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植松聖(さとし)死刑囚は「重度障害者は周囲を不幸にする」と繰り返し、ゆがんだ偏見が動機の一つとなったことが明らかになった。
一方で専門家や遺族らは、裁判では社会に潜在する差別意識まで踏み込んでほしかったと訴える。
同じ頃、神戸市西区の神出病院で統合失調症などの入院患者への虐待事件が発覚した。
偏見や差別はなぜなくならないのか。
精神障害者の生活支援に詳しい神戸学院大学・総合リハビリテーション学部の阪田憲二郎学部長は話す。
相模原事件と神戸・西区の虐待事件は、精神障害者が置かれている苦境を露呈しました。
「精神疾患自体が長く差別されてきました。歴史は江戸時代の座敷牢(ろう)にさかのぼります。
明治時代初期には取り締まりの対象だったことがあり、社会から隔離されてきた苦い過去があります。
戦前に治療の必要性が認められ、専門病院が開設されましたが、戦後も鍵付きの閉鎖病棟が当たり前で、著しく人権を侵害されてきました。
不妊手術、中絶を認める旧優生保護法もそんな環境下でできました。
ようやく1980年代になり、医師らから開放病棟の必要性が訴えられ、兵庫でも増加しました」
-差別の歴史を今に伝える痕跡はありますか。
「かなり以前に建てられた精神科の病院や、入所施設のある場所を見れば一目瞭然です。市街地から離れた場所に多い。社会が自分たちの生活から引き離したかった証拠といえます。」
「私はかつて肢体不自由児の施設『ねむの木学園』(静岡県)に勤務していました。まだ身障者への差別が強い時期でしたが、
少しずつ改善されてきたと思います。特に障害者の人権に配慮した、ユニバーサル社会の考え方が浸透したことは大きかった。
福祉教育も後押ししました。小・中・高校の道徳、総合学習などで障害者の環境を理解する授業が行われていきます。
車いすに乗って街を散策したり、アイマスクを着けて歩行したり。しかし、統合失調症の妄想や幻覚など、精神疾患の症状を体験するのは難しい」
-だから理解が進まない。社会との距離を縮めるためには何が必要なのでしょうか。
「精神障害者への誤解を取り除くことが大切です。
支援が必要な社会的な弱者です。にもかかわらず地域、社会で孤立しやすい傾向にある。市民がそんな苦境を理解し、支えられる仕組みづくりが必要です」
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