【らき☆すた】こなた×かがみPart21【こなかが】at ANICHARA2
【らき☆すた】こなた×かがみPart21【こなかが】 - 暇つぶし2ch21:1-166
08/06/12 02:34:16 HHVjwxkE
 
 以上です。物語は次章で最終章となります。
 半年近くの時間をかけてようやくここまで来ることが出来ました。
 今までに感想を下さった方々に改めてお礼を申し上げると共に、
今後とももうしばらくお付き合い下さい。それでは。

22:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/12 03:47:27 TVz+eq3O
>>166
ふおおおおおおお!!!!!待ってた!待ってたぞおおおおおお!!!!
続き読めるの楽しみでしたw
文章がきれいで読みやすいです。GJ!

23:22
08/06/12 04:06:32 TVz+eq3O
>>21です…

俺、未来レス乙。orz

24:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/13 18:48:47 zm55rgct
板復活?

25:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/13 18:57:31 KL6MPUjg
よかったよかった
またまったり萌えようぜ

26:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/13 19:12:19 iUZUvVp7
復活乙


27:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/13 19:26:26 LPrFgjs0
       /                     \
      /  ,r'"j                i^'!、  ヽ
    /   </´                `ヾ>  .:;i,
    ,l        _,._,.        _,._,.       .:.:l,
    |       < (ヅ,>      < (ヅ,>     ...:.::|      乙
    !        ` ̄´      .   ` ̄´       ..: ::::::!   
   |           ノ . : . :;i,          ... ::::::.:::|    
     !          (.::.;人..;:::)      ...:.:::::.:::::::::!
    ヽ、         `´  `´    ........::..::..::.::::::::/
      \......,,,,,,,_           .....:::::::::::::::::::::::::/



28:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/13 20:26:17 fBdfAqKc
復活きたああああああ
このスレ見ないと落ち着いて生活できないわw

29:20-760
08/06/13 21:08:45 FgaQoqbX
 無事復活してくれて何よりですね。
 さて、昨日、避難所に投下したSSの続きを
投下してもよろしいでしょうか?
 

30:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/13 21:15:29 fBdfAqKc
>>29
wktk

31:20-760
08/06/13 21:19:53 FgaQoqbX
30さん、ありがとうございます。
(すみません、ググってようやく理解できました。
 それでは、投下させて頂こうと思います。
 13レス使わせてもらいます。
 では、投下します。


32:「守る」という事・後編
08/06/13 21:21:02 FgaQoqbX
★ ☆ ★ ☆ ★

「こなた、お風呂あがったわよ」
 ログハウスを借りているお客さんは、ホテルの大浴場をタダで利用できるら
しいけれど、せっかく二人だけの生活を体験しているのだから、私たちはここ
のお風呂で我慢する事にした。
 美味しい料理を作ってくれたこなたを労って、食器の後片付けや残った料理
の仕分けは私がすると言ったんだけど、こなたは自分がやるからと言って聞か
なかった。そこで私が先にお風呂を使わせてもらう事にしたんだけど……。
「ええっ! そんな……。これからかがみんのあられもない姿を覗きに行こう
と思っていたのに……」
 心底残念そうに、こなたがそんな、ふっ、ふざけた事を言う。…いや、ちょ
っと待て!
「なっ、何をするつもりだったんだ、あんたは!」
 せっかく準備してきたのに、とか言いながらビデオカメラを弄っていたこな
たの頭に鉄拳を叩き込む。
「ううっ、酷いよ、かがみ……」
「やかましい! とっととお風呂に入って来い!」
 こなたは、「ちぇっ、かがみのケチ……」とか言いながら、しぶしぶお風呂場
に入って行った。
 まったく冗談じゃない。入浴姿など記録に残されてたまるか! 別に見たい
のならそう言え……。違う、そうじゃない!
「あっ、かがみ。寂しいなら、いつお風呂に入ってきても良いからね!」
 絶妙のタイミングで、こなたがお風呂場から顔を出した。
「だっ、だっ、誰が入るか!」
 真っ赤になって私が怒鳴ると、「ひやぁ~」とまったく緊張感の無い悲鳴を上
げて、こなたはお風呂場に逃げていった。
「まっ、まったく、へっ、変な事を言うな……」
 顔が火照るのを感じ、私は深呼吸をして気持ちを落ち着かせる事にした。
「んっ、なにこれ?」
 備え付けの大きなテーブルには、あれだけ大量にあった料理皿が全て片付け
られていたけれど、ガラス容器とスプーン、それに書置きが残されていた。
 近くに行って書置きを読むと、
『かがみんへ。お風呂上りにデザートはどうかな? 今日は間違いなくカロリ
ーオーバーだから、ヨーグルトにしといたよ』
 そんな事が書かれていた。


33:「守る」という事・後編
08/06/13 21:21:58 FgaQoqbX
「……確かに、あれだけ食べた後に、ケーキなんかを出されても食べられない
わよね。……いろんな意味で……」
 ガラス容器の中を確認すると、白いヨーグルトの上に、綺麗に色とりどりの
果物のスライスが載せられていた。
「私がお風呂に入っている間、これを作っていてくれたんだ……」
 さっそく一口口に運ぶ。果物の甘さだけでヨーグルトには砂糖を入れていな
いから、程よい甘さで食べやすい。お風呂上りの水分を失った体にしみこんで
いくようで、とても美味しかった。
 更にもう一口、二口食べて、
「……後はこなたと一緒に食べよう」
 私はスプーンを置いた。とても美味しいけれど、一人で食べるのはなんか寂
しいから。
「……広すぎるものね、この家」
 こなたと二人のときは良いけれど、一人になるとこの家の広さが寂しさを増
幅させる。
「こなたと二人きりなのは嬉しいけど、こんなに広いところに泊まるんだった
ら、つかさやみゆきも誘って……」
 ……何を言っているんだろう、私は……。つかさは良くても、みゆきを誘え
るわけが無い。あんな事があったのに……。
 泣き崩れたみゆきの姿が頭をよぎった。すると、こなたのおかげですっかり
と影を潜めていた暗い気持ちが心の中に蘇っていく。
 駄目だと想った。こなたに迷惑を掛けちゃ駄目だと、止めようとした。けれ
ど、私の意志などお構い無しに、私の心の中に暗いものが急速に広がっていく。
『わずかの間、想い人に会えないだけでも精神的に追い詰められて、私に、他
の人間にすがってしまうかがみさんが、泉さんを守る事はできないと思います』
 そんなみゆきの言葉が思い出された。
「……私は、いつもこなたに助けられてばかりだ……」
 今日一日の事を思い出しても、私はこなたに何もしてあげていない。やり方
は強引だったけど、こなたは私のために色々してくれたのに。
 タクシーやこの家の手配、列車の座席の予約、試験で疲れているはずなのに
作ってくれたお弁当。ここでの料理だってそうだ。私のジャガイモの皮むきは、
でこぼこだらけで大きさがばらばらになってしまう有様だった。けれどこなた
はそんなジャガイモを使って美味しい料理を作ってくれた。「私とかがみの合作
料理だね」って優しく言ってくれた。私をフォローしてくれた。
 なのに、私は何も出来ない。何もしてあげられない。
「……私は、どうしたら……私は、こなたを守りたいのに……」


34:「守る」という事・後編
08/06/13 21:22:55 FgaQoqbX
 悔しかった。惨めだった。情けなかった。守りたい、と思っているのに、弱
くて無力な私は、すがってしまうだけで……。守られるばかりで……。
 不意に、ガチャッという音がした。そちらに視線をやると、
「ふふふっ、かがみん、この姿を見ても……」
 下着姿のこなたが悪戯っぽい笑顔でお風呂場から出てきた。
 けれど、私と顔をあわせるなり、慌ててこちらに走ってきた。
「かっ、かがみ! どうしたの! 何で泣いているの?!」
 必死なこなたの声。私を心配してくれる声。そっか、私、いつの間にかまた
泣いていたんだ……。
「なっ、なんでもないわよ」
「なんでもないはずないよ! どうしたの、言ってよ、かがみ!」
 言っちゃ駄目だ。こなたに迷惑をかける。私が解決しなきゃいけないんだ。
これからずっとこなたを守っていくために。守って、守っていくんだから……。
 なのに、涙が溢れてくる。「助けて、助けて」と弱い私の心がこなたにすがろ
うとする。
「……こなた……こなた!……」
 気がつくと、私はこなたを抱きしめていた。
「…かがみ。……どうしたの? 泣いていちゃ分からないから、話してみてよ」
 こなたは優しく私に泣いていた理由を尋ねる。私の精一杯の虚勢は、その言
葉で簡単に壊れてしまった。
「…………うん……」
 私は頷き、こなたに全てを話した。私が悩んでいた事、みゆきを泣かせてし
まった事、家族に迷惑をかけてしまった事の全てを。
 こなたは黙って私の話を聞いてくれた。
 全て話し終え、私はこなたに嫌われるんじゃないか不安で、ぎゅっとこなた
をきつく抱きしめた。
「……強く、強くなるから。強くなって、こなたを…守るから……。みゆきに
は…守れな…いって言われ…たけど、私のお父さんやお母さん…たちみたいに
強く、強くなって…私がこなたを…守るから。お願い…だか…ら…私を…私を
……嫌いにならな…いで……」
 勝手な事は分かっていた。何も出来ないくせに、何もしてあげられないのに、
私はこなたの側に居たい。それでも、このぬくもりを失いたくない。
「……バカだ……私は……」
「えっ? こなた……」
 こなたの瞳から涙がこぼれ落ちた。


35:「守る」という事・後編
08/06/13 21:23:40 FgaQoqbX
「……ごめん。私、バカだから……。かがみがここまで追い詰められていたな
んて分からなかった……」
 こなたは流れる涙を拭う事もせず、悲しげに笑った。
「……私は、思い上がってたんだね。……かがみが落ち込んでいても、私が頑
張ればどうにかできるって思っていた。不安な気持ちなんて、吹き飛ばせるっ
て思ってた……」
 私はなんといえば良いのか分からずに、ただこなたの言葉を待った。
「……寂しい思いをさせてごめんね。でもね、私も同じだったんだよ。私もね、
かがみを守れるようになりたかったんだ……。
 ……私、かがみが試験勉強を手伝ってくれるって言ったのを断ったよね?
それはね、いつまでもかがみに迷惑を掛けちゃいけないって、自分の事は自分
で出来るようにならないと駄目だって思ったからなんだ。そうしないと、私は
いつまでもかがみに迷惑をかけるだけだからさ……。
 だけど、やっぱり私はバカだよね。寂しがり屋のかがみを一人ぼっちにした
らどうなるか、分かっても良かったはずなのにさ……」
 違う。いつも迷惑をかけているのは私の方だ。そう言いたかった。けれど、
言葉が出なかった。
「……どうしてこうなっちゃうんだろうね? 私もかがみも、相手の事を守り
たいって思っていたのにさ……」
 こなたは顔を俯けて、弱々しい声で私に尋ねる。
 どうしてだろう? 本当にどうしてだろう? 私はこなたの泣き顔なんて見
たくないから、守りたいと思ったのに。だから強くならなくちゃって思ったの
に……。
 私がこなたにこんな顔をさせた。泣かせてしまった。私が弱いから……。
「…泣かないでよ…こなた……。私が強くなるから……。私がこなたを守れる
ようになるから……弱い私が悪いの。……こなたは何も悪くない! 何も悪く
ないよ……私が、私が全部悪いんだから!」
 こなたに笑顔でいてほしい。そのためなら私はどうなってもかまわない。
 こんなに弱くて、臆病で、人に甘えてばかりの私なんかどうなっても良いか
ら。こなただけは、こなただけは笑顔でいてほしい。
「……駄目だよ……それじゃ駄目だよ!」
 ぎゅっと、こなたが私を抱きしめた。
「そんな風に自分を追い詰めていったら、かがみが壊れちゃうよ。……そうや
って自分を追い詰めて、ウサギは火に飛び込んじゃったんだよ、きっと…」
 ……ウサギ? 私はこなたが何を言っているのか分からない。


36:「守る」という事・後編
08/06/13 21:24:29 FgaQoqbX
「……私は、薄情なキツネじゃないよ。かがみが壊れちゃうのなんて……見て
いられないよ……」
 こなたはまた意味が分からないことを言う。困惑する私に、こなたは乱暴に
腕で涙をぬぐって、
「……だからさ、かがみ。『二人』で頑張ろうよ」
 不意にそんな事を言った。
「二人?」
 オウム返しに尋ねる私に、こなたは小さく頷いた。
「……かがみは一つ勘違いをしているよ。みゆきさんはね、「かがみ『一人』じ
ゃ守れない」って、言ったんだよ」
「……こなた……どうして……」
 どうしてこなたはそんな事を言うんだろう? まるであの時のみゆきとの会
話を聞いていたみたいに。
 私の問いに、しかしこなたは困ったような弱々しい笑顔を浮かべるだけだっ
た。
「……お願い、かがみ。私の事を守って。その代わり、かがみの事は私が守る
からさ」
「……こなたが、私を?」
 こなたは頷き、
「ねぇ、かがみ。私と一緒に生活するって事は、確かに大変な事だと思うよ。
自分ひとりでも大変なのに、守らなくちゃいけない存在が出来るんだからさ。
でもね、それは同時に、かがみには私という強い味方が出来るって事なんだ
よ。一人じゃ無理な事でも、『二人』ならなんとかならないかな?」
そう言っていつもの笑顔を見せてくれた。
こなたの言葉は優しくて、嬉しくて……。だけど、だけど私は……。
「でも……私は弱いから……何も出来ないよ。きっと、こなたにばっかり…迷
惑をかけちゃうよ。……私は、やっぱり強くならないと……」
 俯く私に、こなたは優しくあやすように背中を撫でてくれた。
「無理をして自分だけで背負わなくてもいいよ。それにね、何も出来ないなん
て事は絶対にないよ。かがみは今までもずっと私を守ってくれていたんだから
さ」
「……嘘よ……。私は、私は何も……」
 気休めだ、そんなの。私は何もしてあげていない。ただ守ってもらっている
だけだ。
 そして、私はそれをきっと期待している。誰かが私を守ってくれる事を期待
している。自分は何もできないくせに……何も相手にしてあげられないのに、

