07/12/11 22:18:01
それは初号機の胸へと突き刺さって、溶着したように固定されると、さらに真ゲッター
の関節という関節から大小長短あらゆるダクトが伸びて、同じようにエヴァの関節に
突き刺さっていく。
初号機がまるで重病患者のような姿になっていく。
そうするとシンジの体のあちらこちらにチクチクとしたむず痒い痛みが走った。
これに、
「あぁぅ……」
と、彼が悶えたが、その肩に乗ったアスカとカヲルの掌が耐えろ、と呼びかける。
妙な感覚に必死に耐えていると、やがて完全に接続が終わったようだった。
真ゲッターから初号機にむかってエネルギーが流れこんでくるのを、シンジは体の芯か
ら熱されていくような感覚で理解する。
その真ゲッターから、竜馬の声が響いてきた。
彼は問う。
「シンジ。てめえの望む世界はなんだ。この地獄か!」
「……今まで通りの世界がいい。こんな形になってまで他人と一緒になりたくない」
「なら再び人類が地上に広がる様をイメージしろ! この海を作ったのがエヴァの力だと
するなら、その逆の力もまたエヴァは持っているはずだ!!」
「竜馬さん」
「インベーダー野郎に目に物見せてやろうじゃねえか。人間の恐ろしさをな!」
その言葉に、シンジが深く頷いたかのように見えた。
彼は静かに目を閉じると、なにやらぶつぶつとつぶやき始める。よく聞いてみればどう
やら、知人友人の名前を挙げて声にしているようだった。
それのみにではない。
知識にあるだけの、あらゆる人種、すべての生き物の名称をも挙げていく。
解らないものは地球に住まう大いなる命としてイメージする。
名前が一つ挙がるごとに、真ゲッターから送り込まれるゲッター線エネルギーが反応し
てダクトが輝いた。
701:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/11 22:18:08
猿なんぞされると思うから規制されるんじゃ~!支援
702:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/11 22:19:33
それを受けるにつれて、初号機の瞳に変化が生じる。
まるで、真ゲッターのように黒目が浮かびあがっていくではないか。
同時に初号機の羽根がばさりと羽ばたいた。
すれば、今度は初号機の方からエネルギーが逆流して、真ゲッターへ流れ込んでいく。
各ゲットマシンのコンソールに、アルミサエルが融合した時をもはるかに上回る数値の
ゲッター線指数がはじき出されていった。
初号機の羽ばたきに合わせるように、真ゲッターの羽根もいよいよ巨大化して左右へと
広がっていく。
エヴァンゲリオンとゲッターロボが共鳴しているのだ。
空間が震える。
いよいよフルパワーとなる二体が、渦をつくって海上へと浮かびあがっていく。
風が吹き荒れた。
だが浮かびあがるのは、何も二体の巨人だけではなかった。
ざばり、赤い海からヒトの姿が現れたのだ。
誰だろうか。
驚くべきことに、それは学校と共に吹き飛んだはずの鈴原トウジだったのだ。
衣服を一切身にまとっていないが、確かにトウジであった。
そして彼が出現したのを皮切りに、ケンスケが、ヒカリが、ざばり、ざばりと赤い海か
ら浮かび上がって、空へ浮いていく。
その勢いは次第に増していき、ヒトを初めとして樹木から単細胞生物に至るまで、地球
上に住まうありとあらゆる生命が赤い海から、次から次へと浮かびあがっていく。
目に見えなくとも細菌やウィルス類も浮かび上がっているだろう。
なにが起きているのか。
リツコは、はるかな未来において終号機が、自身の内部にひとつの宇宙を創り出してし
まうまでの創造の力を手に入れるといっていた。
ならば、生命の進化を司るゲッター線エネルギーの力を受ける初号機が、その鱗片を見
せ始めているのだ。
703:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/11 22:20:39
再生の時だ。
滅びた生命がよみがえっていく。
赤い海が再び個々の生命となりて蒸発していった。
すると、天の底が抜けたような大雨が降り注いでくる。
宇宙から見れば、地球がガス惑星のように見えるほどの雲が立ちこめていたであろう。
滝のような雨が乾いた大地に、本来の海を満たしていく。
そこには文明の産物であるものは何も無かったが、代わりに緑が広がって土のにおいも
香る世界が地球全土に広がっていった。
まるで、新世界がそこにあるようだった。
地球が現在の状態に至るまでを、超スピードで見ているかのようだ。
それを、ただひとつ残った文明の所産であるネルフ本部が肉眼で捉えていた。
ゲンドウも冬月もミサトもマコトもマヤもシゲルも、その他に生き残っていた全ての職
員たちも再生していく地球の姿を目の当たりにする。
みな、息を呑まれていた。
やがてその監視するモニタに、一列に並んで天空へと浮かび上がっていく真ゲッターと
初号機の姿が浮かび上がった。
その現場では、将造が大笑いをしていた。
「うはははは……体が熱いのお! こんなに気分が高鳴るのは久しぶりじゃあっ」
「ついに、終号機への夢が繋がったわね」
リツコも笑った。
そして竜馬。
「見たかシンジ、これがお前たちの持つ創造の力だ」
そういうが、シンジはまだ自分のしたことが信じられないらしく、丸く目を見開いて辺
りをきょろきょろとしているだけだった。
704:ここまで
07/12/11 22:23:11
もはや落ちてくる月のことなど、眼中にもない。
くすり、とカヲルが笑った。
アスカはしょうがない奴だ、といった風に彼を見ている。
「竜馬さん……み、みんな空に浮いてる」
「今はゲッター線が初号機を通して、すべての生命に力を貸している。あのインベーダー
野郎共を完全に消滅させるためにな。
ここからは戦う力の出番だ。ストナーサンシャインを使うぞ」
「ストナーサンシャイン」
「ああ。真ゲッター最大の武器だが……ゲッター線は生命のエネルギー。生きようとする
意思を持つ者すべてが扱える武器だ。地球の総力で月を撃つ! お前も手伝えっ」
そういうと、真ゲッターと初号機をつなぐダクトが全て解除された。
そして真ゲッターが深く腰を落とすと、ボールを両手で持つように両の掌を開いて、そ
れを腰の横へと回していく。
ごうごうと掌の間に電撃が走って、虹色に輝く光の球体が生まれていく。
すると、辺りに浮く人間たちが真ゲッターと同じ姿勢を取った。
その手の中にそれぞれのサイズに見合った光球が発生して、辺りが虹色に輝いた。
周辺の人間だけではない。
作戦司令室も含めて、世界中の人間が同じ動作を取って真ゲッターと同じ姿勢を取って
ストナーサンシャインを撃つ体勢になっていくのだ。
そしてシンジの初号機も腰を落とすと、両の掌を開いて上下に向かい合わせると空間を
作った。そこにやはり七色の光球が生まれていく。
みな見つめる先はひとつ、落ちゆく邪悪な顔をもった月だ。
それが見えない地球の裏側では、ただ天空に向かって睨み付けるような視線を送る。
やがてシンジと竜馬が叫んだ。
705:ごめんもう一個いけた
07/12/11 22:24:24
「竜馬さん!!」
「いくぞシンジィ!!」
ふっと、息をつく。
そして次の瞬間、地球全土から一斉に声が轟いた。
「ストナーーーッ!! サァァアアアンッシャィィィイイイイーーーンッッ!!」
怒号に地球が震えた気がした。
宇宙から見た地球の表面全体から七色の粒が舞い上がってばっ、と弾けたかと思うと、
それらが月に向かい飛んで一つとなり、やがて虹色に輝く光の波に変じていく。
美しい七色の波が月を飲み込んでいく。
そうすれば月に張り付いた顔が恐怖に歪みゆく。
命の輝きを受けて苦しむが、それもいつしか虹の光の中に消えていってしまった。
だが、虹の光はそれだけにとどまらなかった。
地球軌道の周辺が、全て虹色の光に包まれていく。
それが一瞬だったのか、しばらくだったのか、それとも永い時間だったのかは解らない
が、光が収まって晴れる頃には、月の姿は跡形もなく消え去っていた。
地球生命の勝利だ。
9レスに制限が変わったみたい。
706:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/11 22:25:28
ストナァァァ・・・って、寸前で終わりかwww
なんという焦らしプレイ。だけどGJっす!
707:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/11 22:28:27
感動。ただ感動。
708:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/11 22:50:02
さて、どうする?
709:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/11 23:13:06
エピローグか、それとももうひと波乱かw
710:名無しが氏んでも代わりはいるもの:
07/12/11 23:37:55
それにしてもなんて、凄いSSだったんだ。完結までおそらく一ヶ月チョイでこのボリューム!!
このクオリティー!!
もはやいうことはありません。
711:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/12 04:36:46
まだ終わってないよ…ね?
しかしこんなにドキドキワクワクハラハラザワザワする読み物は
久し振りだ!
マジメにアニメで見てみたいよ
712:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/12 07:34:46
敷島「まだ終わりじゃないぞい。もうちょっとだけつづくんじゃ」
713:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/12 07:57:26
>>712
それを敷島に言わせるとなんかニュアンスが違うw
714:名無しさん@お腹いっぱい
07/12/12 09:07:33
>>711
アニメは無理でしょうが。せめて挿絵付きの本で読みたいです。
サウンドノベルに成ったら最上でしょうが・・・。
715:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/12 13:28:01
実際にこんな小説でたら買うだろうな~
と思うくらいのクオリティー…読ませてくれてありがとう
716:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/12 15:47:00
まとめにUPしようとしたがWIKIWIKIが堕ちている!?
717:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/12 18:39:15
そういう時は、まず落ち着いて素数を数えつつ感情をこめてゲッターの力を信じるんだ…
718:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/12 19:36:39
インベーダーの悪あがきだろう
719:つづき
07/12/12 20:22:37
今回の投下で最後だけど、ちとレス数が足らないので今と、0時以降に分けて投下するです。
真ゲッター、初号機と共にストナーサンシャインを放った生命たちが、それぞれの住み
かである空へ、地へ、海へと元在った場所にゆっくりと、ゲッター線の光と初号機から舞
い散る光の羽根に包まれて、舞うように還っていく。
その上を、真ゲッターと初号機が飛翔していった。
それぞれ悪魔の羽根と、天使の羽根を生やした二体の巨人が並び飛ぶ姿は、人々の、い
や、すべての生命体にとってどのように感じられていたのだろうか。
個々に想いは違ったであろうが、どこからか歓声が沸くとそれが数珠のように連鎖して
声の輪となって広がっていく。
「なるほど……ガイア理論をあえて絵に表現すれば、こうなるということか。アルミサエ
ル、君もゲッターを通してこの生命の素晴らしさを感じたんだね」
と、眼下で小さくなっていく生命を見ながらカヲルがいった。
なお補足だが彼のいったガイア理論とは、一九六〇年代によって大気学者ジェームズ・
ラブロックという人物によって提唱された仮説である。
地球と地球生物は、互いに干渉し合いながら環境というひとつのシステムを作り上げる
ことで存在するものであり、すなわち完成しているものだとする理論だ。
先に乱筆した、宇宙システムにおける話を地球に限定したものともいえる。
この考え方には異議も存在するが、我々日本人には非常に理解しやすい話でもある。
なぜなら、日本特有の宗教観である八百万のカミが万物に宿り天下の全てと共にある、
という考えにガイア理論は似ているからだ。
720:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/12 20:23:46
神様が全知全能の存在でなくてもいいから、この国は仏教をはじめキリスト、イスラー
ム、ユダヤ、その他あらゆる宗教が根付いてしまうのである。
こころを寛容するという意味で考えれば、今のところこれ以上の概念はないだろう。
だから、もしガイア理論が確かであれば幸せなことかもしれない。
そう考えれば、ゼーレの老人たちのように人類は行き詰まった不完全な群体などと思い
詰める必要性もないのだから。
また、仮にガイア理論が間違っていたとしよう。
それでもゼーレのようになることはない。
なぜなら、自然人類学的にも、ヒトという種が行き詰まっているとは考えられていないからだ。
我々ホモ・サピエンスは、肉体そのものよりも脳の進化を促進してきた種であるが、そ
の脳はまだまだ進化途上にあるものなのだ。
現時点で進化の可能性がまったくないのならばまだしも、人類は可能性に満ち満ちてい
るのに、今の価値観や考え方で、自らそれを断ってしまうのは悲しすぎるというものだ。
生物の進化をうながすゲッター線は、そういう自己否定の病に陥った生命に可能性を示
すためにも、あるいは存在したのかもしれない。
カヲルがそんなことを思案していると、やがて二体の巨人は唯一残った文明であるネル
フ本部の上空へと到達した。
その下では。
すでに作戦司令室のあったブロック以外は崩壊状態にあり、まわりには大穴が空いてジ
オフロントのはるか地底が露出していた。
その内部にあった遺跡も消滅している。
だが、そこに居た人々も、真ゲッターと初号機が飛ぶ姿を見ていたのであろう。
みな思い思いに地上へとはい上がって、その帰還を待ちかまえている。
721:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/12 20:24:50
そこにまず、初号機が大地へ降り立った。
そして首からエントリープラグを射出すると、真ゲッターがそれを引き抜き着地すると
ゆっくり屈んでプラグを地に置いた。
プラグからLCL溶液が噴出していくと、ハッチが開いて中からよろよろのシンジとアス
カが現れ、後ろから何事もなかったかのようなカヲルが現れる。
つづいて、その上から竜馬、リツコ、将造の三人が降ってきた。
数十メートル上から落ちたはずだったはずだが、みな当たり前のような顔をしている。
もはや真ゲッタークラスのパイロットになる人間になど、常識は通用しない。
物理的に考えるのは、止めたほうが無難であろう。
そして、それを出迎えるのはゲンドウだった。
「よう、おっさん自ら出迎えたぁ気前がいいじゃねえか」
それを見て竜馬が笑う。
「まあな……しかし。ユイはまた行ってしまった、か」
「あいつにゃあいつなりの考え方があったんだ、察してやれ。それよりてめえ、また前と
同じこと企むならこの場でぶち殺すぞ」
「いや……もう目が覚めた。それに、これだけの事が起きたのだ。誰かが責任者となって
罪を負わねば、世界中の人間が納得しないだろう。その役目は、人類補完計画に関わった
私にある」
「そうかい。ならいいさ」
それだけいうと、竜馬はきびすを返した。
これに、まさかもう帰るのか、とミサトが思って、
「り、リョウ君、まさかもう行っちゃうの?」
722:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/12 20:25:52
といったが、その予想が的中していた。
竜馬は手をひらひら振ると、
「俺の役目はここまでだ。こんなとこで三文芝居打って帰るのは嫌なんだよ」
そう応えるのだった。
すれば、焦るようなシンジが近づいていく。
彼は、
(なにか、なにか最後にいっておかなきゃ)
と思うのだが、近づいたはいいものの、どういう言葉をかけたらいいのか解らない。
しどろもどろになった挙げ句、シンジは「竜馬さん」と、彼の名前を呼ぶことだけでう
つむいてしまった。
これでは恋する少女だ。
場が変な空気につつまれてしまう。
すると竜馬は、
「あばよダチ公!」
弾けるようにいい、シンジの背中をどんっ、とゲンドウの方へ押しつけるようにした。
だが竜馬の怪力のことだ。
彼は押しつけるつもりでも、ぶつかるような勢いでシンジはゲンドウに沈んでしまう。
「い、痛い……」
と、苦痛に顔をゆがめるシンジを抱き留める形になるゲンドウが、やはりどうしていい
かわからないような目をサングラスにかくして、うろたえる。
723:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/12 20:27:14
それを見てミサトは、
(だめだこりゃ)
と思うのだった。
彼女はもう対人恐怖症親子のことは無視するとして、友人のリツコへ目を向けた。
「リツコ、やっぱりあなたもリョウ君と行くの」
「ええ。ちょっとだけ名残惜しいけどね……もうエヴァを作る必要もないでしょう。
この世界に私がいなくても問題はなにもないわ」
「初号機はどうするのよ」
「それは、ね」
と、リツコがカヲルに目を向けた。
その視線に彼はにこりと笑っていった。
「シンジ君、本当は初号機の主は君だけど、これから終号機になるためにどこかで眠りに
つき、長い年月を掛けて進化しなきゃならない。君はまだ生き足りないだろう?
