07/12/27 00:59:06
妹の手を握った。
「せっかくの美貌が台無しやわ」
おどけたような妹の口調に鈴原トウジは何も返す事が出来なかった。
歯痒い。何もしてやれない自分自身がどうしようもなく無力に感じられた。
妹と目が合った。
「お兄、なんで泣くん?」
気付かぬ内にトウジの目端から涙が零れてしまっていた。
マズイ、と思い慌ててジャージの袖で拭うも遅かった。
「なんで、そないな顔するん? ウチ、そんなにカワイソウなん?」
「そ、そないな事あらへん。お前は―」
続く言葉など出てこなかった。
何も言えない。何一つ出来ない。たった一人の妹を慰める事も出来ない。
妹はそれから泣いた。
疲れて寝るまで泣き続けた。
トウジはただその小さな手を握ることしか出来なかった。
誰のせいだ。妹をこんな目に合わせたのは一体誰だ。
トウジには今度、転校してくるエヴァパイロット以外、怒りのはけ口が見当たらなかった。
たとえ、それが自己満足だとしても。