37:「守る」という事・後編
08/06/13 21:25:19 FgaQoqbX
それなのに、私の事を守ってほしいって自分勝手な事ばかり考えて……。最低
だ……私は……。こんな私が、こなたの事を守っていたはず…ないよ……。
 落ち込む私の背中を、こなたがポンポンと優しく触れた。
「……ねぇ、かがみ。『守る』ってことは、たぶん一方的なものじゃないんだよ。
 ……前にね、うちのお父さんが言ってたんだ。お母さんが死んじゃったとき、
お父さんは本気で後を追おうと思ったんだって……。でも、私が居たからそう
しなかったらしいんだ。……こなたをしっかり成長させるように頑張ろうって
思えたんだって……。そしてね、「今の俺があるのは、こなたが居てくれたから
だよな。こなたを守っているつもりだったけど、俺のほうがこなたに守られて
いたのかもな」って言ってた。
 私とかがみだってそうだよ。私も強いわけじゃないよ。でも、かがみが側に
居てくれるから、私は頑張れる。かがみの存在が私に力をくれる。私を守って
くれているんだよ……。何も出来ないなんて言わないでよ」 
「……私は……ただ、守られていただけじゃ…ないの?」
 こなたの言うとおりなら、私は何も出来なかったわけじゃなだろうか?
迷惑をかけていただけじゃないんだろうか?
 ……それなら、泣き叫んでいた私を優しく抱きしめてくれた、あんなに強く
て優しいお父さんとお母さんも、私が守っていたんだろうか?
 そんな私の心を読み取るように、
「かがみのおじさんやおばさんだってそうだよ、きっと。かがみの存在が二人
を守っていたんだよ」
 こなたが優しくそう言ってくれた。だけど……。
「……でも、それだけじゃ……嫌だよ。私は…お父さんやお母さんみたいに強
くなりたいよ……。こなたを……もっと守ってあげられる様になりたいよ……」
 私は駄々っ子のように、泣きながら我儘を言う。でも、これが私の本当の気
持ちだった。ただ居るだけじゃ嫌だ。守りたい。もっと守れるようになりたい。
「……うん。私も同じ気持ちだよ。私ももっとかがみを守れるようになりたい
よ。……だからさ、一人じゃなくて、私と『二人』で頑張ろうよ。一緒に強く
なろうよ。いくら相手の事を思っていても、話さなくちゃわからない事もある
からさ……。ねっ?」
 もう、限界だった。
「…こなた……こなたぁぁ~!」
 私はこなたを抱きしめたまま声をあげて泣いた。今まで心のうちに溜め込ん
でいた暗いものを流し出そうとするみたいに。
「……お願い、かがみ。私と一緒にいて。同じ道を歩いて……。二人でたくさ
ん笑って、たまにはケンカもしてさ……。


38:「守る」という事・後編
08/06/13 21:26:18 FgaQoqbX
 悲しい事や辛い事はいっぱいあると思う……でも、かがみは私が守るから。
そして、私のことをかがみが守ってくれるんなら……私たちは強くなれるよ、
絶対に。……越えられない事なんて……ないよ」
 泣き叫ぶ私の耳に、何故かそんなこなたの言葉がはっきりと聞こえた。
「うん……うん。こなた…と一緒……ずっと…ずっと…一緒だよ……」
 私はそう言って何度も頷いた。

★ ☆ ★ ☆ ★

「はい、かがみ」
「……ありがとう、こなた」
 こなたから渡された紅茶を喉にとおして、私はようやく冷静さを取り戻した。
 さらに時間をかけてゆっくり紅茶を飲み干し、気持ちを落ち着けてから、私
はこなたに尋ねる。
「……ねぇ、こなた……。いつ、みゆきから私の話を聞いたの?」
 さっきのこなたの話から、こなたがみゆきから私の事を聞いた事は間違いな
い。けれど、何故みゆきがこなたにそんな話をしていたのか、いや、そもそも
何故こなたと連絡を取ろうとしたのか分からない。
 みゆきは、私とこなたの関係を快く思っていないはずなのに。
「……昨日だよ。でも、もう少し待って。まとめて話すからさ」
 こなたはそう言って、困った顔をする。
「……うん。分かったわ。家に帰ってから、聞かせてもらうわ」
 こなたが今教えてくれないのは、私の事を思っての事だろう。
 ……もしかすると、みゆきはこなたに絶交を告げたのかもしれない。もちろ
ん、私に対しても。
 親友を失うのは辛い。こなたのおかげで、私は随分と気持ちが楽になったけ
れど、ただひとつだけ、みゆきのことが気がかりだった。
 ……でも、大丈夫。私にはこなたがいてくれるから。こなたがいてくれるな
ら、私はなんだって乗り越えてみせる。
「そんなに後じゃないよ。紅茶を入れている間に連絡を入れたから。……やっ
ぱり、このままじゃダメだと思うからさ」
 こなたの言っている意味が分からず、私が意味を尋ねようとした時だった。
 来客を告げるインターフォンの音が鳴り響いたのは。
「おっ、来た来た」
 こなたは嬉しそうに玄関に走っていく。気になって私もそれを追う。そして、
玄関に行くと、


39:「守る」という事・後編
08/06/13 21:27:07 FgaQoqbX
「あっ、あの、こんばんは。こなちゃん、お姉ちゃん」
 こんなところにいるはずの無い、つかさがそこにいた。そして、
「……みゆき……」
 つかさの後ろには、顔をうつむけたみゆきが立っていた。

「……その、ごめんね…お姉ちゃん」
「……あのねぇ。いきなり謝られても意味が分からないわよ」
 玄関じゃなんだからさ、とこなたに言われ、居間のソファーに座って話すこ
とにしたのだけれど、私には何が何だか分からない。分からない事だらけだ。
「ちょっと面倒な話だからね。順番に話していかないとね」
 私の隣に座っているこなたがそう言って苦笑し、
「そんじゃ、最初は私から話すね」
 と話の口火を切った。
「つかさじゃないけど、私は一つかがみに謝らなくちゃいけない事があるんだ。
 実はね、この旅行は私の計画したものじゃないんだ。全部ね、つかさとみゆ
きさんが計画して、準備してくれたんだ」
「…えっ、どういうことよ?」
 私はこなたに続きを促そうとしたが、
「ここからは、つかさに話してもらわないとね」
 とこなたは話をつかさに振った。
「えっ! あっ、その、そうだよね…。うん、えっとね、こなちゃんが試験勉
強を頑張っている間、なんだかお姉ちゃんの様子がおかしい気がしたんだ。
 きっと、こなちゃんの事が心配なんだって思っていたんだけど、なんかすご
く追い詰められている感じで、他に何かあるような気がしたんだ。それが何か
は分からなかったんだけどね……。それでね……」
 つかさはそこまで話をして、みゆきに視線をやった。きっとみゆきに話を振
りたかったんだろう。けれど、みゆきは俯いたまま何も言わない。
「……つかさ、続けて」
 どうしたものかと困るつかさに、こなたが助け舟を出した。
「あっ、うん。それでね、私はゆきちゃんなら分かるかもしれないと思って、
何日か前にゆきちゃんに相談したんだ。そして、ゆきちゃんから、お姉ちゃん
の元気が無い理由を教えてもらったの。それと、お姉ちゃんとこなちゃんのこ
とについても教えてもらったんだよ」
「……つかさ。私とこなたの事、おかしいって思わなかったの?」
 笑顔を浮かべるつかさにそう尋ねると、


40:「守る」という事・後編
08/06/13 21:27:53 FgaQoqbX
「驚きはしたけど、別に変には思わなかったよ。だって、お姉ちゃんとこなち
ゃんが仲良しなのは分かっていたから」
 そんな答えが返ってきた。つかさはまだ、友情と愛情の境界が曖昧なのかも
しれない。
「それでね、元気のないお姉ちゃんを助けたいって思ったの。だけど、きっと
お姉ちゃんを元気に出来るのは、一番仲良しのこなちゃんじゃないとだめだと
思ったんだ。でもね、こなちゃんは入試で忙しいから、ゆきちゃんにいろいろ
力を貸してもらったんだよ」
「……私は……」
 この家に来てから、初めてみゆきが口を開いた。私たちの視線がみゆきに集
まる。
「……私は、ほんの少し、つかささんのお手伝いをさせて頂いただけです」
 弱々しい声で、みゆきはそう言った。
「違うよ! 私は、「きっとお姉ちゃんは、素敵なところでこなちゃんと二人で
楽しく遊んだりできたら、元気になれると思う」って言っただけだよ。
 あのね、ゆきちゃんが、ゆきちゃんのおばさんにお願いして、私をこなちゃ
んの入試の会場に連れて行ってくれたり、この家や列車の席を予約したりして
くれたんだよ。
それにね、お姉ちゃんの事が心配でしかたなかった私のために、ここの隣の
家も借りてくれて……。本当に、ゆきちゃんは頑張ったんだよ!」
 つかさは必死になってみゆきを弁護する。
 でも、どうしてみゆきがそんな事をしてくれたんだろうか? 私とこなたの
関係をあんなに否定していたのに。
「昨日の入試の時にね、つかさとみゆきさんが応援に来てくれたんだ。そして
ね、入試が終わった後に、私はかがみが大変な事になっているって話を二人か
ら聞いたんだ」
 こなたがつかさの話の補足をした。
 ……そう言えば、つかさは一昨日から家に居なかった。たしか、友達の家に
泊まりに行っているとお母さんが言っていたけど……。
「……友達の家に行っているって、お母さんから聞いていたんだけど」
 今にして考えてみると、おかしな話だ。つかさが泊まりで遊びに行く相手と
いったら、こなたかみゆきぐらいしかいないはずなのに。私はつかさがみゆき
の家に行っているとは考えていなかった。……いや、もしかすると、あえて考
えなかったのかもしれない。


41:「守る」という事・後編
08/06/13 21:28:40 FgaQoqbX
「お母さんとお父さんには、ゆきちゃんと一緒にこなちゃんの応援に行くって
事はちゃんと言っておいたんだけど、……お姉ちゃんには内緒にして置いてっ
て頼んでたんだ。ごめんね、お姉ちゃん……」
 ……なるほど。最近の私の有様じゃ、こなたの応援に行くのは難しいとつか
さもお父さんたちも考えたのだろう。加えて、つかさがみゆきと一緒にこなた
の応援に出発した日には、私はお昼まで寝ていたわけだし。
「別に、怒ったりしないわよ。むしろ、感謝したいぐらいよ。こなたや私のた
めに頑張ってくれたんだもんね。 ありがとう、つかさ、……みゆき」
 私の言葉に、みゆきの体がビクンと震えたのが分かった。そして、
「……かがみさん、本当にすみませんでした……。」
 みゆきは大粒の涙をこぼし、そう言って頭をさげた。
「ちょっ、ちょっと、みゆき……」
 私はどうしたものかと取り乱し、オロオロするしかなかった。
「お姉ちゃん、お願い。ゆきちゃんの事を許してあげて! ゆきちゃん、ずっ
とお姉ちゃんに酷い事を言っちゃったって後悔していたんだよ」
「えっ……」
 つかさの言葉が胸に刺さった。
「まっ、待ってよ。許すとか、そういう事じゃないじゃない。みゆきが私に言
った事は酷い事なんかじゃないわよ。その……当たり前の事よ」
 そう、あの時のみゆきの反応は当たり前の事だと思う。
「…違うんです。あの時の私は…ただ、大切な友人との思い出が…壊れてしま
うのを恐れて……。かがみさんの気持ちも考えず、酷い事を言ってしまったん
です……」
「……みっ、みゆき……」
 ……自分の事ばかりで、理解していなかった。私がこんなにみゆきを苦しめ
ていた事を。
「……みゆき…謝るのは私の方よ。ごめんなさい。……それと、ありがとう。こんな素敵な旅行をプレゼントしてくれて……」
 心からの謝罪と感謝の気持ちを込めて、私はみゆきにそう言った。
 けれど私の言葉に、みゆきは涙を拭い、「いいえ」と小さく首を横に振った。
「……お礼なんて言わないでください。本当に私は、少しだけつかささんのお
手伝いをさせてもらっただけです。……私はかがみさんの心を癒す方法を見つ
けられなくて、…なんとお詫びすれば良いのかも分からなくて……。
私は結局、つかささんにお知恵を貸して頂いて、そして……泉さんの力をお
借りすることしか出来なかったんです……。


