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【ニューヨーク=上塚真由】米東部ペンシルベニア州のシナゴーグ(ユダヤ教礼拝所)で27日に起きた銃乱射事件は、宗教や人種への差別が絶えない米社会の病巣を浮き彫りにした。ユダヤ教徒を標的にした憎悪犯罪(ヘイトクライム)は増加傾向にあり、ユダヤ系の米人権団体「名誉毀損(きそん)防止同盟(ADL)」によると、反ユダヤ的行為は昨年、前年比で6割近くも増えたという。
米メディアによると、白人のロバート・バウアーズ容疑者(46)は事件現場で拘束された際、「ユダヤ人は人々を虐殺している。すべてのユダヤ人を殺害したかった」と話したという。当局は、容疑者が強い憎悪を抱いた背景などについて調べを進めている。
ADLは11人が死亡した今回の事件について「ユダヤ人を狙った米国で過去最悪の事件」と指摘した。ADLの統計では、2017年に発生した反ユダヤ的行為は1986件に上り、16年から57%も増加した。
中間選挙を前に問題となっているのが、ソーシャルメディアでの反ユダヤ主義の陰謀論などの広がりだ。米メディアによると、爆発物が送付された事件の被害者でユダヤ系の著名投資家、ジョージ・ソロス氏は極右の過激派から「中米ホンジュラスの集団移民を財政支援している」とソーシャルメディアで執拗(しつよう)な攻撃を受けたという。ソロス氏側は支援を否定している。
バウアーズ容疑者も事件前に、「(移民という)悪の侵入」を許しているのはユダヤ人だと主張する陰謀論などをソーシャルメディアに書き込んでいた。
米紙ウォールストリート・ジャーナル(電子版)は28日の社説で「バウアーズ容疑者は単にユダヤ人を憎んでいた。不合理な憎悪は人類最古の感情の一つだ」と指摘。ただ、ADLのジョナサン・グリーンブラッド代表は米メディアに対し、ネオナチを主張する白人至上主義者が米社会で見過ごされていることが背景にあると指摘し、「反ユダヤ主義は(社会の)片隅から主流へと変わってきた」と危機感を募らせた。
産経新聞 2018.10.29 18:26
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