08/01/21 08:01:07
GJ!
112:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/01/21 15:56:20
いい話だった。
113:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/01/21 17:14:31
乙
114:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/01/21 17:51:40
あ~・・・GJ!!
続きが気になるなぁwwww
115:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/01/21 19:39:04
>>111-114
ありがとうございます
知ってるとは思うけど、この話はこれで完結してます。続きはご自由に
またちょくちょく投下するかもしれないんで、そのときはよろしく
116:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/01/21 23:00:29
久々のGJ
117:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/01/22 21:07:13
すみません、現在LAS系スレ投下SSで
転載板に転載されてない作品をまとめたサイトを作っているのですが
URLリンク(las.nobody.jp)
↑こちらの作品は他のどなたかの作品を転載投下されたものなのでしょうか?
この作品について「転載乙」というレスが付いていたので…
118:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/01/23 16:36:15
わかんないけど、転載ガンバルンバ
119:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/01/24 11:33:04
俺もよくわからんけど
問題があるなら
わかった時に消せばいいんでない?
柔軟にいこう柔軟に
120:117
08/01/24 19:49:52
>118 >119
そうですね柔軟に逝きます
ありがとうございますた
121:パッチン
08/01/25 22:08:17
なんか久しぶりにポトリします
どこに投下するかかなり悩んだんですが、いつもお世話になってるのでここに失礼します
内容は・・・まぁ、投下先を悩むような内容ですw
122:パッチン
08/01/25 22:09:51
サードチルドレンが来る…
オーバーザレインボーにて、潮風をいっぱいに浴びながらアタシは騒がしくなった空を見上げる
「はんっ!実力の違いというモノを見せつけてやるわ!!このアタシがエースパイロットなんだから!!」
上空をうろついていたヘリがゆっくりと着陸する
「・・・来たわね」
あそこにサードがいる
アタシのパイロット仲間、そしてライバルになる存在…
ヘリから1人の人間が降りてくる。おそらくミサトだろう
少し緊張で早くなる鼓動をごまかす為、なるべく自然体な表情で近づいていく
「ハロ~ミサト♪」
「アスカ久しぶりじゃない。ずいぶん背が高くなったんじゃない?」
「まぁね♪そういうミサトは・・・ちょっと老けた?」
「あはは…まぁね」
前回会った時より、少しやつれてシワが増えた感じに見える
「どうしたの?日本ってそんなにストレスたまるの?」
「いやぁ…。日本っていうか」
アタシがミサトに疑問をぶつけていると…
「外人さんだああああああ!!」
脳天気な声を撒き散らしながらヘリから飛び出してきた謎の少年が、アタシの両手をギュッと握りながら、ピョンピョン跳ね回りだした
123:パッチン
08/01/25 22:11:34
「え?え!?なによ!?」
「はろ~はろ~!ミサトさん!この子誰なんですか?」
「こ、こっちのセリフよ!!ミサト、コイツ誰なのよ!!」
まさかと思うが…
「あ・・・。セカンドチルドレンの惣流 アスカ ラングレーよ
こっちは、サードチルドレンの碇シンジ君…」
うぁ!!大体予想してたけど、やっぱコイツだった!!
「わ、わぁ!すごいや!本当に目が青いんだ!!すっごく綺麗だね!!」
アタシが衝撃をうけている間にグイグイと顔を寄せてくるサード
「髪も茶色で格好良いや!!赤い髪留め可愛いね♪僕も赤色好きだよ」
「あ…。ちょっ!!・・・あぅぅ…」
か、顔が熱い…。周りに人が大勢いて恥ずかしいのもあるが、こんなに男の子に顔を近づけられた経験なんか無い
何より黒い瞳をキラキラ輝かせながらあんなにベタ褒めされたら、いくら容姿に自信持ってるアタシだって顔が赤くなって当然で…
「わ、わかったから一旦離れなさいよ!!しっかり挨拶もしてないのにさぁ!!」
「あ!うん、そうだね。ちゃんと挨拶しなきゃ」
そう言うとサードは更にグイッと顔を近づけ…
「え?え??・・・んぐむっ!!?」
ちゅぅ~っとアタシの唇に欧米的挨拶をかました…
124:パッチン
08/01/25 22:13:38
『ふわふわシンジくん』
船内の食堂
「えへへ、ごめんね。外人さんだから、挨拶はキスするのかなぁと思って…
あっ♪いただきま~すっ!!」
左手で頬に咲いた真っ赤な紅葉をさすりながら、テーブルに運ばれたオムレツセットにニッコリ微笑むサードチルドレン『碇シンジ』
「ははは、大胆な子だなシンジ君は。初対面でいきなりアスカの唇を奪うとは」
「違うのよ加持さん!あれは事故なの!!アタシの心からのファーストキスは加持さんにあげるんだから!!」
もう今日最悪!!
初唇は奪われるは、加持さんに変な誤解されるは…
しかもその元凶は、テーブルの上のオムレツにケチャップで必死になって絵を描いている
「ミサトさん見て見て!!シャムシエルのシャムちゃん描いたんだよぉ」
「もぉ!!エヴァのパイロットが使徒の絵描いて喜ばないのっ!!」
…なんかミサトが老け込んだ理由がわかった気がする
「・・・ねぇ加持さん。なんでこんなヤツがパイロットなの…?」
アタシは隣でコーヒーをすする加持さんに問いかけてみた
「ん?まぁシンジ君は初戦でシンクロ率80パーセントを叩き出して勝利しているからな」
「へ??・・・な、なんですってえええええ!!!」
125:パッチン
08/01/25 22:15:32
初戦でシンクロ率80パーセントなんて馬鹿な数字出せるワケない!!
・・・いや、現実に目の前に馬鹿が存在するワケだが
もしやこの馬鹿は本当はスゴい馬鹿なのだろうか?馬鹿を装った天才パイロットなのかもしれない…
だとしたらマズい!!
そんなヤツが相手ならアタシは絶対にエースパイロットになんかなれない!!
先程まで『ただの馬鹿』を見る目で見ていた青い瞳をギラギラに変えて、サードを見やる
「ほらケチャップかけすぎたのよ。こっち向いて」
「はぁ~い」
サードの口の周りにこびり付いたケチャップをハンカチで拭いているミサトが、殺気満載の雰囲気を漂わすこちらに顔だけ向けた
「あのさぁ…。あんまりこの子を過剰評価しないでくれる?
初戦でシンクロ率80パーセント超えたのは事実だけど、この子LCL注水した時にずっと息止めてて、そのまま酸欠で気絶したんだから…
そして気絶した途端、シンクロ率が跳ね上がってエヴァ暴走。そして勝利
あとの2戦も全部エヴァが暴走しての勝ちだったし…」
呆れ顔で言うミサトは真っ赤になったハンカチをポケットにしまうと、サードのおでこをペチリと小突いた
126:パッチン
08/01/25 22:17:29
「えへへ、だって僕泳げないし」
そう言うとニコニコ笑いながら、ポッポッと頬を赤くそめるサード
「な、なによそれ!!理由になってないわ!!アタシも訓練中にLCL濃度が原因で気を失った事あるけど、シンクロ率が上がるなんてなかったわよ!!」
「・・・・・なに怒ってるの…?
そんなにプリプリしないでよ…」
サードの先程までのフワフワな笑顔がブワっと崩れ、大粒の涙がポロポロこぼれ落ちてくる
「ちょ、ちょっと泣くことないじゃないのよぉ!!」
「ミサトさんもレッドさんもエヴァの時は怖い顔になるし…。もう嫌だよぉ…」
「わかったわよ!もう言わないから・・・」
ん?
レ?ッ?ド?さ?ん?
「誰よそいつ?レッドさんって…」
いきなり現れた謎の人物にキョトンとするアタシに、傍観していたミサトが口を開いた
「赤木博士のことよ。この子すぐあだ名で呼びたがるの…
ちなみに、あたしの事ミーちゃんとか呼んでた時期あったけど、一発殴って止めさせたわ」
…なにそれ??
なんか聞けば聞くほど『ただの馬鹿』に見えてくる
「と、とりあえずアタシも怒鳴って悪かったわ。同じパイロット同士だし気をつけるわ…」
「うん!アスカっち!」
アタシも一発ど突いた
127:パッチン
08/01/25 22:19:19
「よし、サード!ちょっと来なさい!!」
このままではコイツのペースに流されてしまう
アタシは『エースパイロットが誰であるかを見せつける』という本来の目的を遂行するため、動きだすことにした
「うんっ!お散歩だね♪」
「まぁそんな所ね。ミサト、サード借りるからね!」
「はいは~いっ♪じゃあシンジくんよろしくね~♪」
ミサトはケチャップで紅白になったハンカチを振りながら、上機嫌でサードを見送っている
そんなに疲れるのだろうか?サードの世話は…
「じゃあ加持さん。アタシ、弐号機の所まで行ってきます」
「わかった。気をつけてなアスカ、シンジ君」
「バイバーイ、カジマルさん♪」
「か、カジマルさん…」
・
・
・
「うわぁ~!赤いんだ弐号機って!」
うふふ。食いつきはバッチリね
「違うのはカラーリングだけじゃ…」
「あのねあのねっ!僕の初号機は紫色なんだよぉ!!」
「所詮プロトタイプの…」
「なんかカブトムシみたいに角が生えてるんだ!カッコイいでしょ?」
「これこそ本物のエヴ…」
「『ガオー』って鳴くんだよ!!スゴいでしょ?」
「ちょっと!!話聞きなさいよアンタねぇ!!!!」
「あれ?『ぐおー』だっけ?」
128:パッチン
08/01/25 22:20:09
中途半端ですが…。今回ここまでです
なんかごめんなさい
129:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/01/25 23:15:16
イタモノじゃなければどこでも歓迎されるんじゃない?
異性、離別とかだとどこかみたく火を噴きそうw
乙←おつじゃなくてポニーテールな(ry
130:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/01/26 02:33:34
>>117さん転載板にも途中まで転載されている(放置)パッチン氏の「二つの涙」も転載お願いします
131:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/01/26 02:38:48
>129
二行目、そーいう発想だから馬鹿にされるんだよ
132:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/01/26 03:25:42
>>131
発想も何も炎上したのは事実でね?
133:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/01/26 07:31:14
GJ
シンジの性格変えは俺シン以外では珍しいな
ぶっとび過ぎなような気もするがw
134:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/01/26 07:53:47
>>132
マジなにも分かってない発言はヤメレ
ややこしくなる
135:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/01/27 16:37:43
LASネタ投下スレ全体に暗雲立ち込めた時期に馬鹿LAS GJ!
前回イタだったから不安だったがよかった。マジでタームみたいな作風だな
136:117
08/01/31 14:01:14
>>130
LAS総合スレでも話に上がっている件もありますから
バッチン氏がそれでよければ転載いたします。
137:パッチン
08/01/31 23:36:50
駄目だ…
アタシが、『この馬鹿に弐号機の素晴らしさを伝えること自体が無理だった』と気づき始めた
・・・と、その時
どーーーーーんっ!!!!
「わわっ!地震だ!」
「バカ!海上よここは!!・・・・・まさか、使徒…!?」
けたたましく鳴り響く警報音が、アタシの予想を確信へと変えていく
「・・・チャン~~~スっ」
妙案が浮かんだ
口で言ってもわからないなら、身をもってわからせればいいのだ
弐号機の素晴らしさ、そしてアタシの華麗なる操縦を!!
「よしっサード!ちょっと来なさい!!」
「うんっ!今度こそお散歩だね♪」
「まあそんな所ね!アンタはそれに着替えて待ってなさいよ!!」
アタシは予備のプラグスーツをサードに手渡し、更衣室に走って行った
・
・
・
20分後
着替えを終えたアタシが再び戻って来ると…
「サード!!準備でき・・・ぷげぎゃっ!!!!」
着替え中のサードの白いオシリと出くわした…
「ああああ、アンタばかぁぁっ!?どんだけ着替えるの遅いのよぉ!!!」
「だって難しいんだもぉん!!ミサトさん手伝ってよぉぉ!!」
信じられないほどの鈍くささ・・・
ああああ!!!こうしてる内にも使徒が!!
138:パッチン
08/01/31 23:38:18
「もお!!手伝ってあげるから動くんじゃないわよ!!」
「わぁ~い」
アタシはサードの背後にまわり、プラグスーツの着付けに取りかかる
ったく!!なんでこんな簡単な作業が…
・・・コイツ、すごく白くて綺麗な肌してる
だいたいミサトが甘やかすから…
・・・男の子とは思えないような繊細でツルツルな背中
プラグスーツに1人で着替えることも…
・・・そして、赤ちゃんのホッペみたいにフニフニで可愛いオシ…
ベチンっ!!
「ふぎゃぅっ!」
…なんか自分を見失いそうだったので、サードをど突いて気持ちを落ち着かせる
・
・
・
一方艦内
ミサト「だ~か~ら、使徒相手にはエヴァじゃないと駄目だって言ってるでしょうがぁ!!」
髭艦長「うるさい!これはワシらの船だから、ワシらが倒すんじゃ!!」
カジマル『葛城~!ワルいが先に行くわ』
ミサト「ああああ!!あの糞男がああああ!!」
名無し「艦長!使徒が接近しています!!」
髭艦長「わはは!!海の男の底力みせてやれえええ!!」
名無しB「ダメです!艦隊が次々に沈んでいきます!!」
髭艦長「なにぃ!!使徒か!?」
名無しB「違います!!あれは・・・エヴァ弐号機です!」
139:パッチン
08/01/31 23:39:58
赤いプラグスーツに身を包んだアタシはサードを乗せて、弐号機を戦艦からぶっ放して発進した
「行くわよ~!アタシの美しい戦いぶり見ときなさい!!」
「目がまわるよぉぉ…」
ガンガン艦隊を踏み散らかしながら使徒に接近してゆき、ナイフを抜き取って、近接戦闘に備える
「ミサト聞こえる!?ケーブル出して待ってなさいよ!!」
『アスカね!わかったわ!初めての使徒戦、期待してるわよ!!』
「ミサトさぁん…。ぅぷっ……」
「わー!!吐いちゃダメなんだからねバカー!!」
『・・・大丈夫かしら』
ガションっ!
「よしケーブルOK!どっからでもかかってきなさい!!」
ナイフをビシッとかまえて海を見やると、使徒が尾ビレだけを出し、こちらに急速に接近してくる
「あわわっ、ジョーズだ!!ハリウッドだよアスカっち!!」
「『アスカっち』って呼ぶなバカ!!
はんっ大丈夫よ!あんなのアタシが華麗に受け止めてやるわ♪」
『うろたえるサードと冷静なアタシ』という状況に多少の優越感を覚えていると
・・・予想以上のスケールで使徒が飛び出した
ざばあああああ!!
