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中国で5日に開会する全国人民代表大会(全人代)を、切実な思いで見守る人たちがいる。国の一人っ子政策に従い、その子に先立たれた「失独者(一人っ子を失った者)」だ。その数は100万世帯以上とも言われ、中でも老いた失独者は物心両面で苦しんでいる。
中国の高齢化は今後、日本をしのぐ速さで進み、その規模は世界に類を見ない。中国の65歳以上人口は昨年末時点で1億6658万人(総人口の11.9%)。国連推計によると、2025年に高齢社会(同14%超)、36年に超高齢社会(同21%超)を迎える。
中国では子どもが親の老後を養う価値観が根強く、介護制度などのセーフティーネットが未整備だ。頼る者のない失独者の苦境は、国が豊かになって福祉制度が整備される前に高齢化が進む「未富先老」社会の縮図と言える。
北京市朝陽区に住む失独者の楊文娟さん(66)は04年のクリスマスの夜、23歳の一人娘を自動車事故で亡くした。美しく利発な自慢の娘はモデル事務所と契約したばかり。「中国では子どもが全て。失えば何もなくなる」。交友関係を断ち、引きこもるように暮らした。
間もなく楊さんの夫(68)が脳梗塞(こうそく)などで入退院を繰り返すようになった。現在、自宅から徒歩十数分の介護施設に入所し、楊さんが毎日通って体が不自由な夫の世話をする。「自分の時間など少しもない」。楊さんが目を落とした。
夫妻の収入は年金が月8000元(13万円)。夫の施設費は全額自己負担で月5400元(9万円)。医療費負担も重い。区から失独世帯向けの月720元(1万2000円)の支援金を受け取っているが焼け石に水だ。
北京市には施設入居費を一部補助する制度はあるが、指定された施設に限られる。補助を差し引いても高額過ぎたり、順番待ちが必要だったりして、楊さんは利用をあきらめた。楊さんの友人で、同じ区に住む失独者の女性(57)は「当事者の現実にそぐわない支援策も多い。役人が上に実績を報告するために形だけを整えている」と訴えた。
待遇の改善を訴えようにも、習近平指導部は社会統制を強化し、民間の権利運動への締め付けを強めている。失独者による陳情活動は当局から阻止され、民間団体の支援活動が「社会を不安定にする」として妨害された事例もある。
失独者を生んだ一人っ子政策は3年前に撤廃されたが、教育費負担の重さなどから「祖父母4人、親2人、子1人」の家族構成は今後も主流とみられる。綱渡りのような老後は、失独者だけでなく社会全体の課題だ。政府も「介護の社会化」に向け、20年に全国で公的介護制度の枠組みを確立する計画を打ち出すが、財源、人材の確保などの課題が山積する。
「子どもは一人だけが良い。政府が老後をみる」。一人っ子政策の時代、街角に躍った政治スローガンを、楊さんは今も覚えている。「なぜ約束が果たされないのか。我々が死に絶えるのを待っていように思える」。抑えた口調が絶望の深さを物語っていた。【北京・河津啓介】
3/4(月) 23:26
毎日新聞
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