42:「守る」という事・後編
08/06/13 21:29:32 FgaQoqbX
 それに……正直に言います。あれから何日も考えましたが、私は、やはり同
性愛というものを理解は出来ません」
 みゆきはそう告げた。やはり私とこなたの関係を許容できないのだろう。
 そう私が思った瞬間だった。
「……ですが……」
 みゆきがそう言葉を続けたのは。
 驚いてみゆきを見ると、みゆきもそれに気づいたのか、困ったような笑顔を浮かべて続けた。
「……昨日の事です。泉さんの試験が終わり、かがみさんが大変な事になって
しまっていると泉さんに伝えたのですが。その時、泉さんは……」
「わっ! ストップ、みゆきさん! その話はしないって約束したじゃん!」
 こなたが突然慌てだした。何か私に聞かれたくないことがあるんだろうか?
「ごめんなさい、泉さん」
 みゆきはいつもの穏やかな笑顔でそう言って、話を続けた。
「泉さんは普段からは考えられないほど慌てられて、『かがみに何があったの?
早く教えてよ』とすごい剣幕でおっしゃって……。そして、私が、私のせいで
かがみさんが追い詰められている事を話すと、泉さんは私の襟首を掴んで……」
「こなた、まさかみゆきを!」
 みゆきの言葉を遮り、私はこなたに問いただした。
「何もしてないよ! あの時は、その、頭に血がのぼっちゃっただけで、すぐ
に手を離したよ!
 こなたは必死に弁明する。
「あの時のこなちゃんはすっごく怖かった……。「何でそんな事を言ったの
さ!」って大声を出して……私、ゆきちゃんが叩かれちゃうって思って泣いち
ゃったもん」
「ううっ、つかさ……」
 つかさのダメ押しに、こなたは言葉を失ってしまった。
「……叩かれても仕方のない事を私はしたと思っていました。ですから、そう
なる事を覚悟していました。けれど、私の予想をはるかに上回る程、泉さんは
怒りました……。つかささんの言うとおり、本当に怖かったですね」
「うううっ、みゆきさん……。あの後散々謝ったのに……」
 こなたの非難に、みゆきは「すみません」と小さく微笑む。
「ですが、その時の泉さんを見て、私はどれだけ泉さんがかがみさんを大切に
思っているのか分かったんです」
 みゆきはじっと私の目を見て、
「……先ほども申し上げましたが、私は、同性愛というものを理解出来ません。


43:「守る」という事・後編
08/06/13 21:30:57 FgaQoqbX
 ですが、お二人がどれほどお互いの事を大切に思っているかは分かったつも
りです。……そして、私はお二人の友人として、かがみさんも泉さんも、幸せ
になってもらいたいと思っています。……この気持ちは嘘ではありません。
 ですから、かがみさんと泉さんの幸せが、お二人で今後も共にあることだと
いうのでしたら、私は、お二人を祝福したいと、何か力になりたいと思いまし
た。……勝手なのは重々承知の上です。ですが、これが偽らざる私の真意です」
 そう続けた。
「……みゆき……ありがとう……」
 どれだけ悩んだ末に、みゆきはこんな答えを出してくれたんだろう? 私を
嫌ってくれれば、完全に拒絶すれば、悩まなくてもすんだかも知れないのに。
「お姉ちゃん、お願い。ゆきちゃんを許してあげて」
 つかさはどれだけ私のために頑張ってくれたんだろう? こんな私を助けよ
うと必死になって考えて、行動してくれた事が容易に想像できる。
「かがみ、難しく考えないで。思った事を言ってよ。私はかがみの事分かって
いるからさ」
 そして、こなた。私を元気にさせようとして頑張ってくれたこなた。私の事
で本気で怒ってみゆきに掴みかかったこなた。こんな言葉を掛けてくれて、私
を信じてくれるこなた。
 涙がまたこみ上げてくる……。
「……だから…許すも何も……無いわよ。どうして……。どうして、そんなに
優しいのよ……。みゆきも、つかさも…こなたも……」
 寂しくて勝手に不安になって、信じ切れなくて、不快な思いをさせて、バカ
な事を言って困らせて……。そんな、そんな私に、どうしてみんなは優しくし
てくれるのだろう?
 涙を浮かべる私に、こなたはにっこり微笑んで言った。
「簡単だよ。みんなね………」
 こなたの言葉は反則だった。私は堪えきれずにまた泣き出してしまった。
「かがみさん、私も協力させてください……」
「お姉ちゃん、私もついているよ……」
「かがみ。「二人」だけじゃなかったね。「みんな」で頑張ろうよ……」
 みんなが泣いている私を抱きしめてくれた。

 ……私は強くなりたい。守れるようになりたい。守られてばかりじゃ駄目だ
から。
大丈夫。今度は間違えない。みんなと一緒に強くなるんだ。
……私「も」みんなを守れるように。


44:「守る」という事・後編
08/06/13 21:31:54 FgaQoqbX
★ ☆ ★ ☆ ★

 あるところに、クマとキツネとウサギがいました。彼らはある時行き倒れて
いた旅人を見つけて、その旅人を助けることを決めました。
 クマはその力を活かして魚を取ってきました。キツネはその知恵を活かして
果物を取ってきました。けれど、無力なウサギは何も取ってくることが出来ず、
何も旅人に与えることができませんでした。
 ウサギが困っていても、クマは助けようとはしませんでした。けれど、心優
しいキツネは、クマに見つからないように、自分が先ほど取ってきた果物より
立派な果物をウサギに渡しました。
 ウサギはキツネにとても感謝しました。ウサギは早速その果物を旅人のとこ
ろに持っていこうとしましたが、キツネにもう少し待つように言われました。
 ウサギが待っていると、不意に茂みからイヌとヒツジが現れました。
 イヌは口に銜えていたものをウサギに渡しました。
 それは、旅人が持っていた水筒でした。イヌはクマに見つからないように、
空だった旅人の水筒を銜えて、水を汲んできたのでした。
 ヒツジはウサギに、これで旅人を暖めてあげてくださいと、ふかふかの毛を
分けてくれました。
 ウサギは心優しい三匹に大変感謝し、それらを旅人のところに持って行きま
した。
 ウサギが沢山のものを旅人のために持ってきた事に、クマは驚き、ウサギの
事を認めざるを得ませんでした。
 やがて、旅人は元気を取り戻し、自分を救ってくれたウサギに大変感謝をし
てまた旅立って行きました。
 こうしてウサギは旅人を救うことが出来ました。けれど、ウサギはどうして
キツネとイヌとヒツジが、非力で恩を返すことも出来ない自分を助けてくれた
のか分かりませんでした。
 ウサギは、ある時キツネに、どうして自分の事をみんなが助けてくれたのか
を尋ねました。
 キツネは優しく微笑んで、
「簡単だよ。みんなね、ウサギさんのことが大好きだからだよ」
 そう教えてくれました。
 ウサギは心から感謝をし、今度は自分がみんなを助けられるようになろうと
頑張りました。
 それからウサギは、大好きなキツネたちと一緒に、お互いを助け合いながら
いつまでもいつまでも幸せに暮らしたと言う事です……。


45:20-760
08/06/13 21:33:57 FgaQoqbX
以上です。
 お目汚し、失礼しました。

46:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/13 22:03:08 tulXC64T
>>45
GJ!
よく構成が練られてますね。
私もこの有名な仏教の説話は好きですが、
子供の頃はうさぎがかわいそうでしかたありませんでした。
この話をうまく利用して、それぞれの登場人物に当てはめたのは見事ですね。
最後には悲しい終わり方ではなく、大団円で安心しました。
また続きの話も楽しみにしてますね。

47:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/13 23:35:12 HMaBLdcG
鯖復活したのに書き込みが無いと思っていたらずっと前スレ読んでましたw
さて、明後日はサンクリ行ってきます。

48:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/13 23:40:10 Pvbb0YtS
心に重大な問題があるようで、
感動の友情百合を読んでも
四人で同棲か!?という感想しか
思い浮かばなかったんだぜ

49:グレゴリー
08/06/13 23:54:30 SUlgNjQL
ごめ、もうグレゴリーのコテは捨てます。
これがグレゴリーブランドの最後の作品の投下です。
前スレ>>747の続き。

「世界の終わり」

グレゴリーという、なんの変哲もない低所得労働者がいた。
彼はある日、人々の目の前で美しい蝶へと羽化し、そして宇宙のかなたに飛び去っていった。
その日を境に世界は一変した。

地球の科学はフル回転してことの追及に全力を尽くしたのは言うまでもないが、
今まで人類の歴史を支配してきた様々な宗教、そしてその指導者たちは
我先に、自分たちの聖書や聖典、言い伝えにくまなく目を通し、そしてその記述とグレゴリーの事件を
一致させようとした。

いわく、グレゴリーは飛び立つ前、キリスト教に改宗していた。いや、ユダヤ教だ。
○×新聞の愛読者だった。コーランの記述にこのことを予言しているものがある。
いや、ブードゥー教がどうたら。

しかし、若者たちは違った。自分たちの世界に固執し、そして動けなくなってしまった年寄りたちと
違って、彼らはどのような事態も受け止められる若さという力があった。

自分たちには驚くほどの可能性がある。グレゴリーはそれを事実として示してくれた。

若者たちは、自分たちを締め付けていた社会の固定概念、宗教の縛りを逃れ、そしていつか訪れるであろう
旅立ちに胸を躍らせていた。

こなたはかがみの膝に頭を乗せながら、心地よい風を感じていた。
ここは校舎の屋上。
あれから、二人の関係は立ちはだかっていた壁が取り除かれたみたいだった。

「ねえ、かがみってインターネットあまりやらないでしょ?」

膝元からこなたの声が聞こえてきた。こなたの口元が動くたびに膝元に心地よい振動が伝わってくる。
つい、こなたの頭をなでなでしながら言った。

「そうね。多分、大騒ぎになってるとは思うけど。ちょっと、私、そういう目まぐるしさってのは苦手で」

こうやってゆったりと幸せな時間がすごせればいい

50:グレゴリー
08/06/13 23:55:51 SUlgNjQL
「でもね、若者たちの間で、この世界をいつか来る人類の旅立ちのために備えたいって思想が広まっててね、
すごいのよ。全世界レベルで。 国家を無くそうって運動なんだから」

こなたはひょいっと上半身を立ち上がらせると、かがみと顔を付き合わせる形になった。

「私たち、残された時間をそのために使うべきだよ」

こなたの目ははるか未来への旅立ちを見つめている。
なんでだろ?この不安は。ずっと私を見つめていて欲しいのに。

「私は、ずっとこのままであったらいいと思う...」

こなたは今まで自分を導いてくれた。自分の周りに自ら築いていた壁をどんどん取り除いてくれた。
情熱というものを教えてくれていた。

だけど、こなたのその情熱は、はるか未来へ向かっていたのだった。

ほどなくして、こなたは羽化した。 美しい蝶となって宇宙のかなたへ飛んでいったのだった。

それから数十年後。

かがみは執務室で報告を聞いていた。

それは最後の国家が解体したという報告。

多くの血が流れ、犠牲も多かった。羽化できるものとできないもの。やけくそなテロや自分が築き上げたものを
手放したくない人間たちの抵抗。

こなたが去り、そしてみゆきやつかさも去っていった。

取り残されたかがみはこなたの夢をかなえるべく、他人が旅立つためにわが身を捧げることとなった。

報告を聞き終えると、かがみは席を立ち、自分のオフィスのドアの前に歩いていって少しドアを開けた。

ドアの隙間から様々な歓声が沸き起こっているのが聞こえてきた。

かがみはそっとドアを閉めると、防音にすぐれたこのオフィスはすぐに静まり返った。

机の引き出しを開ける。奥をごそごそとやって、冷たい金属の塊を手にする。

黒光りしたそれを見つめると、かがみはマガジンを取り出し、銃弾が装填されてるのを確認し、

そしてトリガーを引いた。

かがみのオフィスから鳴り響いた銃声は、喜びに満ち溢れる外へは聞こえてこなかった。



51:グレゴリー
08/06/13 23:59:15 SUlgNjQL


あとがき

自分を神格化してしまうという病気が出てしまいました。
グレゴリーを名乗るのには限界を感じ、私は名無しでまともな作品が作れるように
精進いたします。その折は温かく見守ってください。では!

52:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/14 00:03:21 2m2f6wqC
>>45
お疲れ様でしたー

こちらへは初投下ということでしたけれど、だいぶ書きなれていらっしゃるようですね。
読みやすいのに読み応えのあるお話をありがとうございます。

53:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/14 00:04:21 t+juCBH+
>>51
荒らし、乙。
誰もお前のことなんて待ってないから、もう来ないでくれ。

54:グレゴリー
08/06/14 00:30:51 1920HsDT
>>53
ありがとう。肩の荷が降りたような気分だ。
物書きがこれほど重荷だとは知らなかった。
私は絵師に戻ることにする。文章なんて糞だぜ。

55:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/14 00:50:37 PLnRkM7T
>>45
GJ!
時々思うのですが、かがみは優等生ですが実生活で役立つスキルはあまり持ってませんよね。
昨今の女子高生としては普通でしょうけど、人と違う道を行くのなら確かに強くならないといけないのかも。
だけど、急に気負っても何も出来ませんしね。みんなで今後も頑張っていって欲しいです。

ところで、試験の結果は分からず終いですが……まあ、受かったのでしょうねw
万が一落ちていても、何か乗り切る手をみんなで考えてくれるのでしょう。

56:naniw
08/06/14 00:57:09 XU6vOgGU
初歩的な質問なのですが・・・
SSを投稿したいのですが、文字数とかに制限があると聞いたのですが
それはどれくらいなのでしょう?
教えていただけたら幸いです。

57:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/14 01:09:58 t+juCBH+
1レスにつき、60行まで書ける。
文字数は…分からないけど、1行あたりの長さが長過ぎなければ大丈夫かと。
例えば、今自分が開いてる画面の長さまで、とかすれば問題なくできるはず。


あとは、>>1のルールを守ってくれればおkよ。楽しみにしてる。

58:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/14 01:15:47 VZqgBX/u
>>56
板の設定はここを見れば分かる
URLリンク(anime3.2ch.net)

1レスあたりの改行は60行で、最大4096バイト(全角文字で2048文字)投稿できる

59:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/14 01:24:54 FFakMimr
SS待ってるぞ

60:naniw
08/06/14 01:34:38 XU6vOgGU
60行ですね。分かりました。
ありがとうございます。
SSは現在製作中ですががんばって日曜日までに完成するように努力します。

61:20-760
08/06/14 01:42:53 /9WLa6l3
連日、皆さんから優しさ溢れる感想をいただき、SSを投下して
本当に良かったと思っています。
 丁寧に、SSを投下する際の文章構成を指導してくださる方もいて、
嬉しい限りでした。
 遅筆なため、次回がいつになるか分かりませんが、また投下させて
いただければと思っています。
 それでは、どうもありがとうございました。
 

  

62:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/14 04:44:33 J3fXahg9
>>45
GJ!
うん、なんやかんやあったところで、
みんな友達のことが好きだから、だよね。
それが大事だと思う。
愛情とかそういうのは、たぶん友情より後に来るものだと思うから。


63:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/14 08:07:47 muK/jrK1
>>45
GJ !
いい話だった。大丈夫 ! 二人なら乗り越えていける !

64:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/14 13:50:59 WhYsdoau
長編、鯖落ちと続いたので忘却の彼方さんだが、前スレの雑談はかがみんの進路と、こなたはもてるのか?だったな多分

モテモテこなた

かがみ「…こなたはバイト先で人気者なんだっけ?」
こなた「んー、常連客の人からは結構名前も覚えてもらってるかな」
かがみ「や、やっぱ、親しい人とか多いの…?」
こなた「うんうん。CD出した時も色んな人と話せて楽しかったよー。大きな声じゃ言えませんが、
    ちっちゃい子需要の話は伝聞じゃなくて実体験だからね(ニヤリ…)」
かがみ「あー…あの客層だと確かに…」
こなた「む、お客様は神様ですよ!かがみ!これだから神様で商売してる人は!」
かがみ「微妙な発言は控えなさいよ…」

こなた「それにー、常連客の人だけじゃなくて同僚サン達とだって仲良いんだから。可愛いし。目の保養だよ」
かがみ「オヤジっぽいことを…」
こなた「私もお店では、古参の先輩と言うものになってきたからね。後輩達に慕われてるんですよ。
    『先輩、お姉様とお呼びしてよろしいですか!』とかね(嘘)」
かがみ「えーと、もしかして…結構、もてたりしてた?」
こなた「ん。確かに、好きだー!って言われたこともあるよー」
かがみ「…」
こなた「私の人望も捨てたもんじゃないわけですよ」
かがみ「…」
こなた「でもね、みんな可愛いかったけど、私の方から誰かを好きだって言ったことはまだないんだよねー。
    ところで、かがみん」
かがみ「…え?」
こなた「好きだよ」

ひより「…な、馬鹿な!…消えたっス…」
ゆたか「ひよりちゃん、カメラ持ってどうしたの」
ひより「屋上で先輩達が意味ありげに佇んでいたので、(こんなこともあろうかと持参した望遠レンズ付きの)
    ビデオカメラで張ってたんだけど…、急に視界から二人とも消失しちゃった…」
ゆたか「ええー!か、神隠しかな…探しにいかなきゃ!」
みなみ「ひより、ビデオ巻き戻して…今の7コマ前…」
ひより「こ、これは…!ぶれているけど、柊先輩が泉先輩に特攻している!」    
みなみ「距離5mを推定0.14秒で詰めて…そのまま泉先輩の袖を掴んで引きずり倒している。
    人間の反応速度は10/60秒程度が限界。認識はできても回避行動は取れない」
ゆたか「なーんだー、お姉ちゃんが押し倒されただけかー」
ひより「クーッ、ここからでは角度的に屋上の床面が撮影できない…音だけでも拾えればなー」
みなみ「問題無い。丁度、該当箇所の下が3-B教室。高良先輩に連絡してコンクリートマイクを仕掛けてもらう」

頼りになるみなみちゃんだった

65:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/14 14:23:41 /lGE6pfz
       /                     \
      /  ,r'"j                i^'!、  ヽ
    /   </´                `ヾ>  .:;i,
    ,l        _,._,.        _,._,.       .:.:l,
    |       < (ヅ,>      < (ヅ,>     ...:.::|      乙
    !        ` ̄´      .   ` ̄´       ..: ::::::!   
   |           ノ . : . :;i,          ... ::::::.:::|    
     !          (.::.;人..;:::)      ...:.:::::.:::::::::!
    ヽ、         `´  `´    ........::..::..::.::::::::/
      \......,,,,,,,_           .....:::::::::::::::::::::::::/


66:naniw
08/06/14 14:40:26 XU6vOgGU
日曜日に投下予定でしたがSSが完成した+日曜日には時間が無いということで
投下したいと思います。

初SS投稿ですので、
文章力に欠如している点が多々あるかもしれませんが
生暖かい目で見ていただければ光栄です。
もしかしたらほかの人とのネタが被ってしまっているかもしれません。
何か指摘などありましたら容赦なくいってください。

67:naniw
08/06/14 14:41:19 XU6vOgGU

『問い』~こなた~



この気持ちは何なんだろう・・・?

つかさが好き。
みゆきさんが好き。
これはきっと友達としてだよね・・・

かがみが好き。
これも友達として・・・?
ううん。何か違う。

最近なんだかかがみのことが気になって仕方が無い。

私はいま、自分の部屋の真ん中で『そのこと』について悩んでいる。

・・・なんでこんな気持ちになっているんだろう。
ゲームをしていても、
何をしていても、
頭の片隅にはいつもかがみがいる。

この気持ちは何なんだろう・・・?
自分で考えては答えの出ない自問自答を繰り返す。

じゃあ誰かに聞く?
つかさ?
・・・なんかそういうのに疎そう。

みゆきさん?
みゆきさんも疎そう・・・

ゆーちゃん?
なんか聞きにくい・・・
姉としての威厳(?)がそうさせる。

・・・あっ

私は時計を見つめた。
針は既に午前2時を回っていた。
いつもならネトゲに勤しんでいる時間だが、
今日はそんな気分じゃない。
「・・・今日はもう寝よう。」
そう思い私はベットに入って目を瞑る・・・
明日は日曜日で学校は休み。・・・って今2時だからもう日曜日か。
ゆっくり寝て、起きてから考えよう。


68:naniw
08/06/14 14:42:20 XU6vOgGU

日曜日
いつも通り起きて、
いつも通り朝食を食べ、
いつも通り過ごしていたが、
ゲームなどはせず、
自分の部屋でぼーっとしていた。



「・・・なた」
「・・・こなた」
「こなたってば!」
「ふぇ?」
「『ふぇ?』じゃないわよ!」
声のするほうを見るとかがみとつかさがいる。
「あれ?かがみ?つかさ?なんでいるの?」
「あんたが呼んだんでしょ?」
「・・・あぁ」
「まさか、忘れてたわけじゃないわよね?」
そういえば昨日かがみやつかさと遊ぶ約束をしていたのをすっかり忘れていた。
「ごめん。すっかり忘れてた。」
「あのなぁ・・・」
「まぁ思い出したんだからいいじゃん♪」
「普通覚えておくだろう・・・というか一晩で忘れるな。」
「相変わらずかがみんはきびしいなぁ~」
昨日の悩みを隠すように振舞った。
「とにかく何して遊ぶつもりなの?」
「あぁちょっと皆でゲームをとね。」
「まぁあんたのことだからそんなことだろうと思ったけど。」
つかさが空気な気がするがとにかくゲームをやることにした。

ゲーム機を準備している間、沈黙が続く。
「それにしてもこなちゃんとお姉ちゃん仲いいよねぇ~」
空気がその沈黙を破った。
「まあ、そうかもね。」
・・・あれあれ?かがみさん?
いつもなら「別にそんなんじゃなんわよ」とかっていって
隣で私がニヤニヤしているんだけれど・・・
今日はなんだかかがみも少し変だ・・・


69:naniw
08/06/14 14:42:59 XU6vOgGU

それから少しして・・・
「ねぇこなちゃん」
「ん~?」
「好きな人とかいるの?」
いきなり前振り無くダイレクトに来ますか。そうですか。
いや、人生ゲームやってましたがね。
「あ~、私も気になるわね。」
ちょっとちょっとかがみまで・・・^^;

でも今、私がかがみに対して思う気持ちの正体がわかるかもしれない。
そう思い、

そのことを気になる人の前で話し始めた。

「ん~好きなのかどうかは分からないけれど・・・
 なんだか気になる人はいるんだよ。
 その人と一緒にいるとなんか安心するんだけど、
 でも何でか分からないけど少し・・・なんというか
 なんか胸が締め付けられるというか・・・
 ドキドキするんだよね・・・」

いろいろ省略はしたが、
今の悩みはすべて語った。

「ふぅ~ん」
そうしてつかさは私の話を聞いてくれた。
無論かがみも。

そしてつかさは少し考えた後、
「こなちゃん」
「ん?」
「それは『恋』だよ。」
「・・・」
何故か黙ってしまった。
でも、そういうことなんだよね・・・
「それで?」
「ん?」
「誰なの?」
「い・・・言えないよ~」

その後のことはあまり覚えていない。
でも何故か空気だったつかさはおしゃべりになって、
何故かかがみは黙っていた・・・

その後いろいろあったがとにかくつかさとかがみは、家に帰っていった。

その後私は晩御飯を食べて、そのあとベットの上で
ずっとつかさの一言についてを考えていた。

恋・・・か


70:naniw
08/06/14 14:43:55 XU6vOgGU

私が・・・
かがみに・・・
『恋』をしている。

今まで私は普通のオタク高校生として過ごしてきた。
百合とかはゲームとかも見たことがある。
でもまさか自分が同性を好きになるなんて思ってもいなかった。
もちろん今でも信じられない。

でもそれは、隠せない事実。
私はかがみに恋をしている。
それが今日分かったこと。

それが私が自分に聞いていた問いの答え。
私の頭の中での答え。

でも、
私の心にその答えはまだ出ていない。

告白しよう。

私は決心した。
そして私は眠りについた・・・

かがみに告白した時のかがみの答え。
それが私の心に対する問いの答えだから・・・

続く


71:naniw
08/06/14 14:44:26 XU6vOgGU
あとがき
なんかこなた感がありませんね・・・すいません

初SSの癖に続くとは我ながら変な気分ですが、
タイトルが『問い』なので、次は『答え』ですね。
SS投下したらすぐにでも取り掛かろうと思います。

感想などありましたらよろしくお願いします。

駄文になりましたが続編に取り掛かります。

見てくれた人たちありがとうございます。

72:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/14 17:56:00 Y/nutjnt
>>45
GJ!有名な逸話を元に、こなかがのみではなく、4人の友情も上手く書ききりましたね。


>>71
GJ!
内容としてはシンプルなのですが、それゆえに深い。
ssの語源、ショートショートとしては非常に読みやすいものになっていると思います。

73:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/14 18:32:32 VZqgBX/u
>>64
>お姉ちゃんが押し倒されただけかー
これで納得するゆーちゃんの反応が何気にすごいですね

>>71
こなたがどのように告白し、かがみがどんな答えを
用意しているのか、楽しみにしています。

74:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/14 19:06:02 muK/jrK1
>>64
こなたとひより以外、全員変な人にw
笑ったww

>>71
誰でも最初は初めてなんだから、肩の力抜いてがんばって
続きも待ってます

75:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/14 19:44:48 UfsVd5yJ
 
 ―もし、私が今置かれているこの状況を誰かに見つかったとしたら、
一体どう言い訳したらいいんだろう。こそこそと階段の陰に隠れてかがみと誰かが
話しているのを盗み聞きしている……どう考えても、悪いことしてるよね。
 

       『彼方へと続く未来』 第三章 (後編)


(やっぱり行こう。こんなこと、してていいハズないじゃん)

 心の中でようやく決心がついた。曲げていた膝を上げて移動の態勢に入る。
 だけどそれは、踊り場から聞こえてきた声によって、再び遮られた。

「先週は、本当にご迷惑をおかけしました」
「ええってええって。泉の出した答えに柊がちゃんと辿り着けた。
 それだけでウチはもう十分や」
「でも、先生……」
「これ以上細かいことは言いっこ無しやで、柊。女にだって二言はないんやからな」

 死角の位置にいた人―黒井先生の声が、階下に隠れている私の耳にも
はっきりと届いていた。その声はとても優しくて、そして厳しかった。
 ……そっか、かがみは知ってたんだ。私が、先生に話したことを。



 二人の話は、それからもしばらくの間続いた。
 その間、私はじっとしたまま意識を狼狽させていた。 
 無機質なコンクリート。そこから伝わってくる冷たさが、
逆に私が冷静になる為の時間を奪っていったからだ。

 背中越しに感じる寒気と、ジワジワと冷えていく体。
 もう、私にかがみの姿を見る余裕はなかった。

「そんじゃ、ウチは次の授業があるから先行くわ」

 ふと、先生の声が聞こえた。柊もとっとと自分の教室にいくんやで、と付け加えて
階段を降りてきた後、先生は私に気付くことなく、廊下の向こう側へと消えていった。

 ……あれ? それじゃあかがみはどうしてるのかな。
 なんで先生と一緒に降りてこなかったんだろう。
 不確かな疑問の答え。それはすぐに頭の裏側からやってきた。

「やっぱり、アンタだったのね」

 振り返ると、そこには視界一面に広がった紫。
 それが、全ての答えだった。



 予鈴が鳴り響く中を、かがみと一緒に歩く。
 その間、私たちの会話は断続的に続いていた。

「もしかしなくても……聞いてたわよね? 今の話」

 かがみの言葉に、コクリと頷く。




76:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/14 19:47:06 UfsVd5yJ
 
「やっぱりね。青い色のアホ毛がちらちら見えてたから、
 そうじゃないかなとは思ってたけど」

 どうやら、気付かれていないと確信していたのは、私だけだったみたいだね。
 体は隠したけど、そこまで気が回らなかったよ……。

「内容は聞いていた通りよ。黒井先生にも迷惑かけちゃったからね」
「……あのさ、かがみ。それじゃあ私もせんせ―」
「はい、ストーップ! これ以上は何も言わない!」

 うっ、まだ全部言い終わっていないのに、何故かかがみに全力で
止められてしまった。どういうことなのか、よくわからないままでいると、

「今回の騒ぎで悪かったのは全部私だったんだから、
 こなたが気にすることなんてないのよ。気持ちは嬉しいけどね」

 そう言うと、かがみは少し苦笑いしながら顔を伏せてしまった。
 いつもなら、ここで不意に手でもつないで驚かせてあげようか位
考えたのかもしれない。だけど、それは私の中に芽生えた、『恥ずかしい』
という感情によって押さえつけられた。
 えっ、なんで? どうして、こんな気持ちになるんだろう。