「でかっ!!!!」
「ジュラシックパークだ!!ハリウッドだよアスカっち!!」
140:パッチン
08/01/31 23:41:32
「「ふぎゃああああああああああ!!!!」」
巨大お魚使徒によって海に引きずり込まれた弐号機は、海底の障害物にガンガン当たっていく
「とめ、止めてよアスカっちぃぃ!!!」
「あす、アスカっちって呼ぶなぁぁ~!!」
グルングルンとシェイクされていく中、通信装置からミサトの声が聞こえる
『2人共!ケーブルの長さが限界に達するから、衝撃に備えて!!』
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!!」
慌ててアタシはインダクションレバーをギュッと握る
「ぼ、僕はどこに掴まればいいの!?」
「もお!!適当な所に掴まりなさいよ!!」
「う、うんっ!!」
ばい~んっ!
ケーブルが限界に達したようだ…
弐号機は未だお魚使徒に喰われたまま、海中を漂い続けている
そして、その中では…
「あ・・・あああああ!!!アンタ、どこに掴まってんのよ!!エッチスケベど変態!!」
あろうことか、この馬鹿はアタシの『とんでもない所』に掴まっていたのだ
「い、痛っ!だって掴まれって言ったのはアスカっちじゃないか!!」
「ふ、ふざけるなバカバカバカぁ!!
親にも加持さんにも触らせたことのない場所をぉぉ!!!」
141:パッチン
08/01/31 23:43:10
一方艦内
ミサト「ふぅ、なんとか今はこれで時間が稼げるけど…」
髭艦長「どうするんじゃ!?このままでは、ワシらにも危険が及ぶぞ!!」
ミサト「ちょっと待ちなさいよ!今考えてるんだから!!
う~ん・・・何かいいアイデアが…」
天の声『あら、まるで釣りやな…』
ミサト「釣り?…釣り・・・。そうよ釣りよ!!」
弐号機内
「とにかくアンタが悪いんだからね!!慰謝料\100兆円払いなさいよ!!」
「ぷいっ、僕悪くないもん!!」
「あんですってぇ!!世界の女神であるアスカ様の『あんな所』を触っといて、なによその態度は!!」
信じられないデリカシーの無さ!親の顔が見てみたいわ!!
「…ぼそぼそ」
「なによ!言いたいことがあるなら、ハッキリ言いなさいよ!!」
「・・・・・僕の『あんな所』ジロジロ見てたクセに…」
「ん゛な゛っ!!?」
ポポっと頬を赤く染めて、恥ずかしそうに顔を伏せるサード
「ひ、卑怯よ!!気づいてたなんて!!」
「えっちぃ…」
「あ・・・うぅ・・・
むきーーっ!!忘れろ!!全部忘れろーーっ!!!」
「い、いたい!いたいよぉぉ!!」
『あの~?取り込み中、悪いんだけど、作戦発表していいかしらん?』
142:パッチン
08/01/31 23:44:55
「…なるほど。ようは使徒と艦隊がぶち当たる前に、口をこじ開ければいいのね?」
『そうよ、作戦は以上。簡単でしょ?』
アタシはインダクションレバーに手をかけ、ゆっくりと深呼吸する
「ええ簡単ね…。生きるか死ぬかの2択だし」
「ねぇアスカっち…大丈夫なの?」
アタシはシートの後ろで不安そうにしているサードの方に振り返ると、黒い髪をグシャグシャと撫でてやる
「ば~か。なにシケた顔してんのよ!アタシに任せときゃ心配いらないから安心しなさい!!
ミサト、作戦スタートして!!」
アタシはエヴァへのシンクロに集中するため、グッとレバーを握る
「よし、じゃあアンタも手伝って」
「え…僕もするの?」
「初戦でシンクロ率80パーセント突破したんでしょ?
なんだかんだ言って、アンタの火事場の馬鹿力に期待してんのよアタシは」
今回の作戦は操縦技術よりもシンクロ率の方が重要だし、コイツの実力を見るいい機会でもある
「わかったよ。一緒に『開け』ってお祈りするんだね?」
「期待してるからね。サードチルドレンさん」
「うん!アスカっち!!」
「なんかその呼び方に慣れてきた自分が嫌…」
そしてサードとアタシは弐号機へのシンクロに取りかかった
143:パッチン
08/01/31 23:47:30
・
開け開け開け開け…
シンクロスタートと同時に、いつもは入り込もうとしても入らない部分にアタシはズイズイと引き込まれていく…
こ、こわい!!なによコレ!!
『こっちに来なよアスカっち、もっと奥においでよ』
開け開け開け開け…
体が自分のじゃないみたいな…。フワフワしたキモチイイ感覚
これ…アンタがいるからなの…?
『さぁ?僕知らない』
開け開け開け開け…
やがて、引き込まれた暗闇の中にうっすらと光が見える…
アンタ…なんなの…?
『あ!開きそうだよ!!』
・
・
・
接触まで残り30秒
ミサト「アスカ、シンジくん頑張って!!」
髭艦長「じ、時間が無いぞ!!」
その時、突如弐号機の四つ目がギラリと光り・・・覚醒した
ミサト・髭艦長「開いたぁ!!!!」
使徒の口が開き…
ミサト・髭艦長「・・・・・あら?」
…そのまま口からビリビリと使徒の身体も真っ二つに裂けていく
そして、さけてるチーズのようになった無残な使徒の隣を、むなしく戦艦が通り過ぎていく・・・・使徒殲滅
ミサト「な、なによそれぇぇ!!?」
髭艦長「こんな作戦ではなかったハズだぞ!!」
天の声『あら、まるでアジの開きやな』
144:パッチン
08/01/31 23:49:13
その後
回収される弐号機を眺めながら、アタシとサードは肩を並べてたたずんでいる
「シンクロ率150パーセント突破だって…」
「すごいや。ジュースなら特濃だね」
「そんなことどうでもいいのよ!!今までのアタシの苦労は何だったんだって話よ!!」
アタシは、エヴァに乗るために…シンクロ率を上げるために…。この10年、血の滲むような訓練をしてきた
それなのに今日コイツと2人でシンクロした時の馬鹿みたいな数字は何なのよ!
初めてシンクロ率50パーセントを突破した日の喜びと感動を、蹴っ飛ばされたような気分になるわ!!
「もぉ~!!アタシの苦しみを返しなさいよ!!アタシは何のために頑張ってきたのよぉ~!!」
地団太を踏むアタシの隣で、未だにキョトンとした顔をしているサード
「なんでそんなにカリカリしてるの…?」
「アタシの辛く厳しい訓練の日々をアンタは無駄にしたって言ってんのよ!!」
「辛い日なんか忘れたらいいんじゃないの?」
「んぐっ…」
「昨日までがグチャグチャでも、今日嬉しい事があったんだから笑顔でいなきゃダメだよ?じゃないと笑顔になれる日が無くなっちゃうもん」
「う、うるさいわよバカ!!」
145:パッチン
08/01/31 23:50:36
「嬉しい時は笑顔でなきゃね!
えいっ♪」
サードは、にっこり顔でアタシの前に回り込み…、そのままアタシの身体にダイブしてきた
「ひゃぅあ!?」
「ハグだよ♪アメリカの人ってこうやって喜ぶんでしょ?」
なんでコイツはそんな正解か不正解か難しい知識ばっかり取り入れてんのよ!!
「えへへ、今日からよろしくね♪」
「ん・・・ぐぅ・・・」
今朝の時のように、殴り飛ばしたい気分だったが…。まあ今日はコイツのお陰で勝てた部分も少しはあるワケだし…
「・・・・・ヨロシク」
おずおずとサードの背中に手をまわしてやる
・・・赤いプラグスーツ越しにサードの体温を全身に感じる
「あ、アンタ恥ずかしくないの?こんなことして…」
アタシの体温もサードに届いてるのだろうか?
「恥ずかしくないよ。すごく気持ちいい…」
だとしたら火傷してるハズよコイツ
「・・・ばか」
アタシ…今猛烈に熱くなってるし…
146:パッチン
08/01/31 23:51:55
「・・・・・ねぇ」
アタシ…頭おかしくなったのかな…?
「なに?アスカっち?」
なんか今…
「あの・・・さぁ・・・」
なんか今この瞬間…
「・・・今朝みたいに・・・していいわよ」
チュって…
「え…?でも怒らない?」
あぁ…。多分コイツから発生する、おかしな電波にやられたんだ…
「お、怒らないわよ!!アタシが言い出したんだから!!」
でもなんだろ…この気持ち
「うんわかった…。じゃあいくよ?」
そんな自分が…
「う…うんっ」
ふわふわ心地いい…
バッチーーーーーーンっ!!!!
「ふぎゃぅ!!!!」
ビンタの方じゃないわよバカ!!!
おわり
147:パッチン
08/02/01 00:02:13
『なんかシンジにキャラつけてやれ!』と思って書いたはいいモノを…難しいなぁ…
>>136
どうぞ載せてやってください。全く問題ないので
あとどうでもいいけど、パッチンです。バッチンじゃないですw
爪切り大好きで深爪気味なのでこの名前です
いや、ホントにどうでもいいんですが
148:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/02/01 00:14:53
おー、バッチン・・・じゃなかった、パッチンさんktkr!
お疲れ!
このFF読んでちょっと前に「うつうつシンジ」なるものを考えてたのを思い出した。
いつか文章に出来ればなァ……
149:136
08/02/01 09:04:54
あれま失礼しましたw
訂正しておきます。
転載サイトはURLリンク(las.nobody.jp)になります。
150:136 ◆cLgN2Wx6G6
08/02/02 17:21:42
まとめ保管庫を勝手に作ってしまった者です。
まずお伺いを立てずに先走ったことをお詫びします。
各作品の作者様で転載の可不可をお伺い出来ませんでしょうか?
スレ住人の方がよろしければこちらで、またはサイトのメルフォでご連絡いただければと思います。
転載許可を頂ける場合で無タイトル・無記名の作品やスレ番、レス番が不明の作品は内容を簡単に併記して頂ければこちらでお探しします。
ご迷惑をおかけしますが宜しくお願いします。
サイトURL URLリンク(las.nobody.jp)
※現在は転載許可の降りたもの以外削除してあります。
尚、各スレへお伺いする書き込みを致しておりますのでマルチ投稿になってしまいますがご容赦下さい。
151:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/02/08 00:56:40
街
152:パッチン
08/02/10 20:23:59
愛するあなたに義理チョコを
2月14日。日本中がチョコレートの甘い香りに包まれるそんな日
そして、そんな日にミンミンと鳴く蝉の声に耳を傾けながら、シンジはダイニングのテーブルに汗でヘナった黒髪を擦りつけていた
「ね~アスカまだキッチン開かないの?お昼の素麺茹でたいんだけど…」
「うるさいわねぇ!アンタの分も作ってやってんだから文句言うな!」
「・・・別に頼んでないのに」
シンジは、先程から同居人の少女がチョコ作りに没頭する様子をチラチラと眺めながら、深い溜め息を吐いていた
はっきり言って、まだまだかかりそうだ。時計は2時をまわり始めているというのに
「とぅるるる~っ♪甘くて苦ぁいチョコレート♪」
「もういい加減にしてくれよ!お腹空いてるんだよ僕は!」
椅子からバっと立ち上がり、甘い香りが充満するキッチンに移動する
「なによ待ちきれないの?腹ぺこシンちゃん?」
「加持さんへのチョコはもう出来たんだろ!素麺茹でるんだから早く代わってよ!」
そう。アスカが今作っているのは同居人である碇シンジへの『どうでもいい義理チョコ』であった
そして、今朝作った本命用の巨大ハートチョコは冷蔵庫の半分近くを占拠している
153:パッチン
08/02/10 20:25:32
「朝早くからチョコ作り手伝わされて疲れてるし、とにかく僕は何か食べたんだよ!」
「ふんっわかったわよ!アンタがそんなに言うなら食事にするわ!」
先程までクリクリと混ぜていたチョコ入りボールを持ち、ダイニングに移動する
「ほらアンタもこっちに来る!」
椅子に腰掛け、何故か少し頬を紅く染めているアスカがこちらに手招きしている
「なんなんだよ一体…。素麺茹でさせてくれるんじゃないの?」
「コホンっ。いい?よ~く聞きなさいよ?」
同じく隣の席に座ったシンジにむかって咳払いを1つ
「アンタが『お腹空いたお腹空いた』うるさいから、チョコ作りを中断してあげたのよ。ありがたく思いなさい!
でも今ある食材は見てのとおり溶けたチョコだけしかないでしょ?
というワケで優しいアタシは、このチョコをアンタのお昼ご飯とすることを許可するわ!
いい?わかった?わかったわね!?」
「は、はい。ごめんなさい…」
まるで台詞のようにスラスラと並べられた言葉達にグイグイと押されてしまったシンジは、首を縦に振るしかできない
しかも真っ赤な顔でこちらを睨みつけながら話すアスカに、すっかりビビり倒してしまい、何故か謝ってしまう始末であった
154:パッチン
08/02/10 20:27:17
「よし。・・・じゃあ食べさせてあげるからこっち向きなさい」
先程まで怒鳴るように喋っていたアスカが、今度は若干顔を伏せながら、しかし明らかな上から目線で命令してきた
「へ?…い、いいよ。1人で食べるし」
「ん…。こほんっ」
またしても咳払いを1つ
「さっきまで『お腹空いたお腹空いた』とか散々文句言ってたヤツに食わせたら、どんだけ食べるかわかったもんじゃないでしょ!
言っとくけど、このチョコはアンタだけじゃなくて、ネルフの職員の人達に配る分も含まれてるんだからね!
だからアタシがちゃんと調節出来るように、食べさせるって言ってんのよ!
いい?わかった!?わかったわよね!!?」
「は、はい…。ごめんなさいぃ…」
いつになく早口かつ饒舌である。まるで何日も何日も、この日のために練習してきたかのようだ
「ほら…、さっさと口開けなさいよバカ」
「う…ん」
マシンガンのような言葉が終わると、また先程のように顔を伏せて命令してくる
一方シンジはそんなアスカに怯えながらも、命令通り照れくさそうに口を開けた
イモムシを待つヒナ鳥のようで少しマヌケだ
155:パッチン
08/02/10 20:28:49
「・・・じゃあいくわよ」
アスカは口を開けて待つシンジを確認すると、左手に持ったボールに視線を落とし、ゆっくりと右手人差し指をチョコに浸した
そして…
「ハッピーバレンタイン、シンジ!!」
の一言と共に、チョコまみれの『人差し指』をシンジの口に突っ込んだ
「んん!?むにゃむ!!」
シンジは、いきなり自らの口内に飛び込んできた衝撃に、目を丸くしてジタバタ暴れ始める
「う、動かないの!どう!?甘いでしょ!!」
「あむむ、あむにゃぁ!!」
「げ、げほっごほんっ!」
またしてもアスカは咳払いを1つ
「いい!?落ち着いて聞きなさいよ!?
