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米、領空開放条約離脱へ ロシアの違反主張
日経 2020/5/22 0:36
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トランプ米大統領は米ロの中距離核戦力（ＩＮＦ）廃棄条約も失効させている＝ＡＰ
【ワシントン=中村亮】トランプ米政権は21日、批准国の軍事施設を上空から相互に査察できる領空開放（オープンスカイ）条約から離脱する方針を固めた。米政府高官が日本経済新聞の取材に明らかにした。ロシアが一部の地域で査察飛行を制限し、条約違反が是正されないと判断したとみられる。世界的な軍縮の流れが一段と後退する恐れがある。
オープンスカイ条約の批准34カ国は非武装の航空機で相互に軍事施設や紛争地域の様子を撮影できる。関係国が1992年に署名し、2002年に発効した。冷戦期の米ロの相互不信を和らげる目的があり、米国の離脱は安全保障をめぐる米ロの対立が一段と激しくなっていることを意味する。正式な離脱は批准国への通告から6カ月後に実現する。
米国はロシアがポーランドとリトアニアに挟まれた飛び地カリーニングラードでの査察飛行を制限していると批判してきた。同地は欧州全域を射程に収める中距離ミサイルの配備先になるとの見方があり、米国が警戒を強めている。親ロシア派が実効支配するジョージア領南オセチアなどでの査察制限も問題視してきた。
ロシアが米国に反発し離脱すれば条約の実効性はなくなる。欧州諸国は軍拡に歯止めがかからなくなる事態を警戒し、ロシアに条約違反の是正を促し米国に残留を求めてきた。19年8月には米ロの中距離核戦力（INF）廃棄条約が失効している。米国の離脱は米ロ関係の悪化に拍車をかけるのは確実だ。米国の正式離脱までの6カ月間で欧州は米ロ双方に歩み寄りを促す可能性も残る。
米ロの相互不信は21年2月に期限切れを迎える新戦略兵器削減条約（新START）の延長交渉にも悪影響を及ぼす可能性がある。ロシアは無条件での条約延長に前向きな姿勢を示すが、米国はあらゆる核戦力を条約の制限対象として中国も参加すべきだと主張し、延長交渉が滞っている。