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中国の開発した「アンチステルス・レーダー」が日本の主力戦闘機を無力化する?
週プレNEWS 2019年04月04日 取材・文/世良光弘 写真/米空軍
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テラヘルツ波レーダーを中国軍が実用化すれば、日本の主力戦闘機F-35は丸裸に......?
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中国共産党系列新聞『環球時報』の英字国際版『グローバル・タイムズ』に先日、興味深い記事が掲載された。従来のレーダーでは捕捉が難しいステルス戦闘機を発見できる"アンチステルス・レーダー"のプロトタイプを、国有企業である中国電子科技集団(CETC)が開発したというのだ。
「テラヘルツ波レーダー」と呼ばれるその新型レーダーの正体を、航空評論家の石川潤一氏が解説する。
「通常のレーダー波は、物体に当たると反射して戻ってくることで、『そこにある』ことを探知できます。しかし、ステルス機はレーダー反射断面積(RCS)をできるだけ小さくし、かつ電波吸収材を表面に塗っているので、当たったレーダー波がほとんど戻ってこない。そのため、レーダーでは捕捉できず、『そこにない』ということになるわけです。
ところが、電波と光波の中間領域に位置するテラヘルツ波は、ステルス機の表面をコーティングしている電波吸収材を透過し、その下にある機体本体の金属に当たって反射します。そのため、通常の非ステルス機と同じように探知できるようです」
このテラヘルツ波は、がん細胞を区別するケミカル顕微鏡などの医療分野や、テロ対策のためのセキュリティ検査などに利用するべく、各国で盛んに研究・開発が進んでいる。中国はこれを軍事利用することで、現在世界最強といわれる米空軍のステルス戦闘機F-22や、日本の航空自衛隊も導入したF-35を「時代遅れにする」と息巻いている、という構図だ。
ただし、これがすぐに実用化されるわけではないと石川氏は言う。
「テラヘルツ波には、大気中の水蒸気により減衰してしまうという特性がある。そのため、有効距離を延ばすには巨大なアンテナや大出力の電源が不可欠で、今回のプロトタイプもかなり大型の装置になっているはず。少なくとも現段階では、航空機への搭載は不可能のようです」
しかし、中国が本気でテラヘルツ波を実用化しようとしていることは間違いない。中国航空宇宙科学産業公社(CASIC)は昨年12月、テラヘルツ波を用いた合成開口レーダー(SAR)で地上を探知することによって、スモッグがかかっているような環境下でも、迷彩や偽装を施している目標を効率的に検知・識別できると発表している。これが本当なら、地上戦の様相は従来とは大きく異なるものになるだろう。
現在、中国は今回のものに続くステルス機対策レーダーの第2世代プロトタイプの開発に取り組んでいるようだ。石川氏はこう指摘する。
「将来的には次世代半導体を使うことでテラヘルツ波レーダー装置の小型化・省電力化が進むかもしれない。そうなれば、航空機に搭載することも不可能ではありません」
2019年度の中国の国防費は、前年比7.5%増の約19兆8000億円。研究開発費なども含めれば、実態はその3倍から5倍の規模になるといわれている。莫ばく大だいな予算と急速に進歩する技術力をフル投入すれば、いずれステルス戦闘機が無力化される日が来るのかもしれない。
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