食器がもったいないでしょ食器が!今日の食器洗い当番アタシだから、今日のチョコ作りに使った分を洗うだけでも鬱陶しいのよアタシは。たとえスプーン1本とはいえね!
それとも何かしら!?アタシの指なんか小汚いから口に入れたくないってこと!?
そう思うんだったら早く吐き出しなさいよ!!ほら早く吐き出してみなさいよ!!」
「あむ…にゅ…」
照れか、怒りか、興奮か…。とにかく凄まじい形相と化したアスカの顔に圧倒され、黙ってその細い指を受け入れていくシンジ
156:パッチン
08/02/10 20:30:21
「ど、どう?改めて聞くけど甘い…?」
「…うにゅ。あ、あみゃいにょ」
ようやく大人しくアスカの指を…。もといチョコしゃぶりだしたシンジだが、やはり照れくさいのだろう。目線は泳ぎ、頬は真っ赤に染まっている
一方のアスカは自分が言い放ったハズの事なのに、シンジにしゃぶられる自身の指を信じられない物を見るような目でチラチラ見ながら、その度に更に赤くなりながら顔を伏せる。という行動をずっと繰り返している
そして、おずおずと舐めている舌が直にアスカの指をくすぐり始めた。どうやらチョコを舐めきってしまったらしい
アスカは少し名残惜しそうに、ゆっくりと指を引き抜いていく
濡れた指先にシンジの熱っぽい吐息がかかり、キュンと切なくなる
「・・・じゃあ次のチョコいくわよ」
「う、うん」
再び指でチョコをすくい取り、シンジの口に運んでいく
「今度はもっとしっかり舐めてよ…。アンタとろいんだから」
その後も異常にギクシャクとしたシンジの昼食は続き、チョコと口との往復を繰り返した人差し指は、すっかりふやけてしまっていた
157:パッチン
08/02/10 20:31:53
・
・
およそボールの中身が半分を過ぎ始めた頃、『ちゅっ』という音と共に指が離れた
…と同時に、シンジがアスカに向かってポツリと話しかけた
「アスカも・・・お腹減らない?」
「え…?」
シンジは、緊張によりキュッと固まっていた握り拳を解き、右手人差し指をピンと伸ばしてアスカの方をチラリと見る
「・・・チョコ甘くておいしいよ。一緒に…ね?」
トロンとした目で少しはにかんだ表情を作ると、シンジはチョコを軽くすくい、アスカの口元に近づけていく
「シンジ・・・」
そして、こちらもウットリとした表情になり、唇を開いてシンジの指を受け入れていった
・
・
・
ダイニングの部屋中に『ちゅっちゅっ』という音が小さく響いている
2人はお互いの指をしゃぶり合いながら、たまに目が合うと、照れたような表情を作りながら相手の指先をチロチロと舐めたり、軽く甘噛みしたりする
時計の短い針は5時を指し始めている
ボールの中身は既に空っぽになっていた
しかし2人はお互いの指を離そうとしない
その表情はチョコよりもずっと甘そうだった
おわり
158:パッチン
08/02/10 20:37:54
かなりフライング気味にバレンタインSSを失礼しました
バレンタインの思い出といえば、昔初めてもらったカロリーメイト(チョコ味)で、かなり凹んだ記憶があります
いや本当にどうでもいいですね。さようなら
その夜…
「シンジ!ホワイトデー楽しみにしとくからね!」
「う、うん。わかった!」
「あのさ…
ホワイトデーってさ・・・きゃ、キャンディがプレゼントなんでしょ?」
「え?」
「・・・い、一緒に食べるわよ絶対…
おやすみバカシンジ!!」
ピシャンっ!
「一緒にキャンディって・・・まさか」
159:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/02/11 00:10:14
フライングGJ!
160:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/02/14 01:40:32
ええ話や
161:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/02/16 11:17:26
自分はカロリーメイトチョコ味が1番好きだけどなぁ…GJ
162:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/02/16 12:51:13
バレンタインにカロリーメイトは絶対嫌だろw
パッチンさんにしては珍しく標準甘LASだった。ぶっ飛んだ作品も好きだが
163:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/02/23 18:40:06
街
164:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/03/01 11:26:59
職人町
165:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/03/08 09:17:49
街
166:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/03/08 23:49:32
あげちゃいましょう
167:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/03/15 10:34:49
町
168:パッチン
08/03/18 16:56:59
『一通を通る想いと言葉』
ミサトのいない夜
アタシはリビングでクッションを抱きしめながら、ボーっとテレビ画面を見つめている。
別に愉快な映像が動いるワケではない。黒い画面にぼんやり映った自分が見えるだけ。
夕飯も終わり、シャワーも浴びた。でもアタシの中の睡魔は、まだ殻に閉じこもったまま出て来てくれない。
「暇…だ、わ…」
明日は土曜日で学校は休み、訓練も無し。そんな夜は出来るだけ長い間起きていたいのが、人の性というもの。
そんなワケで、あまりにも退屈な画面から離れ、ウロウロと娯楽を探すアタシの青目。
・・・そして大した時間をかけずに、あっさりと最高の退屈しのぎを発見した。
広いリビングの端っこで、壁にへばり付くようにコチラに背を向けて寝転んでいるバカ。
アイツも暇そうで可哀想だし、ここは優しいアタシが相手をしてあげよう!
まずは四の字固めがいいかしら?
「シ~ンちゃ~んっ♪」
「・・・・・」
沈黙
むっ?シンジのクセに無視とは生意気だわ。
「ちょっとアンタ聞いてん・・・の?」
ピクリとも動かないシンジの身体にまとわりつく線が見える。
バカにS-DAT
バカの耳にイヤホン
169:パッチン
08/03/18 16:58:34
「・・・シンジ?」
もう一度呼び掛けてみるが
「・・・・・」
返ってくるのは沈黙のみ。
「シンジ!」
「・・・・・」
「シンジぃ~」
「・・・・・」
「シンジきゅんっ♪」
「・・・・・」
かなりの音量が耳を支配しているのだろうか。『返事が無い、ただのシカバネのようだ』と、天の声が聞こえてきそうなほど反応が無い。
ナンカムカツク…
「あ~ぁ。暇だし何しようかなぁ~?あっ!そういえばヒカリに借りた本に、胸が大きくなる体操が書いてあったっけ?やってみよっかなぁ~?」
「・・・・・」
「なになに?まずは服を脱いで…。えぇ~恥ずかしいなぁ。でもやってみよ♪ぬぎぬぎ」
「・・・・・」
「えぇっとそれから…。胸を強く揉むわけね!こうかしら?こうかしらぁ~?」
「・・・・・」
「あっあっ、なんかとっても変な気分っ!ああぁ~!!」
「・・・・・」
「…なによバカっ!!!!」
先程まで抱えていたクッションを床に叩きつけ、アタシは置物になってしまったシンジをギロリと睨む。
「どんだけデカい音で聴いてんのよバカ…」
1人で別世界に行ってしまったアイツを見てると、急に1人ぼっちになってしまった気がして猛烈に寂しくなってしまう。
170:パッチン
08/03/18 17:00:31
なんだか叩き起こす気にもなれず、アタシはずっと音楽の中にいるシンジの背中を眺める。
「・・・・・」
アンタはずっとアタシのおもちゃのハズなのに…。
アンタはアタシが呼び掛ければ必ず答える…。ううん、答えなきゃいけない。
たとえアタシの声が聞こえなくてもね。
「どうせろくでもない曲聴いてんでしょ?」
「・・・・・」
こんなことを言ってもアイツは気づかない。
「バ~カバ~カ、バカシンジ♪シンジの脳みそツルっツル♪」
「・・・・・」
ほら何言っても気づかない…。
今なら何を言ってもアイツには・・・
「聞こえないんでしょ…?」
「・・・・・」
「・・・ね?」
そんなことを思いながらシンジの背中を見つめていると、何か変にドキドキしてきた。
「・・・シンジ~?」
聞こえてないのよね?
「・・・すす、好きだぞ~」
そう言った瞬間、少し怖くなってサッと身構えてみる。
「・・・・・」
だがシンジはそんなアタシには全く気づかず、背を向けたまま無言で音楽の世界に入り込んでいる。
「ふぅ…」
171:パッチン
08/03/18 17:02:14
「…す、好きよ~シンジ~」
限りなく小声でアイツの背中に呼び掛けているアタシ。
ちょっと情けない気もするけど、何かドキドキして楽しい。
「…今日の夕飯おいしかったわよ~。いつもありがとね~」
面と向かっては口が裂けても言えないような、こっ恥ずかしいセリフも、相手に聞こえていないとわかれば素直に言えてしまうのが不思議。
「…アンタは一生アタシの夕飯作らなきゃダメなんだからね~」
なんかやってるうちに、自分の中で変なエンジンがかかってきている気がする。
「ていうかアンタは一生アタシのモノなんだからね~」
知らず知らずのうちに声のトーン大きくなってきてるし。
「だから他の女なんか相手にしちゃダメなんだからね~」
ひょっとしたらこれは何か恐ろしい遊びなのかもしれない。
危険なことはわかっているが、徐々にハマっきて抜け出せないアタシがいる。
「あ、アンタはアタシだけのモノなんだからね~」
本当に止められない…。
「アタシもアンタだけのモノなんだからね~」
そしてまた、アタシはシンジの動かない背中に語りかける。
172:パッチン
08/03/18 17:04:06
アタシは、いつシンジがこちらに振り返っても不自然じゃないように、いそいそとクッションを枕にしてゴロリと床に仰向けになる。
そして顔だけをシンジの方に向けて「…ふぅっ」と深呼吸をし、またしてもブツブツと語りかける。
「いつもありがとねシンジ。アンタのこといつもバカにしてるけど、ホントはスッゴく感謝してるのよ。・・・アンタわかってる?」
まあこんなカタチでしか感謝の言葉を言えないアタシに問題があるのはわかってるけど…
「アンタの鈍さも原因の一つなんだからね。たまに殺したくなるくらいよ?アンタの鈍感って…」
アタシがどんだけヤキモキしても、他の女にヘラヘラ笑顔振り撒くし。
「それともアンタは一生アタシの気持ちに気付かず、生きていくつもりなの…?」
言い終えたアタシは一瞬その未来を想像してしまう。
すると途端に、見つめるシンジの背中がブワッと歪む。
この危険なお遊びは、アタシの心臓だけでなくアタシの涙腺まで刺激しだしたようだ。
「アンタがいないアタシで生きていけっていうの…?」
ボロボロと頬を伝う涙がクッションを濡らしていってしまう。
173:パッチン
08/03/18 17:05:15
「・・・・・好きよ」
「・・・・・」
ほら、重大発表してるのよアタシが…
「大好きよバカシンジ」
「・・・・・」
別にこの想いが聞こえないのは今日に限った事では無い
「惣流アスカラングレーは碇シンジが大好きなのよ」
「・・・・・」
このバカはいつも気づかない
「アンタはアタシのこと好き?」
「・・・・・」
アタシはいつも叫んでるのに
「アンタの全部が欲しいのよアタシは・・・優しさだけなんかいらない」
「・・・・・」
アタシにだけちょうだい
「その代わりアタシの全部をあげてもいい。・・・ううん全部あげるわ。もらってよ」
「・・・・・」
だからだからだからだからだからだから
「シンジぃ…」
174:パッチン
08/03/18 17:07:44
一方通行な言葉を唱え続けたアタシはグルリとうつ伏せになり、そのまま流れた涙をクッションにこすりつけるように拭った。
「…は、ふぅ」
歪みきっていた視界が元通りになり、いっぱい泣いて少しスッキリしたアタシは、チラリとシンジの方を見やる。
すると、先程までピクリとも動かなかったシンジが突然イヤホンを耳から外してムクリと起き上がり、
「・・・・・」
ペタペタと裸足のおぼつかない足で無言のままトイレへ行った。
・・・危なかった。あと少しシンジの膀胱が虚弱だったらアウトだったわ。
「ふふっ、泣いちゃった…バカみたい」
単なる遊び心で始めたのに、いつしかマジになってしまった。お恥ずかしい。
アタシはうつ伏せ状態の身体をムクリと起こし、四つん這いになって、のそのそとシンジが寝転んでいた位置まで移動していく。
「まったく、アタシが一人で恥ずかしい思いしてたっていうのに…」
そこには先程までシンジが装着していたS-DATが転がっている。
「あのバカは一体何聴いてたんだか…♪」
床に置かれたS-DATを拾い上げ、液晶画面に目をやる。
そこには今までシンジが聴いていた曲名が表示されているハズなわけで
「なになに…?」
・
・
・
175:パッチン
08/03/18 17:10:00
トイレの水が流れる音が聞こえる。
ガチャリと扉が開き、ペタペタという裸足の足音がこちらの部屋にむかって来る。
…そしてその音の主はリビングに入ると、先程と同じようにイヤホンを耳に装着し、いそいそと壁際に寝転ぶ。
それを確認したアタシは音をたてずに起き上がり、ゆっくりとその男の背後に忍び寄る…。
そして・・・
「こぉぉの大バカシンジいいいい!!!」
「ふぎゃぅ!!」
黄金の左足で、思いっきりその背中を蹴っ飛ばした。
「な、なにするんだよ!」
「こっちのセリフよ!
アンタ、アタシの独り言を盗み聞きしてたでしょバカ!」
「え…あ…」
振り返って大声をあげた元気はどこへやら。アタシの怒鳴り声に、シンジは小さくなってしまう。
「し、知らないよ…。僕S-DATで曲聴いてたから…」
「ほほぉ~。シンジ君は『電池切れ』っていう曲が好きなんだぁ?」
「あっ!」
急いでS-DATの『カラッポの電池マーク』が表示される液晶画面を隠すシンジ。
もう遅いってーの!!