だから、君がこの世の生を終えるまで初号機は僕が預かっているよ。リリスには、いや
綾波レイには僕から伝えておくからさ」
「でも……」
「気にしなくていいよ、一緒に寄生された仲じゃないか。それにしてもすごい初対面だっ
たよねぇ、僕たち」
「……はは、ははは」
インベーダーに支配されていた時の記憶が残っているので苦笑いするしかなかった。
カヲルもシトとはいえ、大した度量である。
さて。
次にアスカと将造、加持の極道チームに目を移そう。
724:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/12 20:28:15
どうやら、将造も真ゲッターの力を借りて元いた世界へ帰るつもりらしい。
彼いわくコクピットに座った瞬間、すべてが解ったとのことだった。
ハッタリである可能性も捨てきれないが。
だが、それに嘆くのはアスカだ。
「ここに残ってよっ。再会できた途端にお別れなんて、あたし嫌っ!」
そういうが、将造はアスカの両肩を掴んで唾を飛ばして叫ぶようにいった。
「なにをぬかすか。岩鬼組は銀河極道連合をこさえるんじゃあ!
竜馬の下駄ペンペンとやらなんぞに負けちゃおれんけぇ。
ワシはワシの世界でやるが、ヌシがこの世界の岩鬼組を率いよって、そして宇宙を支配
してから再びワシんところへ来いや!」
と、ただ言葉だけ聞けば狂人のたわごとのような事をわめく将造だったが、彼がいうと
そうしなくてはならない、あるいは、そうする事が宿命のような気分にさせられてしまっ
てアスカは思わず頷いてしまう。
「う、うん……わかった。あたし行くから、待ってて」
「よし! 加持ィ、後は頼むでえ」
「ああ。同じ人間兵器同士のよしみだ、岩鬼組の運営は俺がやってみるよ」
と、急かす竜馬のせいで別れの挨拶もいい加減なまま、将造も真ゲッターに向かった。
本当であれば将造みずからが配下の者達に上記の旨を通達しておくべきだったのだが、
しかたがあるまい。
やがて竜馬とリツコ、将造の三人を乗せた真ゲッターはふわりと浮かびあがると、次に
は、あっという間に宇宙へ飛び去ってしまった。
つづいて、カヲルがプラグを置き捨てたまま初号機の肩に乗ると、それははふたたび天
使の羽根を展開させる。
そして、
725:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/12 20:29:16
(じゃあいこうか、リリス)
(……私、リリスに戻るつもりはないわ。だって人間気分の方が楽しいもの)
(おっとごめんよ。綾波レイ)
とカヲルが、初号機の魂となったレイとしばらく語り合うと、真ゲッターと同じように
飛び去り虚空へと消えていった。
彼の言葉を信じるなら、地球圏のどこかに隠れてシンジに再会する日を待つのだろう。
それは、寿命が無いに等しいシトにとっては退屈な余暇程度だったかもしれない。
このとき、すでに空は夕暮れになっていた。
あの赤い雨を降らせたおぞましい空の赤ではなく、美しく焼けた紅い色に染まった天を
拝んでシンジ達が風を浴びている。
その中で冬月が、
「全て終わったか……文明を一から造り直すことになるな。それまではここが難民キャン
プと化しそうだよ。先が思いやられる」
というのだった。
が、その時のことだ。
「いかーん! 置いてかれてしもうたあっ!!」
と、どこからか敷島がばたばたと騒ぎながら走ってくる。
服を着ていることからみると、どうやら補完にも巻き込まれず生きていたらしい。
だが、来るのが遅い。
ちなみにその後ろを、敷島の真似をしてバタバタとペンペンが走っていた。
彼はおそらく補完されたと思うが、復活後、帰巣本能でも働いて戻ってきたのだろう。
ペンギンに帰巣本能はなかった気もするが、まあいい。
726:残りちょっとだけど後で
07/12/12 20:30:18
「敷島のじいさん。どうするんだい、たぶんもう戻ってこないぜ」
加持がいうと、敷島はしばらく唸っていたがやがて、
「……まあ、どうせ今後食うものを求めて暴動が起きるじゃろう、武器が必要になるな!
わしゃ武器を作れるならどこでもええんじゃい! どれ、まずは石槍でも作るか」
と、開き直っていた。
元ネルフの面々が呆然としている。
これだけ戦い抜いたあとに、休もうともせずにさらに戦うことを考え、はしゃぐエネル
ギーに毒されてしまいそうだった。
そうこうしていると、誰かの腹の虫がなった。
これに皆、何も食べていないことを思い出したのか一気に空腹感を感じた様だった。
ミサトが向こうで木をへし折って出来た棒きれに、尖った石をなにかのツルで巻き付け
ている敷島を見ながらいう。
「ま、とりあえずご飯よね。狩りにでもいこうかしら。ねえ加持君」
「なんで俺にいうんだよ」
「だってそれがヒトの習いじゃない。狩りは女の仕事じゃないわよ」
「は、早く復興しねえかなぁ……いったい何十年かかるんだろ」
加持が、がっくりと肩を垂れるのだった。
・・・
727:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/12 20:32:20
なんというハッピーエンド
支援
728:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/12 20:33:36
ラーーイジング!支援
729:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/12 20:57:07
とりあえず、Change16としてUPしてこよう。
0時以降の投下分は明日足すことにして。
730:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/12 22:23:47
隼人「また、残された・・・。」
731:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/12 22:29:39
どこまでもアグレッシブ博士な……
そして極道王参戦フラグ成立。
732:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/12 22:41:57
寝る前に覗いたら何という展開…職人さんGJそして乙!
いや、むしろ「ありがとうよダチ公!」
今夜はよく眠れそうだぜ…お前がくれた明日の夢を見ながら…
733:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/12 22:46:16
なんという敷島博士。どうみても危険物
更にどうでもいいところではあるが、加持さんが「極道チーム」扱いされてるところに吹いたw
それに竜馬の「あばよダチ公!」良いな。原作漫画で使った時の「今生の別れ」と意味合いは少し違うけど、
親しみとイキの良さがない交ぜになってるのが凄く良いや
734:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/12 23:13:46
ステキなハッピーエンドにほわほわしてますが、
まだこれで終りじゃないんだよね…
最後にドカンとひっくり返るなんてことはないよね? ね?
