07/11/22 20:43:46 Ul3peKV6
石川信者はこんなので満足だろうがどう見ても最低系踏み台クロスです本当に(ry
135:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/22 20:46:44
まぁなかなか無茶クロスだからなぁ戦力的に
136:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/22 20:53:26
確かにエヴァが踏み台にされてるなとおもう
137:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/22 21:02:47
ダイナミック系の作品とクロスすると大概こうなるよ。もうなれたぜ
138:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/22 21:18:29
>>134-136
うるせえ!てめえらもエヴァもゲッター線のおににみこまれちまったんだ!
運命だとおもってがまんしやがれ!
139:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/22 21:32:21
ちなみに将造がインベーダーを飲み込んで平気なのは体内に搭載された超小型ゲッター炉心のおかげだと思う。
食ったはしからゲッター線で飽和させてるんだな、きっと。
140:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/22 21:35:16
つうか元々参号機は踏み台
141:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/22 21:35:25
>>134~137、石川版ゲッターとのクロスだとエヴァのキャラが薄すぎるから仕方がないと思うのだが?
デモンベインとかみたいに竜馬とかに対抗できるだけの精神力とか勢いがないと食われるのは仕方がない。
142:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/22 21:44:58
まあ牛とか髭とかいちおくえんとか言わないだけマシだと思っとくか
143:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/22 21:47:19
>>139
喰われたインベーダーが、たまたま生き残って進化したらどうなるんだろうか
144:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/22 21:50:56
>>141
いやデモベは勢いだけだろw
まぁエヴァ原作はこの辺から坂を転げ堕ちるような感じだったからな
寧ろ竜馬の活躍でエヴァ勢が皆助かって幸福になったとかの方がありえない展開w
145:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/22 21:52:23
オマイらせめてトウジと委員長に対して哀悼の意を示せよ
ついでで良いからケンスケにもな~w
146:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/22 22:05:46
というか『主人公が真ゲッターの竜馬』の時点で
エヴァは踏み台どころか土台にすぎない。
147:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/22 22:13:19
そんな信者に冷や水をぶっ掛けるのが俺のジャスティス
148:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/22 22:44:35
むしろ石川作品以外でゲッターと並べる物を挙げてほしいぐらいだ
149:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/22 22:50:22
>>148
間違いなくグレンラガンと言い出すやつがいるな
風呂敷を畳む(笑)
150:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/22 22:53:38
トミーノとか
151:つづき
07/11/22 22:54:34
・・・
深い暗闇の中で、五人の醜悪なる老人が立ち並んでいる。
彼らは巨木ほどもある大きさの、中に橙色の溶液が満たされたカプセルを取り囲むよう
にして、なにやら詮議にふけっていた。
彼らこそは今まで何度か打倒されるべき存在と目されてきた、ゼーレの幹部である。
その内の一人で、もっとも年かさに見えて肥えた老人がいった。
機械仕掛けの目隠しのようなものを着けていて、その目の色をうかがい知ることはでき
なかったが、歪む口元は彼が不機嫌であることを知るに十分だった。
「あの流竜馬という男が来てからというもの、シナリオは狂いに狂った」
その言葉に、他の老人達も連鎖するかのように、
「そう。もはやシナリオも何もあったものではない」
「修正は不可能といっていい」
「ゲッターの出現、碇とネルフの行動、鈴の裏切り、チルドレン候補の全滅……すべて予定外の出来事だよ」
「これ以上だまってみている訳にはいかん。我々は人類補完計画を遂行せねばならぬ」
と、口々にわめきたてはじめた。
彼らの信奉する、この世の歴史の全てがつづられたという「裏死海文書」に書かれてい
ない内容の事件が次から次へと起こったのだ。
ゼーレに大きな焦りが生じ始めていた。
もっとも、たかが古びた本の一冊がこの世の在り方をすべて記述していて、それに従っ
て人間がうごくなどというのは滑稽な話で、そこに書かれていないことが現実に起きるこ
となど、当然のことと考えるのが普通だ。
だが旧約聖書……すなわち、ユダヤ教の聖典を妄信しすぎて、ねじ曲げるほどの彼らは、
文書に書かれていることこそがこの世の全てであり、その内容を実行する自分たちこそは
人類の導き手と思っていた。
152:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/22 22:56:04
ゼーレの老人たちは、その計画を無理にでも進めるためにみずからシナリオを変更して
人類補完計画を推し進めることを考えていた。
もはやその時点で、彼らの信奉する文書に何の効力もないことが実証されているような
ものだが、それを決して認めようとはしない。
―ひたすらに人間は神に懺悔せねばならぬ。
それだけが老人達の考えることだった。
世を生きるにあたって、人が宗教の力を借りることは健全なことだ。
不毛の大地に、裸一貫で投げ出された人間の心は、なんとも弱いものである。
そこで己を大きく超える神という存在を創造してそれに付き従えば幸せが訪れると考え
ることで、あらゆる困難に打ち勝てるのなら、これ以上の健全はない。
だが、やがて困難に打ち勝って豊かな生活を手に入れたあともなお、自分たちの考えた
ぐう話を妄信して思考停止するのは、愚かの極みといっていいだろう。
人間は地球の生物において最も高い知能を得たが、それにおぼれた者の行動原理など、
昆虫以下と成り下がるのである。
だが、それに彼らが気づくことは永遠にないだろう。
例の機械のバイザーをつけた老人が、カプセルに手をやった。
その中に浮かぶ、銀髪の少年の姿をみつめた。
あごが鋭く目鼻立ちは整い、その肉体の彫刻のようなしなやかさは、まったくの美少年
といっていいほどだった。
「そろそろ……我々の切り札に目覚めてもらおう。タブリス、我々のシナリオの要よ」
そういうと、反応したのかタブリスと呼ばれた少年が閉じたゆっくりと目を開く。
さて、ここでこの物語において最後の人物紹介をしよう。
彼らがタブリスと呼ぶこの少年……もう一つの名を、渚カヲルという。
今後は、カヲルという名称をもって彼を呼称することにする。
153:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/22 22:56:10
>>149
ここにはいろんな作品のファンがいるからキチガイじみたアンチ発言も程々にな
154:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/22 22:58:02
生年月日二〇〇〇年、九月一三日。セカンドインパクトと同日とされているが、これは
いつわりだ。それ以外の経歴は一切不明。
おそらく、その本当の年齢は人間など、とうにおよばぬほど、悠久の時を生きながらえ
てきた存在であろう。
彼はアダムより生まれし最後の子供、最終シトである。
様々なシトに特殊能力があったが彼のもつ能力とは、ひとつ。
アダムおよびリリスのコピー、つまり、エヴァを自在に操ることができる能力。
ゼーレは彼を初号機に、そして残り一二体のエヴァにダミープラグを用いて、人類補完
計画の儀式を行う腹づもりであった。
だが、それにはまだ、倒さねばならないシトが三体残っている。
それも裏死海文書に書かれたことらしいが、ゼーレは思いのままならないネルフを切っ
て、カヲルによって残りのシトをせん滅、計画を実行する予定だった。
本来、彼の出番はネルフによってすべてのシトが撃破された後の出来事だったはずなの
だが、ゲッター出現からはじまったシナリオの狂いがが、ゼーレの行動を早めた。
また渚カヲルというのは、ネルフに潜入して最終的にはエヴァを奪取するまでに用いる
偽名であった。
すでに彼の戸籍情報は上の生年月日をもって登録され、最後のチルドレンとしてネルフ
に配属される予定が決まっていた。
カプセルの中に浮かぶ、裸体のカヲルを前に老人達がぶつぶつとつぶやいている。
異常な光景であった。
そして、まるでそれを戒めるかのごとく、音もなく彼らの背後に近寄った影から嘆息がもれた。
「はあ……これが最後のシト。結局、行き着く先は人間とは……所詮は太陽系の生物と、いうことか」
「何者ッ!?」
侵入者に五人の老人達がいっせいに振り向いた。
そこにいたのは、
「しょ、初号機パイロットが、なぜここにいる!?」
155:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/22 23:00:53
シンジだった。
片腕を失ったが、なおも残った腕で警備についていたのであろう人間の頭をわしづかみ
にして、たたずんでいる。
そして彼は掌に力をこめると最初、肉に指が食い込み血が噴き出したかと思うと、次に
は頭がい骨ごとその頭をぐしゃりと砕いてしまった。
頭部の中を構成する物質があたりに撒き散らされる。
シンジは手についた血と肉と骨の残骸を、ぺろりと舐め取るとニタリと笑った。
「あなたたちの人類補完計画を、さらに補完してあげようと思った来たんです」
「……なんだと」
「人類は神に懺悔する必要はない……だが、生命のスープとなってひとつの生命体に変わ
るのはいいことです。なぜなら」
というと、シンジの無くなった片腕から次々と将造に襲いかかったのと同じ甲殻類のよ
うなモノが連なって老人達に襲いかかっていく。
それは老人達の体にまとわりついて、あっというまに全体を埋め尽くしていく。
そのおぞましさに、彼らは声にもならない悲鳴をあげた。
「それが僕たちにとってもっとも、都合がいいから」
シンジは五つの人間だったものを無視して、カヲルの入ったカプセルを見上げた。
彼は、その眼をかっと見開いてシンジをみつめている。
今、起こった出来事をすべて見ていたのだろう。その口を半開きにしていた。
シンジが失った方の腕を掲げる。
すると、一瞬で骨が再生してその周りに肉が巻き付くように生えていき、瞬く間に再生
させると突然カプセルに殴りかかった。
ごんっと鈍い音が、暗闇にひびきわたる。
破壊するつもりのようだった。
一撃で割ってしまう事はできなかったが、もう一発、さらに一発と殴りつけるとカプセ
ルは全体にヒビを走らせて、橙色の液を漏らし、そのあと一気に砕け散った。
あふれる液体と共にカヲルがカプセルから解放されていく。
156:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/22 23:03:52
支援
>>153
そんな風に見下すから評判悪くなるのに……
157:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/22 23:04:13
彼は、空に浮くと飛んでシンジから間を取るように離れた。
そして濡れた銀の髪をかきあげると、静かにいった。
「……やあ。予定していたよりも早い出会いだね、碇シンジ君。僕に用かな?」
そういうと、シンジは目をつむった。
そして「んんっ」と喉を鳴らし、
「ガンガンガンガン、若い命が真っ赤に燃えて~♪」
と、妙にハイテンションな唄を唱いはじめた。
これに呆気にとられたカヲルが両手をだらり、とたらしてしまう。
すると、シンジは唱うのをやめ、笑顔でいった。
「歌はいいねえ、リリンの生み出した文化の極みだよね……そう思うでしょカヲル君」
「……なぜ、その名を知っているんだ」
渚カヲルの名を知る者が現時点でゼーレ以外にあるはずはなかった。
彼をネルフに配属する計画は、完全な極秘裏に行われていたのだから。
ゼーレのスパイを続けていた加持ですらも、まだその核心までには至っていない。
だが、その答えはシンジにとって簡単なことだった。
「僕たちは個にして全。そこの年寄りから聞いたんだよ、今しがた」
老人達の記憶とも同化したと、彼はいう。
それにカヲルが眉をつりあげた。
「インベーダー……レリエルとバルディエルを喰い、なおも僕やリリンすらも食い尽くそ
うというのか。どん欲だね」
「喰う? それは違うよカヲル君、より優れた生命体が宇宙の覇者となる。それは他の生
命体と戦うことなく同化できる、我々インベーダーにこそ相応しい。喰うのではなく一つになるだけさ」
158:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/22 23:05:49
「同じことじゃないか。でも、これをみて確信したよ……そこの死体共がなにを思っても
リリンの力は宇宙に必要だってことを。
自分で進化することも忘れた君たちのような寄生虫を消し去るためにね」
「寄生虫よばわりとは……ずいぶんだなぁ、カヲル君。でも、すぐにでも僕たちのすばら
しさは理解できるようになる」
そういうと、シンジは含み笑いと共に空を飛んだ。
彼は人類補完計画に必要なカヲルをも同化しインベーダーの仲間に引きずりこむつもり
だった。
瞬時にカヲルへ寄って腕を伸ばすと、しかしカヲルもその腕を振り上げてA.Tフィール
ドを発生させるとシンジの接触に抵抗する。
それにシンジがまた嘆息した。
「さすがシト。そのサイズでもこれだけ強力なA.Tフィールドを展開できるんだね」