「あああムカツクムカツク!ムカツクぅぅぅ!!」
「いたっ痛いよ!ゴメンよアスカぁ!」
あんな内容の独り言をシンジに聞かれた…。
あまりの恥ずかしさから、アタシはしばらくの間シンジをポコポコ蹴り続けたのだった。
176:パッチン
08/03/18 17:12:00
「あ、アンタいつ頃S-DATの電池切れたのよ…」
蹴りに蹴り続けて少し落ち着いてきたアタシは、一旦足を止め、壁際でフルフル震えているシンジに問いかける。
「え・・・あの・・・
『ああん変な気分だわぁ~』って辺りから…」
「な、なんでよりによってソコからなのよおおおお!!!」
今度は膝をついて、シンジをグーでポカポカ殴る。
「ごめん!ごめんってばアスカぁ~」
「なんでアンタ何も言わないのよぉ!『聞こえてるよアスカ』とかさぁぁ!!」
「だって言ったらアスカ、今みたいに叩いてたんだろぉ!」
「あ!・・・う・・・」
確かにそうかもしれない…。
アタシはシンジを叩いていた手をピタリと止め、握り拳のままダラリと両手を下ろした。
「アス…カ?」
シンジは防御のために構えていた両手を下ろし、アタシの方を恐々と見る。
・・・シンジに今の顔・・・見られたくない。
「泣いてるの…?」
「・・・最悪よ」
何もかも終わった気がする。
アタシの人生もプライドも全部。
あんな遊びするんじゃなかった。
バカなのは全部アタシだ…。アタシが全部終わらせたんだ…。
177:パッチン
08/03/18 17:13:47
「…ごめんね、アスカごめんね」
そう言うとシンジは、手近にあったティッシュを数枚取り、ぐしゃぐしゃ顔になったアタシに手渡そうとする。
「ふっ…ひっく。なんでアンタが謝んのよバカぁぁ」
でもアタシはティッシュを受け取らず、両手で顔を隠す。
無様だ。情けなさすぎる。
バカシンジに、こんな泣き顔を見られるなんて。
「もうサイテーよ…」
そのままアタシはグッと押し黙り、殻に引きこもる。
するとティッシュを持ったままのシンジが、ポツポツとアタシに語りかけだした。
「違う、悪いのはアスカだけじゃないんだ。ぼ、僕も悪かったんだ!」
「・・・・・」
「アスカに好きって言われて・・・僕嬉しかったんだ」
「・・・・・」
「ずっと嫌われてると思ってたし、僕なんか必要ないのかな?って…」
「・・・・・」
「でもアスカが僕のこと好きだって言ってくれて、いつもありがとうって言ってくれて。
嬉しくて嬉しくて…だから僕、それに甘えちゃったんだ」
「・・・・・」
「ずっと聞いていたくて、アスカが僕を必要としてくれることを感じてたかったんだ
…でも僕もハッキリ言うよ。アスカに僕の気持ち」
「・・・あ・・・ま、待ってシンジ」
178:パッチン
08/03/18 17:15:07
決意の一言を声に出そうとしたシンジを止めて、アタシはグシグシとシャツの袖で涙と鼻水を拭う。
「アスカ…?」
「ふんっ。ちょっと借りるわよバカ」
床に転がっていたシンジのS-DATを拾い上げてイヤホンをはめ、アタシは立ち上がった。
「アタシ曲聴いとくからね?アンタはそこで独り言でも言ってなさい」
「え・・・・・?
ちょ、ちょっとアスカ!」
何か言おうとしたシンジだったが、アタシが背を向けてゴロリと寝転んでしまうのを確認すると
「・・・・・」
グッと押し黙ってしまった。
そして何も機能しないイヤホンと、恐らく真っ赤になっているアタシの耳の隙間からシンジの優しい言葉が流れ込んでくる。
・
・
「…好きだよアスカ」
(アタシだって好きよ)
「アスカに出逢えて、一緒にいれて…。本当に本当に幸せなんだよ僕」
(うん。ありがと…)
「ずっと一緒にいてくれる?」
(当たり前じゃん。絶対離れてやんないわよ)
「ねぇアスカ?」
(なに?)
「大好き」
「・・・アタシも」
おわり
179:パッチン
08/03/18 17:16:01
短編です以上です。
この前久しぶりに近くのスキー場に行きました。
自分では得意と思っていたので、つい調子に乗ってハシャいでしまい
・・・気がついたらタンカに乗せられ、病院送りに…
左足ポッキリいっちゃいました
仕事場からは親切にお暇を頂き、嫁はポッキリ男を家に置いて実家に帰りました。
そのお陰で時間ができて、LASを書けました。ワーイ
180:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/03/18 17:25:33
GJ&お大事に
181:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/03/18 20:25:17
ぐっじょぶ!
スキー場で骨折って事は、救助隊のスノーモービルに乗った?
182:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/03/18 22:26:04
楽しませてもらいました
ツンデレアスカすばらしいです
183:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/03/19 13:08:45
GJ
地味に今一番期待してる作家さんなので次も楽しみです
184:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/03/20 22:13:44
(*´Д`)GJ
次作も期待してるよ
185:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/03/22 23:52:42
暇の度合いが気になる
186:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/03/31 01:09:25
バーローでこういう話あったよな?おっちゃんと奥さんで
187:パッチン
08/04/01 23:34:46
春の風吹かない第3新東京市。
セカンドインパクト以前ならば、ポカポカと暖かくなってくる時期なのだが、今はカンカンと照りつける太陽が恨めしい。
あまりにも恨めしいので、外に出ることすら億劫になってしまったアスカは、ずっとリビングの床をゴロゴロ転がっていた。
今この部屋には彼女1人だけ。
そして何もすることが無い彼女は、ただ転がることしかしない。
ピンポーン
インターホンを聞いたアスカはムクリと起き上がり、煙たげな表情を作りながら玄関に向かって行った。
「だる…」
『エイプリルフールの訪問者』
「おお惣流!元気そうで何よりやな!」
「終業式以来じゃなかったか、俺達に会えなくて寂しくなかったか?」
「最悪…」
扉を開けた先に待っていたのは2バカコンビ。何故か上機嫌でゲラゲラ笑っている。
しかし一方のアスカは心底、扉を開けた自分を恨んでいた…。
「マジ最低…」
「なんや惣流、今日は凄い人連れて来てんで?喜ばんかいな」
気だるそうなアスカに対してニタニタ笑いながら、とても自信満々なトウジ。
「凄い人?大阪府知事の子沢山弁護士でも連れてきたっての?」
188:パッチン
08/04/01 23:36:33
「へへ、そうじゃないんだよな~?トウジ
ほら、こっち来なよ!」
ケンスケがそう言って手招きすると、アスカの死角になるケンスケの左隣から、その人はヒョッコリ顔を出した。
「こ、こんにちは。碇・・・シンコです…」
長い黒髪に黒い瞳、そして少しババくさいシャツとロングスカートという姿をした、アスカのよく知る人物にソックリな人が現れた。
「・・・・・は?」
「い、碇シンコです!」
ポカンと口を開けているアスカに、もう一度自己紹介するシンコちゃん。
「おぉ、やっぱり惣流もビックリしたか!ほんまにソックリやもんな~」
「この娘、シンジの双子の妹なんだよ惣流。だから、碇シンコ!」
双子の妹?・・・シンジの?・・・妹?
「・・・いつも兄がお世話になってますアスカ…さん」
「え、あ…。こ、こちらこそ」
頬を赤く染めながら深々とお辞儀するシンコに、どうしていいのかわからないアスカは、とりあえずお辞儀し返した後、ギロリと2バカを睨む。
「どういうことなのよ!」
「いやいや実はこの娘、とってもお兄ちゃん想いの娘でな~」
「今日は、はるばる親戚の叔父さんと一緒にシンジに会いに来たんだよ。な?」
「うん…。あっ…は、はい!」
189:パッチン
08/04/01 23:38:15
「シンジに双子の妹がいるなんて聞いたこと無いんだけど…」
髪の長さと服装が違うだけで、見た目はシンジそのものにしか見えない。
アスカは疑いの目で、シンコの身体を上から下までジックリ眺めだす。
「アンタ本当にシンジの妹ぉ?」
「おい、あんまりそんな目で見んなよ!シンコちゃんが可哀想だろ!」
「い、いいんです相田さん。あの・・・兄からよくアスカさんの話聞きます。
とっても…可愛い人だって…」
「え゛っ!?」
ボンっ!と、一気に顔がトマトになるアスカ。
「「いや~ん♪シンジったら」」
「だ、黙れ2バカ!!
・・・・・ねぇシンコちゃん。今の…本当?」
アスカはシンコに顔を寄せて呟くように問いかけた。
シンコはそんなアスカの様子を見て、少し困ったような表情を作りながらも、コクリと首を縦に振った。
「手紙にいつも書いてるから…」
「ふ、ふぅん…。そっか、そうよね!
あははっシンジもアタシにメロメロってことね!そういうことね!」
アスカはそう言うと、腰に手を当てて後ろに振り返りケラケラ笑う。
…まるで真っ赤な顔と潤んだ瞳を正面に立つ3人から隠すように。
190:パッチン
08/04/01 23:40:00
「ところでシンジは何やってんのよ!こんな可愛い妹さん放っといて」
再びクルリと3人の方に振り向いたアスカは、シンコの頭をポンポンと撫でながら、トウジを睨みつけた。
「なんか叔父さんと一緒に話したいから、喫茶店に行くって言ってたで」
「ふぅ~ん。・・・まぁいいか♪
シンコちゃん、リビングにおいで。コーヒー作ってあげるわ」
すっかりルンルン気分のアスカは、そのまま廊下を踊るように移動し、クルンと一回転してからキッチンに入っていった。
・
・
「と、トウジぃ…どうしよう…」
「くぷぷ、見たかケンスケ?あの騙されよう」
「見た見た♪やっぱ天才少女だかなんだか言っても、所詮は単純ツンデレ娘なんだよな」
アスカがいなくなった玄関でニタニタと笑う男子2人と、ずっと怯えた表情を貼りつけている『女みたいな男子』
名前は碇シンコなどではなく、碇シンジが正式である。
「でも惣流が騙されんのも仕方ないと思うで?だって完全に女やもんコレ」
トウジは隣にいるシンジの肩に手をまわし、にっと歯を出して笑う。
「ちょっとトウジ止めてよ…」
キッチンにいるアスカに聞こえないように、小さな抵抗をするシンジ。
完全に痴漢をうける可哀想な乙女だ。
191:パッチン
08/04/01 23:41:42
「シンコちゃ~んコーヒー出来たわよぉ!」
「あ、待って!今靴脱ぐから…」
キッチンから玄関に跳ねるように舞い戻ってきたアスカは、シンジの手をギュッと握ると、『早く早く』と催促するようにクイクイと引っ張った。
「おぉ、じゃあワシらもコーヒー…」
「はぁ?アンタらの分なんか無いわよ」
アスカは、靴を半分脱ぎ始めていたトウジに素早くそう言い放つと、玄関に裸足で降りて、プシューっと扉を開けた。
「アンタ達は、シンコちゃんを送ってきただけでしょ?ほら、サッサと帰りなさい」
「えっ!お、おいマジかよ!?」
「いたた!何すんのや惣流!」
アスカにガッチリと耳を捕まえられた2人は、葛城家からポイッと放り出される。
「ちょ、ちょっと!その2人は…!!」
「ん?大丈夫よシンコちゃん。今日生ゴミの日だから、捨てて大丈夫」
「だ、誰が生ゴミやねんコラ!」
「じゃあねぇ~♪新学期にまた会いましょ~」
ヒラヒラと手を振ったアスカは、そのまま扉の開閉ボタンを押した。
プシュー
・
・
「おい、どうするねんコレ…」
外に残されたトウジは、同じく隣にいるケンスケに『ドッキリ大成功』と書かれた小さな看板を見せた。
「・・・俺もうシラネ」
192:パッチン
08/04/01 23:43:20
リビングのソファーに借りてきた猫のように恐々座りながらコーヒーを飲むシンジ。
そして、アスカはその隣でその様子をまじまじと眺めていた。
「本当に似てるのねぇ、双子って…。シンコちゃんはエヴァパイロットに選ばれなかったの?」
「う、うん。その…父さんが女の子には危ない仕事だからとかなんとか…」
「あら、アタシとファーストだって女よ?」
「え!?あ…そ、そうだよね。あはは」
「う~ん、まあファーストのことを優遇してる件もあるし、自分の可愛がってる娘だけに優しくするタイプなのかしらね♪」
「あ、うんうん!そう言ってたよ確か!」
「え?司令が自分からそんなこと言ったの?」
「あ…イヤ…。言ってなかったかな…?やっぱり」
そもそも嘘があまり上手くないシンジの長髪カツラの下は、既に嫌な汗まみれになっていた。
確かに『エイプリルフールにアスカを騙してみたい!』と、トウジとケンスケに相談を持ちかけたのは自分だった。
そして女装をして碇シンジの妹になり、アスカを騙すという方法も、誰も傷つかない善良な嘘だと思いOKした。
しかし、彼はネタバラシという大きな壁を超えられなくなってしまっていた。
アスカがあまりにも楽しそうで…
193:パッチン
08/04/01 23:45:15
コクリ…とコーヒーの残りを全て飲み干したシンジは、勇気をグッと振り絞った。
やっぱり今のうちに言わないとダメだ…。
「ねぇアス…」「ねぇシン…」
「「あ…」」
言葉がユニゾンした。
「あ、いいよ。アスカさんが先に言って…」
「…うん。ありがと」
この時言葉を先に譲ったことによって、シンジはネタバラシの最後のチャンスを失った。
「さっきの手紙のことなんだけどね…。本当?」
「え…!」
恐らく『アスカをとても可愛い娘』と言った件であろう。
もちろんコレは、これを言えばアスカの正常な判断を鈍らせることが出来ると知っている『アスシンおちょくり男』の称号を持つトウジが考えた嘘である。
・・・シンジは迷う。
迷って迷って出した答えは、コクリと首を縦に振ることだった。
確かに手紙に書いたことは大嘘だ。
でもその内容は…その想いは…
「本当だよ」
「ふぅん…ありがと」
ソファーの上で、ちょこんと体育座りになったアスカは、嬉しさをグっと噛み殺すように、しばらく膝に額を擦りつけていた。
そんなアスカを眺めているシンジは、どんどん何も言えなくなってしまっていく…。
194:パッチン
08/04/01 23:47:18
「ふぅ・・・ところでシンコちゃん。さっきから思ってたんだけど」
「え…?」
先程まで小声で「キューキュー」唸っていたアスカが、突然お姉さん目線でシンジに話しかけた。
「もっとオシャレな服着た方がいいわよ?もう14歳なんだから」
「は…はぁ」
恐らくこれからの事を考えて、世話好きのいいお姉さんというのを印象付けたいのかもしれない。
…しかしまあ確かに、トウジの死んだおばあちゃんのタンスから漁りだした服を着た今のシンジは、オシャレからは程遠い姿であるのは否定出来ないのだが。
「ちょっと待ってなさいよ!服持ってきてあげるから!」
「え…!別に…」
シンジの言葉を無視して、エンジンのかかってしまったアスカはそのままピューっと廊下に行ってしまった。
・
・
10分後
未来の義理の妹に着せる自分の服を見繕っていたアスカは、何着かのお気に入りを抱えて、自室から出てくる。
小さい頃に母とお人形遊びをした記憶が蘇ったのだろうか、その表情はとても優しく、幸せそうだった。
しかし…
廊下に出たアスカの目についた1つの扉。
「あ…」
何かを思いついた彼女は、胸いっぱいに抱えていた色とりどりの服をバサバサッと床に落とし、ゆっくりとその中に入っていった。
195:パッチン
08/04/01 23:48:42
・
・
・
「す、すごい…。本当にそっくり…」
「う、うん…」
アスカの目の前に立つ男子制服を着た少女…いや少年。
あの後、結局アスカが持って来たのは自室のクローゼットを埋め尽くすコジャレた洋服などではなく、一般的には納屋と呼ばれるシンジの部屋から持ってきた一中の制服だった。
どうしてもこの制服を着たシンコを見てみたかった。
そして、何故か彼女にはこの制服が一番似合う気がアスカにはしたのだった。
そして、断固として着替えている姿を見られたくないというシンコのために廊下に出ていたアスカが、再び戻ってくると…
そこには愛しい人がいつもの服で立っていたのだった。
「髪が短かったら、そのまんまだわ…」
「ま、まぁ双子だしね…」
(ま、まぁ本人だしね…)
そんなことを思いながらシンジは、この異様な状況に戸惑いしか感じていなかった。
いつもと同じ服を着たシンジを、いつもと同じアスカが、好奇の目でまじまじと見つめている。
アスカはそのまま引き寄せられるようにシンジにゆっくり近づいていった。
「…なんで?なんでこんなに似てるの?」
「あ、アス…カ・・・さん」
シンジの両頬がアスカの両手に包まれた。
196:パッチン
08/04/01 23:50:10
「目も鼻も口も声も…。全部そっくり…なんで?」
「・・・・・」
「ごめんね。シンコちゃんはシンコちゃんなのにね…」
アスカの指が頬を滑るたびに、シンジの身体がピクピクと震える。
「でも…なんか変なの…。シンコちゃんの1つ1つ全部がシンジに見えて…」
「あ、あの!そろそろ着替えてもいい?」
アスカの目がおかしくなっていくのを間近で見つめるシンジの心に最初に宿った感情は恐怖だった。
離れようと一歩下がったシンジだったが、アスカは更に二歩前に進み、頬にかかった両手をシンジの首に回した。
そして、次にシンジの頬に触れたのはアスカの頬。
「匂いも同じ…。アタシの…」
「あ、アスっ!?」
「アタシの大好きな匂いだ…」
・
・
・
今日は早番で夕方に帰ってくることが出来たミサトは、我が家の扉の前で鞄をまさぐっていた。
「な~んで鍵閉まってるかなぁ~!?今日はアスカずっと家にいるって言ってたのにぃ!!」
左手にぶら下がったエビチュが入ったビニール袋を鬱陶しく感じながら、鍵を開けたミサトはようやく我が家の空気を吸うことが出来た。
が・・・
「ただいまぁ・・・って…なにやってんのよ、あんた達!!」
197:パッチン
08/04/01 23:52:40
玄関の直線上にある開け放たれたリビングの扉から見えた光景に、ミサトは玄関で靴を蹴り捨てて飛び出した。
リビングの床では、制服姿のシンジが仰向けで倒れ、その上から巻き付くようにアスカが抱き付いていたのだった。
「アスカ何やってんの!離れなさい!!」
「スキンシップよコレは…」
顔を真っ赤にしたアスカは、すっかりトロけた表情になっている。
そして下にいるシンジは何故か長髪のカツラを被って、こちらに助けを求めるように小さく震えている。
一体、何プレイなのだこれは!?
