたらより高濃度の酸素を投与できる
リザーバーマスクやネーザルハイフローといった機器を使用します。酸素を使い始めるタイミングでステロイド剤、
そしてより高濃度の酸素が必要になる場合にはリウマチの患者さんにも使用するアクテムラ(トシリズマブ)を投与して治療の手応えを感じています。
しかし新型コロナの治療は、『なるべく死なないようにする』だけで特効薬はありません」
イベルメクチンは「効かない」
「一部で効果が期待されているイベルメクチンですが、残念ながら現状、有効性は確認されていません。
イベルメクチンが特効薬として期待されるようになったのは、2020年4月に発表された論文が最初です。
サージスフィア社のデータベースを元に、新型コロナの死亡率を減らすのではないかというものでした。
しかしデータねつ造の疑惑があり論文は撤回されています。
その後、多くの論文が発表されましたが、規模が小さかったり、さまざまな薬剤を同時に使っていたりと、信憑性に足るものはありませんでした。
そこへ2021年3月4日、軽症の患者に対して症状改善までの期間が短くならなかったというランダム化比較試験の結果が発表されました。
ランダム化比較試験は、研究の対象を治験薬と偽薬の2つのグループに無作為に分けて、治験薬の有効性と安全性を検証する、科学的根拠の質が高い研究です。
また7月14日には、死亡率を90%以上下げたという論文がデータねつ造疑惑のため撤回されました。
これらの結果を踏まえて、WHOや欧州医薬品庁は、イベルメクチンを臨床試験以外で使用しないように勧告しています。FDA(アメリカ食品医薬品局)は使用を承認していません」
ワクチン接種と基本の予防で身を守る
現状、特効薬はない。医療の崩壊が叫ばれるなか、個人でただただ「感染しない」ように対策を続けるしかないのだ。
「複数人の会食の感染リスクが高いことは間違いありません。加えて家庭内の感染も増えています。
ワクチンの接種が進んでいない日本では、同居家族以外の人とのマスクなしの会話は『命がけ』と考えたほうがいい。
感染症専門医から見て新型コロナは、かなり厳しい感染症だと思っています。千葉大学病院でも最大10床までしかICUを確保できません。
新型コロナの治療には人工呼吸器やECMO(人工心肺装置)といった機器が必要で、通常のICUよりも人手がかかるのです。ベッドはあっても人手がないんです。
コロナ専用の病棟が36床と、ICUでバランスを見ながら救急要請を受けています。デルタ株は感染しやすく、重症化もしやすい。
一方で、ワクチンを接種した高齢者の方は、重症化しなくなりました。今、ハイリスクなのは接種していない40,50代の方、基礎疾患のある20、30代、100キロ以上あるような肥満の方です。
じっさい、この病院に搬送されるのは、こういう方ばかり。とにかく、順番がきたら1日も早くワクチンを接種してください。
日常生活では、基本の予防を続けて。感染しないことがなによりなんですから」
谷口 俊文:千葉大学医学部附属病院感染制御部・感染症内科に所属。米国内科専門医、米国感染症専門医、
総合内科専門医・指導医、感染症専門医・指導医。 専門はHIV感染症、移植感染症や一般感染症。
URLリンク(friday.kodansha.co.jp)
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