08/07/02 21:06:50 rgH7BgSp0
>>374を見て何となくこんな事思いついた
日曜日、老いさらばえた男が公園のベンチで鳩に餌をやっていた。
この男は、青年の頃は兵士だった。第三帝国の御旗の元に集い、
世界に帝国を築こうとしたベルリンの伍長を崇め、「総統万歳!」と叫び、
戦場を駆けずり回った。輝く祖国の栄光に酔いしれた事も今となっては
儚い思い出、遠い過去。戦に敗れ、国を捨て、ナチス残党狩りの目を逃れ
息を殺すかの様な思いで生き続け、今では世捨て人の老人さながら。
しかし胸中では赤黒く燃える炎の如き思いがくすぶり続けていた。
大戦が終わっても尚、戦火が魂にまで燃え移ったかの様な『渇望』
は絶える事なく、男の心を焦がし続けている。
その『渇望』とは、「戦争」の二文字
男は自分がこのまま死んでいくのはあまりに無念と考えていた
『もう一度、戦場に立つ事が出来るのなら、悪魔に魂でも売ろう・・・!』
そう考えた事も幾度かある。しかし、次の瞬間には
『こんな老いぼれの望みを叶えに来てくれる悪魔なぞいるもんかね。
それこそ、都合の良い絵空事さ。』
という考えで、己の抱く渇望を叶う事の無い夢だと思う事にした。
『今の自分に何が出来る?出来る事は公園で鳩に餌でもやりながら
死ぬ事を待つ事くらいじゃあないか。』
そんな事を考えながら男は鳩に豆を撒いていた。その時、
「こんにちはー、おじいさん。」
無邪気な子供の声が聞こえた。声の方に顔を向けると、そこには
猫の耳を生やした少年兵の姿があった。男は思わず呟いた。
「白昼夢か・・・?」
男の呟きに少年は答える。
「白昼夢ー?違うよ。でも似たようなもんかな。何故って僕はどこにも
居て、どこにもいない存在なんだから。」