「何がスキンシップよ!年頃の男と女がこんなことしておいて!!」
「あはっ、アンタ馬鹿ぁ…?シンコちゃんは女の子だから、無問題なのよぉ」
そう言うと再び、ポフっとシンジの制服に顔を埋めて、スンスンと鼻を鳴らすアスカ。
「スキンシップぅ…♪」
「ちょっとアスカ!!何がシンコよ、女の子よ!いい加減にしなさ…!
・・・あっ!」
いよいよ沸点に到達しかけたミサトだったが、あることを思い出し、一気に我にかえった。
「あぁ、そうか!今日エイプリルフールだったわ!」
ポンと手を打ったミサトは、先程まで怒っていた表情を笑顔に変えて、アスカを見やった。
198:パッチン
08/04/01 23:56:01
「…エイプリルフール?」
「あはは、危うく騙される所だったわ♪おかしいと思ったのよねぇ~
しかしあたしも年かしら?『嘘ついてもいい日』なんて楽しい日を忘れるなんて」
袋からエビチュを取り出し、グビグビ飲みだすミサト。
「でもあたしを騙すんなら、もっと工夫しなさいよぉ~?
例えばシンちゃんに女物の服着せるとか、鈴原君とか相田君に協力してもらうとか…。
そんなカツラ被せただけで女の子なんてアマいアマいわ♪」
『嘘をついていい日』『女物の服』『2バカの協力』
そんなミサトのお気楽な言葉を聞いたアスカは酔いから覚めたような顔になり、ギギギッと『シンコ』を見やった。
「あ、アンタまさか・・・」
「・・・・・ごめんなさい」
アスカの手がゆっくりと『碇シンコ』の髪に伸びる。
ズルリ…と落ちる長い髪が落ちて、現れたのは、顔を伏せて泣きそうな顔になった『碇シンジ』だった
・
・
・
ドカバキドコ!
「あんた達さぁ~。いくら、あたしを騙せなかったからって仲間割れはよくないんじゃないのぉ?」
ドカバキドコ!
「ちょ、ちょっとやり過ぎじゃないアスカ?」
ドカバキドコ!
終わり
199:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/04/01 23:56:54
リアルタイムGJ
200:パッチン
08/04/01 23:59:06
あとがき
間に合ったのか間に合ってないのか…。
すごい急いで書いたから展開が早すぎ…
そしてオチが無い…
でも1日の内に投下できてよかったと思います
それではヤクルトの連勝が止まったこともエイプリルフールのせいにして今日は寝ることにしますw
201:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/04/02 00:02:27
おつです
202:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/04/02 12:58:42
ほんとギリギリでしたねw。GJ
設定もおもしろかったです
203:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/04/02 16:40:04
アスカのだまされっぷりにもえた
GJ
204:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/04/02 21:32:27
むしろ落ちが「ドカバキドコ!」なのは個人的には良かったです。
GJでした!
205:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/04/03 09:49:01
発想がすごいおもしろいですよね!
とても楽しめました!GJです!
206:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/04/04 00:06:28
投下に気付くのが遅かったorz
とりあえずGJ!!!!
207:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/04/07 11:20:16
つまんね
208:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/04/08 01:37:54
オチってか締めんの下手やな
209:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/04/11 18:40:31
つか、プロットが陳腐。
210:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/04/11 18:55:41
俺は好きだけど?
211:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/04/11 19:41:30
まあ、叩く人の素性は知れてる
212:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/04/11 20:03:32
じゃあ他の人の意見も聞いてみるか
213:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/04/11 20:05:00
シンジに告白された
シンジのことは嫌いではない、嫌いならそもそも同居はしない
だけど好きか?と聞かれたら困る
アタシが好きな人は前から加持さんなのだ、好きな人がコロコロ変わるような尻軽女ではない
「シンジ、ありがとう
だけどアタシは加持さんのことが好きなの
だからごめんなさい」
そしてシンジはこの家を出ていった
アタシはシンジのことを振ったのだから止めたくてもそんな資格はない
寂しいが仕方ない、アタシが選んだ結果なのだから 学校では毎日シンジと会うがお互い気まずく未だにに目を合わせることすらない
考えてみればアタシの毎日の生活はほとんどシンジと一緒だった
学校へ行くのも一緒、休み時間もシンジの席まで行っておしゃべりしてたしお昼は別だが帰りもだいたい一緒
シンジがいなくなって今更ながら気づいた
心にぽっかり穴が空くってこんな感じなのかな
アタシは一体どうしたいんだろう
わからない・・・
214:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/04/11 20:33:42
続きはどうしたハァハァ
なんか文体にデジャヴを感じるが・・・
215:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/04/11 20:46:19
大好きだからの移動だろ?
216:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/04/11 20:53:47
アスカに振られた
アスカはいつも僕と一緒にいた、学校でも家でも最近は荷物持ちをしない荷物持ちとして遊びに出掛けたりもしていた
きっとアスカも僕に好意を持っていると思いこんでいた
だからアスカの返事は予想外だった、目の前が真っ暗になった
使徒に胸を貫かれたときよりも痛かった
胃液が逆流してくる感じがした
そして僕はあの家を出て行った
アスカが必要な人は僕ではなく加持さんなのだ
ミサトさんも加持さんが必要なのだろう
使徒もいなくなり僕はもう誰にも必要とされない
ここに来る前の状態に戻るだけなのになんでこんなに涙が出るのだろう
217:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/04/11 21:20:47
376 名無しが氏んでも代わりはいるもの sage 2008/04/11(金) 12:18:11 ID:???
「帰るか・・・」
僕はネルフに帰る
セキュリティーの面から自由に住む場所を選ぶことはできない
できればあんな場所には行きたくないが仕方ない
「碇くん」
そこには綾波がいた、学校以外で会うのは久しぶりだ
いや、僕が意図的に避けてきたのだ
三人目となった綾波が、母さんのクローンだと解った綾波が、最後に僕を救ってくれた綾波僕には何か得体の知れないような存在に思え恐ろしく感じていただ
「何故そんなに悲しい顔をしているの?」
「なんでだろうね」
「・・・・これあげるわ」
そう言うと彼女は一つの飴玉を出した
「飴?」
「これを食べると元気が出るわ、葛城二佐から貰ったの」
僕は自分が恥ずかしくなった
こんなにも純粋な彼女をそんな風に思っていた自分を
「泣いているの?」
「あれ?ホントだ、僕泣いてるみたいだね」
「でも笑っているわ」
「嬉しかったんだ」
「そう、そんなにも飴が美味しかったのね
わかるわ、私も初めて食べたときこんな美味しいものがあるなんてって思ったもの」
「いや、飴じゃなくてね」 「?」
綾波は首を横にちょっと傾け分からないといった表情だ
その仕草が堪らなく愛おしく感じた
「そうだ、飴のお礼に僕の料理食べてくれないかな?」
「美味しいの?」
「これでも料理だけはちょっと自信があるんだ」
「ならいただくわ」
218:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/04/11 21:27:19 6Pv5x8lt
投下すんの少し待てよ
文章がゴッチャになって読みにくいったらありゃしない
後出来れば名前欄にタイトルないし、番号ないしふって頂けると有難い
219:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/04/11 21:38:04
コテつけてちょ
220:にゃあ
08/04/11 21:43:18
読みにくくてすみません
コテ付けて投下します、生温い目で見守ってください
221:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/04/11 22:10:30
ガンガレ
222:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/04/11 22:26:06
できるだけ早くな!
気になって眠れないからw
223:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/04/12 00:34:53
ツマランから要らね
224:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/04/12 18:50:14
wktk
225:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/04/12 20:12:42
ヤベー超おもれーじゃんwww
はいはいwktkwktk
226:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/04/16 17:58:34
投下町
227:霧島愛 ◆MANA20euME
08/04/17 15:13:13
【女神へのラヴレター ~血の13歳・原罪の15歳~】
夕暮れの芦ノ湖に僕はアスカといた。湖面は嫌になるくらいに、時を忘れたかのように静まり返っている。
石ころを積んで、持ってきた線香を立てる。マナが好きだったインド製の高級なホワイトムスクで、マナはよく
これを焚いて眠っていた。
黒く焼けた稜線に太陽が沈んでいく。相模湾、旧藤沢市沖30キロの海底。トライデント級陸上戦艦「震電」の沈没地点だ。
N2爆弾の直撃を浴びたトライデントの艦体はバラバラに四散して海底に散らばり、回収は絶望的との見立てだ。
君だろアスカ。
「なんのことよ?」
君がチクったんだろ、だからNERVが動いた!マナも、ムサシも、…お前のせいで!
「はん、なに寝言ほざいてやがんのよ…?あのN2、あれでアンタは消えちゃってるはずだったのにね…ちゃっかり生き延びやがって」
「どこまで僕のことをわかってるんだ…?」
「どこまで?ふざけんじゃないわよ、“最初から”よ!あの赤い海からすべて、アンタがアタシのすべてを
奪っていったこと、忘れるわけないっしょうが!」
最初から。赤い海から。すべてを。
そうか。
228:霧島愛 ◆MANA20euME
08/04/17 15:32:54
立ち上がり、振り向く。
夕凪の狭間に紛れ込んだそよ風と共に、飛び込んでくる拳を皮一枚で交わす。頬を裂く空気の刃を感じながら
僕はきっと、虚ろな目でアスカを見ていたんだろう。
「っぐは!」
死角から振り上げられた左が僕の腹に突き刺さる。潰れた内臓が抱えたモノを吐き出そうと悲鳴をあげる。
河原の上に崩れ落ちた僕をアスカはじっと見下ろしていた。
跪き、僕を抱き起こす。
「くくくっ…笑っちゃうじゃん?アンタなんかよりさ…アタシに、このアタシにあの馬鹿ぁ惚れ込んでたンよ?
いっつも気づかない鈍い振りして…保護者ヅラして、そのくせ美味しいとこだけ全部掻っ攫ってったアンタなんかより、
アイツは…ムサシはずっと、アタシのそばにいてくれた!」
口の中に血があふれ、押し流そうとして唾液がとめどなく噴き出してくる。口から赤い糸を零して、僕は微笑んだ。
ムサシの声が聞こえる。
お前がやんなきゃダメなんだよ。アスカはお前がやるんだ。
やるってどういうことだよ?
そうさ、アスカを止めろって。だけど僕も止まれない。
229:霧島愛 ◆MANA20euME
08/04/17 16:02:45
僕は今憎しみに駆られてる。秘めた想いがどうあれ、僕から君を奪ったのはほかでもないアスカ、だから。
弐号機の紅い機体が太陽の光を浴びて輝く。
構えた日本刀、マゴロク・エクスターミネートソード。その刃が味わう生き血は誰のものだ?
