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元号が「令和」に改まり、列島がお祝いムードに包まれているが、世間では名前の変更をめぐって混乱が広がることも少なくない。
そうした現象が、京浜急行電鉄の金沢八景駅（横浜市）を発着する逗子線の終点「新逗子駅」でいま、起きている。
京急は１月に駅名を「逗子・葉山駅」に改めると発表したが、所在地は神奈川県逗子市逗子５丁目。
隣の神奈川県葉山町には、「かすりもしていない」（逗子市民）からだ。両自治体の住民からは「葉山」の言葉の響きに敏感になる声も聞こえてくる。
駅名変更は昨年、京急が創立１２０周年を迎えたことによる記念事業の一環で、
「沿線地域の活性化を目的に」（京急ホームページより）来年３月、４つの駅で実施される。このうちの１つが「逗子・葉山駅」になる予定の新逗子駅だ。
ところが、駅前の商店街で話を聞くと、新駅名に違和感を覚える声は少なくなく、ある女性は「逗子が葉山方向の玄関口という意味では間違いではないけれど…」と苦笑いを浮かべた。
■御用邸の町
葉山町には鉄道は通っておらず、新逗子駅前からバスに乗り、１０分程度を要する。
ただ、そのバス路線も、新逗子駅から徒歩数分のところにあるＪＲ逗子駅のターミナルが起点であり、
停留所が設置されている新逗子駅前は「通過点」の一つに過ぎない。
戸惑いは葉山町民にも広がる。結婚を機に逗子市から葉山町に移り住んだという女性は「町の外に『葉山』の名前が使われることに釈然としない人は確かにいる。
昔から代々、住んでいる人は特にそう」と指摘し、「何しろ『御用邸の町』だから」と付け加えた。
葉山町は明治２２年に誕生した葉山村が前身で、２７年には皇室の別荘である「葉山御用邸」が完成した。
戦中戦後の一時期、横須賀市に強制的に編入されたことのある逗子市に対して、大正１４年に町制に移行してから、
一度も近隣の自治体と合併することなく、１世紀近くにわたって歴史にその名をとどめている。
女性によると、そうした土地柄に誇りを持つ住人のなかには、名前を使われることに納得できない向きもあるというのだ。
■町は潤うも
葉山町で商店を営む「生まれも育ちも葉山」という５０代の男性は、京急がそうしたこの土地のブランドイメージをビジネスにつなげていると説明する。
その一つが、京急が企画する「葉山女子旅きっぷ」だ。
駅で配布されているパンフレットによると、「きっぷ」は京急線の任意の駅から新逗子駅までの往復乗車券と京急バスのフリーパス券、それに提携先の店舗で使える食事券とおみやげ券のセットからなる。
横浜駅からの発売額は大人１人２８００円で、食事代なども含まれていると考えれば、かなり“おトク”だろう。
男性によると、こうした企画の効果もあってか、最近は女性を中心に葉山町を訪れる観光客が増えており、「女子旅というキーワードで、にぎわいが盛り返した。うちにもよく道を聞きに若い女性がやってくる。
京急と提携したレストランなどもだいぶ潤っているらしい」という。
だがその半面、住民のなかには土地の名前を一方的に「利用された」と感じている人もいるようだ。
葉山町では３月に海水浴シーズンの課題について話し合う会合が町長をはじめとする行政側と関係者の間で開かれたが、男性によると、その席でも駅名問題について時間が割かれたという。
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2019年5月21日 19時47分 産経新聞
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