19/07/18 06:50:24.57 OB8jjhzU9.net
<米タレントの矯正下着名を撤回させた日本人が、他民族の英雄を料理の名前に冠するのはダブルスタンダードではないか>
どんな体形にもフィットする矯正下着ブランドに「Kimono」というブランド名を付けて販売する予定だ─と、アメリカの有名タレント、キム・カーダシアンが6月25日に1億4000万人ものフォロワーを持つ自身のインスタグラムで表明すると、たちまち日本から「総攻撃」に遭った。
まず日本の伝統文化の拠点であり、着物産業を抱える京都市が門川大作市長名で「着物は日本の伝統的な民族衣装であり、暮らしの中で大切に受け継がれ、発展してきた文化だ」と再考を促した。
政治家も黙っていなかった。
世耕弘成経済産業相が「しっかりと審査するよう米国特許商標庁に伝えている」と呼応。
ネットでは商標登録申請に反対する署名の数がうなぎ上りに増えて13万人を超え、ついにカーダシアンは「慎重に考えた末、ブランドは別の新しい名前で申請する」と、ブランド名の撤回に追い込まれた。
私は今回の「キモノ騒動」で声を上げた日本の一般人と識者に対して、実に素晴らしい行動を取った、と最大の賛辞を送る。
それと同時に、来年の東京オリンピック・パラリンピック開催を控え、他者の文化に敬意を払う機運が高まってきている日本で、ぜひこれを機に見直してほしい食べ物の名称がある。
日本にしかない名物料理「ジンギスカン」だ。
料理は至ってシンプルで、羊肉を鉄鍋で焼いて食べるだけ。
問題はその名である。
ジンギスカンことチンギス・ハンはモンゴル帝国の始祖で、世界帝国を建立した英雄だ。
日本の大相撲で活躍する横綱らを輩出するモンゴル国は、「チンギス・ハンの国」だと自他共に認められている。
中国のモンゴル族もまた「チンギス・ハンの子孫」を称しているし、中国政府もそれを認めている。
モンゴルだけではない。
中央ユーラシアのトルコ系諸民族であるカザフ人やウズベク人もまたチンギス・ハンの後継者を名乗っており、「ジンギスカン」という言葉もトルコ語なまりに由来するとの説がある。
そして、モンゴル人もトルコ系の人々もただ単に「チンギス・ハンの子孫」を血統上の理念に即して自任しているのではない。
彼らは「チンギス・ハン」という言葉を聞いただけで胸が躍り、精神的高揚感に包まれる。
1917年のロシア革命、そして1949年に中華人民共和国が成立するまで、ユーラシア各地の遊牧民はほぼ例外なく「チンギス・ハンの子孫」たちに統括されてきた。
端的に言えば、モンゴル人にとってのチンギス・ハンは、日本人にとっていわば「万世一系」の存在である天皇家と全く同じであり、料理の名前にしてはいけない神聖な存在なのだ。
2005年4月、私はある日本の全国紙に「〈ジンギスカン〉料理名変えて」と投書した。
その際、私の原稿には「もし、モンゴル人がウランバートル市内に『テンノウ焼き』や『テンノウ揚げ』という料理を出したら日本人はどう考えるのか」と書いた。
担当編集者は「テンノウだけはやめて」と連絡してきて、結局「日本人が尊敬する歴史上の人物の名がついた料理が出されたらどう思うか」と変えて掲載された。
これほど、日本人は自国の文化、自国の歴史をこよなく愛している。
それにもかかわらず、ユーラシアの人々が同様に敬愛し、尊敬する人物の名を焼いて食べる料理に冠している。
これこそ典型的なダブルスタンダードではないか。
昨年2月に発売された小学館の漫画誌「コロコロコミック」に、チンギス・ハンの肖像画にいたずら書きをする一コマがあった。
この件に元横綱の朝青龍が激怒し、在日モンゴル人たちは出版社前で抗議デモを行い、在日モンゴル大使館も外務省に申し入れをした。
下着名に「キモノ」を使おうとするのは「文化の盗用だ」と言うなら、日本人もモンゴルからチンギス・ハンを奪わないでほしい。
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URLリンク(www.newsweekjapan.jp)
<2019年7月23日号掲載>
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