 ―本当は、もう気づいてるんじゃないの?
 頭の中にある冷静な部分が告げてきた真実。

 その真実を冷静じゃない私が受け入れる前に、私達はB組の前まで戻ってきていた。

「じゃあ、また放課後にそっちに行くわね」
「うん……あっ、そうだ。ちょっと待っててくれないかな?」
「んっ? 別にいいけど」

 眉をしかめるかがみをよそに、私は教室に入ると自分の鞄の中に手を突っ込んだ。
 そして数十秒後。漫画やらチョココロネとかが散乱する中から、それは出てきた。
 数字と方程式がギッシリと書き込まれた四角い本。それを持ってかがみの所へ。

「はい、かがみ。これ返すよ」
「これって、数学の教科書?」

 ケンカしたままだったら、つかさ経由で返すハズだった教科書。
 直接返すことにはならないだろうと決めつけていたそれを、
そっとかがみの前に差し出した。

「ずっと借りっぱなしだったでしょ? 忘れててごめんね」
「別に謝ることなんてないわよ。落書きでもされてたらさすがに怒るけどね」
「さすがにそこまではしないよぉ。しそうにはなったけど」
「って、する気はあったのかよ。全く、アンタって奴は……」

 半分あきれ顔になりながら、かがみは私から教科書を受け取ると、
いつもの様に笑っていた。だけど、そこには大きな違和感があった。
 原因は、視線の先にあったかがみの手。

 そのかがみの左手が……震えていたから。
 だけどそれには、ちゃんとした理由があった。私が、その原因を
知ったのは、今からもう少し後でのことだった。

***



77:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/14 19:49:49 UfsVd5yJ
 
 日陰に積もった雪が、夜の寒さで凍り付いてつららの様に窓の外に
ぶら下がっている、氷点下の世界。そんな外の寒さを吹き飛ばすくらい暖まった
リビングで、私たちはいつもと変わらない夜の食卓を囲んでいた。

「そっかぁ。卒業式まで、あと二週間なんだよね」
「そうだよ~。おまけにその翌日の夜にはもう実家にいる訳だから、
 なんだかあっという間だよね」

 特製チキンカレーをスプーンですくいながら、ゆーちゃんと談笑する。
 学校での話し。卒業式の話し。そして、私たちの実家の話し。

 ―卒業式の翌日に、向こうへ出発する。これが、私が決めた日取りだった。

 本当なら、もう少しこっちでゆっくりしていくことも出来るんだけど、
そんなことをしたら、きっとかがみたちに甘えてしまう。
 だからこそ、私はこの日を選んだ。

「こなたがいなくなると、さみしくなるな。まあ、後は俺とゆーちゃんで
 なんとかするから、ちゃんと向こうでも頑張るんだぞ」

 私、お父さん、ゆーちゃんで囲むこのテーブルの風景も、
今ではすっかりお馴染みとなっていた。

 この光景が見れなくなるのは残念だけど、しょうがないよね。
 ……っていうか、ゆーちゃんはお父さんと二人きりで生活すること、
なんとも思ってないのかな? はっきり言って、色々な意味で危ない
と思うんだよね。試しに、その事をさりげなく話題に出してみると、

「ええっ? そんなことないよ。大丈夫だよぉ」
「ゆーちゃんの言う通りだぞ、こなた。危ない事なんてあるわけないじゃないか」



78:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/14 19:52:15 UfsVd5yJ

 う~ん。そう言っているお父さん本人が、一番危ないと思うんだけどなぁ。
 今までだって、セクハラまがいのこととか散々しまくって、ゆい姉さんや
ゆき叔母さんに怒られてたって言うのにさ。

 お父さん達の先行きにちょっとだけ不安を覚えながら、改めて二人を視界に写す。
 ……でも、やっぱり心配なんていらないよね。ゆーちゃんの体調のことが少し気に
なるけど、その点についてはみなみちゃん達だっているしね。

 そう考えながらスプーンを持ち直して食事に戻ろうとした時。
 私はゆーちゃんの頭に小さな変化が起きていたことに気が付いた。

「あれ、もしかしてゆーちゃんって、髪飾り変えた?」

 そう、お昼の時とかには気付かなかったけど、ゆーちゃんの髪飾りが
新しい物になっていたのだ。星をかたどった綺麗なアクセサリーが、
ゆーちゃんの髪の両脇に、隠れるようについていた。

「うん! お母さんに作ってもらったんだ~」
 みなみちゃんともお揃いなんだよーと言って、眩しいくらいの笑顔になる
ゆーちゃん。う~、羨ましいなぁ。こうやってさりげな~くフラグを立てていく
所あたりがいかにもゆーちゃんらしいよね。私も見習わなくっちゃ。

 カチャリという音を立てながら、再びカレーをすくう。
 このカレーをここで作るのも、もうすぐ最後なんだよね。
 すくったカレーを口に運ぶ。中辛のルーで作ったハズなのに、
その時だけは何故か、しょっぱい味が口の中に広がっていた。




79:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/14 19:54:22 UfsVd5yJ
 
 取り込んだ洗濯物をたたんでいる間も、夜はどんどん更けていく。
 洗い立ての上着やシャツの匂い。いつもなら気にもしないハズの
それが、不思議と私の心に言葉にならない何かを投げかけてくる。
 
(まただ。一体何なんだろう、この気持ちって)
 一枚目の上着をたたみながら、しばらくぼ~っとする。

『またぁ? 全くもう、しょうがないわねぇ』
 二枚目、ようやく持ったシャツの袖。
『ほらっ。元気だしなさいよ』
 頭に響く声を聞き流しながら、折りたたむ。
『あのね。私、こなたのことが……』
 たたんだばかりのシャツが、宙を舞った。

 ――! 何それ、どうしてそうなるのさっ!
 確かに、フラグとか好感度とか色々言ってきたけど、それはあくまで
ゲームでの話し、だしさ。ていうか、そんなことに……なる訳、ないじゃん……。

 明後日の方向に飛んでいったシャツを掴みながら、ポツリとそう呟く。
 だけど、気を落ち着けようとしてはき出した言葉とは裏腹に、私の体は
どんどん熱くなっていった。頭が、胸が、そして全身が燃えるように熱い。
 たまらず、私は残りの洗濯物を置いたままフラフラと立ち上がった。

「少し、頭冷やそっかな……」

 近くにほっぽり出されていた通学用のコートを着て、玄関に向かう。
 そこで靴を履き、ひっくり返っていたコートの襟を整える。
 目の前には、すきま風が通り抜ける音が響く玄関の扉。
 その扉を静かに開けて、私は外に飛び出した。



 昼間の時とは違って、湿った空気が漂う夜の世界。
 上には、今にも落ちてきそうな星空と、ぽっかりと浮かぶ三日月。
 だけど、本当なら欠けていて見えないハズの月の輪郭が、今日は
うっすらと見えていて、何だか不思議な感じがした。

 地球照。昔、みゆきさんから聞いたことがある。

『地球照とは、地表で反射した太陽の光が月に達して、その光がさらに月面で
 反射されて、再び地球に戻ってくることによって生じる現象ですね。
 西洋では、新しい月に抱かれた古い月とも呼ばれています』

 何でそんな話しになったのかは忘れちゃったけど、その時つかさが言った、
『へ~、それじゃあ地球とお月様って、本当に仲良しなんだね』っていう言葉
が、妙に印象に残ったのを今でも覚えている。

 そんなことを思い出しながら、私はもう一度月を見た。

 ―月には、ウサギが住んでいる。
 その話を最初に聞いたのは、いつの頃だったかな。
 凄く小さい時だった気がするし、結構最近だった様な気もする。



80:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/14 19:55:44 UfsVd5yJ
 
 ウサギ……かがみのことを、何度もそう呼んできた様な気がする。
 寂しがりやで、ツインテールも耳みたいだって、冗談っぽくそう言ってきた。
 だけどさ、変だよね。私の方だって、かがみのこと言えないくらい寂しがりや
なのかもしれないのにさ。一昨日だって『嘘をつくのがうまいから』なんて言って
誤魔化しちゃったけど……ごめん、私嘘ついてた。

 狐だってさ、やっぱり寂しいんだよ。誰かと一緒にいたいんだよ。
 いくら素早くても、何かに化けられても、一人じゃやっぱりつまんないもん。

 私は昔からそうだった。あまり友達も作らないで、家ではゲームかアニメ。
 学校以外でも友達が出来るようにとお父さんが勧めてくれた格闘技も、
結局長続きはしなかったし、これといって仲のいい友達も出来なくて。
 代わりに、ますますゲームやアニメにのめり込んでいった。

 でも、そんなひねくれ者だった私に、かがみはいつも声をかけてくれた。
 料理下手でちょっぴり凶暴だけど、いつも私のわがままに付き合ってくれた。
 初めて私の名前を呼んでくれた時も、平野さんのライブの時や、修学旅行の時も。
 かがみは応えてくれた。瞳が合わさるだけで、かがみの全てを感じられた。

 ―あっ、そうだったんだ。私、やっぱりかがみのことが……。

 吹き付ける風が激しさを増して、私の全身を駆け抜けていく。
 それでも全身を巡る血液は、冷めることなく私の肢体を温める。
 そして、一際強い風が駆け抜けたのと同時に、疑問の答えは出た。

 ―好き、なんだ……。

 混乱する思考の中で出した答えは、曖昧じゃなくて。
 かといって確信なんていう言葉でも括れなくて。
 ゆっくりとスローモーションの様に回る自分の前髪を見て、
ようやく意識が現実に戻るのと同時に、後ろから声が響いた。

「風邪ひくぞ? そんな所にいたら」

 たなびく作務衣の端が、鳥の翼みたいにパタパタと動いている。
 『ん、ちょっとした気分転換だヨ』と、作り笑いをしながらそう応えた。

「それなら、いいんだがな」

 ポツリと言葉を落としたのを最後に、作務衣を着こなした人物―お父さんは
黙り込んでしまった。その直後、流れてきた雲が上空を覆い、周りに闇が落ちた。
 その間、私たちは黙ったままだった。ただじっと、雲がいなくなるのを待った。
 一分、二分と時が過ぎて、やがて空全体を覆っていた雲は、足早に離れていった。



81:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/14 19:57:56 UfsVd5yJ
 
「今日も、月が綺麗だな」
 お父さんの声が響く。
「うん、黄色くて綺麗だよね」
 それに、私も続く。

 月明かりが、一段と強くなった。
 もしかして、あそこにいるハズのうさぎの仕業なのかな。
 だとしたら、ありがとう。私も、強くなるからさ。

「あのね。お父さん―」
 
 あの日、私はお父さんに全てを話したハズだった。
 だけど、今日になって私はもう一つの決意をお父さんに伝えることになった。
 私が、かがみのことをどう想っているのかを。

***

「そうか。こなたは、かがみちゃんのことを」

 腕を組み、眉をひそめながら考え込むお父さん。
 その様子を見て、私は少なからず不安を覚えた。
 
 やっぱり、同姓の女の子を好きになるのって、間違ってるのかな。
 お父さんたちにも、迷惑かけちゃうのかな。

 でもね、私もう決めたんだ。かがみと一緒にいたい。
 告白だってまだだし、例え付き合えたとしても、最初は遠距離恋愛からって
ことになっちゃうけど、距離なんて関係ない。でも……
 
「お父さんは、こんな私のこと……許してくれる訳、ないよね」

 親不孝な娘だって、叱られるかもしれない。
 このまま、何にも言ってくれないかもしれない。
 
「でもね。お父さん、私はっ!」
「―前にも、似たようなことを言ったかもしれないが」

 だけど、私の予想とお父さんの行動は違った。
 お父さんは、ゆっくりと組んでいた腕を解き、静かに目を開くと

「それがこなたのやりたいこと……いや、こなた自身が選んだ道であるのなら、
 俺はもう止めないってな」

 真剣な表情でそう言った後、だけどな。と付け加えて

「社会は、こなたが考えている程甘くはないぞ。周りの目だってそうだ。
 同姓の人を好きになるということ。それ自体を悪いことだと思っている人だって沢山いる。
 それでもこなたは、かがみちゃんのことを大事にしていけるのかな?」

 突きつけられる現実と、私の認識の甘さ。
 でも、もう迷っている時間はない。
 道は……ううん、未来はもう目の前まで迫ってきているんだから。

「それでも、私は……」
「私は?」
「かがみと、同じ道を歩きたい」




82:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/14 19:59:42 UfsVd5yJ
 
 肺の奥から、大好きな人の名前と一緒に湿った息を吐く。
 まるで、蒸気の様に白く彩られたそれは、私の目の前で、音もなく溶けていった。

「それが、どんなに険しい道だろうとね」
「……そうか。立派になったな、こなた」

 お父さんは、ほんの少しだけ黙った後、静かにそう言ってくれた。
 短い言葉の中に精一杯の感情を込めた私の告白。
 どうやら、ちゃんとお父さんに伝わってくれたみたいだった。

「子どもは、やっぱり親の見ていないところで成長していくものなんだろうな」
「そんなことないよ。私はただ、自分の気持ちに正直になっただけだし」
「じゅうぶん立派じゃないか。かなたも、きっと天国で喜んでいるぞ」

 お母さん……もし、お母さんが生きていたら、私になんて言ってくれたのかな。
 やっぱり、お父さんと同じ意見だったのかな。それとも……ふぇっ、へっくしっ!
 目まぐるしく考え事をしているところに、顔に貼りつくような勢いの風が再び吹いてきた。
 同時に、屋根の瓦の僅かな振動音や、ガサガサと擦れる枯れ葉の声が周りに響き渡る。