735:ラスト
07/12/13 00:04:02
そして、真ゲッターと初号機が地球を去ってから一〇年の歳月が流れた。
世界は一からのやり直しとなったが、しかし人類には蓄えられた知識がある。
全人類は懸命の復旧作業によって、わずかではあるが、一〇年で種々の燃料が復活して
それをもって発電所を造り、動かし、再び電気の恩恵を得られるようになっていた。
さらに特筆すべきことがある。
それは、季節の復活だった。
ゲッター線の力なのか、それとも初号機の福音か、解らなかったが、ともかくこの星に
春夏秋冬というものが復活したのだ。
小さい子供達にとっては、物心ついたあとに感じる初めての四季であろう。
なお、今は冬である。
ところは日本列島本州、神奈川の某所へ移る。
その建設途中の街の一角をびゅん、と一台のバイクが走りぬけていく。
車種は、ホンダドリームCB750FOURだ。
この車両は以前の稿でも名前が挙がっているのだが、記憶されているだろうか。
そう、ミサトが竜馬のために足として見つくろったバイクだ。
結局、彼がこのバイクに乗ったのは試乗の一度くらいで、後は乗らずじまいだったが、
竜馬が触れたことで、ゲッター線の加護でも受けたのだろうか。
文明の利器は全て消滅したはずだが、これだけは完全な状態で残されていたのだ。
なお、今このバイクに用いられている燃料は、トウモロコシやサトウキビなどから生成
するアルコール燃料だった。
というのも、化石燃料は石油採掘施設が整いきらず、生成できたものはすべて産業へと
回されてしまって個人での使用には目処がついていないのだ。
736:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/13 00:05:06
そこで、アルコール燃料の出番となった。
現代では、生成するにあたって必要な作物を育てるための土地が、供給需要に対して間
に合わず膨大となってしまうゆえ、なかなか実用化されないものだ。
が、この世界ではもとより化石燃料が限られているせいで、産業が大幅に縮小されてい
るせいで生産される一般車両も極端に少なかった。
そのため、狭い土地での少量生成でも十分に全体へ行き渡ったのだ。
いましばらくの間は、これが大きな商売にもなるだろう。
我々の住む現代とは逆の状況なのだから、皮肉といえた。
ところで、バイクのライダーは誰だろう。
丈が詰まったのが特徴の黒い皮ジャケットと、パンツを上下に着用して頭にはフルフェ
イスのヘルメットをかぶっているせいで、誰だか解らないのだ。
バイクは舗装された道から外れたり、また入ったりしながら突き進んでいくと、郊外の
一軒家に突き当たる。
そこで停車してライダーがヘルメットを脱ぎ取ると、正体が現れた。
「ふぅ」
その、白い息を吐くのはシンジだった。
一〇年の歳月は少年を二四歳の男へと成長させていたが、やはりその細い肩と、はかな
げな顔は変わっていない。
母親に似たせいだろうか。
だが、背はかなり伸びていて、およそ一八〇センチはあるのではないかと思われた。
彼は一軒家の玄関を叩くが、その瞬間に戸が開いた。
現れたのは、ミサトである。
その速さにシンジがちょっと驚く仕草を見せた後、柔らかく笑うのだった。
737:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/13 00:06:16
「お久しぶりです。もしかして玄関で待っててくれたんですか、ミサトさん」
「直四の音が聞こえたからね。シンジ君、背も高いし似合ってるわよ~。アスカはもう来
てるわよ。さあ入って入って」
シンジはずいぶんと背も高くなって成長が垣間見られたが、ミサトの方はすこし肌が衰
えたぐらいで、一〇年前と大して変わっていない。
精神年齢のせいだろうか。
なお肉体年齢を書くのは、彼女へ敬意を表して遠慮しておくとしよう。
そしてシンジが家に上がると居間にアスカの姿があった。
椅子にすわる彼女は髪をショートカットにして、和服に身を包んでいる。
彼女はシンジにわずか遅れて二三歳だったが、すでに極道の貫禄たっぷりで椅子の周辺
だけ空気が異様に違っているほどだった。
そんな彼女が入ってきたシンジに気づくなり、
「あ、シンジ、久しぶりぃ」
と、明るくいった。
もともとシンジに比べれば成長の兆しが強かった彼女だ、昔のように変に去勢を張るよ
うな癖は、取れていたようだった。
だが、その代わりに本物の凄みがある。
笑っているのだが、目の奥が光っているのだ。
(極道の女だもんなぁ……)
と、シンジは思って身震いするのだった。
それにアスカが感づくと頬を膨らませて、
738:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/13 00:07:19
「なによ」
というと、シンジは、
「いや、なんでも」
はぐらかすと、さらに笑ってごまかすのだった。
これにアスカは頭を振ると
「はっきりしないのは昔から変わってないわねぇ」
と、ため息をつくのだった。
この昔ながらの掛け合いに、ミサトがニヤニヤしている。
彼女は二人に近づきつつ一升瓶を片手にいった。
「さあさ。二人とも、今日は一〇周年ってことで呑みましょう」
この日、シンジとアスカがミサトの家に集ったのは大した用事ではなかった。
ただ、それぞれ仕事と目標を持って互いに会うことも少なくなったので、ときどきこう
して会合を設けているわけである。
今日はたまたま、この三人だけだったが、加持にトウジやケンスケ、ヒカリといった、
旧友たちと会うこともある。
色々因縁の過去もあるが、全部インベーダーが悪いことにして彼らは確執を忘れた。
主にその音頭を取ったのはトウジだったのだが……まあ、それは置いておこう。
なお、アスカ以外の人間がどんな職業や目標をもっているのかは、すべて読み手の想像
にお任せしたいと思う。
739:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/13 00:08:23
そして、酒盛りがはじまった。
話すことは生活のこと、仕事のこと、人間関係のこと、経済の話、世界情勢、政治、環
境、哲学、あるいは各々の娯楽と、およそ話になるものは全て話にしていたが、どんなこ
とを話していても最後のあたりでは必ず、あの男の話題が飛び出してくる。
あの男とはもちろん、
「リョウ君は今頃どこで、どうしてるのかしらねぇ。まさかリツコのやつと毎晩、あんな
ことやこんなことをっ」
「歳くって色ボケしてんじゃないわよミサト。あいつはどーせ戦争戦争、でしょ」
「竜馬さんだからなぁ……」
と、忘れようとしても忘れられない破天荒すぎる男のことだ。
話題のシメとしては格好の材料であろう。
彼とはいつしか、終号機と共に再会する日が来るはずだ。
だが、それは気の遠くなるほど未来の話だ。
いまのシンジ達には、想像も及ばないことだった。
そして、あっという間に日が落ちて夜になると、闇夜に月が浮かぶ。
……今、月と書いた。
たしかそれは破壊されて消え去ったはずなのだが、ではなぜ空に浮かんでいるのか。
ほとんどの人間は理解できなかったが、シンジたちにはその正体が分かっていた。
「あれは月じゃなくて終号機のマユだよ。綾波とカヲル君の声が教えてくれるんだ」
とは、シンジの弁だ。
月はただ宇宙に浮いているのでなく、重力において地球と密接な関係にある。
一説によれば、海の満ち引きにとどまらず、生物のリズムにも影響があるそうだ。
740:おしまい
07/12/13 00:09:27
カヲルとレイがそれに気づいたのか、地球生物の生命リズムを崩さないために、いつの
間にかエヴァンゲリオンを月の代用品にしたらしかった。
終号機となりつつあるエヴァの月が、太陽光を受けて穏やかに光っている。
そんな、粋な友人の計らいを酒のつまみに見上げて、シンジは猪口に口を付けていた。
が、あいかわらず酒には弱い。
いくらか口ふくんで喉を焼くと、もうふらふらしていたが、その表情は一〇年前にくら
べてどことなく満ち足りているようだった。
ふと視線を降ろすと外で、月光が夜道をこうこうと、案内するように照らしている。
どこへの案内だろうか。
―あの光が、未来へ続いているといいな。
冷たくも明るい月明かりを見ながら、シンジはそう想うのだった。
若い彼らならば、きっとその先の道も歩いていけるだろう。
(完)
741:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/13 00:12:09
読んでくれた人、感想くれた人、絵を描いてくれた人、wiki作ってくれた人、
付き合ってもらってホントにありがとごぜえました。礼。
742:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/13 00:17:28
>>741
あばよダチ公。
743:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/13 00:19:45
感慨無量って奴だ。お疲れ。ゆっくり休んでくれ。
744:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/13 00:25:22
良いものを見せてもらった
745:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/13 00:31:01
扱いづらい作品同士のクロスを2スレで纏めあげたのが凄いっす
ゲッターもエヴァの空気も感じられて読んでいて楽しかった…。
本当にお疲れ様でした
746:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/13 00:49:05
大抵クロス長編てのは途中で書き逃げする奴ばっかなんだが・・・・・
氏よ、アンタ最高だよ!!完成させただけでも偉いもんさ。良いもん読ませてもらった。
あばよ、ダチ公!ゆっくり休んでくれ
747:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/13 01:01:49
神職人さん
完結おめでとう
胸震わせる素晴らしい物語をありがとう
ホントにホントにありがとう
そしてこの瞬間に、このスレに集った皆と立ち会えたエヴァとゲッターの導きに感謝を!
748:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/13 01:03:48
一つの物語は終わり、向かうは戦いの無間地獄と・・・・・
何にせよお疲れ
749:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/13 01:07:16
関わる者全てを地獄の底まで引きずり込むようなエヴァとゲッターが、
お互いが邂逅することによりほんの一時でも誰かの幸せを作ることが出来たのなら・・・
それはきっと素晴らしいことだ!!
職人様、チープな言葉だが他に思いつかんのであえて言おう!GJ!!
750:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/13 01:45:58 4epN8bPf
>>741
職人様お疲れ様でした。いいもの見せてもらいました。
次の作品まであばよ、ダチ公!
751:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/13 01:48:56
一つの終わりは、また一つの始まりを作る。彼らの戦いは、始まったばかりだ。
職人さん乙。さて次はE meets Gか。
752:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/13 01:58:17
職人さん、あんた最高だよ!
故石川先生も喜んでくれるだろうな
753:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/13 05:40:29
友 よ
ま た
会 お う
754:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/13 05:52:11
きめぇw
755:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/13 09:09:05
完結おめでとうございます!!
いい機会ですから、このSSにふさわしいタイトル考えてみましょう。
さすがに、スレのタイトルをそのままってのは味気ないので、私はセンスに自身が
無いので、やめておきます。
756:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/13 12:33:26
新世紀エヴァンゲリオン 世界最後の日
757:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/13 12:43:49
>>741
お見事です。
758:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/13 13:46:29
GJ!職人さんマジ乙。
759:名無しさん@お腹いっぱい
07/12/13 15:01:21
>>741
あなたは間違いなく2007年度、最高峰のSS職人です。
神作品をどうもありがとうございました!!
760:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/13 20:44:45
職人さん乙!
楽しく読ませてもらってました。
761:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/13 23:17:42
完走乙です。ゼットンスレ以来、久々に歯ごたえのあるSSでしたよ。
762:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/13 23:50:16
ゼットンスレというのについてkwsk
763:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/14 00:14:57
>>756
せめてエヴァの名前は使うなよw
764:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/14 00:16:23
だいぶ前にあったゼットンVSエヴァというスレ。
ここと同じく気合いの入った職人がいたのよ。文体からしてここの人たちとは別人だけど。
あいにくログは持ってないが。
765:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/14 00:32:21
>>763
歯牙にもかけられず悠々完走されて涙目の荒らし乙www
766:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/14 00:38:02
↑お前が釣られてんじゃねーか
767:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/14 00:40:12
このクオリティでグダグダになることもなく一気に駆け抜けたその速さには潔さすら感じる。
難点を挙げるなら、地の文での長い説明文にリズムが切られるあたりだろうか。
このペースでそこまで考え込んであるだけでも大したものなのは分かってるんだが。
768:がんばれリツコ
07/12/14 00:42:49
せっかく綺麗(?)に終わったんだけど、どうしてもやりたいネタがあったもんで短い外伝を一本。
タイトル通り「がんばれムサシ」のパロディ。
原作通りに下品だから苦手な人は、要スルー。
「流君、お願いがあるの」
と、リツコの年甲斐もないおねだりから、この短い話は始まる。
流竜馬とゲッターロボなる、凶悪にして狂暴な、味方とは思えない味方をネルフが得て
からしばらくの刻が経っていたころのことだ。
アスカはまだ来日していない。
世はセカンドインパクト後から相変わらずの日照り続きで、草も木もみな、暑さバテを
まぬがれていなかった。
特にネルフの空調が故障したときなどは、
「無愛想無感情之事、右二於イテ出ル者無ク候」
と組織内評判がトップクラスのゲンドウすらも、その、すね毛だらけのおみ足を露出さ
せて、ぬるくなった水の入ったバケツに足を浸からせているほどの暑さである。
そのような中においてただ一人、子供の如く元気を失わないのがリツコだった。
いや、子供よりも元気だった。
シンジがダレているのは無論のこと、ゲンドウに次いで無感情が売りの美少女綾波レイ
に至っても、非番の日は牢獄のような自室の中で、さらに囚人のごとく綺麗でない身なり
のまま、冷たい床にうつぶせて大の字になっているほどだ。
ちなみに、
「冷たくてきもちいいの」
だ、そうである。
769:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/14 00:44:08
なぜエアコンを使わないのかは謎だった。
もしかすれば、彼女なりに排気による環境汚染を心配していたのかもしれない。
しかし、だったらエヴァでの自爆はやめたほうがいい。
エアコンよりもはるかに巨大な汚染が広まってしまうではないか。
だいいち、自爆・撃墜・刺殺されてしまうなどというのは、主に役割を終えた人物をす
みやかに描写しなくてもよくするための制作者側の暴挙であったり、目立たない脇役にも
最後くらいは活躍させてやろう、という制作者側のハタ迷惑な温情によるのが主な出来事なのだ。
