19/03/25 20:32:51.36 v49N0XK19.net
※夜の政治
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家庭でも職場でも「空気を読めない」と俗世間は渡り難いが、国家は別だ。
政策が「空気」で決まるようなら、その国は自滅しかねない。消費税増税はどうだろうか。10月に税率を10%に引き上げるべきという「空気」が政官学とメディアを覆っている。
「空気」とは何か。評論家、故山本七平さんの「『空気』の研究」(文春文庫)によれば、「非常に強固でほぼ絶対的な支配力を持つ」判断の基準をさす。太平洋戦争時、必ず失敗するというデータを無視した戦艦大和の特攻出撃を例に、「『空気』に順応して判断し決断し(中略)客観情勢の論理的検討の下に判断し決断しているのではない」と述べ、失敗の責任を問われない日本の「空気」に切り込んだ。
消費税率は平成9年度、26年度に引き上げられたが、いずれも強烈なデフレ圧力を招き寄せて経済を停滞させた。安倍晋三首相は10%への引き上げは2度延期したのだが、「予定通りの実施」を口にせざるをえない情勢が続く。
拙論は空気を読まない。首相に近い自民党有力議員はあきれ顔で「田村さん、10月10%実施は決まった過去の話よ」。3度目の延期は念頭にもない。国会の議論はもっぱら社会保障財源にどう使うかで、のんびりしたものだ。
増税反対を表明する立憲民主、国民民主両党は、消費税率8%、10%への2段階引き上げを目指す「3党合意」を主導した野田佳彦政権時代の旧民主党が母体だが、増税が引き起こした災厄に何の反省もない。「与党の時に進めていた政策を、野党になったら、反対する。気持ち悪くてしょうがありません」(元民主党議員)と元同僚から愛想をつかされる始末である。
政界のみならず、財界、経済学者、メディアの多数派を取り込み、増税の空気をじっくりと醸成してきた財務省は悠然と高みの見物を決め込んでいる。同省某幹部は「安倍総理が増税先送りを決断しても、新年度予算の関連項目の執行を凍結すれば済むので、予算組み換えで大混乱することはないでしょう。ただし、その場合、実施を公約してきた以上、政治責任を問われるかもしれませんね」とグサリ一言。
安倍首相は教育無償化や子育て支援の財源に増税による収入の一部を回すことや、軽減税率、ポイント制導入などで増税による消費者への負担減にもぬかりはないと再三再四にわたって表明してきた。首相は自ら発する言葉で自らを縛った感がある。
安倍首相はそれでも増税推進という「空気」を突破できるだろうか。拙論は日本経済再生というアベノミクスの原点に回帰すれば可能とみる。
グラフを見よう。消費税率を3%から5%に引き上げた9年度以降の、8年度水準に比べた消費税収と消費税負担を差し引いた正味家計消費の増減額の推移である。
家計消費に「正味」と付けたのは、国内総生産(GDP)統計上の「家計最終消費支出」が消費税の影響を正確に反映していないからだ。同支出はマイホームを持つ家計が家賃を自らに支払っていると仮定し、みなし家賃(「持ち家の帰属家賃」)を合算している。みなし家賃はナマの消費とはいえない。GDP2次速報によれば、30年(暦年)の「家計最終消費支出」297兆円のうち帰属家賃は50兆円にも上る。
あぜんとさせられるのは正味家計消費は9年度、26年度の増税後、ともに強烈な下押し圧力を受けている。増税分の支払いを除くと、正味家計消費は8年度の水準に比べ水面下に沈んだままだ。8年度に比べ、30年度、消費税収は14・7兆円増え、正味家計消費は7・8兆円増える見込みだが、増税分の負担を考慮すれば正味家計消費は同6・8兆円も少ない。家計は22年前に比べ100円消費を増やしたとして、200円近い消費税を多く支払う計算になる。
この間2度、消費が水面上に浮上する勢いが出たが、19年度はリーマン・ショックで押しつぶされた。26年度は税率8%への引き上げ実施とともに急激に落ち込み、アベノミクス効果は吹き飛んだ。リーマンという外部からのショックではない。消費税という人為による災厄である。
最近はようやく家計消費が持ち直したというのに、今秋に増税リスクをまたもや冒そうとするのは無謀としか言いようがないではないか。
税率10%というかつてない重税感という別の「空気」が家計を追い込む。脱デフレ、日本経済再生の道は閉