「さてと、寒くなってきたことだし、そろそろ家の中に入るか」
「う、うん、そだね」

 揺らめく月と、煌めく星空。
 二つの輝きに背を向けて、私たちは急いで家の中へと戻り、冷えきった全身を暖めた。

 ―その後、リビングでお父さんから聞いたところによると、この時かがみのことについて
話していた私の表情は、お父さんに告白された後のお母さんにそっくりだったらしい。
 『似てきたのは、抱き心地だけじゃなかったんだなぁ。お父さん、感激だぁ!』とか
言いながら号泣しているお父さんにちょっぴり引きつつ、私は仏壇の前で、手を合わせた。
 お母さんにも、ちゃんと報告しなくちゃいけないしね。私が、好きになった人のことを。
 


 私は、どうしてかがみにこんなにも惹かれているんだろう。
 今まで生きてきた中で、ここまで私の心の中に入り込んできた
存在は居なかった―ううん、違う。居なくなっちゃったんだ。

 幻想と、写真の中でしか会えない大切なヒトが抜けた後に出来た空白。
 私は、その空白の部分に、かがみという名前のピースをはめ込もうと
し続けていたのかもしれない。だけど、空白の部分にそれがはまる事は、
おそらくありえないと思う。『どうしてだい?』そう尋ねる声に、私はこう応えた。

「だって、かがみはかがみだもん。誰の代わりでもない、私の大切な人だから」

 近くにいても、遠くにいても。
 私とかがみの心の距離は変わらない。
 親友? それとも他の何か? 
 螺旋階段みたいにグルグルと回る疑問。
 それは、今でも私を惑わせる。

 ―だけど、みんなが教えてくれたから。
 このモヤモヤした気持ち、私だけの気持ちの行き先を。
 今はまだ準備不足だけど、いつか絶対に伝えてみせる。
 だから、もう少しだけ待っててね……かがみ。

**

83:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/14 20:04:02 I/KSieCh
 
「じゃあ、行ってくるね」

 靴の先をトントンと鳴らしながら、普段以上に襟先が整った制服に身を包む。
 今日だけはいつも鞄に忍ばせていたチョココロネは無くて、代わりに筒状に丸まった
画用紙が、散りばめられたクレヨンの粉と一緒にその中に収められていた。

「ああ、俺も後からゆーちゃんと一緒に行くからな」
「うん。ちゃんと遅れないで来てよね」

 玄関に響く私とお父さんの言葉。
 暖かくなってきた空気に、二つの声が溶けていく。

 ―あれから、あっという間に二週間が過ぎた。
 
 その間に、私は休職扱いだったバイト先に退職届けを出しにいった。
 秋葉腹のコスプレ喫茶。私に、働くことの楽しさを教えてくれた場所。
 
 『お疲れ様』お世話になった店長。
 『頑張ってね』店に来ていたお客さん。
 『いつかまた、ココに遊びに来てくださいネ』ずっと一緒だった、パティ。

 みんなが声をかけてくれたのが、嬉しかった。
 しばらく来ることはない秋葉腹の町並み。そこに私は別れを告げた。

 その後も、転居手続きや卒業式の準備とか、ホントに色んなことがあった。
 ぐんぐん加速していった日々。その中で私は、画用紙に向かい続けた。
 自分の中の本当の気持ちを、クレヨンに託して。

 毎日、試行錯誤を繰り返した。くじけて、何度も壁にぶつかった。

 だけど、私決めたんだ。
 この絵が出来て、ちゃんと卒業できたら―かがみに、告白しようって。
 受け入れられても、断られても、そこから全てが始まる。

 だからそれまでは、いつもの私でいよう。
 最後まで笑顔で、みんなと一緒にいようって決めたから。
 いつもは途中で投げ出してばっかりだったけど……約束、守れたみたい。

 ―だって、今日がその卒業の日なんだから。
 きっと、かがみにこの気持ちを伝えてみせる。
 そう自分の胸に言い聞かせて、私は学校へと向かった。

 告白まで、あと五時間―




84:「守る」という事・前編
08/06/14 20:08:09 UfsVd5yJ
 こんな話を知っていますか? と不意にゆきちゃんがお話を始めた。 
「あるところに、クマとキツネとウサギがいました。彼らはある時、行き倒れていた旅人を見つけて、その旅人を助けることを決めたんです。
 クマはその力を活かして魚を取ってきました。キツネはその知恵を活かして果物を取ってきました。けれど、無力なウサギは何も取ってくることが出来ず、何も旅人に与えることができなかったんです……」
「そっ、それで、ウサギはどうしたの?」
 何故ゆきちゃんがこんな話を始めたのかは分らない。けれど、私はウサギがどうしたのか気になった。
「つかささんは、どうしたと思います?」
 けれど、ゆきちゃんは私の質問を質問で返してきた。
「えっ、えっ、その、あの……」
 わからない。だから私は口ごもるしかなかった。
「……ウサギは、火に飛び込んで、自分を食料として旅人に与えたんです」
 ゆきちゃんは、普段とは比べ物にならない低い声で、端的にそう言った。
「……ゆきちゃん……どうして、そんな話をするの?」
 私の声は涙声になっていた。
 私は最近様子がおかしいお姉ちゃんのことで悩んでいた。一生懸命考えたけれど、どうしていいのか分らなかった。だから、ゆきちゃんの家にやって来て相談した。
 まだ大学入試が終わっていないから、こなちゃんには心配をかけられないし、なによりゆきちゃんならきっと助けてくれると思ったから。
 なのに、悩みを打ち明けるにつれて、ゆきちゃんからはいつものあたたかな笑顔が消えていって、そして、突然こんな話を始めた。
 涙が溢れてくる。どうしてこんな話をするのだろう。前に、こなちゃんがみんなを動物に例えた話をゆきちゃんにも教えてあげた。だから、ゆきちゃんは分っている。ウサギが誰のことを指しているのか。
「どうして、ゆきちゃん? どうして困っている私に…そんな意地悪な事を…言うの?」
 私は我慢ができなくなり、声を上げて泣きだしそうになったその時だった。不意にあたたかなぬくもりに包まれたのは。
 それは、私がゆきちゃんに抱きしめられたからだった。
「……ごめんなさい、つかささん」
「……ゆきちゃん?」
 頭が混乱して、私は何がなんだか分らなかった。だから、ゆきちゃんの次の言葉を待った。



85:「守る」という事・前編
08/06/14 20:10:24 UfsVd5yJ
「……私は、かがみさんが何を悩んでいるのか知っています。そして、その原因の一端は……間違いなく私にあるんです……」
「えっ? ゆきちゃん、どういうこと?」
 ますます混乱してそう尋ねると、ゆきちゃんの抱きしめる力が少しだけ強くなった。
「……つかささん、話を聞いてください。理解できないかもしれませんし、嫌悪するかもしれません。けれど、力を貸してください。かがみさんを救うために……」
「…お姉ちゃんを、救う?」
 ゆきちゃんが何を言いたいのかはわからない。けれど私は、ゆきちゃんも私と同じ様にお姉ちゃんのことで悩んでいたことがわかった。
「はい。その話を聞いて、私の事を嫌ってもかまいません。けれど、かがみさんを先ほどの話のウサギに…しないために、どうか……力を…貸して…ください……」
 顔を見上げた私の頬に、ゆきちゃんの瞳からあたたかなしずくが落ちてきた。
 そして、ゆきちゃんは私を抱きしめたまま、声を上げて泣き出してしまった。
 困った私は、泣き止まないゆきちゃんを落ち着かせようと、背中を優しく撫でた。


『「守る」という事』

「何が守るよ! そんなに軽々しく言える事じゃないでしょう!」
 食後の一家の団欒は、私の怒声と共に終わりを告げてしまった。
「……なっ、なにむきになっているのよ、あんたは!」
 まつり姉さんの言葉に、頭にのぼった血がすぅーっと引いていくのが分った。
 そう、まつり姉さんの言うとおりだ。なんということはないテレビドラマの一つのシーン。何事もまじめに取り組もうとはしない主人公が、恋人に涙ながらに引っ叩かれて改心し、君の事を一生守りつづけると告げるシーンが流れただけ。
 そして、まつり姉さんが、こんなこと言われてみたいと言っただけ。



86:「守る」という事・前編
08/06/14 20:12:38 UfsVd5yJ
 ただ、私は一度引っ叩かれたぐらいで改心して、守り続けるなどと軽々しく言うその主人公が好きになれなかった。
だから、「そんなにぺらぺら「守る」なんて事をいう男なんてろくなもんじゃないわよ」とつっかかってしまった。そして言い争いをしているうちに、
怒声を上げてしまった。ただそれだけ……。
「お姉ちゃん……」
「どうしたんだい、かがみ?」
 つかさやお父さん、いのり姉さん達みんなが、私を心配そうに見ていた。
「……ごめん。まだ、入試のテンションが抜けないみたい…。今日はもう休むわ……」
 いたたまれなくなり、私は皆にそう告げて立ち上がった。
「ごめん、つまらない事でむきになってた」
 とまつり姉さんに謝りはしたけど、
「まちなさい、かがみ!」という言葉を背中に受けても、私は振り返ることなく自分の部屋に戻った。

 部屋に戻るなり、私はそのままベッドに転がった。
「……だめだ。こんなことじゃ……」
 そう声に出して自分を叱咤しても、何もする気になれない。
 ふと何とはなしに視線を横にやると、枕元においてあった携帯電話が着信を知らせていた。
 携帯を開くと、メールが1件来ていた。送信者はこなただ。
 メールを開くと、
『いよいよ明後日が本番だよ! 大丈夫。かがみんへの愛のために、今度こそ絶対合格するから! 
だからさ、とりあえず試験が終わったら私とデートしてね! 自分で決めた事とは言え、かがみ分が不足しているからさ』
 いかにもあいつらしいメールだった。
「まったく、あいつは……」
 私は苦笑するしかなかった。
 私は何とか第一志望の大学に合格する事ができた。
けれどこなたは第一志望の大学に、私と同じ大学に合格する事はできなかった。
 でも、こなたは本当に頑張ったと思う。3年生になってからだったとは言え、
今までアニメやゲームに費やしていた時間の全てを勉強につぎ込んで頑張った。
ただ私と同じ大学に行くために。……それだけを目標に。
 私は返信メールに、気を抜かないで頑張る事と体調管理をしっかりする事を
自分でも細かすぎるだろうと思うくらい書き込んだ。そして最後に、
『O,Kよ』と書き込み、送信した。
 すぐにメールが返ってきた。



87:「守る」という事・前編
08/06/14 20:16:31 I/KSieCh

 相手の事をまるで考えない自己中心的な私の言葉を聞いて、あの人はどれだ
け絶望したのでしょうか? 
 私はつかささんに全てを話しました。話しているうちに、あの人の、かがみ
さんの心をどれだけ傷つける事を、そして追い詰める事を言ってしまったのか、
今更ながらに思い知らされて……自分の愚かさを再認識させられて……。
 私は何度もつかささんに謝りました。「ごめんなさい、ごめんなさい」と何度
も。直接かがみさんには謝れないから。あわせる顔がないから。
 ……いいえ、違いますね。私はかがみさんに会うのが怖いから、つかささん
に謝って、許してもらいたかったのだと思います。少しでも自分が楽になりた
いから……。
「……大丈夫だよ、ゆきちゃん。私はゆきちゃんを嫌ったりしないよ」
 優しい声。そして、私に向けられるつかささんの顔は、笑顔でした。
 つかささんは私の懺悔を聞いても、私に笑顔を向けてくれました。
 私の思っていたとおりに……。
 その笑顔で私は気持ちが楽になりました。 
 ズルイですよね? 私は、つかささんが許してくれる確信がありました。
 つかささんは優しいから。こんな私のことも許してくれると思っていました。
期待をしていました。
 きっと、あの時のかがみさんも、今の私と同じだったのだと思います。かけ
てほしかったのは励ましの言葉。向けてほしかったのはあたたかな笑顔。
 思い起こしてみると、『みゆき、あんたを親友だと思うから話すんだけど……』
と、あの時かがみさんはそう前置きをしてから、私に話してくれたんでした。
私を親友だと言ってくれたんです。私なら苦しみを和らげてくれると信じてく
れていたはずです。なのに、それなのに私は……。

★ ☆ ★ ☆ ★
 
 大学入試を終えるまでは良かった。合格に向けて一心不乱に勉強をしていた
時は、余計な事を考えている暇はなかったから。
 考えていた事といえば、合格後のこなたとの楽しいキャンパスライフ。広い
部屋を借りての共同生活。きっと楽しい日々だろうと私は胸を膨らませていた。
 けれど、現実は上手くはいかず、こなたは試験に落ちてしまった。
 私もショックを受けたけれど、落ちた当人であるこなたの落胆は酷かった。
 合格発表のあの日、ネットを利用して自分の不合格を知ったこなたは、私の
家にわざわざやってきて、私に謝った。
「……ごめん、かがみ。私、落ちちゃった……。でも、でもね、まだ第二志望