だが、筆者はいいたい。
「あなたは脇役だが我が国のみならず、世界的にも経済的貢献が大きすぎる。死ぬには惜
しいではないか。今回の映画では自重してみてはどうだろうか」
と。
話がそれてしまった。
ではなぜ、三十路にも突入しようかというリツコが元気だったのか。
理由はもちろん、ある。
彼女は、
「ゲッターロボ! ゲッターロボ! ゲッターロボ!」
と、呪文のようにその名を唱えているのだ。
どうやら、エヴァをリリスとアダムよりコピーして制作したあと、その功績に飽きたら
ず、今度はゲッターのコピーに執念を燃やしていたのだ。
まったくのオリジナルを創り出すよりもコピーを好むのは、大和民族の習性か。
だが、どこかの国と違うのはコピーしたあとの性能が大幅に上昇することだ。
食器類、刀剣類、機械類、電子部品類、あらゆるものがそうだ。
ただひとつ劣化するのはブランド力程度のものであろう。
だが普通、ダビングされたものは全ての情報が劣化するはずなのだ。
ゴーストにおいてもそうだと、ある映画監督がその弁において論じている。
摩訶不思議だった。
770:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/14 00:45:20
エヴァもコピー元はメタボリック症候群気味だが、初号機を見ても解るとおりコピー後
はスーパーモデルもかくや、といわんばかりのスタイルぶりである。
特にふくらはぎのあたりは色っぽい。
すごい。
この仕組みをダイエット商品に転化すれば大もうけできそうだ。
なんとか実現できないものか。
ひろゆきも驚きの商売になりそうである。
……また話がそれた。
さて、ゆえにリツコは、
「なら、きっとゲッターロボだってコピーすれば性能が上がるわ!」
と息巻いていた。
そう思うと止まらない。
彼女は、あの手この手で裏工作を用いて、ゲッターを一台制作できるであろうだけの、
資金を手にしてしまった。
その額たるや、小国がひとつ傾くほどだった。
それだけの大金を入手する影には、泣く者が数知れずいたという。
赤木リツコ、悪人である。
まさしくゲッターが選ぶだけのことはあった。
ただ、そのゲッターロボ自体が日本製だということを忘れているような気がするが、こ
の際、それは因果地平の彼方へ置いておくとしよう。
だが準備万端整ってから、ひとつ困ったことが発覚した。
ゲッターにはリツコの知識からするとブラックボックスとなってしまっている箇所が多
すぎるのだ。
だいたい、あの無茶な粘土アニメのような合体変形からして理解できなかった。
「合体、変形、合体、変形……合体……合体……」
大仏のように鎮座するゲッターロボの真下で、リツコは日がな一日うなっていた。
まるでお経のようだ。
だれも成仏できそうにないどころか、地縛霊になりそうだが。
771:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/14 00:46:29
それでも悟りには至らず、リツコは合体変形と名の付くものは全て実践してみた。
磁石をくっつけたり離したりしてみたり、粘土で雪だるまをつくってみたり、合体変形
が売り文句の模型に手を出してみたり、MAGIを操って交通の流れをわざと乱して車を衝突
させてみたりもした。
しかしまだ解らない。
さらに合体の根源を思いついた彼女は、夜な夜な竜馬を誘い、都下のいかがわしいホテ
ルに連れ出した。
色々やってみたらしい。
やがて、リツコはガラス越しの向かい部屋で干からびている竜馬を見つつ、風呂桶につ
かりながら半潜水して、カニのように口からブクブクと泡を吹き出していた。
そのとき、ひらめきがあった。
「もががっ!! がぼっ!」
なにをいっているか解らなかったが、とにかくひらめいたらしい。
ゲッターの奇妙奇天烈摩訶不思議、奇想天外落書無用の機構を悟ったようだった。
あわてて風呂から這い出ると、竜馬の倒れるベッドへと戻り荷物のバッグへ手を伸ばす
と紙とペンを用いて、なにやら数式らしきものを羅列していく。
なお、ノートパソコンも持参していたが水で壊れてしまっては一大事なので使わない。
リツコは神速の勢いで式をまとめると、さらに台風のような勢いで着衣し竜馬を置き去
りにして一目散に消え去ってしまった。
……かのように思われたが逆再生のように戻ってくると、再び紙とペンを取り出して一
筆書き、それを備え付けの冷蔵庫から取り出した瓶と共に竜馬の枕元におくと、今度こそ
去っていった。
なお、その紙にしたためられた文書は、
「またお願い」
とのことだった。
・・・
772:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/14 00:47:31
その翌日から、リツコのゲッター建造計画ははじまる。
彼女はいくつかあるエヴァを格納庫たるケイジの内、ほとんど使用されない第一三ケイ
ジを勝手に占拠して、そこで作業を開始したのだ。
第八ケイジに格納されたオリジナルゲッターを参考に、昼夜を問わず作業にいそしみ時
には竜馬に意見を求めたりした。
そうしてしばらくの刻が経過したのちに、リツコの追い求めた試作ゲッターの一機が、
第一三ケイジに現れることになる。
これを見た竜馬は驚いた。
なぜなら……
「こ、こいつぁゲッターGじゃねぇか」
と、彼は目を丸くしてリツコの造ったゲッターを呆然とみていた。
その花火のような突起をそなえた顔は、独特で他に例がない。
間違いがなかった。
ゲッターGは、この世界にやってきた竜馬自身が直接乗った経験はないが、しかし彼ら
にとって非常に関わりの深いゲッターでもある。
それは、ゲッター線に関わる者ならばみな知り置いていることだろうから、ここには書
かないが了承いただきたい。
だが、ゲッターGという名称をリツコは否定する。
「G? いいえ、MAGIよ」
「なに」
「これはゲッターMAGI。当方より来たりし三賢者を司ったゲッター」
「MAGIってえのは、あのでけえコンピュータの事か」
「そうよ。まだ未完成だけど、この各ゲットマシンにはMAGIのそれと同様のシステムが組
み込まれているわ。
名付けてゲッターメルキオール、ゲッターバルタザール、ゲッターカスパー。
それぞれ科学者、母親、女としてのある女性の疑似人格が組み込まれている。このゲッ
ターは一台で要塞の役割もこなせるのよ」
と、コピーついでに妙な機能を搭載したゲッターを前にリツコは自信をもっていった。
773:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/14 00:48:33
竜馬は呆れたような、感心したような、どちらともつかぬ表情でこのゲッターGそっく
りのゲッターMAGIを見上げている。
全て、リツコが独断でやったことだったが、戦力が増えることに拒否をしめすことはな
いとしてゲンドウも黙認していたようだった。
竜馬はやがて、ぽつりという。
「で……いつごろ完成なんだ」
「あと一週間もあれば」
その言葉通り、一週間が経過後、リツコは約束通りゲッターMAGIを完成させた。
完成させしてしまえば、あとはしばらく音沙汰の無かったシトが襲来するのを、彼女は
いまかいまか、と待ちかまえていたのだが、そんな折りに大問題が発生した。
それはなにか。
竜馬とシンジとレイの食中毒である。
かれらは、激しい腹痛と嘔吐、下痢に襲われてトイレから離れることができなくなって
しまったのだ。
原因はミサトのつくったカレーだ。
彼女の自宅で、カレーパーティを開催したのはいいものの、その日に限って面倒くさが
らずに張り切って創られた特製カレーは、食べた者の胃を破壊するに十分な威力を誇って
いたのだ。
あまりの破壊力に、じつはシトの一種ではないかという疑いがもたれたほどだ。
被害者の容体はひどく、入院も必要だと思われたが、そういう訳にもいかなかった。
機を見計らっていたようにシトが出現してきたのだ。
だが、この新しく現れたシトの外見を認めたネルフ一同が呆気にとられた。
その銀の下地に赤のラインが走った体は、昔の子供たちが熱狂した宇宙人ヒーローをほ
うふつとさせるものだったが、その上についている顔が問題だった。
「い、碇司令……?」
マヤそうつぶやいた。
顔が、ゲンドウにそっくりなのである。
774:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/14 00:49:43
きちんと眼鏡までかけているあたりが丁寧だ。
まるで、スーツアクターがかぶり物だけ取ったかのようなふざけた格好のシトだった。
ゲンドウはこれを見て微妙な表情をしていたが、その後ろでニヤけている冬月のことは
決して忘れないだろう。
こう見えて、根深い男だ。
だが問題はさらにある。
このようなシトは、死海文書には出現が予告されていないのだ。
ゆえにナンバリングするのはどうか、ということでこのシトは、
「番外シト、アンノウルトラマン」
と名付けられた。
由来は旧約聖書ではない、他のなにかの経典から来ているらしかった。
その異様な巨人は、第三新東京市を腕を十字に組んで発射する青白い怪光線で破壊しな
がら闊歩し、ネルフ本部に接近してくる。
しかし、今は戦う力がない状況だ。
ゲッターは常人には扱えないしエヴァはいわずもがなである。
すればやはり、リツコに白羽の矢がたった。
ゲンドウがいう。
「赤木博士。いままで浪費した金の分は働いてもらうぞ」
指令を合点したリツコは、勇み自作のゲッターMAGIに乗り込んで出撃準備に入った。
「さて。いきましょう母さん」
と。
ジオフロントから、三機のゲットマシンが出撃していく。
リツコの乗る一号機メルキオールを先頭に、MAGIによる自動操縦の二号機バルタザール
と、三号機カスパーの順で並ぶと、チェンジするべくレバーを倒した。
「チェンジ・メルキオール!」
775:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/14 00:51:12
モニタに、三賢者のシステム承認が表示されていく。
メルキオール、チェンジ許可。
バルタザール、チェンジ許可。
カスパー……
ここでまた問題が起きた。
「拒否!? カスパーが裏切った!?」
と、敵を前にして三号機が突然反乱を起こしたのだ。
リツコの悲鳴があがった。
何故だ、と思考をめぐらしていくと、迫ったアンノウルトラマンの顔が一号機のコクピ
ットスクリーン一杯に映る。
あっ、となった。
(そうか、敵は碇司令にそっくりだった!)
リツコがこころの中でさけぶ。
MAGIの疑似人格は、リツコの母ナオコのもの。彼女はゲンドウの愛人でもあった。
そしてカスパーは女としての、ナオコの人格が組み込まれている。
リツコが困惑顔になる。
(自分の娘より自分の男を選ぶっていうの!? でも)
似ているのは顔だけじゃないか、と言いたかったがしょせんは疑似人格である。
見境がない。
制御不能に陥ったゲッターMAGIは暴走し、勝手にポセイドン型のゲッターカスパーにチ
ェンジすると、アンノウルトラマンに抱きつくように迫っていく。
リツコの危機だ。
そんな時に、虚空からゲッター1と初号機が降ってきた。
「リツコさん! 早く脱出してくださいッ」
「なにやってやがんだリツコぉ!」
776:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/14 00:52:31
と、痛む腹を押さえながらネルフの守護神二体がリツコの救出にくる。
ここで彼女を失うわけにはいかないのだ。
どんなに手の終えない狂気があったとしても、敷島博士よりマシだから。
いや間違えた。
リツコがいなければ、誰がエヴァとゲッターの整備をするというのだ。
が、竜馬はまだしもシンジは非常にまずい状態だった。
なぜなら、エントリープラグ内にはLCL溶液が満たされている。
ここに下痢でいつ排泄がはじまるか解らない人間が乗るということは、どういうことか
もうおわかりだろう。
シンジの顔が青くなっている。
(竜馬さん。僕は今日で死んじゃうかもしれません)
排泄物にまみれる危ない趣味でもないかぎり、もしやってしまったら地獄の苦しみを味
わうことになるだろう。
竜馬が叫んだ。
「シンジ! 時間がねえ! MAGIの炉心を狙え! メルトダウンさせてシトごと倒すぞ!」
「はうぅっ」
二人は、リツコがMAGIから脱出したのを確認すると、アンノウルトラマンに組み付いて
身動きの取らないゲッターカスパーめがけて、ゲッタービームと二丁のパレットライフル
による斉射をくわえた。
すれば、それはゲッターMAGIに集中して装甲を破壊すると露出した炉心を崩壊させる。
そこから漏れた緑色の光が広がっていった。
ここまでだ。
「逃げるぞシンジぃ!!」
「はうっ」
これ以上とどまれば、メルトダウンに巻き込まれて地下で進化の眠りにでもつかなけれ
ばならなくなってしまうだろう。
777:終了
07/12/14 00:53:38
初号機が電源を強制排除すると、ゲッター1がそれを抱えて空に離脱していった。
同時に、初号機がA.Tフィールドを張ってゲッターを守る。
その眼下で第三新東京市の一部が消滅しながら、シトが消えていくのが確認できた。
「やばかったぜ……おいシンジ、大丈夫か」
ため息をつきながら竜馬がいう。
だが、
「……うぅぅ」
シンジの声は、すべてを否定していた。
もうこの場でサードインパクトが起きてもおかしくない。
「だめだったか……じつは俺もだ……」
二人が帰還したが、この日はやけに出迎えてくれる人間が少なかったという。
マヤなどは、そもそも姿がどこにも見えなかった。
リツコも生還してくる。むろん、彼女を見る職員の視線もどことなく冷たい。
特にレイが冷たかった。
リツコ以外に罪はないのだが、この後、三人はしばらくの間、ネルフの中で孤立していることになる。
それが逆に三人の絆を深めたかどうかは、神のみぞ知る、であろう。
たぶん、深まっていないだろうが。
やがて、リツコのゲッター建造計画は闇の内に凍結されることになった。金を使いすぎたのだ。
ゲンドウと冬月がいかにゼーレの追求をかわすかに躍起になっていたが、当のリツコは
そんな上司の苦悩もどこへやら、
「いつかまた造ってみせるわ!」
と、決意を新たにするのだった。
ネルフの戦いはつづく。
778:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/14 00:58:15
あ…あ…あ…あんたって人はああああああ~~~~~~~~~~~~~!
エンガチョ!もといGJ!
779:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/14 01:06:53
やらかしてくれましたなーまったくもうw
どこまで乙とGJを独り占めする気なんだ神職人!
シンちゃん…くじけないでね…
780:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/14 01:14:00
ウノレトラマンwこれはひどいw
781:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/14 01:18:23
本編終了の余韻がw
台無しw
782:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/14 01:31:40
自分で雰囲気とか余韻とかいろいろぶち壊しにしやがってwww
アンタはどこまで、どんだけwwww
783:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/14 01:48:37
>ガラス越しの向かい部屋で干からびている竜馬
あららwww
784:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/14 01:56:33
せめて早乙女研究所の時同様、所員全員が食中毒になればまだ救いがあったのに・・・www
>ガラス越しの向かい部屋で干からびている竜馬
某野球ゲームで「絶倫」の能力を持った選手を竜馬と命名した直後だったもんで大笑いwww
785:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/14 08:46:06
昨日までの感動を返せえぇぇぇぇぇ!wwwwwwwwww
しかしまぁ、アンタは御大が乗り移ったと今まで思っていたが
実は桜多だったのか!www
786:名無しさん@お腹いっぱい
07/12/14 12:31:37
このSSを読んで、唯一の問題は今まですきだったライトノベルなどでのキャラの苦悩
するシーンがうざったくなって見てられなくなったというところですね。とくに世界系
の作品は殺してやりたくなります。やはり、石川イズムは偉大だ!!
787:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/14 12:36:14
石川イズム(笑)
788:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/14 12:41:38
>>786
釣れますか?
789:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/14 12:42:20
>>786
石川アンチ乙
790:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/14 14:41:05
せっかく綺麗に終わった話になんと言うことをwww
やっぱりあんたは最高だ!
791:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/14 18:20:05
>>「拒否!? カスパーが裏切った!?」
やはりこの台詞は必須かwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
792:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/14 19:37:03
エヴァのキャラで一番すきなのは、ついこの前までミサトさんだった。
しかしこのSSを読んでからはリツコさんが好きすぎてロマンティックが止まらない。
職人さん、遅くなったがGJを言わせてくれ。
そして、ありがとう
793:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/14 21:36:38
自演
794:ゲッター・リアル世代
07/12/14 21:43:51 zTACa9AZ
こんな話しは初めてだ~
たのしませてもらったぜ~
795:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/15 00:04:15
後はE meets Gだけど…作者さんのリアル事情が原因だろうからなぁ。
風の噂では月に飛ばされれてブラゲを一人で改(略
796:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/15 00:46:54
俺が聞いた話だとネルフ地下で山のような試作機の残骸を整理してるって聞いてたが・・
797:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/15 01:08:39
バイオレンスな麻雀かゴルフの真っ最中でしょ
798:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/15 01:12:37
ゴルフはやばい、賢ちゃんが虚無の戦場へ旅たつ原因となったスポーツだ
799:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/16 02:55:11
つまりブラックゲッターでゴルフをして虚無に旅立って賢ちゃんに続きを相談しに言ったのか
800:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/16 07:46:07
で。その様子を解説するとこうなる→「ウオオこのエネルギーはビッグバンを引き起こすほどの」
801:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/16 10:52:26
「このブラックホールでかすぎて簡単すぎじゃー!ホールインワンばっかりじゃ!」
「やっぱり天然物はいかんのう、手加減が面倒じゃがマイクロブラックホールをこさえるか」
「この辺の恒星は殆どホールインさせてしまったからゴルフの続きは次の宇宙に行ってからにしろ」
というような会話を目玉グルグルな連中がしているのを幻視したw
802:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/16 12:33:40
ゲッペラーの得物も当然トマホークだろうと思ってたが実はゴルフクラブだったのか…
803:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/16 13:56:35
トマホークを横にして叩いてるだろ
804:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/16 20:41:37
このスレマジで魔力有りすぎ
気が付いたらゲッターロボ三冊買ってた
805:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/16 21:33:06
>>804
ゲッター線に取り込まれるなよ
806:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/16 23:56:46
>>800
大事なのを忘れているな
竜馬『俺に解る様に説明しろ!』
シンジ『甲虫長、君が何を言っているのかわからないよ!』
807:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/17 20:07:30
いままで規制で書き込めなかったんで今更ですが・・・
SS完結乙です!
あそこまで風呂敷広げてどうすんだと思ったけどそれを見事にまとめ
しかもこの短期間で間隔をそれほど空けずに書くっていうのはそう簡単じゃない。
ラストはちょっとまとまりすぎたかな?って思ったけどオマケが面白すぎたんでそんなことは吹っ飛びましたwww
ただリツコがエンペラーに入る以前(まとめwikiの5-3)に
「隼人に会った」と言ってたのはどうなったのかな?と
それが気になって昼寝も出来ません。
808:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/17 21:33:18
そういや隼人はどうなったんだろな
809:名無しが氏んでも代わりはいるもの:
07/12/17 21:40:23
この神SSに触発されてゲッターSSをかいてくれる人が増えないだろうか?
もっとも誰もこの職人さんの超人ペースは(即興で書いたそうですし)
真似できないと思いますが・・・。
810:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/17 22:18:50
>>809
神の前では凡人はただ沈黙する(意訳:こんなスゲーSSの後なんで書くにも気が引ける)
という奴の存在に30ファイナルゲッタートマホーク賭けよう
811:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/17 23:02:56
武蔵‘Sが出て来た時漏れは、もうマジンガーZにグレートマジンガー
おまけに、グレンダイザーが出て来ても驚かんぞ!と、思ったのだが・・・・
同じ事思った椰子、手を挙げろ!w
812:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/18 00:23:07
いや、別に思わなかったが
813:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/18 01:30:16
マジンガーは石川作品じゃないぞ
814:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/18 01:34:07
>>813
東映作品だな
815:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/18 05:50:04
ダイナミック的にはそんな展開もありだとは思うけどな
816:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/18 07:17:28
テキサスマック参戦はありうると思っていたが
817:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/18 08:04:00
ゴール様&ブライ大帝(両者とも原作漫画版真ゲッターバージョン)まではあっても良いと思った
自由とはそういうものだ
818:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/18 10:00:53
そう、雨の日に全裸で駆け抜けるのも自由
819:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/18 12:55:25
>>818
ダイゼンラー乙
820:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/18 21:31:38
ようやく追いついた。
これだけは言わせてくれ、いい最終回だった。
821:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/18 22:03:57
一度は書こうと思ったよ…チェンゲ×エヴァ…
ケイを「ケイ(お)ねーちゃん」と呼ぶチルドレンとか。
ガイとタメで喧嘩するアスカとか。
真ドラゴンに喰われて腹ん中でシンちゃん&アスカが「うわあぁぁぁぁ!」状態を救いに出現する
キョウコ&レイの中から目覚めたユイとか。
カヲルがシンジの為ならエンヤコラ、でATフィールドを初号機のパワーアップパーツにして
ファイナルバージョン(終號機?)とか。
けどなぁ。
職人さんにあんなもん書かれたら出る幕ねぇべorz
822:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/18 23:53:46
そうだな。・・・俺もちょっと虚無の戦線に身を投じて進化してくるわ・ω・)ノ
823:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/19 00:19:21
>821-822
ぜひスレを食らい尽くすまで進化しておまいらの頭の中のネタをここにぶちまけてください
そして弁慶を「お父さん」と呼ぶ綾波に萌え狂った身として
E meets Gの職人さんの再降臨にも超期待しています。全裸で
824:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/19 02:10:49
流行ってるのか?
俺の常駐する某スレだけの風習かと思ってたが。
それとも同じ穴の狢か。
825:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/19 05:34:52
>>824
アムロスレに帰ろうぜ、ダチ公
826:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/19 09:45:20 bIzIN3ew
ところでまとめwikiに「がんばれリツコ」は追加しないのか?
827:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/19 09:49:19
やっちまったぜ・・・orz
ちょっと隼人に顔の形変えられてくるよ・・・ノシ
828:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/19 15:28:10
追いついて良いエンディングであったと余韻に浸ってたらオチがついたか…
829:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/19 18:21:15
>>828
13年ぶりだな。誰もが通る道だ。問題ない
830:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/20 09:36:43
正直すまんかった
831:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/20 18:19:08
いやいやこちらこそ
832:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/21 00:09:28
余談だが、俺の妹に真ゲッターを見せたら、隼人司令をえらく気に入って
真ゲッターVSネオゲッターを見ている。
ここは兄として新ゲッター2話を見せるべきであろうか?
833:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/21 00:18:33
当然だろ
834:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/21 12:27:41
真の腐女子ならキ○○イ隼人でも受け入れるはず
ってそんな妹はイヤだろうけどなorz
835:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/21 14:56:54
うちの妹はネオゲの號を見たら唖然としてた。
最初のハチュウ人タコ殴りがマズかったのかなぁ
836:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/21 18:28:28
がんばれリツコUPしてきました。
いやぁ、本編終了すぐに投下されてたなんて気づかなかったよジャック!
一応、本編の雰囲気を壊したくないひとたちのために注をつけておいたけどね!
HAHAHAHAHA!!
837:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/21 22:04:55
乙です。
838:832
07/12/22 22:46:23
今日、妹に新ゲッターDVD1,2巻を見せた。
最初は予想通り(゜Д゜)…こんな感じだったが…
途中から
妹「いや、これはこれで…」
とか呟いていた…
1時間後、妹の命令で新ゲッター全巻を借りに自転車でダッシュしている俺が…
orz
839:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/22 22:49:11
>>832
イ㌔…そなたは美しい…
840:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/22 22:50:31
良い妹さんじゃないか。
大切にしてやんな
841:832
07/12/22 23:06:06
妹いわく、隼人は知性と狂気の両面が出て言うからカッコいいんだそうだ…
俺には、狂気しか感じんが…2話の時点では…
842:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/23 00:40:21
(妹が)腐ってやがる……(その道に進ませるのが)早すぎたんだ……
843:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/23 00:57:09
隼人の表裏の魅力に気付くなんていい妹さんじゃないか
それでもしボインちゃんだったら隼人のパートナーになれるぜ?
844:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/23 07:32:48
>>843
建て前だろ?あれ。
本音は『平和の為に悪と戦います』なんだよ。
だけど竜馬や武蔵がそんなオープン熱血馬鹿だから、クール気取りの隼人さんは同調なんて出来ない。
だからつい『ボインの女の子が好きだから』なんて恥ずかしい事を言ってしまっただけで、彼は内心正義と慈愛に満ち溢れてるよ。
845:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/23 10:07:09
脱線するかもしらんけどTV版のゲッターチームって家庭に飢えてるというか
家族愛に飢えてる面はあると思う。
寮に入ってるからじゃなく家族の誰かしらが亡くなってる。
連中にとって愛と正義を守るってのは家族愛に飢えてるのを埋める
代償行為の発端なのかも、と時々思う。
それを切っ掛けにして、飢えを満たす事を覚えていくと。
で、エヴァチームは家族愛に飢えてるのは同じでも、欠損を埋める術に届かない。
たぶん【埋める術は何かある】のは知ってると思うけど、
【それが何で、自分はどう努力したらいいか】が結びついてないというか、空回りしてる。
846:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/24 01:29:43
隼人って漫画じゃ両親いたのかな?
一応高校生だよね?
847:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/24 01:43:21
>>842
石川英郎はBLに結構出演していて、聞くとついつい竜馬と比べてしまう
決してウホッな趣味は無いがあの声は腐でなくても惚れてしまう…
848:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/24 09:41:34
>>845
テレビシリーズのリョウ、ハヤト、ムサシは、ミチルさんという惚れた女のために戦う
恋敵呉越同舟チームなのです。ベンケイは知らん
849:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/24 10:25:30
>>848
弁慶は元気の為だろ、たぶん
850:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/24 13:07:14
>>848
桜多吾作版思い出したwww
あのミチルさんは色っぽくて好きだな
851:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/24 23:39:28
とりあえず、小ネタで
レイ「プログレッシブナァァイフッ!」
たった一機で出撃し、猛攻にさらされる零号機
リツコ「何故!?何故動かないの!?――まさか!私ですら理解できない未知の何かがあるというの!?」
シンジ『リツコさん!』
リツコ「シンジくん!」
シンジ『急いでください!このままじゃ――!』
アスカ「イ、イヤアァァァァァッ!わたしの心を覗かないでぇぇぇっ!」
猛攻を受け、満身創痍の零号機
シンジ「リツコさん、このままじゃ、綾波が!行かせて下さい!どうせ死ぬなら一緒に――」
リツコ「バカいいなさい!甘ったれるんじゃないわ!あなたたちにはもっと残酷な未来が待っているのよ!」
N2爆弾の束を掲げ、
レイ「熱い血潮も、涙も流さない冷血野郎の使徒たち。アナタたちにヒトの未来は渡さないわ!」
急激に上昇するシンクロ率
アスカ「ッ!?」
リツコ「こ、これは!?」
アスカ「ハッ――ファースト?ファァァァァゥトォォォッ!!」
レイ「もう一度滅びなさいッッッ!!!」
広がる爆発と閃光――そして主題歌へ
852:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/25 12:35:30
闇プロレスで稼いで兄弟を養う、心優しい狂犬トウジを幻視してしまった訳だが。
そしてアスカが
「あたしはアスカ。惣流アスカ・ラングレー。これからアンタに地獄を見せる女よ!」と
見得を切る姿を以下同文。
更にシンジが「ボクは碇シンジだ! このくらい何ともないっ!」と泣きながら以下同文。
ちょっくら箱根湯本市に行ってジオフロントを掘り当ててくるOrz
853:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/25 17:53:52
おい。誰か>>852にラミエルと馬頭竜と真ゲッタードラゴンを貸してさしあげたまえ
854:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/26 21:25:40
隼人好きの妹さんには、ぜひ『大無法峠』がお勧めだ
……どう見てもネタMADでしかないが
855:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/26 23:25:14
妹のニコニコ履歴を見た・・・「ゲッターどうでしょう」があった(現存するもの全部)・・・。
(´A`)…
駄目だこいつ・・・orz
856:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/26 23:58:58
>>855
「アホの竜馬」や「撲殺天使竜馬ちゃん」は?
あとタグ検索で嫌死系三人組と検索しる。
857:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/27 11:01:25
その妹さんを紹介して欲しい…いい友達になれそうな私は女…
858:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/28 22:54:45
年末年始は人が以内か
859:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/28 23:14:24
(゚Д゚≡゚Д゚)<俺がいるわけだが
860:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/28 23:25:55
俺もいるぜ
861:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/29 00:14:49
お前らだけに居させてたまるかよ。
862:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/29 07:23:34
漫画の號および真ゲ竜馬は常識人なんだよなぁ………
少年時代もハッチャケてはいたがアタマがおかしいわけじゃあない。
それがチェンゲじゃトラウマ持ちの暗いオヤヂ。新ゲでは単なるバカ、基地外だもんなあ。
漫画版に一番近いのはネオゲ竜馬か
863:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/29 07:34:21
漫画版の竜馬はけっこう面倒見が良いからな
864:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/29 14:18:06
そういえば竜馬が「あばよ、ダチ公」するときにイーグル号に乗せてた子供はどうなったんだろう・・・
865:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/29 17:43:51
死んだんだろ
866:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/29 20:39:18
そういや、庵野はOVAのゲッターを見てるのかな。
867:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/29 21:56:30
漫画の竜馬が「早乙女のジジイ」って言ったのは
868:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/29 23:09:58
>>867ーッ!!
