08/01/11 21:23:27
ああ学校こそ一番の憂鬱の種でした
あのがやがやした喧騒に身を投げ出すくらいなら一日中プラグの中で怪獣を相手にしてる方がましとさえ思っていました
あの駅での一件以来、どういうわけか鈴原は自分に節介を焼くようになり、何かと話しかけてくるようになったのです
元々よくわからなかった彼はますます訳の分からない存在になり、自分としてはまたやっかいなことになったなと彼から逃れるすべを終始考えていたのです
それでもあの同居人よりは幾分つきあいやすい人なのだと最近では思えてきました
鈴原はその話し方に似合うあっけらかんとした性格で、いつもオーバー気味に購買のパンのことやイインチョがうるさいなどということを止めどもなく喋り続けるような奴でした
会話中のたった一瞬のがらんとした間にさえ恐怖を抱く自分にとっては、彼はとても好都合だったのです
しかしやっぱり学校というものはひどく窮屈な場所で、自分は常に背中に冷や汗をかきながら当たり障りのない顔でニコニコしてるほかなかったのでした
しかも、ああなんと言うことか、自分はある種の羨望のような目で見られていたのです
それはひとえにあのデカブツのパイロットであることが原因のようでした
自分にとって羨望されるというのは高く高くつり上げられ、ある時ぷつっと糸を切られ真っ逆さまに落とされるという意味でしたので、まさに恐怖だったのです
机の周りに集まられ、やれどうやって選出されたのか、あれそれはどういう仕組みなのかと聞かれ、自分はばれないようにとぼけてみせ周囲の笑いをとるのですが、内心はカチカチと歯をならして冷や冷やしているのです
そしてきらきらした女子の目を見て、ぎゃっと悲鳴を上げそうになりながら早く始業のベルが鳴るのを待っているのでした
そういった中でも一人静かに席に着いているのが綾波でした
もちろん彼女は自分と同じくあれのパイロットなので興味がないのでしょうが、彼女はほとんど朝から放課後まで席を立つことはなかったような気がします
そして人と話すことも全くと言っていいほどなかったのです
周りの人垣の隙間から見える綾波はのんきに(少なくとも自分にはそう見えたのです)窓の外の校庭を眺めていました
自分は彼女を羨ましく思ってましたが、彼女のように常に素っ気なくクールに振る舞うのは小心者の自分にはとうてい無理だと諦めてました