88:「守る」という事・前編
08/06/14 20:18:47 I/KSieCh
に合格すれば、かがみといっしょに居られるから。一緒の大学には行けなくて
も……ほら、もともと学部が違ったら講義も別なのがほとんどだし……。
 次こそ頑張るから。絶対に、絶対に合格するから」
 涙を見せまいと無理に笑おうとするこなたを、私は抱きしめた。
 必死に涙を堪えているこなたがあまりにも痛々しくて、かける言葉が見つか
らなくて……私は抱きしめる事しかできなかった。
 その時、私の腕の中で嗚咽が漏れるのを我慢しながら泣いているこなたを見
て思った。これから先に何があろうと、私がこなたを「守る」のだと。私が守
っていかなければならないのだと。
 こなたのこんな顔を見たくない。泣き顔や悲しい顔は見たくない。笑ってい
てほしい。そう思ったから……。
 こなたを落ち着かせてから、私は手始めに、こなたの第二志望の入試対策を
行おうと考えた。幸いな事に試験までは2週間以上余裕があったし、この1年
でこなたはしっかりと全ての科目の基礎を身に着けているのだから、あとはど
うしても苦手な部分を潰していけば良いだけのはずだ、と。
 しかし、その事を話すと、こなたは首を横に振った。
「気持ちはすごく嬉しいけど、大丈夫だよ、かがみ。それくらいの事なら私一
人でも大丈夫だから……」
「でも……」と私は食い下がったけれど、
「お願い、かがみ。私を信じて……」
 そんなこなたの懇願に、同意せざるを得なかった。
「ありがとう、かがみ。かがみのおかげで元気が出てきたよ。愛の力は偉大だ
よね~」
 私の同意に、先ほどまでのしおらしい態度はどこへやら、こなたは軽口を言
って笑った。いつものこなたの笑顔。私の大好きな笑顔だった。
「ばっ、バカ、そういう発言は自重しろ!」
「真っ赤になったかがみん萌え~」
 いつもと同じ緊張感のないやり取りがとても嬉しかった。
 だからその日は笑顔でいられた。笑顔でこなたと別れられた。幸せな気持ち
でいられた。……だけど、それは長くは続かなかった。
 合格発表から3日後。たった3日なのに、私はこなたに直接会う事ができな
いことが寂しくて仕方がなかった。
 予定をたくさん入れていた。まずは合格祝いに、こなたと二人で少し値のは
るレストランで昼食を食べて、帰りはゲマズに行って買い物をする。随分とア
ニメやマンガを絶っていたこなたは、目を輝かせて嬉しそうに商品の物色を始
める。私はそれを「やれやれ…」とか言いながら……。





89:「守る」という事・前編
08/06/14 20:20:47 I/KSieCh
「……しかたないわよね。こなただって我慢しているんだから」
 こなたの事を「守る」と決めたのに、私の方が先にまいってしまった。こな
たに会えないことが辛くて仕様がない。
「2週間とちょっとじゃない。すぐよ、すぐ」
 そう自分を言い聞かせる。
 試験が終わればいくらでも遊ぶ事ができる。そして春になれば、こなたとの
共同生活を始めるんだ。
 2週間くらいあっという間に過ぎていく。寂しいけれど、私はこなたを信じ
て待っていればいいんだ。
「でも、もし今度も駄目だったら……」
 自分が発したその言葉に、私の体は凍りついた。気落ちしているから、思考
がネガティブになっているだけだと思おうとしても、一度芽生えた不安は消え
てはくれなかった。
「……大丈夫よ。もし駄目でも、私と一緒に暮らしながら予備校に通えば……」
 支離滅裂な事を言っているのは自分が一番分かっていた。
 仮にこなたが予備校に行く事になったら、私の両親もこなたのお父さんも共
同生活を認めてはくれないはずだ。当たり前だ。大学も勉強をする場に違いな
いが、ある程度の自由はある。けれど予備校は試験に合格するためだけに行く
ところ。翌年の合格のために必死になって勉強をする場所だ。予備校の寮かな
にかに入って、勉強するのが本来の姿だろう。認めてくれるはずがない。
 不安な思いが膨らんでいく。こなたと離れ離れになるかもしれない。最低で
も1年はこなたと離れ離れになる……。たった3日会えないだけで寂しくてた
まらないのに。それが1年も続くと思うと……。
 体が震えだした。怖い、怖くて仕方がない。
「そうだ、私も予備校に通えば……。もっと上の大学を目指すと言って……」
 私の思考は、すでに最悪の事態が現実となる事を前提としていた。けれど私
はその事をおかしいと思うこともできなかった。
「……お父さんやお母さんたちがあんなに喜んでくれたのに、そんな事できる
わけないじゃない」
 それに、4人も子供がいる我が家の財政状況を考えると、そんな余計なお金
をかけられるはずがない。
 その後も色々と浅知恵を出しては自分で否定する事を繰り返した。
 ……八方塞だった。もしもこなたが試験に落ちてしまったら、何も手立ては
ない事が分った。そして同時に、自分がどれだけ無力なのかが分った。
「守れない。私はこなたを守れない…」
 悔しくて涙がこみ上げてきた。私はこなたを守りたいのに。





90:「守る」という事・前編
08/06/14 20:22:55 I/KSieCh
「頑張らないと……」
 私がどうにかしなければいけない。今のままでは何もできないから。もとも
と私とこなたの思いは世間に認められるものではないのだから。
 そう決意を固めようとした。なのに、私のネガティブな思考は、
「守っていけるの? 私が……」
 そうやってすぐに不安を増幅させる。
「私が守っていけるの? 世間の冷たい目から、こなたを守っていけるの?」
 今後大学生活が終わっても、私はこなたとずっといっしょにいたい。一緒の
人生を歩んで行きたい。けれど、私は本当に守れるのだろうか……。
 不安は広がっていき、私の心を侵していった。
 それから何日かは何とか耐える事ができた。夜はほとんど眠れなかったけど、
頑張って普段の私でいようと努力した。けれど、
「お姉ちゃん、心配なのは分かるけど、こなちゃんならきっと大丈夫だよ」
 ある時つかさにそう言われたから、私は普段どおりの私ではいられなかった
ようだ。
 その時はつかさに話をあわせて、「そうなのよ。一応友達だから、心配は心配というか……」とか言っておいた。
「他に何か困っている事があるなら言ってね。私じゃ役に立たないかもしれな
いけど……」
 でも、つかさにそう言われてしまった。つかさは妙に鋭いところがあるから、
私がそれだけじゃない悩みを抱えているの感じ取ったのかもしれない。
 ……その日までが精一杯だった。日が経つにつれて積もる不安は、私の精神
力の許容量を超えようとしていた。
 一人で悩むのはもう限界だった。けれど一生懸命頑張っているこなたに余計
な心配得を掛けたり、プレッシャーを与えたりしたくないと思った。
 つかさにもこんな事は相談できない。今まで秘密にしていた私とこなたの関
係を知ったら混乱してしまうだろうし、つかさは嘘をつくのが下手だから、誰
かに私たちの関係を漏らしてしまうかもしれない。
 だから私は、信頼できる親友に相談する事にした。
 そう、みゆきなら助けてくれると思ったから。

★ ☆ ★ ☆ ★

 相談したい事があるとかがみさんから連絡があり、私はお茶菓子と紅茶を用
意して待っていました。
 かがみさんの家から私の家までは距離があるので、どこかで落ち合う事にし





91:「守る」という事・前編
08/06/14 20:25:09 I/KSieCh
ませんかと提案したのですが、人目があると話しにくいことだからと断わられ
ました。
 私は、かがみさんの相談したい事とは、泉さんの事だと推測していました。
 私にもかがみさんは親しい友人として接してくれていますが、泉さんは別格
な存在だと分っていました。
 私やつかささんといっしょに居るときも、かがみさんは泉さんに話を振る事
が一番多いんです。もちろん、私はそのことに不満なんてありません。むしろ
お二人のあたたかなやり取りが大好きでした。
 お二人は本当に仲が良くて、大学へ進んでからもいっしょにいたいと、同じ
大学への進学を決めたほどです。あいにくと、泉さんが残念な結果になってし
まいましたが、近くの第二志望校への合格に向けて頑張っているはずです。
 だからきっと、かがみさんの相談事というのは、泉さんの手助けをしたいと
いう事だと思っていました。そして、そのような相談事であれば、微力ながら
喜んでお手伝いするつもりでした。
 本当に私は、お二人の「大切な友人」へのあたたかな心遣いとやり取りが大
好きだったんです。
 約束の時間どおりにかがみさんは我が家を訪ねて来られました。
 部屋に案内し、お茶菓子と紅茶をお出ししました。そして、かがみさんは私
に相談事を話して下さいました。それは私の考えていたとおり、泉さんの事で
した。
 ……けれど、その内容は私の想像していたものとは次元が違っていました。
「……ごめん、今まで黙っていて。でも、真剣なの。私もこなたも……。だか
ら、お願いみゆき、力を貸して。私一人じゃ、不安で仕様がなくて…どうした
らいいのか分らないのよ……」
 そうかがみさんが締めくくったことから、ようやく話が終わった事が分りま
した。けれどあまりにも突飛な内容に、私は唖然とするしかありませんでした。
 私は、かがみさんと泉さんは大切な友人、つまり「親友」だと思っていまし
た。けれど、それは違うと、お二人は高校3年生の春から、「恋人」なのだとい
うのです。
「……同性愛…ですよ……」
 困惑する私の思考は、言葉となって口から出てしまいました。
 かがみさんは、「うん、分っている」と頷きました。
「……同性を愛する思考をお持ちの方がいらっしゃる事は知っていました。で
すが……」
「あっ、その、やっぱり引くわよね……」
 かがみさんが顔をうつむけて言いました。





92:「守る」という事・前編
08/06/14 20:27:43 I/KSieCh
ていたのかを。
 ……私のエゴだったんです。私は、大切な友人と過ごしたこの三年間の日々
を、何よりも大切な宝物だと思っていました。大好きだったんです。かがみさ
んたちとの、掛け替えのない友人たちとの毎日が。
 かがみさんと泉さんの関係を肯定してしまったら、私の大切な思い出が壊れ
てしまうと思ったんです……。だから、否定したかったんです。拒絶したかっ
たんです。高校生活が終わっても、何年経っても、私はずっとずっと、大切な
友人でいたかったんです。だから、だから私は、私の思い出の中のかがみさん
と泉さんでいてほしかったんです。そんな事が出来るわけがないのに……。
 私は泣き崩れました。ただ悲しくて、悲しくて……。
 好き勝手な事を言って、我儘を言って、そしてただただ泣いている私を、か
がみさんはどんな目で見ていたんでしょうか?
 泣きじゃくる私の頭を、不意に誰かが撫でました。この部屋にいるのは私と
かがみさんだけなのですから、それが誰なのかは考えるまでもありませんでし
た。
「ごめん、バカな相談をしたわ……。みゆきはなにも悪くないから、泣かなく
ていいよ。……私の事、嫌って。……私が全部悪いんだから。みゆきは悪くな
いんだから。ねっ?」
 かがみさんはとても優しい声でそう言って、弱々しく笑いました。
「みゆきに迷惑をかけたりしないから。最悪の事態になんてならないから。私
が強くなる。私が強くなって、こなたを守るから。ごめんね、困らせて……」
 かがみさんはそう言って部屋を出て行きました。
 私はただ泣いていました。自分が何をしたのかも理解せずに。
 私は最低な事をしてしまったんです。困って、苦しんで、どう仕様もない時
に、私を頼って来てくれた大切な友人を傷つけて、追い詰めたんです。
 
★ ☆ ★ ☆ ★

「……私は、クマなのでしょうか?」
「えっ? ゆきちゃん、何を……」
 心の中だけで呟くつもりだった言葉が、口から漏れてしまいました。
 私は、言葉を続けました。
「私はあの時、ただ知識をひけらかしたんです。さも私の口にした言葉だけが
唯一の正論であるかのように言って……私が言っている事が正しいと思わせれ
ば、私の我儘を通せると考えたのだと思います……。
 先ほどの話の中で、クマは簡単に魚を取って来たんですよね? なのに、無





93:「守る」という事・前編
08/06/14 20:29:02 I/KSieCh
力なウサギが困っているのを見ても、クマはウサギを助けませんでした。ただ、
自分の力を誇示したかったのだと思います。……自分だけが良ければいいと考
えていたのだと思います。私と同じよ…」
「違うよ!」
 私の言葉をさえぎって、つかささんは大きな声で否定しました。
「ゆきちゃんは、クマさんなんかじゃないよ! ほわほわなヒツジさんだよ」
 つかささんは真剣な顔でそんな事を言いました。けれど、すぐに顔を赤くし
て……。
「えっと、その、胸大きいから、こなちゃんが言ってたとおり、ウシさんかも
しれないけど……」
「えっ、あっ、すっ、すみません!」
 私は、ずいぶんと長い間つかささんの顔を胸に抱いていた事に気づき、あわ
てて体を離しました。
 苦しくてさぞ不快だったでしょうに、つかささんはそんな体制のまま私の話
を聞いてくれていたんです。
 顔を真っ赤にする私に、
「よかった。いつものゆきちゃんに戻ってくれて」
 つかささんはそう言って輝かんばかりの笑顔を見せてくれました。
「ねぇ、ゆきちゃん。私は頭が良くないから、何が良い事で何が悪い事なのか
は分らないけど、大丈夫だよ。お話とは違うよ。
 ウサギさんには、優しいキツネさんがいるんだから」
 つかささんの言葉の意味を、私はすぐに理解しました。
「でもね、今、キツネさんは忙しいから、イヌさんとウシさんも力を貸してあ
げないとダメだと思うんだ」
「……あの、ヒツジさんにしては頂けないでしょうか?」
 私の要望に、つかささんは、あははっと無邪気に笑いました。
「私の方からお願いするね。お願い、ゆきちゃん。私に力を貸して。お姉ちゃ
んを助けるために」
 つかささんのその言葉に、私は「はい」と答えました。何度も、何度も。
 こみ上げてきた涙で、またもや泣き崩れてしまった私を、今度はつかささん
が抱きしめてくれました。
「大丈夫。大丈夫だよ……」
 そう言って、私の頭を撫でてくれるつかささんの手はとてもあたたかくて、
優しくて、私はいっそう涙がこみ上げてきて……。
 つかささんは私が泣き止むまで、ずっと私を抱きしめてくれました。





