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イネ「ゲノム編集」 野外で初栽培 実用化ルールは遅れ
毎日新聞2017年5月31日 11時26分(最終更新 5月31日 12時03分)
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つくば・農研機構
遺伝子を自在に改変できる新技術「ゲノム編集」を使ったイネの野外試験栽培を、茨城県つくば市の農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)が始めた。ゲノム編集を用いた農作物の野外栽培は国内では初めて。実用化に向けた一歩で、収量の大幅な増加が期待されている一方、遺伝子組み換え作物として取り扱うかどうかを含め、国のルール作りは遅れており、スムーズに普及するかどうかは未知数だ。【千葉紀和】
今回のイネは、外部から導入したハサミ役の遺伝子を使って二つの遺伝子を働かなくさせた。植物ホルモンのバランスを変えることで、穂に実るもみの数を増やし、米粒自体も大きくする。農業発展や輸出拡大を狙う国の戦略の一環で、最終目標は収量の5割増だ。
国が専門家の意見を踏まえ4月に承認。農研機構が隔離された実験用ほ場で5月23日に苗を植えた。10月に収穫し、狙った効果や周囲への花粉の飛散、目的外の変化の有無を確かめる。
一方、国内では、ゲノム編集を使った作物が、遺伝子組み換え作物の環境放出などを規制する法律(通称カルタヘナ法)の対象となるのかが不明確だ。今回のイネは栽培過程で外部から遺伝子を導入するため、現時点では遺伝子組み換え作物扱いだが、交配を重ね、食用の最終段階では外来遺伝子は残らず、自然の突然変異体と変わらないという。最終産物に導入遺伝子が残らない場合の扱いは世界でも争点となっており、ニュージーランドは規制対象とする一方、アルゼンチンは規制しない姿勢だ。日本では本格的な議論が始まっていない。
国内では遺伝子組み換え作物への抵抗感が根強い。今回の試験栽培でも「他の作物との交雑の恐れがある」(生活クラブ連合会)など、消費者団体から懸念の声が上がる。一方、食の安全・安心財団の唐木英明理事長は「導入遺伝子が残らない場合は自然変異と何も変わらない。プロセスばかり気にするのはおかしい」と指摘する。
ゲノム編集イネを担当する農研機構の小松晃・上級研究員は「中国は破竹の勢いでゲノム編集イネ開発に取り組んでおり、国際競争は意識している。試験栽培で成果を上げ、正確な情報発信にも努めたい」と話す。
ゲノム編集
生物の遺伝子を効率よく改変できる技術。近年開発された「クリスパー・キャス9」という方法は比較的容易で精度も高いため、爆発的に普及した。受粉せずに実がなるトマトや芽にできる毒のないジャガイモ、発育のよい養殖魚など画期的な品種改良への応用が期待されているほか、遺伝子異常が原因の病気の治療を目指した研究も進んでいる。