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2018年11月22日 9時15分
プレジデントオンライン
筑波大学の構内に“茨城最強のカフェ”がオープンした。その隣にあるのは、屋外テラス席と無料Wi‐Fiコーナーを備えたスーパーだ。どちらも誘致したのは大学側。施設使用料と売り上げの一部が大学に支払われる仕組みで、大学は「受験生へのアピールにもなる」と説明する。知名度の高い国立大学が企業誘致に力を入れる背景とは―。
■茨城最強の「サザコーヒー」が出店
10月1日、茨城県つくば市の国立大学法人・筑波大学のキャンパス内にカフェがオープンした。出店したのは、同県ひたちなか市に本店がある「サザコーヒー」。同市内に進出した「スターバックス」や「コメダ珈琲店」よりも繁盛し、隣市のJR水戸駅構内では、近くに店舗を構えるスタバをしのぐ“茨城最強のカフェ”だ。
来年で創業50年のサザコーヒーは、14店ある店舗のうち、10店が茨城県内にある。これまでも筑波大と連携し、共同開発した「筑波大学アリアンサエステートコーヒー」も2016年10月から販売する。同大・芸術系准教授の原忠信氏がパッケージデザインを手がけたコーヒーだ。だがキャンパス内に店舗を出すのは、もっと大がかりな取り組みだ。
■グローバル訴求の「憩いの場」
大学構内のカフェは「サザコーヒー 筑波大学アリアンサ店」という。この店名にも双方の思いが透けて見える。今回の誘致を推進した同大の関係者はこう語る。
「筑波大学は、グローバル戦略と世界展開力を掲げています。その一環として、ブラジルのサンパウロ市内にオフィスを開設するとともに、サンパウロ大学、サンタ・クルス病院と協定を締結し、ブラジルにおける教職員、学生の研究・教育交流を深めてきました。そして、サンタ・クルス病院の石川レナット理事長が所有するアリアンサ農園の、香り高いコーヒーをサザコーヒーにお願いして商品化したのが2年前。そうしたご縁もあり、今回のカフェ出店を進めてきました」(事業開発推進室長の山田哲也氏)
サンタ・クルス病院は1924年の在ブラジル「慈善協会」の設立が前身で、開業100年近い。以来、当地の日系人と関わりの深い名門病院だ。石川理事長は日系大手電機メーカーのブラジル支社長も務め、同病院の改革を進めた経営者だ。南米コロンビアに自社農園を持つサザコーヒーがアリアンサ農園の栽培指導も行い、ストーリー性のある商品に仕上げた。
それがカフェ開業に至った理由は、緑地を借景にする「憩いの場の提供」だという。プレイスメイキング(公共空間の活性化)やサイトプランニング(敷地計画)が専門の大学教員も積極的に関わった。
「私はつくば市の街づくりにも携わりました。現在、市がめざすのはプレイスメイキングです。その一環で『憩いの場が街に開く』を掲げ、つくば駅前の商業ビル、BiViつくばの景観や設計にも関与し、サザコーヒーに1階の重要な角地に出店していただきました」(芸術系准教授の渡和由氏)
景観のグランドデザインを描き、それに賛同する地元の人気店を各施設に誘致してきた。
■地場スーパー「カスミ」も口説いた
実は構内にはサザコーヒーと林立し、地場のスーパー「カスミ筑波大学店」が出店。茨城県内に102店(筑波大店含む)のほか、千葉県、埼玉県、栃木県、群馬県、東京都に合計187店を展開する。大学にとって誘致交渉はカスミが先で、学内事情とも関係していた。
「本学には世界各国の外国人留学生が、学群生(一般の大学における学部生)や大学院生、研究生、そして教員など2000人以上いて、店のすぐ近くに留学生寮もあります。そうした留学生の日常の買い物となる場所をつくりたかった。そこで3年前に地元のカスミさんと交渉したのですが、難航しました。企業側にとって大学への出店は、夏休みなど長期の休暇も多く、学内が閑散として売り上げ見通しが立ちにくいからです」(山田氏)
結局、学生のキャンパスライフの支援、教職員の福利厚生となる商品・サービスの提供だけでなく、地域住民も立ち寄れる店をめざして賛同。店舗デザインも協議して開業した。
カスミの店内は、すべてがセルフレジとなっている。イートインコーナーにはフリーWi‐Fiが使え、スマートフォンの充電器シェアリングサービスも備えた現代型の造りだ。全体としては商品構成豊かなスーパーだが、入口にチョコボールやミニガムなど「カップコーナー」と名づけた量り売り菓子がズラリと並び、外国の店舗のような雰囲気も醸し出す。
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