【ゼロQ1】ルルーシュ&カレンを語る2【コードギアス】at ANICHARA2
【ゼロQ1】ルルーシュ&カレンを語る2【コードギアス】 - 暇つぶし2ch174:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/13 22:43:00 5pfa/bb3
『朱の軌跡』の中にあるカレンとルルーシュの7年前の出会いを抜粋
ネタバレ注意

ころころと足元に転がってきたのは、大きな桃だった。
引越し用の荷物を詰め込んだバッグにぶつかり止まる。それを見て少女―紅月カレンは小首をかしげた。かすかな甘い
匂いが辺りに漂っている。十歳になったばかりの自分の片手ではつかめないほど、よく熟れた大きな桃だった。
両手でカレンは桃を拾い上げた。すると、すぐそばから「あ」という声が聞こえた。
振り返った先にいたのは、同じ年頃くらいの少年だった。黒い髪。でも、瞳の色が少し違う。日本人ではない。もっとも、
それを言い出すと、自分もあまり大差はないのだけれど。
桃を持ったカレンがまじまじと少年の顔を見ていると、相手はなぜかむっと怒ったように眉をひそめた。ひょっとして、
この桃の持ち主だろうか。そう思い、カレンは黙って桃を少年に差し出した。すると、少年はわずかに目を見開き、こちらも
黙って桃を受け取った。
何とも言えない沈黙が続いた。が、そこで、
「こら」
「いた!」
いきなり少年の黒髪の頭を後ろからぽかりと殴りつけた少年がいた。こちらも同じくらいの年頃の少年だった。くせ毛の栗色の髪。
「何ぼーっと突っ立ってるんだ。拾ってもらったんだから、ちゃんとお礼言えよ」
「く・・・・・・別に頼んだわけじゃないぞ」
「本気で言ってるんだったら、もう一発」
「人に注意する前に、君は自分の暴力癖をかえりみるべきだ」
「よし決定。もう三発・・・・・・って、あ!バスが来た。急げ!」
「なっ・・・・・・」
殴った方の少年がいきなり走り出す。買い物籠らしきものを手にした黒髪の少年もそれに続こうとしたが、不意にその足が
止まった。無言で2人の様子を見ていたカレンを振り返る。
そうして、少年はたった今受け取ったばかりの桃をぐいとカレンに向かって突き出してきた。

「え・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
あいかわらずカレンに対して少年は何も言わなかった。ただ、桃をぐいぐいとカレンの胸に押し付けてくる。思わずカレンが
それを受け取ったとき、通りの向こうからまた声がした。
「なにやってる、ルルーシュ!早くしろ」
「分かってる!」
大声で答えると、少年もまた走り出した。手にした桃を返す間もない。そのままバス停に停車したバスに二人で乗り込んでしまう。
バスが発進した。中にいるはずの二人の姿はカレンの目には見えなかった。ぽかんとして桃を持ったままカレンはその場に
立ち尽くしていた。 「カレン、そろそろ・・・・・・ん、どうしたんだ、それ」
ふと気がつくと、そばに兄の姿があった。カレンの手の中の桃を怪訝そうに見ている。どう答えていいものやら分からず、
カレンは一言こう言った。
「もらった」
「誰に?」
「知らない子」
兄は咎めなかった。笑って「そうか」とだけうなずいた。
「さあ、電車の時間だ。行こう。母さんが待ってる」
「・・・・・・うん。今度の町、楽しいところだといいね、お兄ちゃん」
「そうだね」
荷物を抱え、兄に手を引かれて、カレンは歩き出した。一度だけ背後を振り返る。
走り去ったバスの後ろ姿は、もう道の先で米粒くらいの大きさになっていた。
うるさく蝉が泣く夏の日のことだった。


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