斬撃を浴びたトライデントの巨大な艦体がぐらりと傾き、被弾面が金属の悲鳴をあげて軋みへこむ。
「ふざけろよ…アスカ!」
抱きかかえられた体勢のまま、頭突きを打ち込む。鼻筋にぶち当たった感触。僕の視界も赤く染まり血の臭いが一瞬で身体中に満ち溢れる。
攻撃動作の隙に衝撃が僕の頬を貫き、僕は再び湖岸の砂利に叩きつけられた。尖った石が顔に突き刺さって皮膚を破る。
「カカカッ、あんだってェシンジ!?なんて言ったァ!?」
真っ直ぐ突っ込んでくる拳が見えて僕はとっさに頭をずらして避ける。頬骨が激しく削り取られて吹っ飛ばされ
そうになり、それでも堪えて立ち上がり間合いを取る。
上等だ。直接眼球を狙ってきやがった。
身体中の筋肉が切ないくらいに力を絞り出し、行き場のない拳を爪が手のひらに刺さるまできつく握り締める。
なぜ、戦う。
はぁ?アンタなに言ってんの。わけのわからないモンが攻めてきてんのよ。降りかかる火の粉は払うのが当然でしょうが。
前、そう聞いたよ。だけど今は違うよな。
僕たちはどうしてこんなに。
230:霧島愛 ◆MANA20euME
08/04/17 16:19:08
血の滴が舞って拳が空を切る。直後、真横から脇に蹴りが襲う。
どうして!
どうにもできない。夢中で掴みかかり押し倒す。壊せ!壊せ!壊れろ!人間の身体なんて脆いモンのはずだろ。
それなのにどうして!
顎に再び一撃を受け、噛んだ口の中が切れて僕は血の飛沫を吐いた。
僕の吐き出した血がアスカの顔をいっぱいに濡らし混ざり合って垂れていく。
やり場のないこの焦りは何なんだよ。
ワケなんて、探すだけ無駄だろ?
このまま死ねるならきっと幸せだ。
殴り合うことが気持ちいい。
やりきれない想いを拳に込めてぶつけ、そしてそれが届き、受け止められていることをこの目で確かめられる。
僕に対しても同じようにね。だから、言っちゃ変だけど信頼できる、のかな?
楽しいぜ。
「なに笑ってんのよ?…シンジィッ!」
空に散る滴が、風に吹かれる花びらのように見えた。
231:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/04/17 16:28:27
…どしたのコレ?
232:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/04/17 16:37:45
逆行?AEOE?時系列が妙な気がする
どっちにしてもLASなのか微妙じゃね?
LMSにアスカ×ムサシみたいな描写あるし
233:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/04/17 17:28:39
てかマナとかムサシとかどうでもよくね?
ゲームに出てるって言ったって、もはやエヴァじゃないじゃんw
234:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/04/17 17:31:27
ここは総合だから基本何でもありだろ
235:霧島愛 ◆MANA20euME
08/04/17 17:48:01
>>230
―西暦2014年 春
桜の花びらが舞い散る坂道を、芦ノ湖畔に広がる眩しい街並みを見下ろしながら私たちは学校へ駆けていた。
今日は第3新東京市立第壱中学校の入学式。今日から私と同じ学校へ通う友達、惣流アスカラングレーと洞木ヒカリを連れて、
私は校門前から振り向いて手を振った。
「ほら早く早くー、遅れちゃうよー?」
「まっ、待ってよもう、綾波さんったら足速いんだから…」
ようやく追いついてきた洞木さんが肩で息をしながら言う。アスカは息を切らしながら彼女のそばに寄り添っている。
昇降口前に掲示されたクラスわけをみんなで見上げる。時折あちこちから歓声があがり、私たちも自然と
気分がうきうきしてくる。
「あっ、あったわたしC組だ」
「えっうそうそ、アタシは…ああっ、A組~どうしようヒカリ~べつべつのクラスだよ~」
チルドレン候補はA組と決まってるから、アスカがA組なのは当然だけど。他に知ってるヒトもいなさそうだし、アスカ、傍目から
見てもかわいそうなくらい不安がってる。
「それじゃ、新入生はあっちで待っててね。時間になったら先生が呼びに来ると思うから」
「ええっ、あ、綾波~いっしょにいてくれないの?」
「しかたないでしょ、在校生はふつうにHRとかあるし。だいじょうぶ、式なんてすぐに終わるから。学校引けたら
3人で遊びいこ?」
236:霧島愛 ◆MANA20euME
08/04/17 18:11:30
青い瞳を潤ませてオロオロしてるアスカをなだめ、私は2年A組の教室に上がる。と、碇司令と赤木博士からのメールが届いた。
ほんと、こんなことでいちいち心配しちゃって。私はもう14歳なんだから、ひとりで大丈夫よ、っと。
窓の外には桜の花びらが、途切れることなく舞っている。この学校の裏山には桜並木があるからそこから飛んでくるんだ。
赤木博士にも見せてあげたいな。いつも本部の研究室にこもりっぱなしだから。
それはそうと、司令は博士と再婚しないのかなぁ?
ってのも、野暮な話しかな。補完計画が発動すれば、ユイ博士に会えるって信じてるみたいだし。うまくいくのかは
私にはさっぱりだけど。やっぱ、なんだかんだで怖いんだろうね。そして諦めきれてない。ユイ博士の
サルベージにこだわるのは、裏を返せば思い出を振り切ることが怖くて拒否してるってコト。結果として、前に進めてない。
本人がそれでいいって言うんならしかたないけどさ。
私や赤木博士がそれでついてきてくれるのかってのはまた別な話しよ。
入学式はつつがなく終わり、私たちはまた3人で集まった。記念写真を撮っていた先生に私たちのも撮ってもらった。
洞木さんとアスカを両脇に抱えてピース。出来上がったポラロイドの写真には、カメラ目線を外しちゃったアスカと半分はみ出した
洞木さん、そしていっぱいに大写りした私がいた。うんうん、今日もこの艶やかな黒髪に天使の輪がばっちり出てる。洞木さんの
栗毛もきれい。アスカの赤毛は、まあ。
237:霧島愛 ◆MANA20euME
08/04/17 18:33:12
「さっそく言われちゃったのよこの髪~染めてるんじゃないって言ってるのにぃ~」
頭を抱えて泣き言を言ってるアスカに私は思わず吹き出す。
「だっからぁ、そんなオドオドしてるからよ?堂々としてればいいのよ、堂々と。中学デビューしたつもりになって」
「う~」
「デビューって、綾波さん…」
中学生になったんだからそれくらいはっちゃけてもいいのに、とは思うけどアスカの性格じゃ無理かなあ?
真っ赤なアタマのスケバン刑事、なんてね。周りをよく見てみれば、やっぱりアスカは他の子たちの注目を集めてる。髪の色もそうだし、
雰囲気もどこか違うから。血に刻まれた本能っていうのかな、やっぱり人種の違いってのは生理的にわかるんだと思う。
「あっあの、綾波、ヒカリ、先行っててアタシちょっと用事あって…」
いきなり言い出したアスカに私たちは不思議がる。いつもはどこへ行くにも私や洞木さんがいっしょじゃないとぐずるのに、ひとりでどこかへ行くなんて。
「んどうしたの急に?大丈夫よ、どっか行くなら送ってってあげる」
「だっ、大丈夫よおひとりでも!アタシだってもう子どもじゃないんだからっ」
唇をとがらせて言うアスカが意外に可愛い。
私と洞木さんは顔を見合わせて、作った笑顔を満面にたたえてアスカを見送ることにした。
アスカは頬を赤くしながら逃げ出すように行ってしまう。
238:霧島愛 ◆MANA20euME
08/04/17 18:51:57
しばらく手を振ってから、私はおもむろに洞木さんにふっかけた。
「どう思う?」
「どうって」
「あの慌てよう」
「うん慌てよう」
「やっぱり」
「やっぱり」
「オトコね」
「おと…って、綾波さん!?」
いやなんというか、アスカもいつのまにかやるわねえ。私たちに黙って。なんだかんだでお年頃ですから。
洞木さんはフケツよとかぶつぶつ言ってる。
そんな私たちを遠くから見ている目があった。
「アイツぅ…あの赤頭の女ぁドコよ?」
運動場隅の体育用具室の影に座り込んでいる男子、というか不良生徒のグループ。校章の色を見ると彼らも新入生のようだ。中心に
いるドレッドに鼻ピアスの男が目を引く。彼がアタマか。
「知ってンぜアイツ仙石原小の惣流アスカだろォ?」
「あの髪ぁ染めてるんじゃねえってよ。なんでもバーチャンがドイツ人だとかでよ、クォーターっつうのか?そんなん」
「生意気だぜあんな見せびらかしてよう」
仲間たちが口々に言ってる。私は彼らの目に洞木さんが留まらないようにカバーしながら聞き耳をたてる。
239:霧島愛 ◆MANA20euME
08/04/17 19:11:57
「だけっど、あいつだあの隣にいる背たけぇシャギーの奴よ。あいつが綾波っつってよ、あいつがちょっとやべえんだ。オレも同じ仙石原小で…」
私の名前がでた。
私の何がやばいって?
「あんだァテルオ?ごちゃごちゃ言ってンなよ?」
「き、キョウジくん…」
ドレッドの名はキョウジ、か。ぱっと見でもただ者じゃないってわかる。第壱中には今まで特に派手な不良とか
特別強い奴とかいなかったから、どうなるか。知ってる3年坊連中には、話し通しておいた方がいいかもね。こんなことで
ガードを借り出すのもあほらしいし。
「綾波さんー?」
洞木さんが呼んでる。私は気取られないように渡り廊下を過ぎ、人の流れに紛れた。
予想してなかったってわけじゃないけどアスカ、やっぱり目ぇ付けられちゃったね。ここは私ががんばらなきゃ。たしかに
彼女はチルドレンとしてトップの強さを持つけど、外に出ればひとりのか弱い女の子だから。私が守ってやらなきゃ。なにより、
私たちは小さい頃からずっと仲良しの友達だったもの。
またメールが来た。今度は赤木博士。
…?
240:霧島愛 ◆MANA20euME
08/04/17 19:24:28
「どうしたの?」
「ごめんっ急用できちゃった!洞木さん、また今度、おごってあげるから今日はごめんね」
ぱちんと手を合わせる。洞木さんはすぐに察してくれたようで仕方なさげな微笑みを浮かべた。
「ううん、いいのよたいせつなお仕事だもんね」
「ほんっと、ごめんねー」
NERV本部へ急ごう。
ていうかアスカにも知らせないと、いや、彼女にも博士から連絡はいってるはず。
この用件、なにげに重大なことでしょ?
『サードチルドレンが選出された。』
いったい誰なんだろう?おなじA組の候補の子かな?それとも。
雪のような桜が舞い続ける道を、私はあたたかな希望を胸に駆けていく。芦ノ湖は今日も青く澄み渡っている。
道端に黒猫さんが、丸くなってひなたぼっこをしていた。
241:霧島愛 ◆MANA20euME
08/04/17 19:57:20
泣いてる。
アタシが泣いてる。
『外人!ガイジン!』
『逃げろ~赤鬼だぁ~♪』
奪われた上履きを投げつけられる。床に落ちた筆箱のふたがこわれて、鉛筆や定規が散らばる。それも
投げつけられて腕に刺さる。
『こいつの母ちゃん自殺したんだぜーあたまがおかしくなってなあ』
『くるくるぱーで首吊り自殺♪ぶーらぶら♪』
『はい♪じっさっつヾ(^▽^)ノじっさっつヾ(^▽^)ノじっさっつヾ(^▽^)ノ』
涙の匂い。血の匂いが満ちる。
叫んでたかもしれない。
ただがむしゃらに向かっていって、気づいたときには教室の隅にうずくまってた。倒れた机と椅子が乱雑に、クラスの
みんなが汚れものを見るような目つきでアタシを取り囲んでる。
子どもじゃない。人間じゃ…ない。
敵。
敵なのよ。
『きゃはははっははははははは!』
トイレの個室に閉じ込められ、掃除につかった汚水がモップごと降りかかってくる。ホコリのかたまりと髪の毛と靴の裏についた
ごみと砂が口の中に入る。
吐きたい。
242:霧島愛 ◆MANA20euME
08/04/17 20:20:07
床に蹴倒されて唇を切ってしまう。血が流れ出る。頭を踏みつけられ、尻を蹴られ、服は排泄物の混じった泥水でぐしょ
ぐしょに汚れていく。
それでもみんなが口を揃えて『アスカちゃんがひとりで勝手に転んだ』って言えば、それが正しいことになって
しまう。悔しくてつかみかかったりでもすれば、それはアタシが悪いことにされてしまう。
誰も味方はいない、この仙石原小学校には。
ううん、隣のクラスの洞木ヒカリさん、それから去年卒業していった先輩の綾波レイさん…彼女たちだけがアタシの友達だった。
アタシはいつもふたりのそばに。そうしなきゃ、みんなのいじめから身を守ることができなかった。
いっこ上の綾波さんはとても背が高くって力も強くて、6年生の男子でも逆らえないほどだった。ちょっと気が荒くて
怒りっぽいけれど、でも普段はとても明るくて気前のいい女の子。
そう。憧れだった。
アタシもあんなふうになりたかった。強くなりたかった。綾波さんのように強くなりたかった。
そうでしょ?世界に二人しかいない選ばれた人間、人類を守るエリートパイロット。それが自分の身も自分で守れなくてどうするの。
チルドレンに選ばれてからずっと、アタシはひたすらにシンクロテストを続け、シンクロ率はトップの座を守っていた。
だけどひとたびエヴァを降りれば、アタシは背もちっちゃくて力も弱い、無力な子どもでしかなかった。
243:霧島愛 ◆MANA20euME
08/04/17 20:32:56
うすうす気づきはじめてはいた。
だから余計に、エヴァに縋ろうとした。
エヴァに乗っていればすべてを忘れられる。強い力を持った気になれる。
だけど、それは自分の力じゃない。
拘束具にがんじがらめに固められ、5分しか持たない電源に縛られ、そして上官の命令には絶対服従。
それはあの小学校となにひとつ変わらない。
気づかないふりをしていた。
だけど、エヴァに嘘はつけない。
お見通しだったんだ。ママには、弐号機の中にいるママには。
低下していくシンクロ率。
焦れば焦るほど泥沼にはまる。
認めたくなかった、自分の弱さを。学校で嫌というほど思い知らされた自分の弱さを、エヴァに乗ってまで味わいたくなかった。
怖かった。
そんな折、サードチルドレンが選ばれたという知らせが届いた。
3人目の適格者。男の子だという。
彼は、NERV総司令の息子。
244:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/04/17 21:42:29
>>232
どうも作者のサイトでやっている再構成物FFの外伝みたいだね。
そんな物を説明もなく、いきなり投下し出す時点でよっぽどのナルな人
なんだろうかと思うがけど。
245:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/04/17 21:52:12
>>244
なるほど納得
作者の他の作品の傾向みたいに一筋縄じゃない展開かな
それはともかく書きながらっぽい投下は読みにくい
纏めてメモ帳に書いて投下はコピペとかは無理なんだろうか
246:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/04/17 22:10:43
ていうか自サイトあるなら、なんでそこでやらんの?