どうしたーーッ!!
869:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/30 19:06:33
>>865
全書によると生き残ったらしい
870:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/31 20:58:41
>>866
見ていないはずあるまい。やつはゲッターロボ信者だぞ。
871:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/31 22:50:56
>>869
その生き残った子が一文字號、てのはありえんけど
そうだったら笑えるwww
872:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/31 23:06:21
>>864
瓦礫に埋もれたゲッター1の手の中に居なかったっけか? 生き残りの子供。
一人だけだった気もするが。
873:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/12/31 23:58:33
>>871
考えることは同じか
874:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/01/02 21:38:28
保守
875:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/01/04 01:42:02
駅伝を観てて、箱根湯本の名を聞いて一瞬
「エヴァ出てこねぇかな」と思ってしまった自分は終わってるorz
876:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/01/04 01:44:12
まぁあの辺りはゲルショッカー本部とか悪の組織の基地が乱立してるからね
877:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/01/04 02:02:19
>>875
木原マサトと聞いて冥王かと思った俺も同レベルだから安心しろ
878:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/01/05 17:17:17
ゲッター炉心って3機のゲットマシン全部に搭載してんの?
どうも初代、G、真すべてその第2形態時にヘッドとなる機体にしか積んでなさそうなんだが。
879:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/01/05 23:09:37
正直、色々スマンorz
【出撃! ネオエヴァンゲリオン!】
ゴングの音が響く。
それ以上に歓声が騒ぐ。
血を。暴力を。飢えを満たす無残な死を。
自らの手を汚さぬ「善男善女」の残酷な要望に嬉々として応え、トウジはウイニングポーズとして片
腕を上げてみせる。
イヤな奴らだ、と思いながら。
血が欲しいなら自ら流せばいいものを。
暴力を欲するならば自らここに立てばいいものを。
しかし連中は自らは汚れず、痛い思いもせず、のうのうと、旨い酒や料理を味わいながら「他人」の
死を愉しむ。
まあ、そんな連中のお陰で自分は稼がせてもらっている訳だが。
どうやら、人間という生き物は忘却の生き物なのだろう。数年前の使徒襲来、その時にもたらされた「被害」を忘れ、暴力に酔いしれる程度には。
「まあ何でもええわ」
今日の勝利は明日の生活に繋がる。その為なら自分の痛みなぞ安いものだ。
いや、何より。
「何でもええわ。こいつをもろたら明日は」
そう、見舞いに行こう。花と、ケーキでも買って。柄ではないが。
しかし、真剣だが安っぽい感傷に浸る間は与えぬとばかりにリングアナの声が聞こえる。
「次の挑戦者は」
まあ何でもいい。勝てばいいだけの話だ。
勝てば金が手に入る。きょうだいを飢えさせずに済む。
それ以上に「自分は生きている」と実感できる。やはり血が騒ぐ。
「あの時」戦えなかった無念を忘れられる程度には。トウジはリングに上がり、笑っている。
880:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/01/05 23:10:34
かち、と微かな音が鳴った。聞く者は「ここ以外」にはいるまいが。
「司令、こちらにいらっしゃいましたか」
若い女は言い、かつ、と靴音が二つ鳴った。聞き留める者もないだろうが。
「遅刻よ、マヤ」
司令と呼ばれる、こちらもまだ若い女は薄く笑う。髪の紅さは情熱的にも見えるだけに、その笑みのまさに酷薄さは特筆に値するほどに。
「申し訳ありません……『彼』にお気付きでしたか」
「それなりにはね」
「司令、ご覧になりますか」
マヤと呼ばれる女、その後ろからはこちらも若い、しかし男が現れる。彼は眼鏡の位置を少し直しながら一礼する。
「例の調査書?」
「シゲルからです。『彼』、鈴原トウジの調査報告書を」
「司令」はありがとう、と言って受け取る。
ゴングの鋭い音が聞こえた。
無責任に囃し立てる声が高まった。
いい気なものだ、と思いながら「司令」は書類を受け取る。たぶん読まないだろうが。
紙に書かれる字の「情報」なぞたかが知れている。そんなものより目の前の事実の方がたぶん価値がある。
単に司令という義務で受け取るだけのそれを一応程度にめくり、歓声が悲鳴に変わるのに気付いた。
「何?」
「司令!」
マヤの声はやや上ずっていた。
881:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/01/05 23:11:08
マットの上で、トウジは思わず笑ってしまっていた。
もちろん外見と実力はイコールではない。しかし往々にして比例する。
だから、上着の上からも判るほど、あまりに貧相に過ぎる「挑戦者」が現れた瞬間、笑ってしまった。
大きいのは上背だけで、汚い上着からわずかに見える手足はひょろひょろすぎる。それに肌の色も悪い。
敵じゃない、と思った。
しかし動きは素早く、そしてせっかちだった。ゴングが鳴る前に襲い掛かってくる程度には。
トウジも避けようとしたが、やや間に合わなかった。頬が薄く裂かれて血が滲む。
「いっ、てー……早い男は嫌われるんやで、オッサン」
本当にオッサンかどうかは判らない。しかしトウジは見た。「対戦者」の唇がにい、と釣り上がるのは。
「こいつは敵だ」。そはう思うだけで体が熱くなる。血が滾るのが判る。
金は欲しい。きょうだいは護りたい。
しかし、それ以上に「戦いたい」。そして「生き延びたい」。その欲望が全身の血管伝いに駆け巡る。
今更の用に響くゴングは蛇足だ。その以前に「挑戦者」の、それ以上にトウジの体が動いた。
上着が舞い上がり、わっ、と観客が沸く。
駆け、突き、掴もうとする。その全ての動きはあまりに速く、だが悪い意味で「眼の肥える」連中はそれを追う。
血を、血を、血を! その欲望を露わに無責任に死を求める。
トウジはもう観客の声なぞ聞いていない。ゴングの向こうの「世界」なぞ気にも留めない。
ただ目の前の「敵」を倒す。ただそれだけ。本能と言っていい。
ただ戦う。おのれの為に。全身の細胞の一つひとつさえが叫び、吠える様に。
「挑戦者」が吠える。
トウジが吠える。
勝敗は一瞬だった。「挑戦者」の懐に入ったトウジの容赦のない右フックが肝臓の位置を直撃し、「挑戦者」は口から液を吐く。
トウジは気付いた。吐き出された液は赤くもなく、黄色くもない事を。
「な、んやこいつっ!」
吐き出された液は青に近い色をしていた。「血」というより「体液」だ。
「違う」と判った。こいつは人間じゃない!
砂被り席の観客も気付いたのか、悲鳴を上げる。
「挑戦者」は獣を思わせる四つん這いになった。フックのダメージの為かもしれない。
しかし変化は唐突に起きた。
ひとまずここまで。
882:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/01/05 23:22:46
新作の予感.。゚+.(・∀・)゚+.゚
883:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/01/06 09:59:31
おお、以前プロットを書いてた人の投下か?wktk
884:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/01/06 17:46:44
そういえばトウジの中の人ってチェンゲのゴウだっけ
885:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/01/06 19:33:13
トウジの中の人はドモン・カッシュで、竜馬の中の人(初代)はケンシロウという
ある意味頂上対決も…
886:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/01/06 20:15:31
続きです。
あー何というか、この話のアスカ&シンジは妙齢と思って下さいorz
ひょっとしたらマヤたちより年上。
性格も全員、捏造バリバリです。ノリと勢いのみを重視(すな)
イヤンな魔改造を受け入れられない方、本当にお許し下さいorz
涎を思わせる、しかし色の違う液がぼたぼた滴ってリングを汚す。
ぱき、ぺき、と骨の折れる様な乾いた音と共に体が波打つ。
交錯に潰れたはずの眼がかっ、と見開く。
縦長の瞳孔。爛々と文字通り輝く虹彩。
それ以上に「素情」を語る肌には明らかに金属質の光沢が浮かび、何より、大きく裂けた胸部には真紅の「珠」。
「お、まえっ、使徒かいな! 5年前に滅んだはずやろっ!」
観客がそれと察して出入り口に逃げ、「挑戦者」は嘲笑う様にトウジに襲い掛かる。
ひょろ長い腕には恐ろしく長い爪が閃き、かすめただけでも只では済むまい。
トウジは反射的にリングから飛び降り、背後からの一閃はリングのロープを切り裂いた。後ろから聞こえた「声」は悲鳴かもしれない。
飛び降りた勢いでパイプ椅子を掴み、振り返る勢いと勘で殴りかかる。
ロープのダメージに怯んだらしい使徒の腕を払い、がちっ、と金物の音が鳴るのが判った。
だが腕が、爪が伸びる。こちらに進む。
ち、と舌打ちしつつ椅子を投げつける。もう少し怯んだらしい。勢いで突進、今しも降りようとしたリングに後頭部(たぶん)を打ちつけさせた。
最初は悲鳴を上げたもののマヤは、若い男もまた護身拳銃を抜いて援護に向かおうとする。
しかし「司令」は片手の動きでそれを制した。
「なぜです、助けてやらないと!」
「必要ないわ」
「司令」の微笑みは美しいだけに酷薄さが増す。その事を若い男、マコトは「イヤというほど」知っている。
「人手を借りなきゃ生き延びられない様な『普通の人間』なんて要らないもの。あの程度で死ぬなら、今、死なせてやる方が親切よ」
微笑みの凄艶さにマヤの瞳は一瞬潤んだ。
887:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/01/06 20:17:14
トウジの体から滴る血は赤い。
「挑戦者」使徒の体から噴き出す血は青い。
5年前のセカンドインパクト、その頃にまとめられた報告書では【ヒトと使徒のDNAは酷似している】との報記述もあった。
しかし両者の血の色は違う。それは異種族の共存を真っ向から否定する何よりのファクターである様に。
だが、今のトウジそして使徒には関係ない。「生き残る」為には。
トウジはとっさにゴングを掴み、ハンマーも奪って使徒に馬乗りになる。両手に持つそれで滅多矢鱈と使徒を打ち据える。
かーん、ごん、かーん、ごん、と試合を告げるのに似た音が規則的かつ滑稽に響く。
使徒の「口」からぐばっ、と青い血が噴き出す。
トウジは口に溜まった血を吐き出し、ゴングを据えていた台に駆け寄ると腕を回す。
渾身の力で床から引き剥がし、使徒めがけて振り下ろした。
炒め鍋を床に落とす様な、ただし、やたら大きな音が短く鳴った。
「悲鳴」も少し鳴ったかもしれない。聞こえなかったが。
「ちっ……二度と来んなや」
吐き捨てるトウジは気付いた。誰かが拍手している。
「お見事ね、鈴原トウジくん。あなたの戦いぶりは『誰かさん』を思わせて、とても素敵よ」
微笑む赤毛の女は美しいと言える。しかし眼が全く笑っていない。何より、言葉口調があまりにも人を小馬鹿にしすぎている。
女だから、と甘く見る気はない。反射的に叫んだ。
「あぁ、何やこのオバハン。ええ歳こいてミニスカスーツやて、うわ痛い」
「何ですって、このクソガキ! ホント、アンタのそういうところ『あのバカ』そっくり!」
こほん、とマヤの咳払いが聞こえる。「司令」はぐっ、と息と言葉を飲んだ。
888:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/01/06 20:18:08
「……鈴原トウジね」
「人に名前を訊く時は自分から言うもんやでぇ、オバハン」
「……私はアスカ。惣流・アスカ・ラングレー。これから先、アンタに地獄を見せる女よ」
「地獄やてぇ? 寝言は寝てから言うもんやで」
ふわっ、と動く「司令」アスカの動きは舞踊に似ている。
ぐっ、とトウジは呻く。
一瞬だった。アスカの動きはトウジを圧倒し、いとも簡単に効き手を背後に捩り上げ、動きを拘束した。
「な、にしくさるワレェ!」
骨が軋む。「女に」捩り上げられているだけなのに動けない。
「綺麗なだけの只の女」じゃない。それがはっきり判った。
「鈴原トウジ、5年前の使徒襲来で親を失い、以後、闇プロレスで荒稼ぎして幼いきょうだいたちを養っている……アンタ、使徒を見てどう思った?」
「どう、て……連中は滅んだて、ニュースで見たで」
「アンタ、そこまでバカ? じゃあ、今、アンタがぶちのめしたアレは何? 理論と結果が食い違っていれば、正しいのは【結果】よ」
使徒は滅んではいない、と。その「現実」はようやくトウジの脳髄に浸透する。
使徒は滅んでいない。街を破壊し、人々を蹂躙し、トウジの両親を死に追いやった「敵」は。
「……使徒が何で生き残ってんのや。あん時、エヴァ何ちゃら言う連中が使徒を」
言い切る前に、ずうん、と音が鳴った。
続けて、足元が大きく持ち上がった。
「ぐえっ!」
トウジは無様に転げ、アスカは手を突くだけで何とか堪える。
「司令、通信来ました! パターン青、使徒です!」
マヤの一声に、ち、とアスカは舌打ちする。
トウジのまなじりがぎりっ、と釣り上がる。
本日はここまで
889:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/01/06 20:20:58
自分は>>852です…ホント何やってんだ私…orz
もはや自分の脳内を整理するためだけに
がーっ! と勢いでやっちゃいましたorz
890:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/01/06 20:48:24
問題ない。その勢いで突っ走っておk。(・∀・)b
891:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/01/07 09:04:44
おー久し振りに覗いたら新作来てた! GJ職人!
