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HDDからSSDへ いいことずくめ?データ消去に課題
2020年1月26日 15時30分
URLリンク(digital.asahi.com)
パソコン用の記憶媒体の切り替えが急速に進んでいる。ハードディスクドライブ(HDD)から、軽くてデータの読み取りが速く壊れにくいソリッド・ステート・ドライブ(SSD)へ。ユーザーにはいいことずくめに見えるが、神奈川県庁のHDD流出をきっかけに「データ消去」という新たな課題が浮上している。
東京都内の大型家電量販店。パソコン売り場を訪ねると、「SSD搭載モデル」の大きな文字が目に飛び込んできた。目立つ位置にSSDを説明するパネルが掲げられ、店員は「最近はSSD搭載が圧倒的によく売れている」と話す。
パソコンに取り付けられている電子記憶媒体は、この1~2年でHDDからSSDへと一気に主役の交代が進んだ。
調査会社BCNによると、昨年12月に家電量販店やネットで売れたパソコンのうち、HDD搭載は34・7%だったのに対し、SSD搭載は57・7%。2年ほど前まではHDD7割、SSD3割だったが、シェアは完全に逆転した。
磁気ディスクを使うHDDと比べ、半導体メモリーを使うSSDはデータの読み取りが速く、パソコンの起動スピードも上がる。データの保存容量ではHDDに及ばないものの、小さくて軽く、衝撃にも強いなど利点は多い。
SSDは値段の高さが普及の妨げになっていたが、近年は製造コストが下がり始めている。BCN総研の森英二チーフアナリストは「SSD搭載パソコンは今後さらに増える」とみる。
そうした中に降ってわいたのが、昨年12月に発覚した神奈川県庁のHDD流出問題だ。
大量の個人情報が入ったHDDの流出を受け、総務省は、重要な情報が大量に保存されている電子記憶媒体について物理的な破壊や磁気によるデータ消去をするよう自治体に求めた。
ただ、こうした手法はSSDには不向きだ。
HDDを中古パソコンのリサイクル業者に持ち込むと、外から数カ所穴を開けるだけの作業でデータを消すことができる。だが、内部に半導体メモリーが点在するSSDは、中をこじ開けて一つずつメモリーを壊さないと、データが消えない。強い磁気を当ててデータを消す装置もHDDには有効だが、磁気ディスクでないSSDには使えない。
都内のリサイクル業者は「SSDを破壊する専用の装置はあるが、値段が高く普及していない。手間がかかるので、SSDの破壊を敬遠する業者も多いのではないか」という。
2003年10月以降に販売されたパソコンには「PCリサイクルマーク」がついている。メーカーに連絡すれば伝票が届き、それを貼り付けて郵送することで追加の費用を払うことなく廃棄できる仕組みになっている。ただしデータ消去については「利用者の自己責任で消去していただきたい」(メーカーなどでつくる中古パソコン回収団体)としている。
破壊以外でデータを消去するためには、専用のソフトウェアを使う方法がある。パソコン上で作業するため、物理的な破壊と比べると確実に消えたか素人にはわかりにくい。それでも、電子データの復旧や消去を手がける「AOSデータ」(東京)の春山洋社長は「SSD搭載パソコンが増えてくれば、ソフトウェアを使った消去の流れに拍車がかかるのではないか」と話す。(土屋亮)