その作品全く知らないコチラはどうすれば…
247:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/04/17 22:15:55
おまえら、いい加減スルーを覚えろよ
248:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/04/17 22:30:00
スルーって、一応作品投下されてるワケだし、外伝作だってのも知らなかったし
249:霧島愛 ◆MANA20euME
08/04/18 19:36:27
>>243
たしか、梅雨が一週間ほど続いた金曜日だった。
アタシはまたいつものように学校から逃げ出して…あてもなくバスに乗って、この街へ来ていた。第3新東京市から
山を越えて、軍の基地があちこちにあって街のそこかしこを米兵が歩いているこの街へ。
静岡県御殿場市。雨に煙った山の中腹に戦略自衛隊御殿場基地が見える。街のはずれを走る東名高速のガード下に
アタシはうずくまって、泥だらけになった制服のスカートを抱え、何時間かそうしていたけれど雨はいっこうに
止まなくて、濡れた身体がすっかり冷え切ってしまっていた。
そんな街で彼に出会った。
「オイ、お前…どうしたんだよ?」
話しかけてきた声にアタシはようやく顔を上げる。
短髪とそばかすの一見気弱そうな少年、そして彼の連れらしい褐色肌の少年と茶髪の少女、それに…
「君、その制服は第壱中『イッチュー』のじゃないかい?名前は?」
「…アスカ…惣流アスカ」
「アスカか。僕は碇シンジだ。そんなところに黙ってると風邪ひくぜ、うちに来いよ。いいよなマナ?」
「大丈夫~今日は母さんも義父さんもいないから」
「あ、彼女は霧島マナ。僕の義姉貴“アネキ”だ」
アイツに初めて会ったのはこのときだ。
このときは夢にも思わなかったわよ。まさかアンタが、“御殿場中『テンチュー』の碇”と呼ばれ恐れられる程の男だったとはね。
アタシはこの日初めて、NERVの訓練以外で“外泊”をした。
250:霧島愛 ◆MANA20euME
08/04/18 20:13:46
それから3日間、アタシたち5人は童心に返って遊び回った。そばかすの少年はケイタ、褐色肌の少年はムサシといった。
ムサシの家はママがフィリピン人で飲み屋をやっていて、雨がやんでカンカン照りになった翌日、みんなでジュースをごちそうになった。
シンジとマナの家はママが女流作家で3階建てのとても大きくてきれいな豪邸だった。マナのママ、つまり
シンジの義母は児童文学が専門だそうだ。アタシは自分の家からママの宝石箱を持ってきた。アタシの大切な宝物だ。
わあ、きれーい。
うんこの赤いイヤリング見て、光に透かすと中に十字架がみえるの。
アタシとシンジはちらばした宝飾品に胸を踊らせながら、安全ピンで初めてピアッシングをした。慣れない痛みに
二人して半ベソかきながら、それでもなんとかお揃いのピアスを左耳につけた。
僕たちこれでほんとの友だちだね。
うん。十字架になっちゃうまで、ずっと、ずっと友だちだよね、シンジ…
当たり前じゃないか、僕たち死ぬまで一緒だよ、アスカ…
白い巨大な女神が黒球を抱え、人類は皆赤い宝石に心の十字架を携えて還っていく。みんな、女神へのラヴレターを持って。
東名高速の非常階段で、石積み遊びを教えてもらった。崩しちゃったら罰ゲーム。アタシは慣れなくてすぐに崩しちゃって、ケイタに
さんざん笑われた。悔しくて手が真っ白になるまで泣きながら石を積んでいると、ムサシが背中をさすってなだめてくれた。
本当に楽しい、つらいこともいやなことも忘れられるひとときだった。
アタシにくっついて、シンジやマナ、ムサシは第3に乗り込んでくるようになった。彼らを知っている者も
第壱中には多くいたようで、ちょっとツッパっていただけの連中はすぐにアタシを避けるようになった。それがとても心地よくて、
本当に心強い味方を得たものだと思った。いや、自分が強くなったと勘違いしていた。
251:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/04/18 20:53:21
ごめん。まず何の作品の外伝か教えてくれ
サッパリわからん
252:霧島愛 ◆MANA20euME
08/04/18 21:27:09
どうも、きつねです
ごあいさつおくれました
>>251
URLリンク(www.eva-lagoon.net)
こちらの【女神へのラヴレター】の前日譚(13歳編)を今かいてます
今ケータイしかないのでまとめ書きはチトむりぽです
ではフロはいったらまた続きをかきます
253:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/04/18 21:57:38
>>252
携帯でもメモ帳やメール本文部分にまとめ書き出来る
254:霧島愛 ◆MANA20euME
08/04/19 01:09:46
>>250
だけど、シンジたちに刃向かおうとする者たちにはそんなことはお構い無しだ。
たまたま、シンジたちがいないときを狙われた。
同じ一年生の支倉キョウジといったか…色黒でドレッド髪の男が仲間を連れてアタシを取り囲んできた。ヒカリが一緒に
いたけれど立ち向かえるはずもなく、アタシたちは校舎裏の草むらに連れ込まれて突き飛ばされた。
シンジ、ムサシ、彼らと共にいたアタシにキョウジたちは目を付けたんだ。
理由なんか、ただ目障りだ、それだけ、そして単に弱いものをいたぶって楽しんでるだけだ。ブラウスを引き裂かれてアタシは
地面に倒された。身体がすくんで立ち上がれない。
弱い自分、それをはっきり自覚した。
力が無い。
胸に刻まれた傷から血が流れて、殴られた頬が意識を朦朧とさせる。いじめっ子に囲まれていた小学生の頃、だけど今は、
獰猛な男たちに囲まれた処女。
ヒカリの悲鳴が聞こえた。アタシは声も出なかった。
助けを求めることさえできない。
シンジ、あなたならこんな奴ら、鎧袖一触に蹴散らせるでしょうね。
ムサシ、あなたがいてくれたら…!
「アスカぁーっ!いや、やあぁーっ!」
背後から羽交い締めにされ、腹を蹴られてむりやり脚を開かせられる。
「おとなしくしてろよっ」
「すぐにいい気分にしてやっからなぁ?」
「キンパツ外人女は今ぐらいが食べ頃なんだよ」
もう…やられちゃうんだ…
255:霧島愛 ◆MANA20euME
08/04/19 01:11:44
ガチッ、と、金属とコンクリートのぶつかる音がした。
異様な緊張が空気を締めつけてあたりに満ちる。
ヒカリの息をのむ声がした。
「ア…」
風切り音がアタシの頭上を飛び越して、肉と骨の潰れる鈍い音がした。
跳ねる黒髪、翻る長尺のスカート、そしてその右手に握られた…歪んだ鉄パイプ。吹っ飛ばされた男が血を吐きながら地面を
転がる。彼女はすぐに次の獲物を探して腕を振り上げる。唸り声とも雄叫びともつかない不気味な息遣いが聞こえた。
血の匂いだ、懐かしい。
懐かしい。
戦い。
骨を砕け。殺せ、なるたけ苦しむようにしてね。
そうでしょ…綾波…
「あっ、綾波さん…!」
しりもちをついたまま、這いずってアタシはとにかく逃げようとした。ヒカリが震える手でアタシを抱き寄せる。
泥と血に汚れてアタシたちは、二人抱き合って震えていた。
アタシたちを傷つけた。
許せるわけない。
殺してやる。
256:霧島愛 ◆MANA20euME
08/04/19 01:13:07
綾波はがむしゃらに鉄パイプを振るい、男たちを打ち倒していく。その表情は普段の彼女とは全く違っていた。
人間のものではないような気がした。
だけど、声はたしかに…綾波のもの。
「ぐあああっ!」
腕を折られた男が絶叫を上げてうずくまる。
綾波はさらにそいつに向けて鉄パイプを振り下ろし、アタシは思わず目をつぶって顔を背けた。
「うおらぁっこのぉ!あたしを見たなぁァッ!?」
土ボコリと血が混じって飛び散り、肉片もその中に混じる。
「上等かッ!?上等くれんのかって訊いてんのよっ!?」
三白眼になった瞳と唇の端からこぼれる涎がアタシの目に焼き付く。
何…なんなのよ、これ…
「アスカに手ェ出す奴はっ!死ねや!死んじまえよゴラァぁぁッ!」
死…ダメ、ダメよ綾波!本当に殺しちゃう!
このままじゃ…止めなきゃ!
でも身体が動かない。怖くて動かない。アタシは何を怖がってるの?男たち…それとも…
怖い、弱い、無力。無力なのはアタシ。
無力。弱いもの。
いじめられてる…
257:霧島愛 ◆MANA20euME
08/04/19 01:14:24
ヒカリも腰を抜かして立てない。
アタシがやらなきゃ…アタシが!
その時、アタシたちの後ろから飛び込んできた少年が綾波を取り押さえようと向かっていった。
「やめろっ綾波!もういいだろ、そこまでにしとけっ!」
綾波は彼の声も耳に入らないようで暴れ続けている。振り回した腕が彼の顔やわき腹をどついていく。
それでも少年は綾波を離さない。
「マジで殺っちまうって!おい!聞こえてんのかッ!」
肘が顔面に直撃する。
「綾波ィィッ!ってえな!」
「…!」
電池の切れたおもちゃのように綾波はだらりと腕を落とした。
アタシもヒカリも呆然として二人を見つめている。
「む…ムサシ君…?」
綾波は鉄パイプを地面に落とし、返り血まみれの顔で振り向いた。
「なぁによぅ…リーくんじゃないの、どしたのぉ?」
その声があまりに能天気すぎる普段どおりの調子で、アタシたちは再びあっけに取られた。さっきまで化け物のように
暴れまわっていたのが嘘のように、彼女はアタシたちに微笑みかける。
258:霧島愛 ◆MANA20euME
08/04/19 01:15:49
「だぁいじょーぶだった、アスカ、洞木さん?あ、制服いたんじゃってるね」
綾波はアタシたちの具合をみながら、ポケットから煙草を取り出して一服した。
「は…はは…」
気の抜けた声しか出ない。ムサシは呆れ気味に言った。
「ったくよう、たまにこっち来てみればコレだぜ。あんま派手なことしてっとまた停学くらうぞ?」
「あなたに言われたくないわね」
「ほっとけ」
「ところで霧島さんたちは?」
「しらねえよ、基地にでも行ってんじゃね」
向こうに転がされた男たちは時折呻いてはもがいてる。綾波はまるで他人ごとのように、早くバックレようと
言ってきた。アタシたちはそのまま、逃げるようにその場を後にする。
どうしよう。これがばれたらアタシたちまで怒られちゃう。
そんな心配をよそに、ムサシと綾波は颯爽と歩いていく。アタシたちは駆け足で追いかける。
ほどなくNERVからの呼び出しが来た。ただし綾波だけ。
ときどき司令から個人的に呼ばれているみたいだけど、何なんだろう。
綾波が行ってしまうのを待って、ヒカリがおそるおそる言った。
「ね、ねえ、やっぱりあの噂…本当なのかなあ?」
「なんだよ噂って」
「あ、綾波さん…駅裏の売人から盗んだクスリ売りさばいてるって…それで、自分でもやって…」
259:霧島愛 ◆MANA20euME
08/04/19 01:17:09
青ざめてるヒカリはさっきの光景を思い出してる。ラリってぶち切れてたとでも言うわけ?
「噂だろ、噂…んなわけねえって」
ムサシは気楽に否定するけど、ヒカリは心配と恐れが半々くらい。
アタシも思い出す。あの戦いぶり…エヴァで模擬戦をやったときはあんなに強くなかった。エヴァと生身は当然違うけれど、でも…
違い、その違いはなにか、アタシを強く奮い立たせてくれた。
「…かっこよかった」
「え?」
「綾波さん。アタシもあんなふうになりたい…強くなりたいよ」
見上げた空にアイツの顔が浮かんでる。ヒカリが慌ててアタシの肩を揺さぶる。
「あ、アスカ!?本気で言ってるの、だめだってそんなこと…!」
そういう意味じゃない。
「ケケケ、オメーにゃ無理だろぉアスカ?んなちっけえ身体でよ、まずぁ背ぇのばさねえとな」
いたずらっぽく笑いながらムサシはアタシの頭をなでる。
た、たしかにアタシはちびだけど。腕も細いし、これは女だから仕方ないけど、でも綾波はあんなに強い。性差なんか関係ないよ。
「いっ、いいでしょー思うくらい!アタシだって今におっきくなって強くなるんだからっ」
「はいはい、そんなら毎日牛乳のむか?カルシウムとれよお」
「むー!」
ぽかぽかとムサシの背を叩き、だけどアタシは楽しかった。こうしてみんなといられることが。
夏の太陽がアタシたちをまぶしく照らし、笑顔は輝いていた。きっとこのときのアタシたちには希望があった。
たとえそれがすぐに潰えてしまうものだったとしても。
260:霧島愛 ◆MANA20euME
08/04/19 17:42:29
>>259
「またなの?」
本部に着くなり、赤木博士にそう言われた。
「その顔よ」
「え、顔…あ」
そういえば、返り血を拭いてないままだった。赤木博士がため息をついて肩を落とす。
「本当に…誰に似たのかしらね。まあいいわ、腕を出して」
育ての親じゃないかなあ。皮肉屋なのは赤木博士に。喧嘩っ早いのは、若い頃の碇司令がそうだったみたいよ。
博士はいつものように“メンテナンス”の準備を進めていく。私が普通の人間と違うっていうのはわかってる。地下の白い巨人、第2使徒リリス…
小さい頃に何度も見上げた記憶がある。私はあの地下で生まれ育った。
腕を消毒し、注射器の針がゆっくりと刺し込まれる。
かすかに漏れる血がアルコールに溶けていくのを眺めながら、静脈に注ぎ込まれる薬の感触を確かめる。
「あの、赤木博士」
「なに?」
「サードチルドレン…こないだ写真見せてもらった、あの彼ってまだ呼ばないんですか?」
博士は物珍しそうな視線を私に向けてる。
「彼はあくまでも予備よ。今はあなたとアスカで十分でしょう」
それとも彼のことが気になるのかしら?