94:「守る」という事・前編
08/06/14 20:30:36 I/KSieCh
★ ☆ ★ ☆ ★

 静かに目を開くと、部屋の天井が目に入った。
 どうやらいつの間にか眠ってしまったらしい。時計に目をやると、もうお昼になる時間だった。
「まったく、つかさじゃあるまいし……」
 そういえば、最近ろくに寝てなかったから、そのツケがまわったのだろう。
 久しぶりの睡眠で少しは体調が良くなっているはずなのだが、気だるい感じがまったく抜けない。
「……まつり姉さんを怒らせて、お父さんやお母さんたちも嫌な気持ちにさせて……。何をしているのよ、私は……」
 昨日の夜の事を思い出し、私は嘆息する。
「これじゃ、みゆきの言ってたとお……」
 弱気な発言を何とか飲み込むと、私はパンパンと両手で顔を叩いて気合を入れた。
「強くなる……。うん、私は強くなるんだ!」
 昨日は失敗したけれど、頑張る。私は強くなる。泣いてばかりいられない。
 そう決意した私は、とりあえず空腹を訴えるお腹を満たすために台所に向かう事にした。
「あら、かがみ。ようやく起きたの?」
 台所に着くなり、お母さんが声をかけてきた。けれど食卓には誰もいない。休日のこの時間帯なら、いつもであれば誰か一人ぐらいはいるはずなのに。
「いのりやまつり達はみんな外に遊びに出かけたわよ。お父さんはもう少ししたら来ると思うわ」
 キョロキョロしていた私に、昼食のおかずを並べながらお母さんがそう教えてくれた。
「そうなんだ。……あの、お母さん、昨日はごめんなさい。私……」
 私は、昨日みんなを不快にさせた事を謝ろうとしたけど、
「謝らなくていいわよ。誰だって機嫌が良くない時はあるんだから。ほら、かがみ。顔を洗っていらっしゃい。すぐにお昼ご飯にするから」
 お母さんはそう言って微笑んだ。
「うん、その、ありがと……。顔、洗ってくる」
 どんな顔をすれば良いのか分からなくて、私は逃げるように洗面所に向かった。
 それから顔を洗って食卓に戻ると、お父さんがいつもの席に座っていた。
「おや、かがみ、起きたのかい」



95:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/14 20:33:13 I/KSieCh


あぁおもしろいおもしろいw

96:フタ☆某
08/06/14 20:35:58 Sw9M6dkq
おえびの修正版に色を塗りました。

URLリンク(konakaga.me.land.to)


97:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/14 20:36:49 sOrgfY9m
>>71
GJ!読みやすくて良かったです
続き期待してます。

98:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/14 20:39:26 I/KSieCh
>>8
GJです。前編読ませていただきました。
かがみ一人で抱え込もうとすると、いずれ壊れてしまうでしょうね
人はお互い支えあって生きていくのであって、一人が弱い人間を守るんじゃない。
そういう関係が続けば、いずれ支配するもの・支配されるものの関係に陥って、
最悪な結果になりかねないです。
かがみ一人で頑張らなくていいんだよと、声をかけてあげたくなりました。


言っている奴の事を想像するとかなり笑える。

99:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/14 20:43:23 UfsVd5yJ
「―それでは本日の議題ですが―…」
議長の淡々と会を進める声と、どこかのクラス委員の意見を交わす声。
そして時折、カツカツと書記が黒板に白い文字を書く音がする。私はそれらを『音』として
聴覚で感じてはいたものの、具体的に『何が』とまでは認識していなかった。
有り体に言えば右から入って左に抜ける状態。
普段の私であれば、よっぽどの事がない限り真面目にも聞くし
決議されたことを事前に渡された資料、あるいはルーズリーフにメモしたりもする。
その、普段ならば出来ているはずのことが手につかない。
逆に言うと今の私には『よっぽどのこと』が起きている、ということになる。


あれから一週間と一日が過ぎた。
こなたに告白したという彼は、こなた程ではないもののゲームも漫画も好きらしく
あいつとも話があうみたいだった。「みたい」というのは、私が直接確認したわけじゃなく
つかさから聞いた話だから。私自身はこなたと、その彼が視界に入るたびに
目を閉じ、耳を塞いで逃げ出していたから。

一週間以上が経った今でも、私の中でも芽を出した感情に名前は付けられていない。
ただ、それは育てているつもりがなくとも、日毎に少しずつ成長しているみたいだった。


何かが決まったらしく、パチパチとひかえめな拍手が普通の教室よりも
幾分か広い視聴覚室に寂しく響く。ふと、ぼんやり資料に落としていた視線を上げ、
夕方といえる時刻になった窓の外の空を見た。
夏の終わりを告げる蜩の鳴き声がどこからか聞こえる。
薄い雲がいくつかふわふわと浮かび、鳶がゆったり上空を旋回している。
こなたが、一人教室で待っていた、あの時程ではないけど
赤く染まった太陽が空を、雲を青や白から橙色に塗り替えていって。
怖いぐらい綺麗だった風景の中、あいつは何を思っていたんだろうかと考える。所詮、私は私で
こなたはこなたなんだから答えなんて出ないのだけれど。



100:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/14 20:45:06 yV4a5+w4
>>96
GJ!

101:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/14 20:45:58 UfsVd5yJ
「―み……ん…か…みさ…かがみさんっ」
「ひあっ!!?」
突然現実へと引っ張り戻した大きめの声に、声帯と肩、そして背中の筋肉が反射的に反応し
ガタッと椅子の揺れる音と共に、私は悲鳴をあげてしまっていた。
余りにも人を引き付ける力を持った風景に、心奪われるうちに
委員会は終わってしまったらしかった。
会が終わった開放感と、それと同時に感じる疲労感で教室が一杯になっている。
私の顔を心配そうに覗き込むB組の委員長―高良みゆきに苦笑を浮かべつつ手を振る。
「ああ、ごめんみゆき。少しぼうっとしてたわ」
「そうですか?それなら良いんですが、具合が悪くなられたのかと思いまして…」
「本当ごめん!大丈夫だから。あ、頼みがあるんだけど…今日の決定事項とか、後で見せてくれない?」
「それは構いませんが……。…かがみさん、この後ご予定とかありますでしょうか」
みゆきの問い掛けに私は首を傾げた。つかさやこなたから、こういう風に言われて
どこかに寄ったりすることはあっても、みゆきから言ってくるのはめったにないことだったからだ。
「ない、けど……どうしたの?」
「それは…あ、少し待って下さいませんか?」
私の疑問に言葉を濁し、さらに返事を聞く前にみゆきは踵を返していた。
他のクラス委員は既に教室から居なくなっていて、
一人ぽつんと取り残された私はまた窓の外を仰ぎ見る。
空は、橙色からあいつの髪の色よりもちょっと濃い群青色に変わりゆく途中だった。


「お待たせしてしまい、申し訳ありません。…ミルクティーで宜しかったですか?」
しばらくしてみゆきが戻って来た。手には二本のミニペットボトルが握られていて
どうやら下の自動販売機で買ってきたらしかった。
「あ、そんな気を遣わなくてもいいのに…」
「いえ、私が呼び止めたんですから。どうかお気になさらずに」
それに、少々長くなりそうですし、と言いながらみゆきが片方のミルクティーを差し出して来て
私は躊躇いつつもそれを受けとる。
パキッと小気味よい音と共にペットボトルの蓋が開けられ、
中身を一口口に含んだみゆきが、間違っていたら申し訳ありません、と
前置きをして話し始めた。







102:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/14 20:47:54 UfsVd5yJ
「……泉さんと何か、あったんですか?」
「!!!」
いきなり、しかもここ数日悩んでいたことの核心に触れられ
驚いた私は、キャップも開けず手の中で弄んでいたペットボトルから目線を外しみゆきの方を凝視した。
「な、んで……」
「…気のせいじゃなかったようですね…。…泉さんの様子も気になっていまして…」
「…………」
こなたの名前が出たことで、私はより一層緊張した。ペットボトルの蓋を開ける乾いた音が
酷く場違いなものに聞こえる。体温で大分温くなった中の液体で唇と喉を湿らす。
喉を通っていった液体に初めて、私の喉がからからに渇いていたことを知らされた。

「泉さんにも…おせっかいだと思われるかもしれませんが…
お話を伺ったんですが、上手くはぐらかされてしまいまして」
ごくん、と知らず唾液を飲み込む。その音がやけに大きく響いて
慌てて、咳込むふりをしてごまかした。
私は先刻から何も話していないけれど、みゆきは意にも介さないように話を続ける。
「―実は、泉さんとかがみさんの様子が以前と違うことには
大分前から気付いていました。かがみさんは、約一ヶ月前から。
泉さんはそれよりもさらに前から」
「最初は何か…小さな諍いがあったのか、とも思いました。
ですが、それはお二人の問題。当人同士が解決しなければいけないものです。
私が口を挟むべきではない、と考えました。
しかし一ヶ月以上が経っても一向に以前のようになる気配がありません。
諍いとは違うのではないか、という思いが生まれました」
そこでみゆきは一度口を閉じ、何かを振り払うみたいに目を閉じ
二、三度首を振ってまた、言葉を紡ぐ。
「私が、介入すべき問題ではないのかもしれませんが……今のお二人を見ているのは
辛いです。また、以前のように楽しそうにお話する泉さんとかがみさんが見たいんです。
…差し出がましいようですが、お二人の間に何が、あったんですか?」

その問いは二度目だ。だけど、私自身何がどうなのかよくわかっていない。

私の中に渦巻くこの気持ちは?
こなたの行動の理由は?

疑問が有りすぎて何から話していいのかわからない。「…断片的でも良いんです。人に話すことで楽になることもありますから。
もし、話したくないのであれば無理に、とはいいません」







103:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/14 20:49:31 UfsVd5yJ
ああ、みゆきは。
この友人は、私たち二人のことをこんなにも思ってくれている。
そう思ったら、両親にも、まして妹には言えなかった言葉が
涙と共に一気に溢れ出していた。

「…っ!!わ…私っ……あいつに…っく、こなたに、告白されて…っ
友達としか思えなかった、のに、拒絶、したのに…それでももやもやしたのが残って……!
どうしたらいいのかわかんなく、て……っ!」
一度崩れてしまった堤防は水を止める術を持たない。胸にあったものを全て吐き出す
私の言葉と言う名の水―いや、しゃくり上げていたせいで単語すら怪しかったかもしれない―を
みゆきは辛抱強く最後まで受け止めてくれた。


すん、と時折鼻をすする私と、時計だけがこの部屋に存在する音源。
私はいつの間にかみゆきに抱き締められていた。こういう風にされるのは
小学生、下手したら幼稚園の時以来だな、と思う。
…訂正。こなたはぺたぺた引っ付いてきてたりしたっけ。
けれど、こなたとは違う、母親が子供をあやすような抱擁。小さい子扱いされてるみたいだけど
不思議と嫌な感じはしなかった。恋人同士のそれの胸の高鳴りの代わりに、
なにもかもを預けられる安心感がある。

「……落ち着き、ましたか?」
「ごめん、みゆき…。…はは、情けないわね」
同級生に縋り付いてわあわあ泣いていた自分の姿を脳裏に描いて
恥ずかしさに、なるべく軽く笑って体を離した。
「いえ、良いんですよ」
にっこり笑うみゆきは、同い年とは思えない程の母性や包容力を持っている。
聖人君子というよりは聖母マリア様。今の私にはそんなイメージが浮かんでいた。
もっとも、どっちも似たようなものなのかもしれないけれど。

「…かがみさんは、泉さんが嫌いですか?」
「嫌いなわけないじゃない」
これは、自信を持って言えること。
「では、好きですか?」
「好き、ではあるんだと思う。ただ…その『好き』の種類がわからないっていうか…。
…近くに居すぎたせいかしらね」
大泣きして落ち着いたおかげか、前よりもすんなり言葉が出て来る。
まだまだ曖昧だけれど、それでも心の中のもやもやの輪郭が見えた気がした。







104:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/14 20:51:40 UfsVd5yJ
「それをそのまま伝えれば良いんですよ。言い方は少々厳しいかもしれませんが、
今のかがみさんは……もちろん泉さんもですが……中途半端に逃げているだけです。
恋人としても、友達としても付き合えていない…」
さっきとは打って変わって、真面目な顔をしたみゆきがじっと私を見つめて来る。
目を逸らしちゃいけない気がして、私も瞬きもせず見返す。
「それでは泉さんもかがみさんも傷付くだけです。
ですからかがみさんは…泉さんともう一度、向き合うべきだと思います。
……なんて、偉そうにすみません」
「ううん…その通り、だから。考えとてみれば、私ずっと気を遣ってた。
普通に接しているつもりでも、どこか腫れ物に触る態度で…。
それは、こなたも同じだと思う。だから、明日こなたと話をしようと思う。
私の気持ちをぶつけてこようと思う」
そう宣言すると、みゆきはまたいつもの優しい笑顔を私に向ける。

「その結果の関係がどうであろうと、お二人なら大丈夫ですよ」


みゆきに何度もお礼を言ってから家路に着く。一ヶ月前とは違い
心はさっぱりしていて、なぜだかとても穏やかな気分。
玄関を開けると、ちょうど台所から出て来たらしいつかさとばったりあった。

「お姉ちゃん、お帰り。今日は遅かったね……って、目、真っ赤だよ!?
どうしたの!?」
「ただいま。あー…これは…色々あって…」
まさかみゆきの胸で大泣きしていたとは言えない。そしてその理由も。
姉としてのささやかなプライドだ。

「…こなちゃんと何か、あったの?」
靴を脱いでいる私につかさが近付いて、少しだけ声のトーンを落として話し掛けてくる。
「違うけど…もしかしてつかさ、私とこなたの様子が変だとか思ってた?」
「……うん。ちょっと前からお姉ちゃんもこなちゃんも
なんか無理して笑ってるみたいだったから…」
…まさか妹にまでバレているとは。ぼんやりしてることが多いつかさだけど
今回はそんな妹にすらはっきり解るほど変だったのか、私たちは。
「さっき、みゆきにもおんなじこと言われたわ。
で、発破かけられちゃった。
大丈夫。明日、こなたと向き合ってくるから。
……心配かけちゃったわね」








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