08/02/29 22:27:27 qtLsCp240
北海道新聞 2008年2月29日(金)夕刊8面 カルチャープラス MANGA
(村雨ケンジのこのコマを見よ) 「アオイホノオ」島本和彦 「80年代」の空気濃密に
そうそう、一九八〇年代の初めってこうだった!!・・・と、このコマを見て爆笑した。
「ブライガー」とは、天才アニメーター・金田伊巧(かねだよしのり)による作画、柴田秀勝のカッコいいナレーションの
オープニング(だけ)でアニメファンを魅了した「銀河旋風ブライガー」のこと。
ビデオの普及前夜、こんな風景があちこちで見られた(ユー・チューブ? なにそれ?)。
本作は「大作家(おおさっか)芸大」を舞台にした、マンガ家を夢見る焔燃(ほのおもゆる)の熱血青春記。
後に「エヴァンゲリオン」を生み出す庵野秀明ら、実在の大阪芸人出身のクリエーターも実名で登場する。
当時まったく「ノーマーク」だった関西の青年たち。メディアにからめ取られた東京の同類だちと違い、
どうクリエーターとして「熟成」していったかが興味深い。オタキング岡田斗司夫しかり、フィギュア制作の海洋堂しかり。
八〇年代、「ときわ荘物語」は大阪にあった。
端正なディテールで描かれた一九八〇年。作者の分身・焔燃を動揺させた、あだち充の「みゆき」、
高橋留美子の「うる星やつら」の登場など、この年が少年マンガの転換期だったのがわかる。
昭和ブームに便乗したマンガやドラマと対照的に、本作品には「その時代」の空気が濃密に封じ込められている。
女の子相手に金田伊巧の素晴らしさを力説する焔燃はまさに「昭和」っぽい。八〇年は「オタク」という言葉が発明される二年前。
オタクたち自身がまだ自分たちを「オタク」と規定できず、力まかせに疾走していた、思えば硬派(笑)な時代だった。
ちなみに「ブライガー」は八一年の放映作品。こうした「演出」を探すのも、昭和のヒトには楽しい。
(ビジュアルメディア評論家)
【写真】(c)島木和彦/小学館「ヤンクサンデー」連載中
紙面画像 URLリンク(ranobe.sakuratan.com)