嫌みな瞳だね、博士も。私はじっと見つめ返す。もう身長165センチを超えた私は博士と向かい合っても
視線が同じ高さ。いつまでも子どもじゃないのよ、見くびってると痛い目に遭うんだから。
261:霧島愛 ◆MANA20euME
08/04/19 17:43:53
「でも、…アスカのこと」
「それはあなたが気にしても仕方ないわ。彼女自身の問題よ」
冷たく言い放つ。
何を隠してる?隠しごとじゃなくても、気持ちを隠してる。アスカのシンクロ率が最近、だんだん落ち気味なのはみんなわかってるでしょ。
博士はもちろん伊吹二尉も、他のスタッフも。原因の究明は当然やっているだろうし、それなのに何も言ってこないのはどういうこと?
それはそうとレイ、
「なんです?」
「あなた、こないだ“蒼龍会”の構成員とトラブルを起こしたでしょう。ちゃんと聞こえてくるのよ、保安部が仲介したから
いいけれど、あまりやりすぎるとこっちでも面倒見きれないわ」
「…気をつけます」
まあ。
やってることは、NERVの後ろ盾でもなければ一介の中学生にはとてもじゃないけど無理すぎることだし。たとえば霧島さんにしても
戦自がバックについてるからわりと好き勝手やれてる。
食い物にされてるだけだって?どうだか。
第壱中や、御殿場中の3年坊連中に流す分だけなら大したことじゃない、けど問題はそんなことじゃない。
私は間接的にみんなを守ってる、いや違うそんなたいそうなことじゃない。
ただの自分の勝手でしょ。
司令のお世話する時とか、男の子と遊ぶ時とか、あとはひとりでマッタリしたい時とかね。
262:霧島愛 ◆MANA20euME
08/04/19 17:45:30
蒼龍会『そうりょうかい』といえばこの街のみならず関東全域に広く勢力を持つ一大組織。代々、惣流家当主が会長職を務めてる。
…そゆこと。
お嬢様なのよね、なにげにアスカも。小学校低学年の頃は、家政夫の田宮さんによく遊んでもらったっけ。あの人も
今は組いっこ任されてるんだっけ?
博士の研究室を出ようとしたら伊吹二尉と入れ違いになった。あわてて私をよけて、レイちゃんまたですかとか怯えた声で博士に言ってる。
ヘッドハンティングだかなんだか知らないけど、きっと小さい頃から箱入り娘だったんでしょうね。やんちゃした経験がない。
司令執務室の前に立ち、いつものようにインターホンに向かって呼びかける。
「綾波レイ、参りました」
ややあって司令の返事が、待ち焦がれたように返ってくる。
サードチルドレンの彼のことを聞いてみようか?司令の息子だっていうし。それとも、できれば思い出したくないことだろうか。
顔の血はまだ洗ってないけど、どうせシャワーを浴びるんだからまあいいや。
初めて喧嘩して汚れた顔のまま帰ってきたときは司令びっくりしてたけど、今はもう慣れたみたい。ちょっぴり寂しそうに、
でも違う意味で興奮してたり。不思議なものだね人間って、ぼけっと突っ立って私はそんなことを考えていた。
疼く。
昼間のクスリがまだ抜けきってない。
263:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/04/25 01:04:32
ほしゅ
264:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/04/26 10:21:54
投下町
265:1 ◆FPBUMtkkbw
08/04/27 10:47:07
どれだけ長く、一体何故眠っていたのか。エヴァに乗って・・・それで・・・。
目を覚ますと、私は真っ白な砂浜に横たわっていた。
何故こうしているのかはわからない。空は暗く、星が瞬いていた。
体を起こそうと右手を着く。その腕に巻かれた包帯に気付いたが、特に痛みも無かったのでそのまま体を起こした。
顔を上げると、そこにはシンジが居た。
私の目の前で立ち尽くしているシンジの背中の更にその先には、血の様に真っ赤な海が広がっている。
「何よ・・・これ・・・」
シンジに尋ねた訳でも無く、ただ口から言葉が漏れ出た。
「アスカ!目が覚めたんだね!」
私が何の気も無く漏らした言葉にシンジは随分と大袈裟に反応した。
シンジが私の方に振り返る。その足下の真っ白な砂が舞い上がった。
「あの、その・・・ごめん」「何の事よ」
「苦しかった・・・でしょ?」「?・・・平気よ」
何か喉に鈍痛があったが、特に気にはならなかった。
私は辺りをぐるりと見回した。見慣れた物は何一つとして無い。
ここはどこで、皆はどこに居るのか。何故海が血の様に赤く、砂浜はこんなにも白いのか。遠くに見えるエヴァシリーズ。何故十字架に張り付けられているのか。
「そうだ・・・。アタシは、アイツらに・・・」
徐々に記憶が甦って来た。そう、私はアイツらに負けて・・・死んだはず。
だが、今の私には傷一つない様に思えた。まず右腕の包帯を外してみる。
やはり傷は無かった。次に恐る恐る左目の包帯を外す。
・・・大丈夫だ。ちゃんと見える。
「・・・アンタ、いつからここに居るの?」「多分、アスカと同じ。目が覚めたらアスカが横に居たんだ」
「そう。・・・ミサトは?ネルフは?皆は?」「わかんないけど・・・皆にはもう、会えないと思う・・・」
266:2 ◆FPBUMtkkbw
08/04/27 10:49:16
シンジの放った言葉はとても衝撃的だったが、私にも既にその予感はあった。
この世界にはきっと、私とシンジの二人っきりなのだ。
「・・・そう。皆には会えない・・・か。―これからどうするのよ?」「どう・・・しよっか」
そんな不安そうな顔されたって、アタシだってどうしたらいいかわからない。
でも、生き残る術を探すしかない。
「・・・とにかく、何か探しましょ」「あ、うん。そうだね」
私達は赤い海に背を向け足を踏み出した。何かあるという根拠等勿論無く、ただ漠然と歩を進める。
しばらく歩くと真っ白な砂浜が終わり、赤茶色の固めの地面に変わった。
だが、人工物は一向に見当たらない。そもそもここが日本と呼ばれた場所だったのかさえわからない。
ただ、歩き続けた。
足が痛み始め、地面の色がいつしか灰色に変わった頃、遥か遠くにビル群らしき何かが見えた。
「シンジ!あれ!」「うん。・・・何だろう。ビルかな」
「とにかく、あそこまで行くわよ!」
私達は休息を欲するその両足を無理矢理に進める。とにかく、何か人の痕跡を見つけたかったのだろう。
足がもはや本当に棒の様になる程に歩いた。そしてそれを目の当たりにする。
「何なのよ・・・これ」
それは私達が求めた人の痕跡に違いなかったが、もはや瓦礫の山と呼んで差し支えない物だった。
倒壊したビル群。なぎ倒された大量の家屋。ほとんど鉄骨だけになっている建物もある。
「アスカ!あの看板!日本語だよ!」
シンジが指差した先には地面に半分程埋まったボロボロの看板があった。そしてそれは間違いなく私達がよく見てきた物だった。
「じゃあ・・・ここは日本なのね」「うん。それに多分第三新東京市の近くだよ」
267:3 ◆FPBUMtkkbw
08/04/27 10:52:08
「何でわかんのよ」「だってほら、向こうにネルフのロゴ入りのお店みたいのもあるし」
私はまたシンジの指差す先を見た。確かにシンジの言う通り、ここは第三新東京市と呼ばれた場所の少なくとも近郊らしい。
その面影はもはや皆無と言ってもいい位だったが。
「・・・じゃあ食料もあるかも知れないわね。行きましょ」「あ、うん」
私達は殺伐とした廃墟に踏み入った。人の気配は勿論無い。
所々にネルフが携わっていたであろう建物はあった。だが、ネルフ本部があったはずのジオフロントや兵装ビル群等はどこにも見当たらない。
「ねえシンジ」「何?」
「一体ここで何があったの?」「・・・僕にもよくわかんないんだ」
シンジは一瞬間を置いて言葉を続ける。
「・・・でも、ここで戦ったんだ。人と。それと、エヴァ達と」「・・・エヴァシリーズね」
「うん。それから・・・サードインパクトが起きたんだ。・・・多分」
シンジの先を歩いていた私は足を止め、振り返る。
「サードインパクトが!?・・・じゃあ何でアタシ達は生きてんのよ?」
「それは・・・僕にもわからないよ。でも、二人だけが生き残ったんだ」
そこまで聞くと、私はまたシンジに背を向け歩き出す。
「・・・ホント、何でアタシ達生きてんのかしらね。エヴァに乗ってたからかしら?」
「そうかもしれないけど、でも弐号機は、その・・・」
シンジが言い辛そうにしているので、私から切り出す。
「そうね。目茶苦茶にやられたもんね」「う、うん」
「そう・・・アタシはあの時、死んだはずよね。・・・アタシ達、本当に生きてるのかしら」「・・・多分」
それからはただ黙々と歩み続けた。原型を留めぬ建造物達の間を彷徨い続ける。
268:4 ◆FPBUMtkkbw
08/04/27 10:54:13
「・・・何も無いわね」「・・・うん」
捜し回るのに疲れ果てた私達はついに足を止めた。座るのに適した瓦礫を見つけ、腰を降ろす。
「どうすんのよ。これから」「・・・わかんない」
二人で灰色の世界を眺めた。そこに希望なんてものは微塵も存在しない。
水も食料もない。足の疲れだけが残った。
「ねえシンジ」「何?」
「アタシ達、ここで死ぬのかな」「・・・」
シンジは俯き、ただ呆然と地面を見つめているらしかった。
「・・・寝る場所だけでも探しましょ」「・・・そうだね」
立ち上がる事を拒む両足をなんとか踏み出し、今夜の宿を探す事にする。
私達は屋根と壁がなるべく崩れていない廃墟を見つけ、そこで一晩を明かす事にした。
「ハァ・・・こんな所よりは病院のベッドの方が千倍マシね」「病院!?―あ、いや、何でもないよ」
シンジが何故か取り乱す。私はいちいち問い質すのも面倒だったので気にしない事にした。
何か布団の代わりになりそうな物を探しに建物内を散策する。窓にカーテンがあったのでそれを二人で引き剥がした。
更に奥へと進む。
大きなL字型のソファを見つけ、それをベッド代わりにした。二人で頭を寄せる様に横たわる。
「ところで今って夜なの?」「わかんない。でも、眠いよ・・・」
「そうね。アタシも疲れたわ。・・・明日、朝は来るのかしら」「・・・」
応答しないシンジの様子を窺うと、既に寝息を立てていた。
「・・・バカシンジ」
私も重い瞼を降ろす。一日中歩き回り疲れ果てた私はすぐに深い眠りに落ちた。
269:5 ◆FPBUMtkkbw
08/04/27 10:56:40
ジリリリリリリリリリリ!!!
どれ位眠ったのだろうか。私はやかましい目覚まし時計を止め、起き上がり、体を伸ばした。
真っ白な清潔感あふれる部屋。光の差し込む窓に目をやる。
そこには見慣れた青い髪の少女が居た。
「・・・ファースト!?アンタ何やってんのよ!?」「・・・新しい世界はどう?」
ファーストはゆっくりと私の方に向き直るとそれだけ言った。
「新しい・・・世界?」「そう。アナタの為の世界」
「アンタ、何言ってんの?」「―駄目よ。今更逃げる事なんて出来ないわ」
刹那、私の頭に全ての記憶が流れ込む。
「ッ・・・!ハァ・・・ハァ・・・そうだったわね・・・私は・・・」「そうよ。それがアナタの現実」
「ちょっと待って・・・。アンタさっき、アタシの為の世界って言わなかった?」「言ったわ」
ファーストは淡々と言葉を続ける。
以前会った時とは違い、なんだか妙に達観した様子だった。
「どこがアタシの為なのよ!あんな世界の!」「アナタが望んだ事よ」
「アタシが!?あんな世界を!?」「そうよ。碇君と、二人きりの世界」
「な、なんであんな奴と!!」「・・・ここでは嘘はつけないわ」
訳がわからなかった。目の前のあんなに無口だった少女がよく喋る様になったかと思えば、
全てを見透かす様な目で私の理解の範疇を超えた話を淡々と続けているのだ。
そして、ここでは嘘はつけない?じゃあ、私の考えている事は全てファーストに筒抜けだっての・・・?
「ま、まあいいわ。じゃあ世界があんな風になっちゃったのは、アタシがシンジの事を好きだったからってわけ?」「あら、そうだったの」
「ち、ち、違うわよ!!!」「・・・元の世界に戻りたい?」
「も、もちろんよ!・・・戻れるの?」「ええ。でもその世界ではアナタはきっと幸せになれないわ」
私が、幸せになれない?・・・でも今の世界に居たって、ただシンジと死を待つだけじゃないの。
そうよ。シンジと、二人きりで・・・。
「悪くない?」「ウ、ウルサイッ!!」
270:6 ◆FPBUMtkkbw
08/04/27 10:59:15
「・・・どうやったら戻れるの?」「簡単よ。命の海に足りないのはアナタだけだもの」
命の海?また訳の分からない事を。
足りないのはアタシだけ?何の事よ。
「アナタも見たでしょ?あの真っ赤な海の事よ」「・・・ア、アンタねえ・・・まあいいわ。じゃあアタシがその海に飛び込めばいいって訳?」
私は冗談っぽく言った。
「そうよ」「え!?そうなの!?」
「正確には溶け込む。そうすればサードインパクトは完遂される」「・・・そしたら、アタシとシンジはどうなるの?」
その答えを聞く前に強い風が吹き、純白のカーテンが大きくなびいた。それが元の位置に戻ると、もうファーストの姿は無かった。
部屋の照明が落ちる。純白の部屋は暗闇に包まれた。
バサッ
私が飛び起きた反動で薄汚れた灰色のカーテンが床に落ちる。
「・・・夢?」
嫌な汗をかいていた。
外は薄暗く、どうやら朝は来てくれなかったらしい。長く陽の光を奪われた為か、周囲は肌寒くなっていた。
「あ、アスカ。起きた?」「シンジ?・・・何よそれ」
シンジは何か缶詰の様な物を開いていた。
「非常食だよ!すぐそこにネルフの地下シェルターがあったんだ。ほら、水もある!」
シンジは満タンのペットボトルを私に差し出しながら言う。
「ありがとう」
私も喉がカラカラだったので、受け取ると一気に半分程まで飲み干した。
そしてシンジに促されるままに缶詰も完食する。
「お腹が空いてるとこんな物でもホントにおいしいわね」「ゴクッ・・・うん」
シンジは床に座り込み、二つ目の缶詰に手を着けていた。少し肌寒くなってきた。
私はソファから立ち上がり、シンジの背後に回り込む。
「うわっ!ア、アスカ?」「・・・アンタも・・・寒いでしょ?」
シンジの背中から腕を回し、抱き締める。その背中は温かく、早くなっていく心臓の鼓動も感じられた。