「A.Tフィールドは心の壁……誰だって持っている。悪いけど君たちインベーダーは好意
に値しないんだよ」
「それはどういう意味?」
「嫌いってことさ」
「じゃあ無理にでも好きになってもらおうかな」
というと、シンジはかつてゲッターロボがサキエルにやったように、カヲルの展開する
A.Tフィールドに腕を突っ込むと、力任せにそれを引きちぎりはじめる。
「くっ……」
カヲルの表情が歪んだ。
彼の想定以上に、インベーダーと化したシンジの力が強大だったのだ。
必死にA.Tフィールドの強度を維持しようと力むが、じりじりとフィールドをこじ開けられていく。
さながら、相撲でもとっているかのような勢いだった。
やがて軍配はシンジにあがる。
159:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/22 23:07:18
さきほどカプセルにやったように、ある程度までカヲルのA.Tフィールドをこじあける
と後は、せきを切ったかのような勢いで完全にフィールドが破られてしまう。
カヲルにシンジの魔の手が迫った。
とっさにカヲルはそ腕を掴み払おうとしたが、掌に激痛が走った。
しまった、と思った時にはすでに遅い。
掴んだ部分からざわざわとインベーダーがカヲルの掌を通じ、その体に浸食していく。
シンジが高笑いをした。
「ハハハ、ハハハハッ。バカだな、僕に触れればどうなるか解ってるだろう」
「うぐ……ッ」
「シトもヒトも、インベーダーと一つになる。それが最良の選択だよ、カヲル君」
そういってシンジがカヲルの腕を掴み返した。
そこからも、さらにインベーダーが肉をやぶり、血管を通って浸食していく。
血が滴りおちた。
シンジが怪力でカヲルをぐいっと引き寄せていく。
額と額が接触するほどになって、シンジの眼がカヲルの眼を覗き込んだ。
その眼は濁って何の生気も感じさせなかった。
見たくないとばかりにカヲルが目をつむる。
「残念、ここまでか……だけど、今の接触でわかったよ。君たちはゲッターエンペラーを、
そしてエヴァ終号機を異様に恐れているね。それが恐いから今、その主が庇護下を離れた
時を狙って同化しようとしてきたわけだ。無様だよ。
リリンは無限に進化していく。寄生しなきゃなにもできないインベーダーごときが敵う
相手じゃないよ。僕を同化したところで、彼らは止められない」
罵るようにいった。
カヲルの言葉にシンジはしばし止まったが、やがて、
「……黙れ」
と、竜馬やゲンドウあたりが喋ったのではないかと思うほど低いを声をだすと、口を大きく開ける。
160:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/22 23:07:41
しえーん
>>156
キチガイじみたは余計だった、ちょっと反省してる。
だが見下してる点では>>149も大概だと思うぞ。いちいち(笑)とか付けてるし。
161:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/22 23:08:42
そして中からカサリと何かがうごめいたのが見えると同時に、カヲルの口を塞いだ。
カヲルがうめいた。
シンジの喉が、異様なまでに波を打っている。
インベーダーが流れ込んでいるのだろう。しばらくそのままだったが、やがて喉の波打
ちが止まるころになると、カヲルの反応が鈍くなった。
それを確認したシンジが、掴んだ腕を放して彼から離れる。
すれば、支えを失ったカヲルがその場にどさりと倒れ伏した。
シンジが無表情でそれを見つめている。
やがて、倒れたカヲルがぴくりと反応し両腕で地面をつかむと、むくりと顔を上げる。
その眼は、シンジと同じように濁っていた。
「起きたか。じゃあいこうか、カヲル君」
「うん、そうだね、シンジ君……」
カヲルが、不気味に笑った。
七
「結局、シンちゃんは行方不明、か……リツコも戻ってこないし」
と、自宅マンションで酒をあおりながらいうのはミサトだった。
例の学校壊滅のあと、ネルフ本部にもどったアスカ達の口からゲンドウをふくめてネル
フの職員は事のてん末をすべて聞かされていた。
その中でも、一番ショックを隠しきれないのはミサトだった。
162:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/22 23:09:42
支援
ちょwwwww二人組完成wwwww
163:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/22 23:09:56
急展開だな
164:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/22 23:10:16
ミサトはシンジとの共同生活の中で、彼の保護者的なイメージを内にかかえつつあった
が、彼の危機に瀕して彼女はなにをすることもできなかった。
テーブルの上に、いくらかのつまみを置き、それを時々口にしながらうわごとのように
同じことを何度もつぶやいている。
その向かいに座っているのは竜馬とアスカだった。
テーブルの下ではペンペンが、エサのイワシを丸呑みにしている。
「ミサト、飲み過ぎだ」
無愛想に竜馬がいう。
それが気に障ったのだろうか、ミサトは目をつりあげると竜馬にくってかかる。
「なによッ!! もとはといえば、リョウ君がしっかりシンちゃんを見てないからあんなこ
とになるんじゃないっ。彼を守りに来たって一番最初に言ったのはウソだったわけ!?」
と、ミサトは酔いの勢いも手伝ったのかまるで竜馬に喧嘩をもとめるかのようだった。
だが喧嘩っ早いはずの竜馬は乗らない。
「言い訳はしねえよ」
と、一言いうとつまみを口に放ると腕を組んで黙ってしまった。
気まずい沈黙が流れる中、アスカが無言で座った椅子に脚をぶらぶらさせていた。
そして、ジオフロント、ネルフ本部のゲンドウ執務室。
その異様に広く、ぽつんとその一部に机がおかれただけの部屋においても同様の
空気が流れていた。
ゲンドウが冬月を相手に将棋を将棋を指しているが、なかなか次の一手が出てこない。
冬月がつぶやくようにいった。
165:ここまで 支援ありがとう
07/11/22 23:11:27
「碇、お前の番だぞ」
「わかっている」
「息子のことが心配なのは解るが……」
と、いいかけた時だった。
その机のかたわらの電話機が激しく鳴り響く。
すぐに冬月がとった。
「私だ」
「副司令ですか」
という通話の相手は、加持であった。
だが受話器越しに彼はいつもの飄々とした調子ではなく、焦りが感じられた。
それを察知した冬月がいった。
「まて、わかった。要点だけいってくれ」
「助かります。ゼーレの幹部にシンジ君が接触した形跡があるんです。今後の彼らの動向
に注意してください、何が起こるか解りません」
「碇の息子が、だと……」
その言葉に、ぽろりとゲンドウの手から飛車の駒がぽろりとこぼれるのだった。
166:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/22 23:17:34
誤字……だよね?>終号機
違うとしたら物凄いwktkしてしまう字面なのだが。
167:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/22 23:19:39
カヲルまでインベーダーの踏み台に…ククッ…
ゼルエルなら、ゼルエルならきっと…(つかサンダル、マトリ、イロは欠番すか?)
こうなったらゼルエル、アラエル、アルミサエルでゲッターエンジェルチームを…
168:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/22 23:22:23
それにしても職人さんマジで超人です。一ヶ月もしないでこのボリュームを書き上げるとは・・・
体を大事にして欲しい。無理をしないでくださいね。それにしてもGJ!!
169:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/22 23:26:05
恐るべしインベーダー……
残りの使徒が全て食われてる気がしてきた
GJ
170:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/22 23:27:02
>>166
前スレの904あたりでエンペラーと一緒に宇宙食いまくってたエヴァじゃね?
つかまとめサイトまだあ?
理想郷あたりで
「ゲッター(石川版)と他のロボットアニメとのクロスの名作を捜しています」
とか捜索願いが出たらすぐに紹介すます。
171:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/22 23:30:42
>>167
隼人あたりが残りの使徒と交渉してヒト&シトの共同戦線が…
で、擬人化したゼルエルあたりが率いるゲッターエンジェルチームとEVAチームが体育会系な喧嘩を…
172:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/22 23:31:36
>>170
理想郷の屑は帰れ
あそこのガキが流れこんで来たらスレが死ぬ
まさにインベーダー
173:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/22 23:33:57
>>170
言い出しっぺの法則
と、言いたいが理想郷の厨房かよ……
174:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/22 23:34:09
>>171
ありえなくも…ないか。
『アーク』の恐竜帝国との共闘とゲッターザウルス出撃という例もあるし。
175:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/23 01:01:53
そんなやばいの?理想郷の住人って。
176:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/23 01:22:02
>>175
やばいってレベルじゃねーぞ
管理人はいい人だが
177:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/23 01:30:55
一言で表すなら『ピラミッド』
良識ある人ほど少なく、モラルの欠如した人ほど多い
管理人の心痛は計り知れない
178:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/23 05:20:31
なんか凄い方向に進んでるなあ
ゲッター詳しくないから分からないけど、これはいいと思う
エヴァが踏み台じゃなくて土台になってる所とか
人の死に方とか救い無さそうな雰囲気はエヴァっぽい
アスカとレイだけが無事なのはどうなんだろう?
調べたらゲッターではミチルって女の人が死んでるみたいだし
とにかく作者さんGJ
179:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/23 09:51:40
>>171
擬人化使徒のデザインは吉崎観音かw
180:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/23 09:59:21
良い作品があり、良い管理者が居る。
だがそれゆえにそれに倍する電波作品と更にその数倍のDQNが住まう場所。
それが理想郷クォリティー
181:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/23 11:20:48
DQNの例は>>170
こんな風に紹介されたせいで流れこんできたDQNに神スレを潰されたことがある
182:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/23 14:34:41
今までにゲッペラーからスペアが配達された奴っている?
183:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/23 14:36:35
危険な流れだな…これじゃまとめどころじゃないな。
一応前スレ保存しといて良かった。
184:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/23 14:40:19
理想郷から厨が流入されちゃたまらんからな
185:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/23 14:50:26
>>172の言う通りまさにインベーダー
一度侵食されたらスレを完全に食い潰すまで離れないしな
186:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/23 15:14:56
理想郷とやらがどこの事かググッても一見わからなかったが知らない方がいいかな?
それはそうと>>182
『アーク』に出てきた分艦隊―あれでもたぶんごく小規模な―にも
ムサシ司令官のスペアが常備されていた事を考えると、こないだ本艦隊に
文字通り身を投じたリツコがいまごろネルフ主要メンバーを量産ベースに乗せて
いつでも派遣OKにしてるのでは。
もっともあれも思想面でかなりヤバい方に逝っちゃってるから手放しでは
安心できないけど。
187:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/23 15:27:42
>>186
知らない方が幸せかもしれない
が、どうしてもというならURL貼るがどうする?
188:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/23 15:41:45
ありがと、でもやっぱりいらない。
余計な火種に持ち込む事になったら申し訳が立たん。
189:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/23 16:08:08
「理想郷で紹介します」と書いて
「このスレを潰します」と読む
190:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/23 16:08:25
Arcadiaでググレ
191:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/23 16:12:32
いい加減理想郷の話題やめないか?
192:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/23 16:19:34
アルカディアと言い換えるとハーロックが出てくるぞ?
