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関西の商業地はインバウンド(訪日外国人客)の増加を受けて地価が押し上げられてきたが、その構図にほころびが見えてきている。3月18日に発表された今年1月1日時点の公示地価では、ホテルの供給過剰で用地需要が落ちた京都市が全国の上昇率トップ10から姿を消した。新型コロナウイルスの感染拡大で関西を訪れるインバウンドが激減するなか、大阪市でもホテルを早期売却する動きが顕在化している。訪日客数の低迷が長期化すれば、インバウンド消費を当て込んだ店舗やオフィス需要の減退につながるのは必至で、好調だった地価の上昇に歯止めがかかる可能性がある。(黒川信雄)
■ホテル供給に過剰感
今回発表された公示地価で、関西から商業地の上昇率トップ10に入ったのは大阪・ミナミの中心部にある住友商事心斎橋ビル(大阪市中央区)など、大阪府の3地点のみ。昨年は京都市からの3地点を含む計7地点が入っていた。
京都市の地価はインバウンドの激増で、ホテル用地などの需要が増えて高騰が続いていた。ただ昨年は「ホテル供給に過剰感が出た」(谷澤総合鑑定所の真里谷和美専務)ことから伸び率が鈍化。京都市の11区のうち、東山区、下京区、南区など6区で伸び率が前年より下がった。
大阪市の商業地は好調に上昇したが、ここでもホテル需要をめぐり変化が出始めている。大阪市でインバウンドが多く集まる中央区や浪速区、天王寺区などで「ホテルの売却案件が急増している」(大阪市の不動産鑑定士事務所)というのだ。
昨年から続く日韓関係の悪化で韓国からの訪日客が落ち込みホテル供給に過剰感が出たうえ、新型コロナによるインバウンドの激減で「高い利回りを期待して小規模ホテルを開業した建設事業者などが、収益悪化で不動産価値が下がる前に売却に動いている」(同)という。
■影響は今後顕在化
公示地価は1月1日時点のもので、2月から感染拡大が本格化した新型コロナの影響は反映されていない。このため、インバウンド激減による地価への影響は、今後さらに顕在化する可能性が高い。
ホテル以外の商業地では、ドラッグストアなどの店舗や企業のオフィス需要については「通常は長期で賃貸契約を交わすため、これまでは撤退が相次ぐなどの事象は出ていない」(不動産売買の仲介・コンサルティング大手)という。
ただ、事態が長期化すれば影響は必至だ。訪日客に人気だった大阪市中心部の戎橋筋商店街や黒門市場などからインバウンドが姿を消し、訪日客向けビジネスは「壊滅的な状況」(食品店店主)だ。日銀大阪支店が3月24日に発表した関西の主要百貨店の2月の免税売上高は、前年同月比で71・9%も減少した。
堅調だった企業のオフィス需要も「景気悪化で企業が事業拡大にストップをかければ減退する」(日本総合研究所の若林厚仁関西経済研究センター長)見通しだ。
■リーマンとは差異
ただ、若林氏は新型コロナの影響について、「関西の地価の長期低迷を引き起こしたリーマン・ショックとは違う」と指摘する。金融機関が資金の貸し出しを絞る信用収縮が起きていないためだ。
平成20年のリーマン・ショック後に関西の地価が下落を続けたのは、資金繰りに行き詰まった不動産会社が早期の現金収入を得るために不動産を投げ売りしたことが原因とされる。新型コロナでは各国政府や中央銀行が信用収縮を押さえ込むための対策を次々と打ち出しており、現時点では同様の事象は起きていない。
若林氏は「インバウンドが戻るかどうかが今後の地価の動向を左右する」とみる。しかし、新型コロナの感染が各国で広がり続けるなか、早期の改善は容易には見込めない。インバウンドの流入で上昇を続けてきた関西の地価に悪影響を及ぼすのは必至の情勢だ。
5/9(土) 18:00配信
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