しかし
> 微笑みの凄艶さにマヤの瞳は一瞬潤んだ。
ちょwwwマヤたんしっかりWWW
892:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/01/08 10:26:51
すんげぇ気になったんだが。
この話でカヲルのボジションはゴール様なのか、ジャックなのか。
前者ならまだ格好がつくとして、後者だったら
バカ笑いして「強がりはnot so goodだよ、ジャパニーズ・マウンテン・モンキーくん」とか云う姿を
すんげぇ見てみたくなってしまったorz
893:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/01/08 18:53:57
強がりはnice boatだよ に見えた俺は破廉恥な男かもしれん……
894:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/01/08 19:45:20
>>893
やぁ私W
orz
続きです
「何で使徒がおるんねん!」
「それが判ったら誰も苦労しないわ! 鈴原トウジ、家族の仇を討ちたいなら戦いなさい!」
「た、たかえて言われても、ワイは」
「本気で戦いたいなら『力』をあげる。戦えるだけの『力』、エヴァンゲリオンを!」
「その名前」は知っている。5年前、ヒトに与えられた圧倒的暴力を払拭する力。だが。
「エヴァは……壊れたやろ……」
「ええ、最初のエヴァはね」
地面が跳ねる。マコトの悲鳴がした。
「御托はいいわ。さっさとおいで!」
こっちです、とマヤの声が促す。トウジはアスカに命じられるまま走った。
トウジはうげっ、と口走ってしまった。
やたらでかくて黒いトレーラーがこちらに走ってくる。それは構わない。
しかし交通規制が入ったらしい一般道を、しかも緊急停止させられた一般車両を跳ね飛ばしながら、こちらに向かってくる。
最初は気の毒だと一瞬考え、しかし、ベンツだのBMWだの、いわゆる高級車両が何台が跳ね飛ばされるさまは「ざまぁみろ」と思えた。
今更の様に「緊急車両が通るから避けろ」と若い男の声がスピーカから聞こえるが、無意味すぎて笑えた。
よく考えずとも、この辺りに来るのはさっきの観客の様な連中ばかりだ。金を持っている卑怯者、ならば車が何台潰れようと構わない。
停車寸前、トレーラーは駄目押しの様に赤いポルシェを引きずって潰した。運転手が逃げられたのは幸いだろう。
トレーラーから若い男が顔を出し、腕の仕草で招いているのが判った。
「司令、お待たせしました! スタンバイ完了、いつでも行けます!」
895:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/01/08 19:45:42
アスカは頷き、トウジに顎をしゃくる。
「ついて来なさい」
「ついて来ぃ、言われても」
「来ればいいわ……私じゃもう巧く行けないから」
腕を引く。
トウジは訳も判らぬままトレーラーに上げられ、暗く狭い「道」に引き入れられる。
肩がひやっとする「壁」に何度も当たる。
そのうち、ようやく明るくなった。
狭い。そして「天井」が低い。
訳の判らないランプが幾つも点滅し、アスカはシートに座る。トウジはその後ろにしがみつかされた。
「アンタ、ドイツ語は判る?」
「ドイツ語て言うと……バームクーヘン?」
アスカは嘆息し、両手でそれぞれ何かのレバーを握る。
「……思考シークエンス、及び言語を日本語に設定。システム起動」
ぶん、と低い音が唸る。
シートの真正面に金属の「風景」が映る。テレビみたいだ、と考えるトウジに罪はない。きっと。
【オペレートサイド全システム、オールグリーン。いつでも行けます!】
トウジは名を知らない男、シゲルの声が促す。
アスカはレバーを握る腕に力を込める。
「トリガーオープン。ネオエヴァンゲリオン、発進!」
トウジはひー、と情けない声を上げた。
ジャンボジェットの離陸時は約1Gの力がかかるらしい。つまり自分の体重と同じくらいだ。
しかしアスカの宣言の瞬間、まずは足元がぐるっと掬われ、続いて、体重の数倍に思える力が斜め方向から襲いかかった。
くくるぅ、くくるぅ、と高く聞こえる音は使徒の鳴き声なのかもしれない。
トレーラーの天井を跳ね除け、踏み潰しながら、藍色の巨人が立ち上がった。
目の前に立ちはだかるのは、ヒトと似た黒い肢体(ただし、馬鹿でかい)に白い「顔」鳥の骨にも似た、うつろな眼窩めいた穴を
二つ持つ異形。
かつて「サキエル」と呼ばれた使徒が再びそこにいた。
896:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/01/08 19:46:11
トウジが「何が起きたのか」理解出来なかったのは無理もない。
アスカが「力」と評した巨人、藍色のネオエヴァンゲリオンと呼んだ巨人は、厳密には5年前のエヴァンゲリオンではない。
ネオエヴァンゲリオンとはある意味、人間の欲と業の代弁者にさせられたモノだから。
5年前の最終決戦時、綾波レイ搭乗する零號機はコアの強制解放によるエネルギー暴走を引き起こし、諸共に使徒を葬り去った。
人類を脅かす異形の驚異の放逐は、しかし平和の再来とは行かなかった。
戦争当時、武器そして戦技開発に携わっていた者の何割かは使徒の謎の解明が為されない事を理由に、
エヴァンゲリオンの再開発・再保有を強硬に主張した。
国連は諸々の事情を鑑み、幾つかの条件を与える事で可決した。そこに幾つもの政治的思惑が関わった事を否定する者はない。
条件の一つは、再開発もしくは新開発するエヴァンゲリオンにはS2機関、及び、それに類するエネルギー機関を搭載しない。
一つは、現行エヴァンゲリオンからダミーシステムそして人工筋肉を取り去り、メカニカルな=現代科学で理解できる範囲の機構に変更する。
そして、最後の一つ。従来のパイロットである全チルドレンの合法的拘束。
つまり、生き残ったセカンドチルドレンなる碇シンジ、サードチルドレンなる惣流・アスカ・ラングレーのパイロット解任。
事実上、二人は「それまでのエヴァンゲリオン」から全てを奪われる事になった。
もちろん、それ以上の戦争が起きなければ問題は何もない。全てはいつかは笑い話になったはずだ。
しかし、ほんの少し前。エヴァンゲリオン計画で預言されていた、当時から与太話と片付けられていたいわば「迷信」が現実化してしまった。
すなわち、使徒の再来である。
897:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/01/08 19:48:30
死海文書に記されていた「約束の日」の真の意味が解読され、新たな使徒の出現が確実となった時、
国連の条件、判断は人類にある種の危機をもたらした。
新造された新たなエヴァ、ネオエヴァンゲリオンを乗りこなせる者がいなかったのだ。
かつて条件合致した二人は搭乗の「価値」を剥奪されている。よほどの事がなければ国連が許すまい。
そして人類の理解できる範囲の技術は、コア、すなわちソウルに合致しない者にすら起動し得るはずのエヴァンゲリオンを、
皮肉にも更にピーキーな機体に仕立て上げた。
人類の技術は先史文明の遺産とも呼べるエヴァンゲリオンに現代文明の洗礼を与える事で、悪い意味で先鋭化しすぎてしまった。
機体能力が異常に向上してしまった反面、エヴァンゲリオンそのものからパイロットを護ろうとする意志を剝脱してしまったのだ。
いや、ネオエヴァンゲリオンは今や魂も意思も持たない単なるクグツであり、単なる機械の塊に過ぎない。
初號機が息子シンジを、弐號機が娘アスカを護ろうとしていた母親の情愛を失い、ただの機械の塊になった事で
「誰もが乗れる機体」になったはずが、逆に、その性能についてこられる人間を異常に限定してしまう事態が発生した。
ネオエヴァンゲリオンはコア=魂も意思も持たないから暴走しない。
その代わり、力がいわば有り余っているので、動きが荒すぎる。限度がない。
更に、LCL溶液はチルドレンの意志をエヴァンゲリオンに伝える要素であると同時に、操縦ダメージから守っていた。
それが使われない今、操縦の自由さと引き換えに防御性も失われている。
もし、かつてのチルドレンに再び搭乗許可が下りたところで、満足に動かし続ける事も出来ない。
ならば、そのダメージに耐えられる肉体的な超人が必要とされる。
ならば、強い者が要る。ネオエヴァンゲリオンに食い殺されず、逆に食い返すほど強靭な人間が。
これこそが鈴原トウジが選出された最大にして唯一の理由だった。
898:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/01/08 19:49:08
トレーラーにうずくまる形で載せられ、輸送されたネオエヴァンゲリオンが咆哮する。それは錯覚ではない。
「さて……言う事を聞くのよ、ジャジャ馬ちゃん」
もともとアスカの乗っていた弐號機は限りなく機械に近かった。しかし完全な機械ではなかった。そこには母がいたからだ。
しかし、今はいない。
それでいい。アスカは、チルドレンはみな「母」から巣立ったのだから。
「坊や、覚悟はいい?」
「誰が坊やや!」
トウジの怒鳴り声に応える様にくくるぅ、くくるぅ、と声が聞こえる。アスカは躊躇う事なくレバーを引いた。
「スマッシュホーク!」
左右のショルダーパーツが割れ、内側からパーツが射出される。ジェット噴射の強度と軌道は精密に計算され、
手を伸ばし、握る位置でバルディディッシュタイプの斧が形成された。
ネオエヴァンゲリオンは取り、頭上で回転させ、握り直す。
「行くわよおっ!」
突進する。
トウジはぐうっ、と呻く。狭いコクピットでなければ勢いで飛ばされた気がする。
だがそれはシートに座るアスカも同じだ。衝撃をまともに受けて内臓が軋むのが判る。
だが堪え、斧を振り下ろす。
サキエルの「肩」に食い込むのが判る。衝撃がフィードバックされて腕が痺れる。
アスカは舌打ちを心の中で噛み殺す。痛い。
サキエルが上向く。ヒトなら悲鳴を上げるだろう。
だがすぐさま立ち直り、斧を掴む。
しばらく力比べの様に押し引きし、サキエルが先だった。突進をかけ、体勢を崩したネオエヴァンゲリオンに体当たりする。
「ぐえっ!」
「あうっ!」
ネオエヴァンゲリオンは弾き飛ばされ、二人分の悲鳴がコクピットに響く。
べちゃっ、と湿っぽい音も鳴った。
899:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/01/08 21:46:53
「いっ、てー……ってオバハン、血ぃ出とるで! それにその傷!」
「……ああ、これ」
アスカは笑み、汚してしまった口元を手で拭う。
白く美しい頬に、血の色をした痣が幾条も浮かんで見える。肌が白いだけに余計に凄惨に見える。
「昔の古傷よ……興奮すると浮いてくるだけ。まったく、折角の美人が台無しだわ。
それよりアンタは大丈夫? ゲロでも吐いて失神してるかと思ったわ」
「女がゲロなんて言うなや……なんで失神せにゃーアカンねん! ワイ、こないに興奮したんははじめてや!
くっそー、これが【力】ならワイ、ホンマ欲しいわ! ワイかて使徒をブチ殺してやりたいわい!」
確かに眼が輝いている。それでこそ、この男だ。
知性も理性も必要ない。このピーキーな巨人を食い殺せるのなら「獣」で結構。
トウジの手が伸び、アスカの掌に添えられる。
「ワイにも出来んやろな!」
「……アンタなら出来るわ」
シートを半分譲り渡す。
トウジはアスカを抱き抱える様に座る。
「ワイに任せえ!」
くくるぅ、くくるぅ、と声が笑ったのが判った。
「右レバーのボタンを押しながら叫びなさい! 音声認識でアンタの声と脳波を覚えさせれば思い通りに動かせるわ!」
「それは簡単でエエわ!」
言われた通りにレバーを引く。
びりっ、と腕に軽い痺れが走る。しかしそれも心地よく思える。
「ワイの言う事を聞きぃや、エヴァンゲリオン!」
藍色の巨人が一際高い声で咆哮した。
巻き込まれぬ位置で「観戦」していたマヤたちは気付いた。ネオエヴァンゲリオンの動きが変わった事に。
900:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/01/08 21:47:39
斧が弾き返される。与えるダメージが小さいのが判る。トウジは舌打ちした。
「なあ、もっとパッとしたもんはないんかい! これじゃアカンわ!」
「そうね。青葉クン、日向クン、リミッター解除! 伊吹クン、関係各所に根回しヨロシク!
