18/03/22 22:42:43.33 CAP_USER9.net
花粉を水に変えるマスクが宣伝されている、というのがTwitterのTLに流れてきたので確認してみた。
花粉って、炭素や水素や酸素以外に窒素や硫黄も含まれているはずのものである。元素転換でもしないと水にはならんだろう。この意味で、花粉を水に変える、というキャッチコピーは明白な誤りである。
そうは言ってもキャッチコピーなんだから盛るのはよくあることだから表現がつい極端になったのだと善意に解釈することにして、なにがしかの効果はあるのか?ということを考えてみる。このとき、根拠になるのは、広告ではなく、実験結果を示した学術論文ということになる。探してみたら、 岡崎 成実「アレルギー性鼻炎及び花粉症に対するハイドロ銀チタンシート (HATS)の臨床的有用性の検討」社会医学研究.第 34 巻 1 号.p.55というのが見つかった。
やっていることは、新規に開発したハイドロ銀シート(酸化チタン、銀、ヒドロキシアパタイトで作った光触媒とされている)を含んだコヨリを鼻に挿入して、花粉症に効果があるかどうかを調べるという試験である。
この論文であるが、なんで雑誌に掲載されたのかが謎で、研究論文としてはお粗末この上ない。
論文には、図1,図2として、HATSの反応メカニズムが書いてある。ところが、この図の出典の記載がどこにも無い(普通は図のキャプションの所に書く。そうでないなら当該論文中の成果の場合なので,図のもとになった研究内容が論文の方に書かれているべき)。酸化チタンが光触媒になるという文献は引用されているが、この論文では酸化チタンではなく、新規に開発したHATSを使っていて、光無しでも触媒反応が起きることを前提にしている。そうであるなら、HATSが触媒反応をすること自体を確認した研究が存在しなければならず、その結果が書かれた文献が引用されているべきなのに、どこにも見当たらない。もっともらしい反応の図が描いてあっても、実際にその反応が起きることが確認されているかどうをかたどれない。つまり、この論文を根拠にする場合,花粉症対策の大前提となる、その材料とその条件で化学反応を触媒するか?がそもそも未確認であるということしか読み取れない。
学生のレポートだったら、図1と図2の根拠となった文献を記せ、という理由で再提出させるレベルである。
商品化するなら手順としては、
(1)HATSが試験管内で光なしで花粉を分解していることを確認
(2)HATSの量と分解できる花粉の量、つまり全体としての反応速度の確認
(3)マスクにして空気といっしょに花粉が来た場合に分解されることの確認、この試験は実際の使用状況と近い条件で行う。
(4)実際にマスクをヒトで試して確認
を順番にやらないといけない。今のところ(1)と(2)のソースに辿り着けないし、確認がコヨリというマスクとはかけ離れた条件なのに、いきなり(4)を主張してマスクを売る話になっている。これでは全く話にならない。
なお,この材料が,バクテリアを不活性化するという論文はある→URLリンク(www.ncbi.nlm.nih.gov)
URLリンク(www.cml-office.org)