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さらに首相が今回の訪米で狙っていた最大の政治的パフォーマンスがあった。新型コロナウイルスのワクチン確保だ。米製薬大手ファイザー社のワクチンを大量に入手し、訪米からの帰国時、なんと政府専用機で一緒に日本に運んでくるという演出を画策していたという。
日本のワクチン接種率は、G7の中で断トツの最下位であるばかりか、英オックスフォード大学運営の「Our World in Date」4月19日時点のデータによれば、先進国の集まりであるOECD=経済協力開発機構の加盟37か国の中でも最下位層だ。この事実が国民の間にじりじりと浸透し、内閣支持率にも悪影響を及ぼしつつあるが、首相はこの状況の「一発逆転」を狙っていた。
かつて小泉純一郎氏は首相在任中に北朝鮮を訪問した際、帰国時に合わせて拉致被害者を連れて帰り、内閣支持率を大幅に上げた。それに倣って、「大量のワクチンと共に帰国すれば大いに国民にアピールでき、支持率の大幅アップも夢ではない」(首相周辺)と考えたのだ。
そのため、首相は早くからワクチンを担当する河野太郎行革相らにファイザー社との交渉を命じた。だが、ファイザー側の姿勢は強気で交渉は進展しなかった。「交渉は首相と行いたい」と言い出したファイザー社のアルバート・ブーラCEOと菅首相との訪米時の直接会談も模索したものの実現せず、2人の電話会談をセットするのが精一杯だった。
その電話会談は日米首脳会談の翌朝、ワシントンで約10分間行われた。菅首相は帰国後の19日午前、首相官邸で記者団に対し、「新型コロナワクチンの追加供給を要請し、国内の接種対象となっている16歳以上、全員分について9月までに供給されるめどが立った」と成果を強調した。
だが、電話会談でブーラ氏は首相の要請に対し、「日本への迅速な供給や追加供給に向けた協議で緊密に連携したい」と発言しただけだった。いつまでにどの程度追加供給するのか、きちんと約束されたわけではなかった。
ブーラ氏は4月17日、自らツイッターで「(菅首相とは)追加供給について協議し、安全な東京五輪への期待を伝えた」とだけ書き込んだ。19日になって、EU=欧州連合に対してはワクチンを年内に追加供給することで合意したことをツイッターで明らかにしたが、日本への供給に関しての情報は更新していない。やはり供給の確約はなされていないのだ。
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