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東京五輪・パラリンピックの新型コロナウイルス対策を巡り、政府や国際オリンピック委員会などが20日、海外からの観客を受け入れないことを決めた。変異株の流入をなるべく抑え、国民の不安を解消するためだが、経済効果や国際交流など大会の「恩恵」は著しく薄れることになる。(岡本太、原田遼)
◆「観光立国」に打撃
「海外客が来なければ、大会を招致した意義の大部分が失われてしまう」。東京都の幹部が落胆した。
大会には100万人規模の観客が来日する想定だった。「外国人との交流、インバウンド、飲食店やホテルへの経済効果、東京という都市のPR…」。幹部は失うものを数えつつ、「今の感染状況では仕方ない」。
関西大の宮本勝浩名誉教授は、海外の観客の入国を見送って、国内の観客だけに限定し、さらに観客数の上限を競技場の収容数の50%以下にした場合、経済損失が1兆6258億円になると試算した。そのうち、海外客の見送り分は2360億円だった。
宮本名誉教授は「観光立国を目指す日本にとって影響は大きい」と分析する。
大会のチケット収入は約900億円が見込まれている。販売済みの海外分は63万枚で払い戻しが必要になる上、観客数の上限を50%にすれば大会収入は激減する。
◆案内役ボランティア不要に
「ボランティアを辞退しようと考えている」。こう話すのは、都内の空港や主要駅で道案内をする「都市ボランティア」として採用された閑田かんだ里枝子さん(47)=東京都調布市=だ。得意の中国語で海外客をもてなすことを楽しみにしていたが「自分が活躍できる場所がないように思う」。
東京都は都市ボランティアを3万人を採用。都幹部は「国内客だけなら、そこまでの案内役は必要ではない」と明かす。
一方、組織委員会が採用し、競技会場や選手村で活動する「大会ボランティア」も8万人いる。笹川スポーツ財団は2019年、ボランティア応募者301人の動機を調査。複数回答も含めて30.6%が「国際交流がしたい」、22.6%が「語学を生かしたい」を挙げており、海外客断念による意欲低下は必至だ。
組織委は海外客だけでなく、海外のボランティア受け入れも見送る方針。海外の採用者は過去の五輪で経験を積んだ人が多く、しっかりした「おもてなし」ができるか懸念される。
◆コロナ対策計画腰砕け
政府は昨年12月、海外客を受け入れる想定で大会のコロナ対策計画を作った。「検疫強化」に207億円、「アプリ開発などで訪日外国人の健康観察」に95億円の予算を投入した。
しかし、当初から効果を疑問視する専門家も。感染流行の長期化、感染力の強い変異株の出現で、懸念通り計画は腰砕けになった。
今回の海外客見送りについて、丸川珠代五輪相は20日、「変異株に対して検査の反応やワクチンの有効性を考えた結果」と説明した。4月には観客数の上限を決定するなど重大局面が続くが、コロナ対策と大会の両立に向けて綱渡りが続く。
東京新聞 2021年3月22日 06時00分
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