近年では芋づる式に999とかヤマトとかもついてきます
193:つづき
07/11/23 17:49:03
冬月は加持へ身辺に注意するように、とだけいって通話を終えると、受話器をおいて
ゲンドウの方をみた。
それに応じたゲンドウが、眼鏡のズレを直していう。
「ゼーレが強硬手段に出てくることは予想していたが……これは」
「なぜ、彼がゼーレに接触したか解らんな」
「可能性があるとすれば、インベーダーの手による人類補完計画の発動だ」
「む……碇、それは……そうかっ」
と、いって冬月がゲンドウの飛車を封じるようにブロックを仕掛けながらいった。
これに、はてといった表情になったゲンドウが次の手を考えて、駒を手中でもてあそび
ながら話をつづける。
「流によれば、インベーダーは相手に寄生することでその勢力を伸ばす存在だ。なら彼ら
にとって人類補完計画発動後の、生命のスープと化した人類はまさに蜜だろう」
「……そのために初号機パイロットに寄生したのか。たしかにリリスのコピーたる初号機
を制御下におけば、ガフの扉が開かれた後の世界を自由にできる」
「奴らは、我々の地球を他の宇宙への侵攻の拠点にするつもりなのかもしれん」
「ふざけた話だ」
「好きにはさせんさ。ここは我々の住みか……む、王手だ」
と、ゲンドウが角を指す。
それに冬月がうっ、となって止まった。
「……ううむ」
気づけば、辺りは敵兵に囲まれている状態だった。
しかし、
「参った」
とはいわない。
194:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/23 17:50:15
まだまだ、なにか手があるはずだと長考に入る。
しばらく腕を組んだまま硬直していると、やがてゲンドウが盤から目をそらして執務室
の巨大なガラス張りに首を回した。
それを見て、冬月が席をたつ。
「降参か?」
「いや、喉が渇いた。碇、上の自販機で茶でも飲まんかね」
降参してたまるか、という表情をする冬月にゲンドウが珍しく吹きだすと、やがて自身
も席をたっていう。
「手の込んだ長考だな……まあいい。付き合おうか」
この現在、時刻は午前の三時半。深夜であった。
ミサトたちは明日の勤務を考えれば酒を飲んだくれている時間ではないし、ゲンドウた
ちが、執務室で将棋を指しているような時間でもない。
シトに加えて現れた、インベーダーという敵の出現が、それが瞬時にしてシンジをはじ
めとする、チルドレンたちを飲み込んだ衝撃が、彼らに極度の緊張を与えていた。
エレベーターに向かいながら、ゲンドウがいった。
「もう王手だ。再戦にすればいいだろう」
それに冬月が、
「私は諦めるのが嫌いな性分でね。ついでに再戦も嫌いだ」
と、いつになく雄弁にいう。
ただその言葉が、単純に将棋の勝負を指していっているのではないことはゲンドウにも
理解できた。
エレベーターの手前に立つと、その到着を待つ間、静かにいう。
195:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/23 17:51:22
「やはり、冬月先生はいうことが違う。なに……私も諦めやしませんよ」
そういうと、丁度エレベーターがやってきた。
二人は乗り込み上層を目指す。
すでに食堂は閉まっているが、最近設置された冷凍食品の解凍自販機もあるので、茶と
共に軽食を取ることもできた。
夜勤の供としては最良であろう。
しかも、職員価格で購入できるのは助かった。
もっとも、この二人は飲食に関する金銭を気にするような経済状態ではないのだが。
そして上層にあがり、茶で喉を潤しながら冬月がつぶやいた。
「……加持君は、突っ込みすぎだ。命取りになるぞ」
加持は、もともとゼーレ・政府・ネルフの三重スパイだった。
このうちでもっとも世界への影響力が強く力をもつのがゼーレであり、この組織を裏切
るということは、それすなわち裏切り者の生命が絶たれることを意味する。
ゲンドウが紙のカップをわずかに握りしめた。
「彼はセカンドインパクトを起こした、人間を恨み尽している。
それでも……私に復讐するよりゼーレを叩きつぶすことを選んだ。私にできる償いがあ
るとすれば、その方向に全力を注ぐしかない」
ゆっくりいうと、手に持ったカップを口に付けて中の茶を一気に胃へ流し込んだ。
そして冬月がだまってそれを見つめているのだった。
間。
やがて場面は移り、いずこかの日も当たらぬ地下通路へ。
そこの臭く、狭い通路の壁に、寄りかかるようにして加持がいた。
みれば、体のあちこちから出血している。
もっとも酷いのは右肩で、その付け根の部分が散弾に撃ち抜かれたのか、ざくろの様に
なってはじけていた。
196:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/23 17:52:24
すでに体をめぐるべき血液が足りなくなってきているのであろう。
加持は、そのままずり落ちるように床に転がった。
「ぐ……」
と、うめく。
生き残った方の腕で血だらけのワイシャツの胸ポケットに手を伸ばすと、たばこの箱と
ライターを取り出し、口にくわえると火を付けた。
そして苦しそうに煙りを吸ってはいたあとに、たばこを放り捨ててつぶやいた。
「へっ。ここまでか……もう少し生きたかったがな……」
しばらく虚空を見つめていたが、やがて携帯端末を取り出すと、血に塗れた指で滑りな
がらもなんとか操作をしてコールをかけた。
通信先は、ミサトの住むマンションだった。
数コールの後に浮かない声のミサトが相手にでる。
それを確認した加持は、なるべく息を吸うようにしてから喋りはじめた。
「よお。葛城……元気か」
「あんまり元気じゃないわ」
「そりゃ、そうか。だが俺もちょいと元気じゃないんだ」
「か、加持君……?」
「悪ぃ……ドジっちまった。血が出すぎて、もう、動けそうもねえや。最期に女の声聞き
たいなんて我ながら情けないと思うが、どうしても話しておきたくてな。許せ」
その言葉に、通話先のミサトがふっ、と息を吸ったようだった。
愁嘆場になりそうだな、と思った加持はそこで彼女がなにか言う前に我が身が砕けんば
かりに苦しいのを抑えて先手をきる。
「葛城。シンジ君のことを頼むって流君にいっておいてくれ」
「でも!」
「あばよ。生きてられたらまた会おうぜ」
197:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/23 17:53:28
それだけいって通話を切った。
喋り終えると、残っていた体力を使い切ってしまったのだろう、その視界がだんだんと
にじみ、ぼやけていくのが知覚できた。
そして奇妙な眠気が加持を包んでいく。
そのとき、彼を見下ろす形で子供ほどの小さな影がぼんやりと映るのが見えた。
かすれゆく意識の中で、加持はそれをかつて見捨てた兄弟たちの魂だと思い、いった。
「やあ……迎えにきてくれたのか?」
それに、ずい、と影が近づいた。
一方、ミサト。
通話が切れるや、持っていた受話器を粗々しく叩きつけるように置くと、あとは机に突っ伏した。
残る竜馬とアスカも、受話器から漏れる会話は聞こえていた。
竜馬は腕を組んだままじっと瞳を閉じて瞑想のようになり、アスカは両の拳をにぎりし
めて膝の上におき、うつむいている。
しかし、すぐに立ち上がった。すたすたと自分の部屋に歩いていき、トートバッグと軍
刀を持ち出すといった。
「ちょっと散歩にいってくる」
それにミサトは答えず竜馬が、
「……気をつけろよ」
と短く答えた。
アスカはうんというと、玄関で靴に履き替えると外出していく。
そして竜馬も椅子を立ち上がると、
「俺は寝る」
198:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/23 17:54:32
といって納屋の自室へと消えていった。
そこは、極度に狭いながらも、うまいこと仕切りで分けて竜馬とシンジの両人が使用し
ていた部屋だ。
竜馬がふとシンジが寝ていた布団を見ると、すでに戻ることのない主を待つ、DATの再
生機やレコード盤や、チェロが寂しげに置かれていた。
なお、DATというのはデジタル・オーディオ・テープの略称であり、むずかしいことを省
いて説明すれば要するに従来のカセットテープよりも高音質を求めることのできる音声メ
ディアである。
さらに、レコード盤は管理や使用に際して神経を使わないとすぐに痛めてしまう不便な
ものだが、じつはCDのようなデジタルメディアではカットしてしまう、人間の可聴域を超
えて聞こえない領域の周波数までも収録しているゆえ、視聴者にとっては、より生の演奏
に近い感覚が得られるという。
人間は、聞こえる音のみで空間を把握しているわけではないからだ。
こういう少し踏み入った音の世界が、シンジの趣味のひとつだったのであろう。
人付き合いが苦手ゆえに、逆に音楽という人間の感情がこめられて奏でられる時間に、
何か深く感じ入るものがあったのかもしれない。
シンジ自身は、チェロを弾いたりマニアックな再生機で音楽をたしなむことを「なんと
なく続けたから」の一言で済まして、本人も納得してしまっているフシがあるが、人間の
心は何となくで済むほどに単純ではないだろう。
普通の少年として生まれて歳を経れば、あるいはこういう趣味人として生きる道もあっ
たかもしれない。
むろん、竜馬がそんなわずらわしい感情など考えることはなかったが。
竜馬はどすんと、汚れに汚れた我が布団に寝っ転がると、腕枕をして天井を見るとやが
て目を閉じた。
しばらくそのままにしていると、閉じたはずの納屋の戸がすっと開く。すでに居間の電
気は落とされて光が差し込んでくることはなかったが、風が動くのを感じた。
ミサトであろう。
竜馬は、だが、目を開けずにそのまま動かなかった。
そうしているとミサトがいよいよ竜馬に近づいてきた。
199:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/23 17:55:47
さらに黙っていると、彼女はその手を竜馬のごつい腕の上にのせてくる。
この時点で、竜馬が目を開いた。
そして、
「なに考えてやがる」
と、低くいった。
ミサトがビクリと反応するが、かまわず続ける。
「おめえ、ふざけんじゃねえぞ」
「ご、ごめんなさい……そんなつもりじゃ……」
ミサトが身を引くと、すぐに竜馬が身を起こす。
太い首をゴクリと鳴らし、横目でミサトを見ながら立ち上がっていう。
「おい、てめえのフェラーリの鍵をとってこい」
「えっ」
「いいから早くしろ」
竜馬はそういうと、黙って玄関へ歩いていってしまう。
仕方なくミサトは言われたとおりに愛車の鍵を探して手にとると、すでに消えた竜馬を
追って階下へ降りていった。
そしてマンションの駐車場にたどり着くと、そこには竜馬のバイク、隼がエンジンの唸
りをあげて、フェラーリ328GTSの前で待っていた。
ミサトがおかしな顔になる。
「なんなのよ」
「いいからさっさとエンジンかけてついてきな」
「ま、待ってよ。暖気しないと……」
「そんなもん走りながらやれ」
200:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/23 17:55:56
支援
加治さあああああああん!!
201:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/23 17:57:17
竜馬にいわれて、ミサトは渋々車のドアを開くと中に滑り込むように乗り込んだ。
そして鍵を差し込みエンジンに火を灯す。
旧い車ゆえに始動に手間取っていたが、やがてグオン、と独特の重低音が響き渡る。
それをみて竜馬はバイクを外に向けて発進させていく。
あわててミサトもギアを入れ、その背を追いかける。
竜馬は誰も走ることのない国道に出ていくと、最初はゆっくりと四〇キロほど速度で流
すように走っていき、やがていくつかの交差点を経たあとに、どこまで続く長い直線の道
へと躍り出て、そこで停車した。
バイクから降りてミサトに近づいていくと「俺の横に並べ」と手で指図した後に、ニヤ
リと笑っていった。
「チキンレースしようぜ。曲がりに差し掛かる前、早くブレーキかけた方が負けだ」
「なっ……嫌よ、そんなこと!」
「やれ」
竜馬はいやがるミサトにどすん、とシートの横に拳を突いて脅す。
いつになく凶悪な表情になっている竜馬に恐怖を覚えたミサトはうめきながらも、了承
してハンドルを握った。
「よし」
というと竜馬がバイクに戻る。
そしてお互いに並ぶと、竜馬が三本指を掲げて、アクセルを、一吹かしする。
三回吹かしたらスタートしろという意味であろう。
さらに二回目が吹かされ、三回目が吹かされた直後ミサトの車が急発進した。
わずかに遅れて竜馬がつづく。
始まってしまえばもはや後には戻れない。
気を抜けば大クラッシュを起こして次には命がないだろう。
ミサトがハンドルを持つ手に集中した。
互いに超高性能車である。
202:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/23 17:58:29
みるみる内に速度が上がって延々と続いているはずの直線の終わりが、あっという間に
見えてきた。
竜馬がミサトを追い越していく。
「……さすがハヤブサ。ゼロ加速がハンパじゃないわね」
と、舌打ちしながらミサトもアクセルを目一杯に踏んでいくと、次第に迫るビルの壁が
巨大になっていく。
ちらりと前を行く竜馬をみるが、まだ止まる気配がない。
すぐにミサトの感じる限界地点が迫ってきた。
死の恐怖が彼女を支配する。
(……もう、ダメッ)
瞬時に脚を踏み換え、ブレーキペダルを車がスピンしないように踏み込んだ。
ぐっ、とシートベルトに体を押さえつけられ、辺りに派手なスキール音を撒き散らしな
がら車が速度を減少させていく。
やがて停止して、
(リョウ君はッ!?)
と、顔をあげた。
しかし竜馬のバイクは止まらずにビルの中心へと突っ込んでいく姿を最期に衝突し、空
に舞い上がってその身を包むカウルとフレームを砕きながら散った。
ドンッ、と爆音が響く。ガソリンに引火したのだろう、深夜の街に紅蓮の炎があがる。
それを見るミサトの眼が大きく開かれて、悲鳴があがった。
「嫌ァァァッ!!」
頭を抱えて絶叫する。
だが、ぬっとドアの横に人の気配を感じて、頭を向けてみると、
203:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/23 17:59:33
「隼人のようにはいかねえか……許せ、ハヤブサ」
「はぇ!?」
いつの間に脱出したのだろうか、竜馬が破片で切れた頬からつたう血をぬぐっていた。
すかさずミサトがシートベルト解除して外に飛び出すと、ふわりと舞って平手が竜馬の
頬に飛んだ。
「なにしやがる」
「馬鹿!! なんでこんな無意味なことすんのよ、死んだらどうするつもりだったわけ!?」
かなきり声でいうミサト。
だがその問いに竜馬は答えずに、逆に彼女に聞いた。
「恐かったか」
そういうと、ミサトはいよいよ激情し、竜馬の胸ぐらへ掴みかかった。
目を、竜馬のようにつり上げ、腹の底から怒りを吐き出すように、
「当たり前じゃないッ!!」
と叫ぶと、竜馬はふっと息をはいて、
「なら、まだ大丈夫だな」
と応じた。ミサトが「えっ」となるが、そのまま竜馬がつづける。
「人間が本当にやべえのは、死ぬのが恐くなくなった時だ。なにしでかすか解ったもんじ
ゃねえからな」
「あんたはどうなのよ!」
「俺は常になにしでかすか解んねえから、いいんだよ」
「くっ……」
「後追いでもしそうな感じだったんでな、試してみた。が、俺の考えすぎだったようだ。悪ぃな」
204:ここまで
07/11/23 18:01:19
会話になっているようで成立しない会話に、ミサトは疲れを感じて黙って車に乗り込ん
でしまった。
どうせ脚を失ったから竜馬も乗ってくるだろう、とそのまま待っているが、いつまでた
っても助手席のドアは開かれない。
それどころか竜馬は、
「どうした、帰らねえのか」
と、きょとんとした顔でいってくる始末だった。
あきれてミサトがいう。
「どうしたって、リョウ君バイク壊しちゃったでしょ。乗らないの」
というと、
「おお、なかなか度量あるじゃねえか。怒って帰るかと思ってたぜ」
「早く乗れッ」
ミサトが一喝すると、竜馬が乗りづらそうにして助手席に滑り込んできた。
当たり前だがフェラーリの車にサルーンの様な乗り心地はない。
やがて転回すると、再びマンションに向けてもどっていく。見れば既に日が昇りかけて
いる時間であった。
「……帰ったら出勤の準備ね」
ミサトが漏らすのだった。
205:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/23 21:29:00
GJ。・・・加持も寄生されちゃったかしらん?
206:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/23 22:31:27
加持さんちょっと口調が編だたなあ
207:つづき
07/11/23 23:03:28
一方、彼らが深夜の街を暴走している最中、アスカは軍刀を片手に、機能の生き残って
いる繁華街を散歩していた。
あからさまな凶器を手にうろつく少女に、だれかが通報しているようだったが、それは
意味を成さない。
彼女が刀を持ち歩くことは、すでに黙認するように各機関へ指令が飛んでいるのだ。
アスカがいく。
既に将造によって心身ともに鍛えられたその精神は、若干一四にしてすでに鋼のように
強固となっていたが、それでも自身が想った人間が死ぬのは耐えきれなかった。
自暴自棄になるほど追い込まれはしないが、自宅で寝るような気分にもなれない。
つまらなさそうに歩いていく。
そしてしばらく街を往くと、その視界に見覚えのある顔が飛びでくる。
「あ……菅原さんに、高倉さん」
と、彼女が呼ぶのは岩鬼組の重臣ともいえる二人だった。
なにやら困った顔になっていて、彼らはアスカを見つけるとぱっと駆け寄ってきた。
「おお、姐さん! ちょうどええところに」
「どうしたの」
「若と、ついでに敷島のじじいがどっかに消えよったんじゃ。姐さんと一緒かと思ったん
じゃが知りませんかのう」
「知らないわ。ねえ、パパまで消えちゃったの……?」
アスカが度を失う。
まさか将造に限って、と思うが加持の死を伝えられた直後である。
それも、加持と将造は互いに連絡を密に取り合っていたという事実もある。
あるいはその余波で、将造も命を狙われたのでは……と弱気になるのも仕方なかった。
菅原と高倉は、アスカも将造の行方を知らないとみると、二人で「一旦、事務所へもど
るか」と合点して、アスカに向いて頭を下げる。
208:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/23 23:05:16
「とにかく、わしらは若い衆を総動員してさがしますけえ」
「姐さんも心配でしょうが、いまはお勤め、頑張ってください」
「う、うん……」
アスカが答えると、二人は風のように走っていってしまった。
街往く人々は、強面の男ふたりに頭を下げさせる少女は何者だ、という目で彼女をみつ
めていたが、しかしその本人は雑踏の中で独りたたずむのみであった。
(嫌……あたしを独りにしないで。どうしてママもパパもあたしを捨てちゃうの……)
そう思っても、答える者はだれもいない。
悔しそうに握りしめた軍刀を見ると、夜の闇に紛れるように走り出すのだった。
・・・
やがて、夜が明けた。
結局アスカも出勤前にはマンションに戻ってきて、ネルフへ出向く準備を整える。
登校は、もちろんない。
すでに校舎が消滅してしまい、他はこの地に通うべき場所がないのだ。
まさか、エヴァのパイロットが他県に転校するわけにもいかないだろう。
そうだとすれば、彼女にのこされた仕事はネルフにおいて、万が一のシト襲来にそなえ
て待機することのみであった。
ミサトは竜馬のおかげで多少は覇気を取り戻しているが、やはり生気がない。
作戦司令室には全体的に暗く落ち込んだムードが漂っている。
そんな中のことだった。
「……フィフスチルドレン?」
「うむ」
と、ミサトの疑問に答えるのは冬月だった。
209:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/23 23:07:02
冬月がいうに本日付で、損失したシンジの代わりにエヴァ初号機のパイロットとして新
たな人材が送られてくるのだという。
それにミサトが首をかしげた。
「言いたくないのですが、第壱中学校の子たちがチルドレン候補だったんでしょう。それ
が全滅したのにどうして……登校拒否児なんて居なかったはず」
「それが、どうやらゼーレから直接、送り込まれることになった。名を渚カヲルという。
レイと同じく過去の経歴が一切不明のチルドレンだ」
「……どうも、臭いますね」
「やはりそう思うかね。昨日、加持君から連絡があってな……ゼーレに初号機パイロット
が接触した可能性があるといっていた」
「加持君が……」
「……ああ。下手をすれば、ゼーレはインベーダーに乗っ取られている可能性がある。と
すればそれが送ってくるチルドレンは」
「刺客そのものの可能性が高い、と」
「まだ確定ではないがな。監視は怠れん」
そんなことを話していると、だんだんと時間が過ぎてフィフスチルドレンがやってくる時間になった。
これを迎えるためにミサト、竜馬とアスカが動員される。
ゲンドウ、冬月、レイ、マヤ、マコト、シゲル、他オペレータ各員が固唾を呑んでフィ
フスチルドレンを連れてくるのを待った。
竜馬とアスカがミサトに随行したのは、万が一、カヲルがゼーレの、いやインベーダー
の刺客だった場合を考えて、それが牙を剥かないように、あるいは剥けば即座にせん滅で
きるようにしていためだ。
それゆえ竜馬にはサブマシンガンが持たされている。
アスカはいつもの軍刀だ。
さらに、ゲンドウと冬月を含めた各員も武装して、なんとも物々しい待遇であった。
それを受ける側のカヲルも雰囲気はしっかりと感じ取っていたようで、竜馬に出会うな
り苦笑いしていった。
210:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/23 23:08:55
「やあ、あなたが流竜馬さんだね。ウワサ通り、凄そうな人だ」
「なぜ俺を知っている」
「流竜馬、ゲッターロボのパイロット。この業界じゃ知らない人はいないよ……失礼だけ
どあなたはもう少し、自分の立場を自覚したほうがいい」
「けっ、口のへらねえ小僧だ」
「それが僕の取り柄みたいなものだから」
というと、カヲルはまた笑顔を作ろうとするが、竜馬の顔を見続けるとすこし苦しそう
な表情になって額をおさえた。
どうしたの、とミサトが覗きこむ。
それにカヲルは、
「くっ……い……いや、なんでもないんだ」
といって平静を装うが、それは誰の目に見ても異常があるように見える光景だった。
アスカがそれをみていった。
「こんなのでシンジの代わりになるの?」
そのものずばりである。
だがそこで落ち着きを取り戻したカヲルがアスカを流し目でみる。
そして、
「シンクロテスト。してみれば解るさ」
といって後は黙った。
アスカはいけすかない野郎だ、と思ったがこれ以上口に出せば自身のストレスも相まっ
て大騒動を起こしかねないと思ってこらえた。
やがてカヲルは作戦司令室に通されてゲンドウをはじめ、各員に挨拶を交わした後に
早速、初号機でのシンクロテストを行うこととなった。
211:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/23 23:11:14
カヲルのプラグスーツは黒一色。細身のその体に張り付く黒色は、よりその姿を細くみ
せて彼の端正な顔立ち共にミステリアスな印象をもたせた。
同時にアスカとレイもプラグスーツに着替えて、各々のエヴァに乗り込んでいく。
やがて、シンクロテストが始まった。
リツコがいないので、技術部のサポートとリツコに師事しているマヤを中心にその行方を見守る。
しばらく、マヤは各機のシンクロ率の度合いを示すグラフに見入っていたが、その目が
みるみる内に驚愕の色に染まっていく。
初号機のシンクロ率がバネのように跳ね上がっていくのだ。
既にその率は八〇パーセントを超えていた。
「信じられない」
と、マヤが思わず漏らす。
レイは初号機を起動させるに足るシンクロ率を得るまでに七ヶ月の時間を要し、アスカ
も記録はないが、弐号機を自在に動かせるようになるまで、それなりの時間が要ったのは想像に難くない。
即日に動かせたシンジでも、シンクロ率は四〇パーセント止まりだったのである。
それが、この得たいの知れないチルドレンはいきなり八〇パーセントの数値をたたき出
してみせ、なおも、その率は上昇していくようだった。
作戦司令室の人間たちが固まる。
ミサトが爪を噛みながら思案にふけっていた。
(これほどとは……ゼーレお墨付きだけあって、天才児なのか、それともやはり)
渚カヲルは、インベーダーと化したシンジによって取り込まれたゼーレからの刺客か。
というのがミサトも含めた全員の思惑であった。
プラグ内にモニターされる映像の中のカヲルはそれを知ってか知らずか、目を閉じなが
ら不敵な笑みを浮かべているのだった。
不気味な沈黙が流れる……。
誰かがそれに耐えかね、口を割ろうとした、その時だった。
212:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/23 23:13:01
「……あっ。こ、駒ヶ岳付近にパターン青の反応!!」
と、レーダーに異変を察知したシゲルが振り向いて叫ぶ。
それと同時にコンソールを操作するマコトが、その周辺の映像を作戦司令室のメインス
クリーンに映し出した。
ネルフの全体に、総員第一種戦闘配置の指令が飛び回って警報が鳴り響き、新たなシト
の姿が明らかになる。
どうやら、山岳の上に浮いていることから飛行能力があるようだった。
ただ、
「なんだ、あのビラ付きのまんじゅうみてえな野郎は……」
それを見て竜馬が変な声をだす。
そういうのも無理はない。今までもシトは生物とも機械ともつかない、妙な姿をしたも
のばかりだったが、今回のシトもご多分に漏れず、奇っ怪な姿をしていた。
全体像は首のない人間、といった感じで最初のサキエルや、イスラフェルと同型ともと
れるスタイルをしていたがそれらと違うのは、凄まじいまでの寸胴だということである。
竜馬がまんじゅうと称したのんは、この辺りからであろう。
胴長で、あるのだかないのだか解らない魚のヒレのような脚がちょろりと生え、さらに
腕に当たる肩から下も、蛇腹に折りたたまれた、紙のようなものがひらひらしているのみだった。
お世辞にも強そうといは言えない相手である。
だが、竜馬は言う。
「ああいう、ふざけた格好のやつに限ってとんでもねえ野郎だったりするもんだ」
このシトを、ネルフは第十一シト・ゼルエルと名付けた。
倒すべき敵を確認した作戦司令室はにわかに喧騒につつまれ、パイロット達も出撃準備
に入っていく。
隊の構成は飛行可能なゲッターと弐號機による同時攻勢。
バックアップはネルフの戦闘部隊によって行われる。
213:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/23 23:14:56
初号機は、カヲルの信頼性から待機。零号機はその見張りとして同じく待機だった。
万が一ゲッターと弐號機が敗北するならば、飛び出していく算段だ。
(うちの最強の二体。まず、そんなことは無いと思うけど……)
とミサトは思うものの、迫るシトから感じる威圧感に、ただごとならぬ不安感を隠しきれなかった。
各ケイジからゲッターと弐號機が出撃していく。
空に飛び上がって一気にシトのいる方向へと向かって直進していく。
先手必勝である。竜馬が叫んだ。
「アスカ! まず俺が弾幕を作る。そいつを壁に近づいてA.Tフィールドを中和しろ」
「わかったッ」
そういうと、空に浮かぶゼルエルの姿がみえてきた。
竜馬が照準をそれにあわせて、叫んだ。
「トマホゥゥゥク、ブーーメランッ!!」
ドシュン、とゲッターの肩から巨大な戦斧がいくつも飛び出し、ゲッターはそれを器用
に指に挟んでつかむと一気に敵に向かって放り投げた。
回転するゲッタートマホークの大群が襲いかかり、ゼルエルはA.Tフィールドを展開。
それがバルディエルと同程度のものならば、弐號機の力を借りずともフィールドを突破
できる算段だったが、竜馬も新しい敵相手にそこまで油断はしない。
予想通り、襲いかかったトマホークは玩具のようにはじき返されてしまった。
「やはりダメか」
「あんたにばっかり手柄取られてたまるもんですか!」
と、トマホークを壁にゼルエルに取りついた弐號機が自身のA.Tフィールドを展開して
ゼルエルのフィールドを中和していく。
「よーしっ。見てなさい、こてんぱんに……」
214:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/23 23:16:55
といったときだった。
ゼルエルの頭(人間でいうところの首もと辺り)らしき、頭骨もどきの目の穴がぎらりと光った。
それを見た竜馬がとっさに、まずい、と感じ弐號機に向かって跳ね飛んでいく。
「アスカ、離れろッ」
そういうが、途端に腕の蛇腹な紙のようなものがしゅるりと動き、弐號機に巻き付く。
アスカが気味の悪さに悲鳴をあげた。
「なにこれぇッ!! やだ、離れられないっ……」
そういう間にもゼルエルの目穴の光りはいよいよ、大きくなっていく。エネルギーチャ
ージ完了といった風体だった。
その光景に、かつてのラミエルを思い出した竜馬が叫ぶ。
ゲッターが弐號機に迫った。
「アスカッ!」
そしてゲッターが弐號機を跳ねとばすのと、ゼルエルの目穴から怪光線が発射されるの
は、ほぼ同時だった。
間一髪。
なんとか光線の軸から外れて二体は山辺に激震と共に転がるが、外れた怪光線が一瞬で
光軸にあった山間部を蒸発させながら空間へ消え去っていくのが見えた。
強い。
かつて竜馬が戦ったラミエルの加粒子砲をかるく上回る威力だった。
それを目の当たりにした弐號機がゲッターを引っ張り起こしながら、ゼルエルから
距離を取るように後退していく。
「なんて威力なの……竜馬。うかつに接近するのは危険だわ、離れてっ」
「うるせえ、俺は敵に背中見せるのは好きじゃねえんだよッ!!」
「ちょっと竜馬!?」
215:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/23 23:20:30
アスカの判断はこの場では賢明といえたが、今の攻撃で竜馬の闘争心にめらめらと火が
ついてしまったらしい。
ゲッターが弐號機の制止を振りほどいて、再びゼルエルに激突していった。
その頭部に蹴りをみまうと、一瞬、よろけたゼルエルにがっぷりと組み合う。
「この野郎、ぶっ殺す!!」
と、語気もあらくコクピットでレバーを荒々しく倒す竜馬。
ゲッターの全身が唸りをあげて、ゼルエルを潰そうと覆い被さっていく。
だが。
ゼルエルは蛇腹の紙のような腕を横に伸ばすと、それを一度細切れにしてから再度あつ
めて人の腕を形作ると、ゲッターの両腕を引き離すように掴んだ。
力比べの様相になる。
だが、ゲッターのパワーに自信のあるはずの竜馬の顔がうかない。
「ぐ、ぐぐ、ぐおおおお……ッ!!」
額に血管をうかべて力むが、ゲッターの腕はぎりぎりとゼルエルに引きはがされていく
とやがて、バキン、とその関節に異常な音が発生して、血液のようなオイルがゲッターの
腕の節から噴き出していった。
ゼルエルの力は彼の想像を超えて恐ろしいまでの領域にあったのだ。
だが、それに竜馬はコクピットで口の両端をつり上げて不気味に微笑む。
「け、やるじゃねえか……久しぶりだぜてめえみたいなのはッ!」
と威勢はいい。
しかし次の瞬間、ゲッターはその両腕をゼルエルにもがれて衝撃で後ろに吹き飛ばされていく。
それでも竜馬はゲッター最大の武器を叩き込むべくレバーを全力で倒して叫んだ。
「ゲッタアアアッ! ビィィィイィイムッ!!」
のけぞって吹き飛ばされるゲッターの腹から、球体がのぞいて極太の光が溢れるようにゼルエルに直進していく。
216:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/23 23:22:40
一矢でも報いてやるという竜馬の闘志がそのままぶつけられたものだった。
ゲッタービームは先ほどの怪光線のお返しとばかりに、ゼルエルを包み山を砕いて貫いていく。
が。
「ゲッタービームが……ッ」
吹き飛ばされるゲッターを救おうと寄るアスカが、ゲッタービームの洗礼をあびてもビ
クともしない敵の姿を見て、言葉につまった。
さらに次の瞬間、ゼルエルの目穴が光った。
怪光線である。
だが、
(早い!?)
