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2018年4月1日 朝刊
政府は六日にも「働き方」関連法案を閣議決定し、国会に提出する方針だ。労働時間に関する厚生労働省の不適切なデータ処理問題を受け、裁量労働制の対象を拡大する部分は削除するが「残業代ゼロ制度」と批判される高度プロフェッショナル制度(高プロ)の創設は堅持し、今国会での成立を目指す。政府は労働者の権利を守るための法案と説明するが、なぜ、長時間労働を助長しかねない内容が盛り込まれたのか。その経緯を検証した。 (我那覇圭、肩書は当時)
二〇一四年四月二十二日の首相官邸。政府の産業競争力会議の民間議員を務める長谷川閑史(やすちか)・経済同友会代表幹事は、経済財政諮問会議との合同会議で「個人と企業の成長のための新たな働き方」と題する資料を示した。労働時間でなく、成果で報酬を支払う制度創設が明記されていた。高プロの原型だ。
競争力会議は一三年、裁量労働制の対象職種を広げる案をまとめ、政府はその方針を盛り込んだ「日本再興戦略」を閣議決定した。裁量制は実労働時間でなく、あらかじめ労使で決めた時間を働いたとみなす制度で「長時間労働につながる」との指摘がある。高プロはさらに進め、時間規制をなくす新形態。二年連続で労働規制の緩和策を打ち出した。
長谷川氏の資料には、高プロの対象者は年収一千万円以上との例示があった。会議では、労働政策の責任者として臨時に出席した田村憲久厚労相が「医師は年収一千万円以上もらっているが、時給換算では最低賃金に近い人もいる。医師のような働き方を助長する」と懸念を表明。だが、推進派の民間議員から「企業の競争力向上に必要不可欠」などと賛成論が続出した。
政府は二カ月後、高プロを盛り込んだ「日本再興戦略改訂」を閣議決定。安倍晋三首相は「直ちに実行に移す」と宣言した。
首相は一二年十二月の政権復帰後、経済成長を最優先し「世界一、企業が活躍しやすい国を目指す」と公言。官邸主導で成長戦略を検討する会議を次々と立ち上げた。与党や省庁を通さず政策を決定する「ブレーン型」の手法だ。
中核が産業競争力会議。首相が議長を務め、民間から財界首脳や学識者ら十人が名を連ね、矢継ぎ早に規制緩和策を打ち出した。
競争力会議に労働側の代表はいない。労働法制の議論を担うのは厚労相の諮問機関で、労使双方と公益代表の三者で構成する労働政策審議会だが、蚊帳の外だった。田村氏は「競争力会議から提案が出てくるたびに内容を分析し、次に出席を求められた時に発言するしかなかった」と振り返る。
労政審で高プロの審議が始まったのは、競争力会議がレールを敷いた後の一四年七月。労働側は「労働者の健康と命を守る時間規制をほぼ外す内容だ」などと反対したが、年明けに容認を答申。政府は一五年四月、裁量制拡大と高プロ創設を盛り込んだ労働基準法改正案を国会提出した。
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★1:2018/04/01(日) 09:22:14.46
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