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キャッシュレス化進む米首都ワシントン、取り残される低所得層
2018年11月25日 10:00
発信地:ワシントンD.C./米国 [ 米国 北米 ]
中略
■キャッシュレス化で取り残される人々
企業は、キャッシュレスで利益を得るが、消費者に隠れた費用負担はあるのだろうか?
手数料や技術インフラ整備などの費用は、消費者が負担することになるとエンジェル氏は指摘する。これについて同氏は、キャッシュレス決済から取り残される人々への倫理的配慮にも注意が必要と述べる。
ワシントンので働くブルーカラーの30代男性は、AFPの取材に「クレジットカードを持っていない人を隔離するようなものだ」と述べ、キャッシュレス化について消極的な考えを示した。
連邦準備制度理事会(Federal Reserve Board)の統計によると、米人口3億2500万人超のうち、銀行口座を持っていない人は1300万人に上る。また、銀行口座を持ってはいるものの、小切手換金業者や郵便為替などノンバンクのサービスを利用している「アンダーバンク」と形容される人々も全人口の18%を占めている。
この数値をワシントンのケースに当てはめると、銀行口座を持っていない世帯は3万7000世帯、アンダーバンクでは7万2000世帯となる。小売業がキャッシュレス化されると、首都だけでもこれだけの世帯が取り残されることになるのだ。
この数値をワシントンのケースに当てはめると、銀行口座を持っていない世帯は3万7000世帯、アンダーバンクでは7万2000世帯となる。小売業がキャッシュレス化されると、首都だけでもこれだけの世帯が取り残されることになるのだ。
ワシントン市の保険・証券・銀行局のコミッショナー、スティーブン・タイラー(Stephen Taylor)氏は、「残念なことに、銀行口座を持っていない人の多くは貧困層または有色人種だ」と指摘する。
同氏によると、銀行口座を持たない理由としては、教育不足、金融機関に対する不信感、高額な利用手数料などが考えられるという。同氏は、金融機関とそのサービスを十分に享受できていない共同体とをつなぐプロジェクト「バンク・オン・DC(Bank on DC)」の幹部も務めている。
地域住民のファーガソンさん(52)は、ワシントンがキャッシュレス化すれば、高齢者や10代の若者、金銭的に余裕がない人が置き去りにされてしまうと懸念を示し、「現金を受け付けないビジネスは、これらの人々の生活の妨げになる。彼らは実物を見ないと、やりくりができない」と述べた。
■キャッシュレス化に対する怒り
お金についての教育を推進するNPO「キャピタル・エリア・アセット・ビルダーズ(Capital Area Asset Builders)」のジョセフ・ライトマン・サンタ・クルーズ(Joseph Leitmann-Santa Cruz)さんは、次のように指摘する。「キャッシュレス化は、『低所得で銀行口座やクレジットカードを持っていない人は、うちのビジネスの客ではない』と言っているようなものだ」
メリーランド州ボルティモア(Baltimore)近郊にあるビーガン(完全菜食主義者)レストラン、ランド・オブ・クッシュ(Land of Kush)は、一時期キャッシュレス化を試みたが、すぐにやめた。
レストランのオーナーであるブラウンさんは、昨年に武装した強盗に押し入られたことをきっかけに店をキャッシュレスにしたが、その試みは1週間も続かなかった。
ブラウンさんは、「ここはアフリカ系アメリカ人向けの店で客層もさまざま。中には、銀行口座を持っていない人もいる」と述べ、「キャッシュレス化に激怒した人も一定数いた。客の3分の1を失う余裕はうちの店にはない」と続けた。
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