さきほどよりも発射までの動作が短いのだ。
焦るアスカが倒れるゲッターを引きおこそうとするが、間に合わずゼルエルの怪光線が
二体をつつんでいく。
アスカはとっさにA.Tフィールドを展開してゲッターを守ろうとするが、ラミエルの加粒子砲
よりも威力の高い怪光線である。
防ぎきれるはずもなく、まともに直射をあびてしまう。
「キャアアァアアァッ」
アスカの悲鳴がひびいた。
やがて、照射が終わるころには弐號機は全身をズタボロに溶かされていた。
弐號機がぐわらりと崩れ落ちていく。
217:ここまで
07/11/23 23:25:10
ゲッターの方は弐號機が影になったおかげで、致命傷を免れていた。しかし、やはり満
身創痍となっている。
それでもなお立ち上がった。
竜馬がアスカに通信を入れる。
「生きてやがるか」
「……くぅぅ……へ、平気、こ、これぐらい……っ」
「まだ飛べるか?」
「プラズマ、ボムス……まだ動くわ。でも、戦闘はもう……」
「動けりゃいいぜ。俺が囮になる間に退けッ!!」
というと、竜馬は返答を待たず弐號機をゼルエルの正面から外れるように蹴り飛ばすと
同時にゼルエルに突撃した。
突撃ばかりで果たして利口な戦法とはいえなかったが、こうなってしまった以上は離脱
する間にも怪光線に撃ち抜かれてしまうだろう。
助かるためには、スキを作らねばならなかった。
それにはどちらかの犠牲が必要だ。
両腕を失い、そこからオイルを吹き出す痛ましい姿のゲッターが、ゼルエルに再び肉迫していった。
218:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/23 23:31:21
乙です!
久し振りにリアルタイム遭遇!
あああゲッターが、ゲッターがあああああ…
犠牲が必要って、どうなっちゃうのー
シンジやカヲルのことも気になるし
加持さんも…
しかしこの物語、誰にも荒らされたくないけど
ここだけに置いておくのはあまりに惜しい…
ううむ…
219:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/23 23:33:26
ううう…ゼリエルならゼリエルならやってくれると信じていたっす…
220:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/23 23:34:10
>「俺は常になにしでかすか解んねえから、いいんだよ」
ひでえwwwwww自覚してんのかよwwww
って投下早ェ!?規制対策ですかい?
221:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/24 03:48:46
なんか板変わった?前の方が使いやすかったんだけど
222:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/24 08:58:54
逆境ですね
さて、カヲルはどう動く?
将造×敷島コンビの行方は?
リツコさんは戻ってくるのか?(個人的にココが一番心配)
それにしても、このハイペース…
職人さんの執筆部屋は通常の十倍のゲッター線濃度なのかしら
223:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/24 10:29:52
それでも真ゲッターなら…!
224:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/24 13:35:09
>>218
惜しくない惜しくない。ここだけに置いとけ
万が一やるんなら全部終わってからだ!
225:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/24 13:36:46
>>218
理想郷に帰れ
226:218
07/11/24 14:01:37
別に理想郷とやらの住人じゃないよ
つかそういうところがあるってここのスレで聞くまで知らなかったし
行ったこともない場所の住人に認定されても困る
ただ、これだけの素晴らしい物語なのにここにだけ置いてあるのは
もったいないなあと思っただけ
人に気軽に紹介できる場所じゃないしね
227:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/24 14:15:40
スレ違いだ余所でやれ、それとあまり連呼すると検索に引っ掛かる可能性があるから止めろ
228:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/24 14:34:26
その出自に関わらず、出張ると邪魔だ。黙ってろ
229:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/24 17:09:57
その理想郷の住人が来たらどう荒れるの?
作者をけなしまくるとか?
230:名無しさん氏んでも代わりはいるもの
07/11/24 17:41:34
だから、もうその話はやめましょう。紹介をする必要はスレの平安のためにも必要ないです。
231:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/24 17:49:51
ゲッター線に導かれた者は自然とこのスレにたどり着く筈だ
宣伝など無くてもな、俺やあんたらがその証拠だ
232:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/24 18:23:36
とりあえず、理想郷で紹介された場合だとまともな人だけじゃなくおかしなのも見る可能性があるからじゃないか?
具体的にはAAや埋めで荒らしまくっている基地外とか?
あとゲッタークロスオーバーWikiでもつくろうか?
233:名無しさん氏んでも代わりはいるもの
07/11/24 19:15:43
それが最善だとおもいます。常に最悪の事態を想定した方がいいと思います。
234:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/24 19:21:49
まぁ今まで「エヴァを踏み台にしてる」うんぬんいって荒らされなかったのが不思議なくらいだしなぁ。
そっとしておくのが一番かな。
235:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/24 21:00:24
たまに他作品を引き合いに出してその作品のファンを煽るおばかさぁんはいるけどね
236:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/24 21:03:14
>>235
おばかさぁんで吹いたw
寛平ちゃんは反則だよ
237:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/24 21:03:28
なんだか「ゲッターと弐號機があればネルフ最強だぜwww」って流れが覆ったな。
この後何が起こるか。リツコも帰ってこないのに敷島行方不明じゃメカニックが・・・
238:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/24 21:08:41
大丈夫、隼人、武蔵、弁慶を引き連れて帰ってくるから
239:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/24 21:53:41
うっかりアニメ版のを連れてきちゃってみんな涙目
240:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/24 22:04:59
ついでに真ゲッター持ってきたりして
241:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/24 22:05:06
いや、アニメ版でも十二分に戦力になると思うぞ。リョウなんか比較対象がアレだから
「大人しい」とぁ「優等生タイプ」と称されるけど、刀振り回して鬼を斬殺する高校生を
普通は大人しいとは言わないよねぇ。
242:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/24 23:00:20
ゲッタークロスものでいうと「少年兵シンジ」の作者がナデシコとゲッター
のクロス書いてたな
ナデシコよう知らんので読むの途中で挫折したが
243:名無しさん氏んでも代わりはいるもの
07/11/24 23:29:59
>>241
たしかに、原作漫画版のは名前が同じだけのは完全に別な高次元の戦闘生物ですから。
>>242
ああ、あれですね。ナデシコとクロスするのはいいですが、黒アキト逆行要素がある時点でTT
むしろ、逆行ではなく始めからTV版とのクロスにして、ここのSSように、ナデシコを土台にして
良い意味塗りつぶして(ナデシコ世界にゲッターによる粛清の嵐を!!)いく感じにしてくれれば良かったのに。
特にナデシコは、劇場版で嫌いになりました監督のエゴがひどい、なぜあれが指示されているのかわからない。
復讐のスタンスも生ぬるいし、石川先生のキャラを見習えといいたい。
244:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/24 23:55:31
>>235
さっそく来たよ、そのおばかさぁんが
なあ、>>243
245:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/24 23:59:13
>>244!ゲッタースルーだ!
246:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/25 00:18:40
甘いな!粘着ビースト!
247:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/25 08:27:56
誰も突っ込んでないけど>>207にでてくる岩鬼組の菅原と高倉の元ネタは菅原文太と高倉健だな。
248:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/25 10:11:00 oivBow2q
>>239
TV竜馬はなにげに真っ黒
249:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/25 15:25:20
>>248
kwsk
250:つづき…の前に
07/11/25 18:34:59
とりあえず紹介とかはナシで。
気に入ってそういってくれた人、ごめんね。
つづき
その様子が、作戦司令室にもはっきりと伝わっている。
彼らは最初ゲッターと弐號機があまりにあっけなく敗れる様を信じられない、といった
風だったがすぐに現実に戻って、初号機と零号機の発進許可を求めた。
よろしいですね、と確認するミサトにゲンドウが応じる。
「やむを得ん。初号機と零号機を発進させろ」
というと、すぐにミサトが手をふって采配ふるった。
「エヴァ両機はただちに発進、零号機をバックアップに初号機を前衛に出せ」
「りょ、了解ッ」
ミサトの指示を皮切りに、オペレータたちが機械の駆動部品のようになって動く。
そして視点を戦場へ戻そう。
両腕を失ったブラックゲッターがゼルエルに激突する寸前、竜馬がレバーを引き戻すように操作し、
「喰らいやがれ!!」
と、上半身のイーグル号が分離した。
ゲッター本体のダッシュと、ゲットマシンのロケット噴射の二段加速による勢いでもっ
てぶち当たり、イーグル号がスリングショットの弾のごとく弾かれ飛んだ。
251:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/25 18:36:32
瞬間、どうっと盛大な音が響いてゼルエルがゆらめき、バランスを崩し横転していく。
そのスキにイーグル号がゲッターの体に戻り、再びブラックゲッターと変じて大地に降
り立つが、まるで体力の尽きた人間のように立て膝をついてしまう。
もはや、これ以上の戦闘はできそうにもなかった。
コクピットのコンソールには機体各部のダメージが限界に達していることをパイロット
に伝えており、外から見てもあちらこちらから溢れるオイルと共に放電を起こして今にも
爆発してしまいそうな状態だった。
だが、竜馬はコンソールの警告を無視してゲッターに最後の力を振り絞らせると、ふわ
りと舞い、起き上がろうとするゼルエルにボディプレスを見舞った。
すれば敵が一瞬ひるみ、同時にゲッターは転がり落ちて仰向けの状態になる。
即座に竜馬がコクピットから脱出するが、逃げるつもりではないようだった。
彼はとなりに伏すゼルエルの巨体を横目にゲッターの胸を滑って降っていき、そして腹
にたどり着くと、その一部にある小さな突起を押した。
と同時に、いくつかのボタンが並べられたパネルが顔をあらわす。
竜馬がそれを操作しながら、
「追い詰められた人間が、なにをするか見せてやるぜ」
といった。
その姿は、先の将造の行動を思い出させる。
将造は学校にてインベーダーをせん滅するために、ゲッタービームガン炉心の融解を実
行したが、竜馬は同じ事をゲッターそのものでやろうとしているのだ。
フルサイズのゲッター炉心が自爆すれば、その破壊力はどれほどのものになるかは見当
もつかないしそれによる被害も予測できない。
しかも、だからといってゼルエルを撃破できるとは限らないのだ。
252:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/25 18:37:43
自爆すれば竜馬自身の命も同時に吹き飛んでしまうだろう。それでも彼はミサトが指摘
したとおり、我が命を少しも惜しむことなくそれを実行していく。
竜馬の瞳に銀河のような渦が巻いた。
だが、自爆コードの入力まであと少し、というところで、あろうことかゼルエルが体勢
を立て直していってしまう。
竜馬が憎々しげにゼルエルを睨んだ。
「チッ、少しは遠慮しやがれってんだ」
というが、それしきで行動を待ってくれるほどシトも甘くはない。ゼルエルにしてみれ
ば相手は今まで散々シトをいたぶってくれたゲッターとその操縦者だ。
どうして遠慮をしなければならないのか、というところだろう。
ゼルエルが起き上がり、ゲッターを見下した。
竜馬が見上げる。
すると頭蓋骨もどきが貼り付いたようなゼルエルの顔が、気のせいか竜馬をあざ笑って
いるように歪んでみえた。
まるで、
―思い知ったか。
と、ゼルエルがいっているようであった。
「……いい気になってんじゃねえぞ、コラ」
竜馬が反撃するように、ニタリと表情を崩す。
凄惨な顔だ。
それは婆娑羅や阿修羅がこの世に降臨すれば、おそらくこういう表情をしているだろう
と思わせるほどのものだった。
するとゼルエルが一瞬動きをとめた。シトにも恐怖の感情があるのだろうか。
253:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/25 18:38:45
と、思っているとその背後が爆裂して凄まじい音が鳴り響いた。
それに反応したのだろう、ゼルエルはくるりと体を反転するように振り返ると、離れた
場所にパレットライフルを構えた零号機の姿があるのが見えた。
どうやら、発進が間に合ったようである。
さらに零号機が弾幕を張って相手を牽制すると、次にはゼルエルから死角となっている
山陰の部分から初号機が射出されて空を舞った。
初号機に弐號機のような飛行機能はないが、リフトオフする前から機体の拘束を解除し
て射出時の反動を利用したようだった。
空中でケーブルを強制排除すると、その勢いのままゼルエルに降りかかってくる。
カヲルの声が響いた。
「下がった方がいいよ流さん」
「来るのが遅えんだよ!」
応じた竜馬がゲッターのコクピットに再び駆け込み、地を滑るようにして離脱するのと
初号機がゼルエルに衝突したのは、ほぼ同時だった。
竜馬がコクピットに収まりながらゲッターを後退させながら叫ぶ。
「組み付くな! てめえじゃ初号機のパワーは引き出せねえ!!」
シンジでなければ、無理だ。
そんなニュアンスを含めた言葉だったが、それにカヲルは、
「どうかな」
というと、プラグの中で悶えるような仕草をみせた。
同時になにか黒いものがカヲルの口から吐き出されていって、やがてプラグを満たす
LCLに溶けるように広がっていく。
254:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/25 18:39:51
その間、初号機はゼルエルに組み付いたまま停止しており、相手はこれを機と見て再び
怪光線の発射準備に入る。
だがその瞬間、初号機が自身の頭を抱えたかと思うと、顎の拘束具をみずから引きちぎり、
「ギャアアアアァァ……ッ」
と、悲鳴のような咆吼をあげた。
そして次には怪光線を発射する寸前のゼルエルの頭を掴むと、それを力任せにねじりあ
げて引っ張っていく。
ゼルエルが抵抗して紙のような腕を伸ばすが、それも初号機の余った方の腕につかまれ
れうと本物の紙細工のように破られ、地に放り投げられていく。
「なんだと……あれはっ」
離脱しながら、その初号機の姿をみとめる竜馬がつぶやいた。
たしかに初号機の行動の一部に、シトに対して真の力を解放して当たったことがあるの
をユイの知識を得た竜馬も覚えていたが、それはあくまでシンジが命の危機にさらされる
という状態に、ユイが反応した結果のはずだった。
しかし、いま初号機に乗っているのはシンジでなくカヲルだ。
どういうことだ、と竜馬が思う間もない。
初号機はうなり声を発しながらゼルエルの頭を引っ張っていき、その下にあった赤黒い
肉ごと餅のように伸ばした挙げ句に、ぶちぶちと音をたて引きはがしてしまう。
同時にぶわりとその血液が噴水のように撒き散らされる。
それを浴びた初号機はいよいよ大きく顎を開けると、まさに人間のそれと同じような歯
をのぞかせて顔のあった部分へ噛み付き、そのまま頭をふって食いちぎった。
激痛が走ったのであろう、ゼルエルがびくんと跳ねる。
255:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/25 18:40:59
すれば初号機は、肉食獣のように次々とゼルエルの表面に手をかけては破り、露出した
内壁に鋭く歯を突き立てて喰らっていく。
その姿は飢えた獣の、そのものといっていい。
初号機は得物をあっという間に喰らいつくしていき、ものの数分でゼルエルは骨と皮だ
けの骸と化して果てていた。
やがて食事を終えた初号機がゆらりと立ち上がった。
そして、
「フフフ……これでS2機関の取り込みは完了したか」
と、プラグの中でカヲルが笑うのだった。
その状態のまま数分……いや、数秒だろうか。
間が流れた。
変貌した初号機の姿に、倒れた弐號機の中でアスカが唖然としている。
竜馬は初号機から少し離れた場所で、腕を失いながらも仁王立ちするゲッターの中で、
口を真一文字につぐんで初号機を睨んだままだ。
そして作戦司令室の人間たちは、マヤが初号機の姿に耐えられず嘔吐したのをはじめ、
その他も眉をひそめて光景をみつめていた。
だが、なんとか気を取り直したマヤがひとつの異変に気づく。
「……あれ。初号機のシンクロ率が……そんな、どうして!?」
と混乱するようにいう。
エヴァに起こった異変ならリツコが対応するのだが、本人がいない。
ミサトが代わりにマヤによって訳を問うが、しかし返答を待つ必要はなかった。
なぜならマヤが監視するエヴァ各機のシンクロ率を表示するモニタを覗き込むと、そこ
に信じられない数値が浮かび上がっているのが見えたからだ。
その数字は、
256:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/25 18:42:04
「シンクロ率、ゼロ……」
であった。
あわててミサトがメインスクリーンに映る初号機を見返すが、それは、いまもなお口を
半開きにしたまま虚空を見つめてゆらめいている。
「あり得ない……」
ミサトがうめいた。
専門家でないにせよ彼女もエヴァに関する基本的な知識はある。
エヴァは、パイロットとのシンクロがあって初めて動くものだ。
その率がゼロでは、パイロットが乗っていないのも同じことである。本来なら、起動す
ることもかなわないはずだった。
では、なぜ目の前の初号機は動いているのだ。
ミサトが思考をめぐらしていくと、やがて一つの結論に達していく。
(彼を初号機に乗せてしまったのは失策だった……やはりフィフスチルドレンの正体は)
その答えを口にしようとすると、以心伝心したのか離れた竜馬やアスカまでもが彼女と
同じことを一斉に叫んだ。
「インベーダーか!!」
と。
そういうのと同時に、プラグの中のカヲルが高笑いをはじめる。
その通りだ、と認めているようにいった。
257:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/25 18:43:10
「ハハハハ……甘いねえ、君たちは。僕を見かけるなり射殺すればよかったのに」
「いまからそうしてやるぜ」
竜馬がいう。
それにカヲルがなおも笑い、
「その満身創痍の姿で、どうやって僕を止めるつもりだい。零号機は役にたたないよ」
と、零号機を指さした。
すると、さきほどまでライフルを構えていたはずの零号機が、その場にへたり込むよう
にしてうずくまっているのがみえた。
別にゼルエルに攻撃されたわけでもなければ、機体に故障があったわけでもない。
だが、その異常はプラグの内部、つまりパイロットが示していた。
「あ、あぐっ……」
レイがLCLの中で四肢を抱えるようにして震えているのだ。
その様子は作戦司令室からも確認できた。
「どうしたの、レイ!」
「私じゃ……ないわ。ユイさんが……碇ユイの魂が……」
ミサトの問いかけにレイが呻くように答える。
ユイが苦しんでいる、という答えにゲンドウがハッとした。
「初号機の中は現在のユイがいる……もし初号機がインベーダーに乗っ取られれば、未来
のユイへ影響が出る」
顔面蒼白となっていうゲンドウ。
緊迫する中で、初号機が数歩あるいてから腕を振り上げた。
そして、
258:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/25 18:44:13
「人類補完計画を阻止しようとする未来の彼女は邪魔なのさ。だから眠っててもらうよ。
そして、本来の碇ユイは僕たちの奴隷になってもらうとしよう……ねぇ、シンジ君」
と、カヲルがシンジの名を呼ぶ。
すれば、初号機の肩の装甲板がうごめいたかのように見えたあと、粘土のアニメーショ
ンでも見ているかのように、人の姿が形作られていって、やがてそれは制服を着たシンジ
へと変じていく。
「おつかれさま、カヲル君」
「てめえ、シンジ!!」
「竜馬さん久しぶり……友達ができたんだ、紹介するよ。彼は第一四シト、タブリス。
またの名を渚カヲル」
かつてと何ら変わらぬ面影に、しかし邪悪な笑みを浮かべた彼が初号機の上でいった。
「それじゃあ、仕上げにロンギヌスの槍を土産に貰おうか」
その言葉と同時に、地鳴りが響くと地下から何かを砕くような響いて、それがだんだん
と大きくなると、やがてネルフの施設の一部を下から貫いてロンギヌスの槍が空へ飛び出
していく。
ぎゅんと飛び、初号機の手の内に収まった……かと思えば、次には初号機の背からオレ
ンジ色の光が発して、背に十字に形にA.Tフィールドが現れる。
さらに形を変えて左右に四対の菱形の羽根となり、それに揚力を得たのか同時に初号機
が空に浮かび上がっていく。
初号機の肩に乗るシンジが肩を上げて笑った。
「これでよい。あとは一二体のいけにえを用意するのみよ!」
それにカヲルも同調して、
「我らの計画はもはや達成される。人間共は残るシトを相手に遊んでおればよい!」
259:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/25 18:45:20
といった。
二人とも唐突に口調がかわった。
それにおかしい、と竜馬が思う。インベーダーに寄生されていようが、言動のベースに
なるのは寄生された人間はずなのだ。
シンジとカヲルがこんな古めかしいしゃべり方をするはずがなかった。
やがて竜馬がなにかに感づいたように、ボロボロのゲッターを無理に飛ばしながら初号機
に向かって叫んだ。
「コーウェン、スティンガー! まだ生きてやがったかあッ!!」
そう呼ばれたシンジは、口が張り裂けるのではないかと思うほどにニタリとなり、
「あの時いっただろう、我らは不滅だと! 今更気づいても遅い、ロンギヌスの槍によっ
て真の力を得た初号機は止められん」
と、カヲルと共に言葉の音を重複させながら、迫るゲッターを初号機の腕の一振りで跳
ねとばすと、ぐんと高度をあげていく。
小さな点と化していく眼下の竜馬達を見下しながらシンジがいう。
260:ここまで
07/11/25 18:46:23
「さよなら竜馬さん。あなたに逢えて楽しかったです」
と、シンジらしい言葉づかいに戻って竜馬とゲッターをあざけながら、そして虚空へ消
えていった。
あとに残されたのは、地に叩きつけられて転がるゲッターと焼死体のような弐號機、そ
してうずくまったまま動かない零号機だけだ。
みな、消えゆく初号機を見つめているしかなかった。
それが完全に消え去ってしまうと、やがて雨の数滴が降り注いだあとに、ばっと降り出
していく。
辺りに無惨な敗北感が漂った。
「……現時刻をもって戦闘終了とみなします。ゲッターと、エヴァを回収して」
作戦司令室でそれを見つめながら、ミサトが力なくいうのだった。
・・・
261:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/25 19:22:50
コーウェン君とスティンガー君もキター。後使徒は3体だけど雑魚しかのこってないから
さっくり使徒戦は終わりそうだな。
262:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/25 19:45:32
なぁ、やばくね…?