トウジ、プラズマショットを使いなさい!」
「応っ!」
ネオエヴァンゲリオンが両腕を突き出す。
両の手首が左右に展開した。内側から発射口が露出、微かな明滅が瞬間的にスパークする。
高電圧、高周波が発生する。周囲のネオンや街灯が影響を受け、停電する。
逃げ延びた人々も悲鳴を上げているのだが、それはさておく。
明度を奪われた街に使徒の鳴き声が高まる。
【司令、解除完了! いつでも行けます!】
シゲルの声が促す。
トウジは叫んだ。
「食らえ、プラズマショットおッ!」
放電の弾丸、容赦ない乱射がサキエルに襲いかかる。
高電圧の弾丸は強靭な使徒の全身を容赦なく食い荒らす。
乱射の衝撃がフィードバックする。だがトウジは怯むことなくトリガーを引き続ける。
「貴様ら使徒は人類の敵じゃあ! ワシは貴様らを許さんでえっ!」
サキエルがのけぞり、一声、一際高く鳴く。
遂に胸のコアが弾けた瞬間、光の十字の閃光が街を照らし上げる。
マヤたちは炸裂する音に聴力を奪われながらも歓声を上げた。
腕が震えるのはダメージと、疲労と、それ以上の武者震いの為だ。やや息を切らしながらもトウジはガッツポーズを決めた。
「いよっしゃあっ、やったでっ! どや、オバハ……って、だいじょぶかいな!」
アスカはぐったりと首を落としている。トウジは慌てつつもそっと起こしてやり。
気付いた。アスカはやや意識を飛ばしているが、微笑んでいる事に。
トウジはやや苦笑し、シートに横たえてやる。
ディスプレイに映る街に苦笑いし、今度は腕を突き出した。
「使徒がナンボ攻めてきても、ワイは……ナンボも戦ったる。それがワイに出来るたった一つの事や」
901:これでラスト
08/01/08 21:48:31
アスカはぼんやりと霞む風景の中、夢を見ていたのかもしれない。
辛い訓練も、戦いも、別離も、幾つも経験してきた。
それ以上に、心を分った友がいた。苦しみを共にした、そして笑い合える仲間がいた。かけがえのない「大切な人」たちがいた。
だから、呟いた。
「ふふっ……ファースト、見ていてくれた? あたしたちは」
ネオエヴァンゲリオンは対使徒の兵器だ。「力」だ。
しかし、本当の「ちから」はヒトの心だ。
それを知っているアスカは夢の中で微笑んでいた。
902:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/01/08 22:47:21
なんとなく極道兵器を思い出した俺が颯爽と退場
903:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/01/09 10:26:45
やつのことは忘れろ! 俺はそうした!
904:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/01/09 10:27:27
すいません誤爆しましたorz
905:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/01/09 18:53:18
誤爆宣言しなければ誤爆だと気づかれなかったんじゃないか?w
906:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/01/10 01:25:55
竜馬=シンジ?
隼人=アスカ
武蔵=レイ?
號=トウジ
と対応してるんですかな。
翔=
剴=
早乙女博士=
敷島博士=
ジャック=
メリー=
はどうなるのかワクワク。
907:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/01/12 09:56:03
>>851の小ネタ書いた者です。
久々にきたら、GJなものが投下されてるじゃないですか。
これからも楽しみにしてます。
908:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/01/12 22:24:41
この動画を見てくれ。
URLリンク(www.nicovideo.jp)
まるで>>851のようだぞ。
909:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/01/12 22:53:14
回線の調子が悪くて見られなかったorz
すいません
・敵も味方もレイ&カヲル
・偽名で味方カヲル生存
・アスカ、リツコ、ミサトを「ママ」と呼んで慕うレイ
はスレとしてアリですかナシですか
つかシンジとアスカのナンバリング逆でないかとorz
910:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/01/12 23:33:40
>>908
シンジと竜馬をシンクロさせてるのが芸コマ
911:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/01/13 10:20:24
>>909
ごちゃごちゃいってないでやりやがれ
912:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/01/13 16:17:12
911にものっそいツンデレを見た
そんな俺はアスカ=オバハンはイヤだが
リツコ=ママにはうっかり燃えた(萌えじゃない)
913:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/01/13 23:38:30
【登場! バルディエル!】
アスカは寝起きの頭を掻きながら部屋を出る。
挽き立てのコーヒーの芳香と、トースターの上がる音。
正直、昔はこんなものも煩わしいと思っていた。
しかし今ではこれがなかなか居心地がいい。もう一度頭を掻き、スリッパをぺたつかせながらダイニングに入る。
「おはようー……」
にこ、と笑いかけてくれる人がいる。たったこれだけの事が、けれど幸せだと気づいたのは「彼ら」のお陰だ。
「おはよう、アスカママ」
実のところ、他愛ない会話が出来るのは物凄い幸せなのかもしれない。
表向きは「惣流ユイ」と呼ばれている。戸籍上はアスカの娘になっている。
しかし彼女は、かつて「綾波レイ」と呼ばれていた。
そして書類上は「レイⅢ」だった。
エヴァンゲリオン計画は人類に対使徒兵器を与え、同時に、使徒の脅威を再生産した。
使徒の軍事利用という、「毒を以て毒を制す」計画なんてものをやらかしていた。
ユイ、すなわち【綾波レイ】は、そして【渚カヲル】はその故にこの世に生み出された。
使徒とヒトのDNAは酷似している。それを利用し、いわばハイブリットヒューマン、使徒とヒトの中間生物を「生産」しようとした。
それは一見、成功に見えた。少なくともユイとカヲルは「人類の意図した成功例」になり得た。
ヒトの形をしつつシトの能力、驚異的な細胞再生能力、知力、体力、時にはATフィールドの展開さえ行えた。
ために「二人」は限りなくクローニングされ、個体のストックは様々な形で軍事利用に回される「兵器」にされた。
結果に一部の人間は狂喜した。ヒトはここまで「科学」の勝利を修められた、と。
しかし、残りは失敗だった。「ヒトの形をしたシト」を造り出してしまった。
「奴ら」は一見人間ではある。違いは血の色が青い事くらいだ。
しかし中身は使徒であり、ヒトの狡猾さをそのまま、使徒としてヒトに対して行動した。
破壊。殺戮。それによって発生する諸々の危機。
「奴ら」はヒトの姿で使徒に同じくヒトに危害を与え、その為に使徒ごと殲滅された。
尤も、今となっては「殲滅したと思っていた」だが。
914:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/01/13 23:40:25
だが「レイ」と「カヲル」は残った。そして、それを知ったヒトは二人を、いや2体を殺せ、と叫んだ。
全てのストックを廃棄しろ、とヒステリックに声を上げた。
ヒトとは勝手なものだ。その意味ではシトと大差ない。
だが終戦時、唯一「目覚め」ていた個体を護り抜く為、アスカら戦争の生き残りは出来る限り手を尽くした。
クローンのストックはどうにもならなかったが、せめて「目覚め」ていた二人を護る為、全力を尽くした。
だから自爆したファーストチルドレン=レイⅡの後に「再生産」されたレイⅢはユイと名を変え、アスカの娘となった。
エヴァンゲリオン参號機パイロットとして参戦していたカヲルⅠは「アイダ・ケンスケ」として、当時、アスカらと親交深かった
ネルフ・アメリカ支部に保護される事となった。
そして、全ては現在に至る。
「で、アンタは今日はどうするの? あたしはまた仕事で遅くなるけど」
「今日はミサトママと一緒に、リツコママのところに行ってくる。約束したから」
カップに砂糖を注いだティースプーンが当たり、かち、と鳴る。
「……そう」
「そう。リツコママも大変みたい。今、締め付けが厳しいんだって」
「そうなのよねー。岩鬼大臣のバカタレが裏で手を回してるみたいで、こっちも色々大変なのよ」
こく、とコーヒーを一口。苦味が増した気がしてしまう。
「じゃあミサトとリツコさんによろしく伝えてね」
「うん」
レイは薄く微笑んだ。
レイが微笑める様になるのに5年かかったが、その時間はとても大切な時間と言える。
915:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/01/13 23:41:21
その頃。
赤木リツコはこのところ、毎日の様に続く徹夜のお陰で不機嫌だった。
しかし昔の戦友、そして「娘」が訪ねてくるなら、そうも言っていられない。
顔を洗い、メイクを直し、いつ来てもいい様に身なりを整える。
だが、その「余裕」は不機嫌な形で断ち切られる事になった。インタフォンが無粋に鳴り響いたからだ。
「赤木博士、首相からお電話です!」
「待たせておきなさい。朝からジジイのつまらない世間話に付き合いたくないの」
あの弱気な男には本当、辟易する。何も出来ないくせに他人の優位を取りたがって。
それとも、実は自分に論破され、罵倒されるのが趣味なのだろうか。それはそれでゾッとする話だ。
白衣を新しいものに取り替えながら研究室に戻ろうとする。
そこに、やたらプレスの効いたスーツの男が明らかに自衛隊の一群を連れ、現れた。
「赤木リツコ博士ですね」
「無礼ね。部外者は立ち入り禁止よ」
紋切り型の一言に男は笑い、胸元から折り畳んだ紙を取り出す。
見せつける様にリツコの目の前に広げ、実際に見せつけた。
「本日現時刻を以てネルフ日本研究所は全活動を停止。全施設、及び、研究結果の凍結を命じるものとする!」
「何を言い出すの!」
「事実です」
男はにやりと笑う。
広げられた紙は立派な書類で、防衛省大臣の署名と捺印が記されている。リツコは思わずひったくった。
間違いない。正規の命令書だ。しかも既に発効している。
「どういう事なの! 使徒が再来した今、この研究所の停止は」
「これは政府の決定です」
「……首相に確認します! 電話させなさい!」
「首相は現在、病気療養中です」
しまった、とリツコは心の中で歯軋りした。あの耄碌老人の電話を取っていればよかった。
せめて本人と話をしていれば違う道があったかもしれない。
「どきなさい!」
「あなたも療養が必要ですか?」
自衛隊員の銃口が一斉に突きつけられる。
「……あなたたち、権力に屈したのね……!」
それ以外は言えず、リツコは歯軋りした。
916:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/01/13 23:43:06
トウジは思わず唸った。
想像以上にダメージが来る。
走る、座る、攻撃する。その細かな動きのたびに露骨なフィードバックが容赦なく来る。
いかに昔、鍛えていたといっても女のアスカにダメージが出たのも道理だ。トウジも弱音の一つも吐きたくなる。
しかし。
「こ、んのぉ……ジャジャ馬があ! ワイの言う事をさくさく聞かんかいっ!」
ポジトロンマシンガンを構える。
ターゲットが迫り出す。
引き金を引く。
100ミリ弾が射出され、補正を受けた照準は的を粉々に粉砕した。
続いて現れるターゲット。
ショルダーから迫り出すプログレッシブナイフを取り、構える。
突進する。胃から苦い水が上がってきそうだ。
「ぐおぅ……口ん中が苦くなるわっ!」
一閃。ターゲットは真っ二つに切断された。
研究室のおのれのデスクで、「戦果」をモニタリングする男は、にやり、と笑った。
これはいい研究材料だ。
トウジはとぼとぼという感じに通路を歩く。
結果に不満はない。
もちろんネオエヴァンゲリオンにも満足している。
単に腹が減ったのだ。3時間ぶっ続けでピーキーな機体をぶん回し、疲れただけだ。
「うおぅ腹が痛ぇ……肉食わせぇー……」
思わず言ってしまう。それくらい空腹だ。とぼとぼと歩き、突然。
通路の向こうから爆発音が鳴った。
「な、んや?」
見てしまう。
917:名無しが氏んでも代わりはいるもの
08/01/13 23:44:10
今の爆発の為か、向こうは暗くなっている。
それ以上に、壁だの戸だのに「危険」「近寄るな」「近寄ったらサヨウナラ」「バカヤロー」等々、様々な罵倒が
赤ペンキでびっしり書かれているのが異様だ。
しかし、人間とは「ダメ」と言われれば余計気になる生き物なのだ。これを西洋では「好奇心は猫を殺す」と表現する。
その通り、トウジは物凄く気になった。
「……何や?」
ゆっくり近付いていく。普段なら素早く近付くのだが、腹が減って素早く動けない。
不意に横開きのドアが開いた。
昔のコントを思わせる、ひどく煤けた男が出てきた。白衣が真っ黒で、咳き込みながら黒い煙も吐き出す。
眼鏡が黒いのは煤けた為か、サングラスなのか、よく判らない。
ただ、少々老けているな、程度しか判らない。
しかし、持っているのが明らかにマシンガンなのがちょっと怖い。
「……オッサン、だいじょぶか?」
男がぎろっ、とトウジを睨んだ。そして歯を見せて、にやっ、と笑った。かなり怖い雰囲気だ。違う意味で。
「よお、少年」
「……何や」
「これはな、俺が開発した劣化LCL弾マシンガンだ。細胞を活性化させるLCLの働きを逆転させる事で使徒の再生能力を阻害する。
ただ、少々引き金が甘くてな。指の動きと連動させるか、貴様の脳波コントロールとシンクロさせるか、悩んでいる」
何の事だか判らない。トウジは首を傾げ、男はまた、にやっ、と笑った。
トウジの悲鳴が通路に響いた。
男がいきなりトウジに抱きつき、すがりつき、撫で回しはじめた。
「ひー! 何すんのや、ワイにそっちの趣味はないでぇ!」
「ふっ、イイ肉体だ。エヴァを食い殺せるのはお前と俺の息子たちくらいだ。くくっ……」
「やめいぃ、どこ触っとんねん! つか腿を揉むな! 腕も触るな、ワイは可愛い女の子が大好きなんやー!」
どつっ、と鈍い音が響いた。
アスカの、恐ろしいほど的確なピンヒールキックが男を粉砕した。