初号機とロンギヌスは取られるわシンジは寄生されるわ。
後は将造と敷島博士、リツコが何とかしてくれるしかないかも。
263:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/25 19:54:55
コーウェン君「スティンガー君みえるかいついに我々もでれたね」
スティンガー君「う、うんみえるよコーウェン君」
264:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/25 19:58:01
やばいほうがおもしれえんだよと竜馬なら言うに違いない
265:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/25 20:14:41
スパロボαのごとく寄生したコーウェンとスティンガーのみをストナーサンシャインで焼き払ってくれるに違いない!
マジでGETTER CROSSOVER SS倉庫つくりました。
まだラミエル戦が終わったところまでしかUPできてませんが(Wikiは#brでないと改行できないからな……編集に多少、手間取る)
SS職人さんに追いついたらアドレスUPします。
、てかタイトルがないので「エヴァの主人公が真ゲッターの竜馬だったら」にしてるんですが(最初が、「ちょっとスレタイ通りに書いてみた」だったので )
266:名無しさん@お腹いっぱい
07/11/25 21:21:39
これは虎の兄貴を呼ぶしかないか!? それとも魔獣の降臨を待つしかないの!?
267:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/25 21:22:42
俺たちの戦いはこれかr(ry
268:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/25 21:24:56
さすがにもう風呂敷をたたむ段階だからもう新たなイシカワキャラはこないだろう。
量産型エヴァはかなりむちゃくちゃな性能になってそうだがそれでもこのぼろぼろのゲッターとエヴァ2機でなんとかするしかない。
269:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/25 21:40:17
次回作は
>もしルイズが召喚したのが岩鬼将造だったら
>もし凛が召還したのが流竜馬だったら
>ひょっとして情報統合思念体ってゲッターエン(ry
どれがい
270:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/25 21:57:44
>>267
いやいや、リツコがエンペラーに召ばれたのも将造に敷島博士が行方をくらませているのも、逆転のための伏線に決まってるって。
ところで、インベーダーと戦っているんなら真・チェンジ!ゲッターの隼人もいるんじゃないのか?
271:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/25 22:09:42
>>270
出てたじゃないか 名前だけだが
272:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/25 22:26:24
いや、文の感じからするとチェンゲの隼人じゃなくて、ゴウ(漢字がでてこない)でもアークでも置いてかれた漫画版のほうの隼人って感じだったから。
273:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/26 00:39:12
>>265
(「ゲッター號」トクマ版1巻ラスト調に…念の為)
「とりあえずよくやったとほめておく…
早く追いついてアドレスうpしに来ーーーーーい!!」
「バカが三人(スレ立て人・職人・まとめ立て人各位)、そろったかな。」
274:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/26 16:22:57
>>269
一番上はマロンにスレがあるな。>ルイズが召喚
スレタイこそ永井豪キャラだけど実質ダイナミックプロ作品総合だな。
275:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/26 19:02:33
そういや今日本屋で石川版初代?の愛蔵版ってのを見掛けた。
276:名無しさん@お腹いっぱい
07/11/26 22:53:05
神州纐纈城を読みましたがあれは良かった。でもEDがいつものでしたが。
もっともあれは石川先生の責任ではなく原作でもみかんなので致し方なし。
石川テイストのダイナミックな漫画を書けて、しかもキレイに完結させる漫画家はいるのだろうか?
個人的には藤田和日朗先生なら、作品に負の情念やら怨念を込めていただければできる気もしますが・・・無理かな・・・。
277:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/26 23:00:12
あ~藤田は魔猿でケチが付いたからまだ同意出来るほど信頼回復してないや、俺的には。
278:名無しさん@お腹いっぱい
07/11/26 23:08:12
>>277
ああっあれですね。あれは確かにTT。
もっともガチリンとバネアシは良かったと思うので、徐々に回復しているとは思います。
あとはどれだけ作品に良い意味で怨念を込められるかですね。
あの絵のテイストは石川作品張りにダイナミックなスピリットをこめられると私は思うのですが。
それと石川先生の武蔵伝も読んで見ようと思います。
279:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/27 04:30:47
>>275
買ったが、大都社のゲッターロボ2巻までの内容+ミサイルマシンガンの話だった
280:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/27 07:54:55
>>275
サーガ版の再録だと。ガンバレ!ムサシがはぶられてるし買う必要はあんまり無いかと。
281:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/27 08:19:09
>>277
藤田版EVAですか…
音流布寺の一人息子のシンジがいいつけをやぶり地下の「どぐま」の秘仏を見てしまう
そこには二股の赤い槍につらぬかれた青い髪のまっぱの少女が…
つうSSを見たことがある
282:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/27 14:30:33
>>281
く、狂おしくkwsk!
283:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/27 18:59:13
“音流布寺”で調べたらそれらしきものが見つかったよ
284:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/27 20:07:51
しかし正直、號後半でゲッター線の意志なる概念が登場して以来約十五年、
ここまでゲッター側が追い詰められた場面というのはおよそ記憶にない。
アークのラストシーンやチェンゲの世界一時壊滅や新の四天王襲来でも
ゲッターならどうとでも逆転するさとタカをくくって、事実乗り切ってきた訳だが
今回ばかりは読めない…やはり作者は魔界転生してきた石かドワオ
285:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/27 21:49:03
>>282
「しんじとれい」で検索
286:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/27 22:14:17
>>283>>285
サンクス。みっけた。
287:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/27 23:36:58
>>286
実はとら役がトウジというのも「めぞんEVA」にあた
トウジ→大阪→阪神→虎
という発想だろう
288:つづき
07/11/29 00:11:21
やがて、二週間ばかりの時が過ぎた。
ぼろぼろとなったのはゲッターやエヴァばかりでなく、それを操る者、援助するもの、
導くもの……と、すべてにおいてネルフは打撃をうけていた。
まずゲッターとエヴァの修理はリツコがいないために作業効率が著しく低下している。
ゲッターはリツコ以外にまともに扱える者がおらず、竜馬立ち会いの下、細々と修理が
続けられるだけだし、エヴァの方は、あれからゼーレからの支援がぷっつりと止まったせ
いで、ネルフの自腹と政府の援助のみであたらねばならず、資金繰りが追いつかない。
地下に大量に廃棄されていた零号機以前の試作機の一部を使い回したりまでしなければ
ならない有様だった。
まともに動けるのは唯一、零号機だけだったが、それも今はパイロットのレイが倒れて
床に伏せている状態だ。初号機の中にいるユイがインベーダーに浸食されたことで、未来
の彼女までもが自我を保つのに精一杯の状態であり、その肉体も影響下にあった。
レイにすれば、とんだ災難だというところだろう。
一応、レイの肉体そのものにはスペアがある。
彼女はいわばリリスの魂を封じ込めた人造人間だからだ。
そのスペアを使ってユイのためにもう一つ器を用意することも提案されはしたが、そも
そもどうやってレイからユイの魂だけを引きずり出せばいいのか、竜馬に聞いても解らず
仕舞いでどうにもならなかった。
竜馬いわく、ユイをレイへ導いたのはエンペラーであり、その意思と己の意思はイコー
ルではないのだという。
さらに、ターミナルドグマのリリスから勝手に抜けて地上へ突き出たロンギヌスの槍に
よって、ネルフの施設そのものにも大小の被害が出ている。
通常の業務には差し支えないが、一部の防衛システムが作動しなかったり、非常電源に
支障が出ていたりと、緊急事態になれば問題があると予測されていた。
壊滅的……とまではいかないが、もし今またシトやインベーダーの襲来を受ければ、
「その勝率は、わずか五パーセント……と、MAGIは判断しているわ」
289:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/29 00:12:32
ミサトのいうように、間違いなく負けるだろう、と誰もが思った。
支える盾を次々と失ってしまい、みなが弱気になってしまっている。
そんな状態であるから、できればゲンドウとしては現在敷いている、特別厳戒態勢を解
除したくなかったが、ネルフは秘密組織ではあっても特殊訓練を施された人間だけで構成
されるわけではない。
この状態でさらに長い間の緊張を各員に強い、逆効果を引き起こしてしまうのを恐れて
厳戒態勢は一時解除とした。
職員たちは二週間ぶりの働きづめから解放されて、それぞれの居所へと帰っていく。
それは竜馬たちもまた同様であった。
自宅のマンションに戻ると、二週間分のほこりが蓄積した部屋が待っていた。
玄関を開くなり、ミサトがうんざりとした表情になる。
「はぁ……掃除する気分にもなれない」
「いつものことだろうが」
「うるさいわね」
といっていると、奥からペンペンが走り寄ってくる。
長い間の放置にもめげず、自分なりに食料を調達して飢えを凌いでいたようだった。
大した知能である。
ミサトがごめんね、と抱き上げるとコツリと彼女の額をつついて不満を露わにした。
しかし、
「今後のことを考えると、あんたもどこかに預けないとならないわね……」
と、ミサトは悲しげに漏らすのだった。
なお、アスカは帰っていない。
岩鬼組ではいまだに将造の姿が見あたらず、大わらわとなっていて彼女もその騒動に巻
き込まれる形となっていた。
アスカ自身も二週間働きづめの後でヘトヘトであるが、それでも生まれてはじめて、心
から親代わりとなってくれた人間を捜すため、疲れた体に鞭を打って彼女は岩鬼組本家に
戻ったのだ。
290:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/29 00:13:35
「あの馬鹿野郎が。どっかでのたれ死んでんじゃねえだろうな」
と、竜馬が将造の行方を口は悪いながらも案じる。
すればミサトも我が友人の身を想った。
「リツコ、どうしちゃったのかなぁ」
「あいつは戻ると言や、必ず戻ってくる。そういう奴だ」
「あーあ。旧友より解ってくれる人が出来るなんてリツコも裏切り者だわ。
……でもまじめな話、いつに戻るかあてにならないのは困るのよ。聞きたいんだけど、
逆にゲッター艦隊ってやつをこっちに呼べないの」
「バカ言うな。地球の上であいつらを呼んだら、この星ごと潰されちまう。それにだ」
と、竜馬は真顔になるとミサトに顔を寄せて、さらにいった。
「エンペラーがどう思おうが、俺自身はなんでもかんでもゲッターに取り込むのは好きじゃねえんだよ。
確かに俺はエンペラーの意思もあってここに来たが、この世の行く末はおめえらの手で
始末をつけるんだ。そうでなきゃ、お前達の進化してきた意味がなくなっちまう」
これにミサトは納得したような、していないような、珍妙な表情になりつつ居間のダイ
ニングテーブルの椅子にどさりと腰を下ろすと、そのまま深いため息をはく。
心底疲れた、といった様子であった。
それからしばらく上の空となっていたが、腹の虫が鳴ってして空腹だったことを思い出すと、竜馬をみていう。
「おなかすいた」
「なんで俺を見ていうんだよ」
「おなかすいた」
「……」
繰り返すミサト。
普段、お前から迷惑ばかり受けているんだから、そのぐらいはしてくれてもいいだろう
といわんばかりのジト目で竜馬を見続ける。
291:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/29 00:14:36
その本人は「なにを言いやがるんだ」という目で見返していたが、今日ばかりはなぜか
ミサトの方が目力で上回っていた。
にらめっこに負けた竜馬は、
「わあったよ! なんか用意すりゃいいんだろが、畜生」
と、悪態をついて適当に冷蔵庫から即席の食料品を取り出していく。
この男にどんな形であろうと勝つのだから、ミサトも大した女といっていい。
しかし、これは正解でもあった。
なぜならミサトは極度の料理オンチであり、彼女に調理をやらせるとレトルト食品や即
席麺といった調理に失敗のしようもない品々が、なぜか珍味も真っ青になるほど劇的な味
の変化を遂げてしまうからだった。
以前、ぐうぜんシンジとアスカが居ない時にミサトの作ったものを口にした時は、普段
なんでも食えると豪語する竜馬も思わず吐き出しそうになるほどだった。
「めんどくせえ」
言いながら、湯を注いだりレンジの操作をする。
あまり似合う光景ではない。ミサトが作るよりマシだとはいえ、やはり、彼には戦う姿
が相応しく美しい。そういう星の下に生まれた男なのだ。
まあ、それはともかく。
竜馬は出来上がるまでもない品々を乱雑にテーブルの上に並べていく。
内容はボンカレーが二皿に、即席の味噌汁が二つ、さばの味噌煮の缶詰一つが、缶のま
ま開封されて置かれているだけだった。
貧相にも程があるといえたが、竜馬が悪いのではなく、これぐらいしか食えるものがな
かったのだ。他の物はペンペンがあらかた食い尽くしていたため、これ以上を食いたけれ
ば買い出しに行かねばならない。
しかし、二人ともその元気はない。
「ほらよ」
292:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/29 00:15:45
と、ミサトの分を差し出すとそれに彼女が「恩に着ります」と仏に拝むような動作で感
謝を表してから、差し出した方よりも早くがっついていった。
どこも恩に着ていないようだが、竜馬もその程度のことはいちいち構わない。
すぐに彼も食事に口をつけていった。
絶対量が少ないのと、空腹ゆえに瞬く間にそれらは片付けられてしまう。
食事を終えて、ミサトが静かに席を立った。
「ごっそさん。はぁ……シャワー浴びてくるわ……覗いちゃダメだかんね」
「さっさと行け」
反応の薄い竜馬に、なにやらミサトはぶつぶつ言いながら風呂場に入っていくと、竜馬
は気にもとめず椅子に深く腰掛けたまま、静かに目をつむって瞑想に入る。
しばらく奥から聞こえるシャワーの水音と共に思案にふけっていたが、その途中でなに
やら風呂場から水音すらもさえぎって、桶かなにかが叩きつけられる音が響いて同時に、
ゴン、という音がした。
「なんだ」
と、それに竜馬が目を開けると風呂場にミサトにむかって「大丈夫か」と呼びかけるが
反応がない。
一瞬、嫌な予感が脳裏をよぎる。
(まさかインベーダー)
そう思ってからは、行動が早かった。
カヲルを迎えた時から所持しているサブマシンガンを引ったくって持つと、躍り込むよ
うにして風呂場に突入するとそれを構えた。
「ぬお!!」
と、叫ぶが、風呂場から現れたのは湯気ばかりで敵の姿は見あたらない。
はて、と見回せば足下に気配があって、それに頭を向けると裸のミサトが倒れている。
293:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/29 00:16:49
「どうした」
というが、反応がない。
竜馬はこんな場所で倒れた彼女の身を案じつつも、同時にインベーダーに寄生されてい
るとすれば容赦なく撃ち殺すつもりで、ミサトへサブマシンガンを突きつけるように構え
たまま、しばしの間じっと傍観した。
息は、しているようだった。
さらに耳を済まして鼓動を聞く。もしインベーダーに寄生されていれば、やつらが体内
でうごめく気配があるはずだと竜馬は思っている。
その状態のまま数分動かなかったが、やがて構えたサブマシンガンを静かに降ろす。
どうやら寄生は認められないようであった。
ふっ、竜馬にかすかな安堵の吐息がもれる。
しかし、それならばとサトが風呂場で倒れた理由はなんだろうかと次に考えた。
竜馬は最初、湯あたりか何かかと思ったが、
「シャワーで湯あたりなんざ聞いたことねえぞ」
というと、その考えを打ち消す。
おそらく心労でも祟ったのだろう、と思うことにしてミサトを起こすべく何度か呼びか
けてたが、やはり反応がない。
「本当に手間のかかるやろうだ」
せっかくの休息を邪魔しやがって、とばかりに毒づくが、倒れているのを放っておくわ
けにもいかず引きずり起こすと、風呂場から持ち出した。
それでもミサトは眼を覚まさない。
仕方なしにそのまま担いで、本人の部屋まで連れていき敷かれたままだった布団に彼女
を転がすように置くと適当に布団をかけた。
そしてすぐにきびすを返えすと、その太い首をゴクリと鳴らしながらミサトの部屋を退
出して居間へ戻ると、テーブル椅子に深く沈んで腕を組み、再び瞑想に入る。
294:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/29 00:17:59
いままで未知の世界に独り来て戦ってきたのだ。竜馬といえども疲れていたのだろう。
瞑想は、たいした時間も経たぬ内に睡眠へと移り変わっていった。
やがて、数刻過ぎた頃である。
窓に暁の色が映り込んで世界が動きだそうとしはじめると、竜馬も目覚めて垂れていた
頭をあげる。
すると、なぜか向かいの椅子に座ってテーブルに突っ伏したまま、いびきをかいている
ミサトの姿が映った。
竜馬が変な顔になる。
さきほど自室に転がしておいたはずである。
そう思うと、ミサトが寝言なのか「お父さん」とつぶやくのが聞こえた。
竜馬は頭をかくと、
(どうもこいつらといると、調子が狂う)
散々周りの調子を狂わせてきたことは棚にあげてそんなことを思ってから、さっと立ち
あがり窓際に歩いていく。
外を覗くと、生まれたばかりの太陽が燃えあがっていた。
竜馬はそのまぶしさに目をしばたかせると、
「エヴァ、か……どうも、ゲッターとは違う役割を背負ってるように思えてきた。終号機
は、エンペラーとは全く違う存在になるかもしれねえなあ。
だがシンジがインベーダー野郎に食われちゃ、それもうたかたの夢よ。くそ……厄介になってきたぜ」
そんな、ずいぶんと長い独り言を漏らすのだった。
……やがて太陽はすっかり空へと登り、この日も朝がやってきた。
朝が来れば多くの人は起きて働きに出てゆく。それは竜馬たちとても同じ事だ。厳戒態
勢は解除されていても通常業務がある。ネルフ本部へ出向せねばならない。
竜馬は足に使っていたバイクが大破してしまっているので、現在はミサトの車に便乗し
てネルフまで移動する。
295:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/29 00:19:18
彼女の車はオープンカーにもなった。
天井を解放して朝の空気を一身に浴びる中、竜馬はミサトの話し相手となっている。
「昨日は迷惑かけちゃったわね」
「体調管理にゃ気をつけな」
「うん、そうする……ところでリョウ君、足がないと不便でしょう?」
「違いねえ」
「でしょ。だから新しいバイクを探してきたのよ。良い出物があったの、CBのナナハン」
そのような会話を交わしながら、車はネルフへと突き進んでいった。
なお、ミサトの話に出てきたCBのナナハンとは、ホンダ・ドリームCB750FOURのことである。
西暦一九六九年の当時、速度・耐久性・操作性の全てにおいて最高の性能を持った車両
として、世界に対して日本の工業力を認めさせる一翼となったバイクだ。
その時から出でた流れは、この二〇一五年の現在に至るも、エヴァを代表とした各技術
の分野において、なお続いていた。
久々に穏やかな時間が訪れていたが、ネルフに到着するころにはそういう余暇の話題を
持ち上げる時間も消え失せてしまうことになる。
ミサトの車がネルフ本部へ足をかけるか、かけないかの内に警報が鳴り響いたのだ。
アナウンスがシト接近の報と、対空迎撃戦の用意を施設の全体に伝えていく。
竜馬とミサトが作戦司令室に飛び込む頃には、すでに他の職員たちは集結しておりメイ
ンスクリーンに発光体だけで作られた鳥の影のような物が映し出されている。
さながら鳳凰でも連想させるような姿だった。
それが衛星軌道上に浮かび、何をするでもなく地球を周りを漂っている。
「軌道を離れませんね」
「ネルフ本部から一定距離を保っています」
「降下の機会をうかがっているんでしょうか……」
と、その様子をマコト、シゲル、マヤの順でそれぞれ報告していく。
それを基にミサトがシトの行動パターンに探りをいれる。
296:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/29 00:20:26
「あるいは、降下する必要もなくここを破壊できるのか」
「それならとっくにやってるだろうよ」
「どうして、そうわかるの」
「ゲッター艦隊はそうやって惑星を侵攻するからだ。宇宙から惑星を攻撃するときは、み
な似たようなもんだ」
「と、するなら……」
破壊が目的ではないのか、と思案は錯綜していく。
ただ、シトの目的が破壊であるにせよないにせよ現在のネルフにはひとつ、大きすぎる
といっていいほどの問題があった。
そう。
それはまともに稼働できる兵器が、零号機ただの一台しかないということである。
弐號機はなんとか起動できる程度には修理が進行していたが、専門技術者のいないゲッ
ターは組み立てすら終わっていない状態だった。
しかも前述の通り、動ける零号機も主たるパイロットが倒れている。
MAGIにも、このまま戦えば次は必ず負ける、と嫌な太鼓判をもらっている。
状況は最悪といえた。
しかし、応戦しないわけにもいかないということで、まずミサトによって零号機のシス
テムをアスカ用に書き換え、彼女に零号機を運用してもらおうという案が提出されたが、
彼女独特の精神波長が零号機に合致しないせいで、シンクロ率の確保がむずかしかった。
なにより彼女は弐號機以外のエヴァに乗ることを好まない。
もっともこの状態で、そんな悠長なことをいっている余裕などはないのだが。
これに割り入って発言したのが竜馬だった。
ゲッターも動かないのに、なにか案でもあるのかと周囲の視線があつまるなか、彼の提
案した用件は至極単純かつ荒唐無稽なものだった。
「なら、零号機には俺が乗る」
で、ある。
この言葉には、竜馬という人間に慣れたさすがの職員たちも閉口せざるを得なかった。
297:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/29 00:22:07
エヴァは一四歳の少年・少女で、かつ、エヴァのコアに宿った魂と適正のある人間でな
いと動かせないのは、さんざん既出のことであろう。
だのに、この男はなにを世迷いごとをいっているんだと周囲の視線がしらけていく。
だが竜馬は一切ひるまない。
「やってみなきゃ分かんねえだろ。いいから乗せやがれ!」
この一点張りである。
竜馬が言い出せば、赤ん坊も真っ青になるがごとく誰の言うことも聞かなくなるのは、
これもネルフの職員達がよく承知していることだった。
やがて、ゲンドウがいった。
「……いいだろう。乗ってみたまえ」
竜馬の求めに許可をだしたのだ。
これに、
「正気ですか!?」
「下手をすれば、流さんと零号機まで失うことになりますよ!」
と、いくら司令でも血迷ってもらっては困る、と職員たちから非難が飛びかかったが、
ゲンドウもまた、人の言うことを聞かないのにかけては一流だった。
他の意見を抑えつけて、
「構わん。どのみちシトに負ければ誰にも未来はないのだ」
という。
竜馬がその対応に満足そうな笑みをみせる。
司令の命令であれば、みなも従わざるを得なかった。ここでストライキなど起こしても
なんの意味もなさないのだ。
すぐに零号機のパーソナルデータの書き換えがなされ、体格に合わせた専用のプラグス
ーツも急造されて竜馬が零号機のエントリープラグにぶち込まれていくのだった。
298:ここまで
07/11/29 00:23:51
なお、プラグスーツは淡い緑色を基調としているデザインのものだった。
それを着てプラグ内の座席に収まる竜馬に、ミサトの声がひびく。
「まずLCLを注入するけど、窒息はしないから慌てないで」
「わかってる」
そういうと、竜馬の足下から橙色の液体が満ちていき、プラグ一杯に満たされる。
竜馬は最初すこし気持ち悪そうにしていたが、しかしすぐに慣れた様子だった。
つづいてミサトが静かにいう。
「では、シンクロテストを開始します」
299:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/29 00:24:00
支援しとこうかな
300:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/29 00:37:57
GJ。
やはりエヴァ終号機というのは誤字ではなかったのか……
本来ならゲッペラーに匹敵する超存在になるはずだったという事だが、
実際にはどうなるのやら。
そしてゲッター艦隊の意外な欠点。惑星・星系規模の殲滅戦に特化したせいで
小回りがきかないのか。
301:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/29 00:47:36
毎度GJ!!!
でも
竜馬がプラグスーツ…
竜馬が…
ダメだあまりの衝撃展開に整理がつかん
一体この作者はどれだけの宇宙を脳内に抱えているんだ?
302:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/29 02:08:10
追い詰められたせいか空気が一気にエヴァっぽくなったな。
これがこれまでの揺り戻しだとするとまだまだ沈むんじゃないかとか戦々恐々。
303:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/29 09:44:56
う~む・・・・・ミサトの料理を食すのは流石に竜馬でも無理だったか。(爆)
304:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/11/29 10:27:34
言っても詮無いことだが
CB750か…
Zじゃないのか…
カワサキじゃないのか…
305:つづき
07/11/29 18:05:38
「おう」
というと、竜馬が瞳を閉じた。
彼なりに零号機とシンクロしようとしているのだろう。
しばらくそのままだったが、やはり零号機は竜馬を受け入れないのか、マヤの監視する
シンクロ率を表示するグラフはうんともすんともいわなかった。
(だめか……)
ミサトがそれを見て思った。
あれほどの大口を叩いた手前、竜馬ならなんとかしてしまうのではないかと、ひそかに
淡い期待を抱いていたのだが、そうそう上手く事は運んでくれないらしい。
「リョウ君、やっぱりダメよ。大人にエヴァが動かせるなら、私たちだって子供に命をか
けさせたりしないわ」
諦めてそういうが、しかし竜馬は応じない。
それどころか、閉じた瞳をかっと開けると怒ったような顔になる。
「零号機!! 寝ぼけてんじゃねえぞコノヤロウッ!
いまは地球の一大事なんだ、てめえが動かなきゃどうにもなんねえだろうが!!
それでも眠っていてえなんて抜かしやがるなら……」
がぼがぼと、LCLの溶液の中でそういう内容のことをいうと、いよいよ竜馬は目をつり
上げて、
「プラグごと食っちまうぞこの野郎!!」
と、がぼりと叫んでからトリガーを目一杯に引いた。
あまり強く引くので、トリガーが壊れてしまいそうだったが、その迫力たるや、初号機
がゼルエルを食ってしまったかのように、本当に竜馬が零号機を食ってしまいそうな勢い
だった。