【らき☆すた】こなた×かがみPart20【こなかが】 at ANICHARA2
【らき☆すた】こなた×かがみPart20【こなかが】 - 暇つぶし2ch400:18-236
08/06/05 23:53:21 f4NPCw+E
お返事ありがとうございます。

>>364
余りに人がいない不思議な世界ですね。
地震と同時に異世界に飛ばされたのでしょうか?
こなたとよく似た少年も気になりますね。
続きを楽しみにしています。

>>389
6月の梅雨をテーマに書いてますが、遅筆のせいで6月中に投稿
できるかどうか……
がんばってみます。

>>392
シリーズは終わっても、こなたとかがみの未来は二人が共に歩み続ける限り
この先もずっと続いていきます。
二人の未来には幸せが待っていると信じてます。

>>395
もっと良い物を書けるようがんばります。

>>397
諭吉さんが(物欲的に)嫌いな人はいませんからね

401:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/06 00:21:15 PpdiDJEa
>>396
GJ!確かにお金は・・ねw
でもかがみ…肝心な言葉を聞き逃しちゃダメじゃないか!!

402:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/06 01:35:54 Q3eAVnRN
>>397
た…確かにあの男になら誰もが魅了されるわw
たとえ目の前にかがみんがいようとも!どうしても想わざるを得ない魅力を秘めたあの男ならしょうがあるまい…

403:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/06 02:34:39 a48aAfk9
ゆきち「でも所詮、もらうのは物欲愛だけなんだよね、俺……」







かがみ「こなた、けったいなお面かぶってなにやってんの?」
こなた「(面をぬぐ)真実の愛にはかなわないってことだよかがみん(抱きつき)」
かがみ「ちょ……もう……ばか……(///」

404:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/06 02:36:42 10fKuSaj
>>403

>かがみ「こなた、けったいなお面かぶってなにやってんの?」

一時期流行ったターバン諭吉@お札折り紙が脳裏に浮かんだw

405:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/06 03:40:06 PpdiDJEa
>>404
俺は折り目をつけたお札を思い出したよ…w

406:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/06 07:27:32 FpuxdVAy
ぽつり。
授業中に落ちてきたそれは、とても憂鬱な気分にさせてくれて。
「雨、か」
雨は正直好きにはなれない。
どうしたって嬉しくはならないし、濡れるのは欝陶しい。
傘はなぜああいう構造になっているんだろうか。
足元がどうしても濡れてしまうような欠陥品。
……まあ、だからってないよりはずっとマシなんだけれど。
とりあえず私は、濡れるのが大がつくほど嫌いなのだ。
そういえば、私は傘を持ってきてるからまだ濡れずに済むけど、こなたはどうなんだろう。
忘れているかもしれないし、忘れていないかもしれない。
授業はもう六限目で、これさえ終われば放課後だ。
裏を返せば、この授業が終わったら帰らなくてはいけない、という意味で。
部活になんて入っていないから、雨が止むまで時間を潰すなんてことも出来ない。
本当に忘れていたらどうするのだろうか。
というか、こなたが傘を忘れている事を前提に話を進めているが、実際はどうなんだろう……。
あれ? 何だか思考がループしている気がする。
ううん、このままだとどんどん深みに嵌まりそうだ。
いっその事、聞いてしまえば楽になるのだが、授業中なのでそれも出来ない。
―早く、放課後にならないかな。


 ◆

授業、ホームルームが終わって放課後。
「かがみ様ー」
鞄に荷物を入れていざ行かん、とした所でこなたが来た。
「びっくりした」
聞こえないように口の中だけで呟く。
「お願いがあって来たんだけどさー」
「ん? 何?」
変な予感がする。こいつ、まさか―
「実は傘忘れちゃってさ」
「やっぱり忘れてるのかよ……」
そう呟くと会話を中断し、きょとん、とこちらを見上げてくるこなた。
「やっぱり?」
「あんたの事だから忘れてるかな、と思ってね」
と、言ってやるとさっきの顔とは一変、ふうん、とにやける。
「つまり、かがみは私の事が気になって仕方がなかったと」
「何でそうなるのよ!」
そしてこなたは、にやけたまま、そんなふざけた事を言い放った。
いや、気にしてたといえば気にしてたけれど、言われるとなると話は別だ。
「だって私、ホームルーム終わってから速攻で来たもんね」
考える暇なんてあった筈がないのだよ、と胸を張りながら続ける。
「だから、かがみが考えてたのは授業中かホームルーム中だけになるって事」
「それは、そうだけど……」
む、と睨みながら―と言っても恐らく赤くなっているので迫力は無いかもしれない―反論する。
と、こなたはにやついた笑いを止めて、
「まあ、冗談はここまでにして―傘、入れてくれない?」
なんて、提案をした。


407:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/06 07:29:14 FpuxdVAy
「入れる?」
普通に貸して、と言えばいいのに? と聞き返す。
「そ。だってかがみ、今日折りたたみ傘持ってきて無いんでしょ?」
「そうだけど……何であんたが知ってんのよ」
「つかさに聞いたー」
「あ、そっか。つかさと私は今日持ってきてないんだっけ」
今日は鞄が重かったし、持って行かなくてもいいか、なんて言ってたんだ。
「みゆきは? みゆきは持ってきてそうだけど」
「それがさ、なんか、借りるのが心苦しくて……」
申し訳なさそうな顔をしながら頬を掻く。それを見て私は、
「私に入れてもらうのも心苦しいと思えよ」
つい、突っ込んでしまった。
言っている事は何となく分かるのだが―条件反射って恐ろしい。
「だってかがみは私の嫁じゃん? 頼み事なんて当たり前でしょー?」
わざとらしく語尾を延ばし、その一言を強調する。
しかし、その、わざとらしく強調されたその一言は、問題発言以外の何物でもなくて。
「誰があんたの嫁か!」
「かがみが私の嫁だ!」
「な、あ……!」
そこまではっきりと返されると、なんというか、言葉に詰まる。
こなたは真っ赤になっている私を見つめ、ほんの少しだけ考える素振りをして、体を翻した。
「じゃ、異議もなくなった所で、帰りましょうか」
「え、ああ、うん。帰ろっか」
もちろん、異議が無い訳じゃなくて―むしろ全身全霊をかけて唱えたい―けれど、
このまま話を続けても、私にとって不利な状況にしかならないと思うし、追求はしない。
……よく考えたら教室の真ん中でなんて会話をしてたんだろう。
ああ、顔の温度がまた上がった気がする。
こなたが後ろを向いてくれていてよかった。


 ◆

昇降口に着くと、雨が地面を叩く音が一層強く聞こえた。
「うわー、すごい雨だねー」
「そうね。この中を帰ると思うと……」
考えるだけでも嫌だ、とため息を吐いて肩を落とす。
「だよね、相合い傘だと厳しいかもしんないよね」
「――――はい?」
硬直。思考が復帰しないまま言葉を紡ぐ。
「な、あ、相合い傘……っ!?」
「え? だって一緒の傘に入るんでしょ?」
それ以外の何になるの? とでも言いたそうな目で見つめられた。
「そ、それは、そう、だけど。その、えっと」
あわあわしながら反論しようとするが、何も言葉が浮かんでこない。
「あー……、落ち着いてかがみ。はい、深呼吸深呼吸」
吸って、吐いて。吸って、吐いてを繰り返す。
―うん。少しだけど、落ち着いた。


408:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/06 07:33:47 FpuxdVAy
「……何で、わざわざそんな言い方するのよ」
「他の言い方が思い付かないから、とか?」
「む、確かにそうだけど……」
そう言われると、他の言い方が見つからない。
いや、でも、恥ずかしいし、もっと別の言い方は無いものか……。
「んじゃ、相合い傘しよっか」
「今すぐみゆきに傘借りろ!」
びしい、と音がしそうな程に指を突き付けて言う―というより、それは、叫ぶに近かった。
「んー? みゆきさん達もう帰っちゃったよ?」
「なあっ!?」
予想外だ。というより今の今まで気付かなかった私に突っ込みたい。
「どっか寄る所があるんだって」
「つかさとみゆきが?」
こんな雨の日にあの二人で寄るところとは、どこだろうか。
「うん。多分、無駄話してるうちに帰っちゃったと思うよ」
「ふーん?」
疑問に首を傾げていると、こなたは私の右腕に巻き付くような形で抱き着いてきた。
温もりとか柔らかさが右腕いっぱいに広がってってこんな事を考えてる場合じゃ―
「私達も帰ろう。雨足も強くなってきたしね」
「分かってるけど、離しなさいよ!」
軽く振るようにして、無理矢理離させようと試みる。
が、こなたは腕に合わせて揺れるだけで全く離そうとはしなかった。
「何するのさー」
「それはこっちのセリフよ」
いきなり抱き着いてきたのはこなたなのだから、こなたに否があるはずなのではないか。
「ほらほら、とりあえずもう傘ささないと濡れちゃうよ?」
「え、あ、ホントだ!」
意味のない問答をしてるうちに、昇降口を出かけていた。
急いで傘をさそうと試みるけれど、
「って、離れてくれなきゃ、させないじゃない」
ワンタッチで開くタイプだったらよかったのだろうけれど、これは違うのでそうもいかない。
むう、と不服そうな顔をして離れるこなた。
「傘さしたらすぐにさっきの体制だからね?」
離れたのはいいものの、そんな提案をするこなた。
「……異議は?」
「却下します!」
これはもう何を言っても駄目だな、と諦めて、
躊躇いつつも傘を広げ、抱き着きやすいように右腕を広げる。
「ほら、おいで」
その一言がどこか気になったのか一瞬目を見開いき、辺りを見回した。
「ねぇ、かがみ……無自覚?」
「え?」
何が? と視線で聞くけれどこなたは、はあ、とため息をついて俯くだけで。
「何よ。ため息吐くと幸せが逃げるわよ?」
その様子が何となく気に入らなかったので、皮肉っぽく言ってやった。
「現在進行系で逃げてる感じがするよ……」
はあ、とため息もう一つ。
さっきまでの妙なはしゃぎ様が一瞬で洗い流されてしまったような、そんな感じ。
「あーもう、何が何だか分かんないけど行くわよ」
さっきとは逆に、こなたの左腕を取るようにして昇降口を出る。
「―――」
ぼそり、とこなたが何かを呟いたように聞こえたけれど、私の耳にその

409:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/06 07:39:17 FpuxdVAy

 ◆

雨の中を歩く。いくらこなたが小さいからといっても、傘に収まりきる事は無くて。
「やっぱり、濡れちゃうね」
「そうね―もしかしたら、これってささなくても一緒なんじゃ……」
足元はもとより、肩までもぐっしょりと濡れてしまっていて、
これだったらいっその事無い方が……とも思ったけど、それには抵抗があるというか。
「まあ、いいじゃん。せっかくの相合い傘だし」
「まだ言うか!」
顔を背けながら突っ込む。
そのせいでこなたの顔は見えないが、にやにやしているのだろう声で、
「だってチャンスだしね」
と、意味不明な事を口にした。
「チャンス?」
その一言がなぜか気になって、背けていた顔をこなたに向け、尋ねる。
一瞬見えた顔は本当に嬉しそうで、しかし、私が見ていると分かった途端、
「うあ! ちょ、待って! 今の無し!」
顔を赤くしながらわあわあ騒ぎだした。
「…………何よ?」
「だから、今の無しだって!」
いや、そう言われても、気になるものはどうしても気になるというか。
「そんな反応されたら気になるに決まってるじゃない」
「それでも駄目! 記憶から消し去って!」
うああ、と唸りながら右手で自分の頭を抱えている。
「そこまで言うならいいけど……力、緩めてくれない?」
さっきからギリギリと締め付けられているせいで、右腕が痛い。
「わ! 知らないうちに力込めてた! ごめん!」
「別に、気にはしてないけど―少し落ち着きなさい」
さっきからの騒ぎ様はちょっと異常だとしか思えない。
「はい、深呼吸」
数回呼吸するものの、こなたの顔の赤みは増していくばかりで。
「駄目だ……余計落ち着けない」
「何でよ」
こなたは眉を寄せて思案顔をすると、赤い顔のまま呟いた。
「……秘密」
「あ、そう」
いつもとはあまりにも違う様子。
それをあまり追求するのは悪いかな、と思い、そのまま歩く事にした。

「―いつか、言うから」
「……そう」

ぽつり。
降りしきる雨の中でも、こなたの言葉は綺麗に響いて、私の耳に届いた。
うん。追求はしないけれど、絶対に忘れてはやらない。
心なしか弱くなった雨の中を歩きながら、たまには濡れるのも悪くはないかな、と思った。




410:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/06 07:45:24 FpuxdVAy
 日が傾いた頃、なんとか身動きが取れるまでに片付けた後、やはり心配になり
家に帰ろうとしたのだが、こなたの家から一歩外に出ると、眼前に広がる光景に
私は言葉を失った。
ズタズタに引き裂かれた道路とおびただしい数の瓦礫、周囲には半壊した家屋…。
私の見知った街の風景は既に失われていた…。
この様子だと交通機関は麻痺しているだろうし、歩いて帰ろうにも一苦労しそうだ。
殆どの行動が制限されているとなると、不安は更に大きくなった。
私はふと視界に入った、路上駐車してあったと思われる大破した車両を一瞥すると、
踵を返して再び玄関の中に戻った。

 居間に行ってみるとこなたは暢気に漫画を読んでいた。まったくいつもと変わらない
というか、冷静というか…。将来大物になる気がする。

「こんな時に漫画なんてある意味尊敬するわ…。」
「んー?だってじたばたしてもしょうがないしー。電話もまだ回線混み合ってる
みたいだし…。ってか帰るんじゃないの?あっ、それとも私と居る方がいいとか?」
「はぁ…。外の様子を見てみれば戻ってきた理由が分かるわよ。いくらあんたでも
アレを見たら事の重大さが分かるわよ」
「何それ?そんなにやばいの?」
「まぁ見てみれば分かるわよ」

私は呆れながらもこなたに外の様子を見るように促した。
百聞は一見にしかず。自分の目で直接確かめた方が分かりやすいだろう。
実際に玄関まで連れて行って外に案内すると、余裕に満ちた表情は
驚愕へと変わった。

「ふひゃあ~、こりゃ一大事だね」
「これで事の重大さが分かったでしょ?とても帰れる状況じゃないわ」
「家が潰れなかったのは運がよかったのかな…。近所の人たち大丈夫かなぁ」
「そういえば周りに人が居る気配をまるで感じないわね…?みんな避難しちゃったのかしら」
「避難ってどこへ?これだけ荒れ果ててると移動するだけでも難しそうだよ?」
「それならまだ近くに誰か残ってるはずよね?随分静かだけど…」
「じゃあ…探してみる?」

 そんなわけで私達は静寂に包まれた街を当ても無く生存者を探しに行く事にした。
しかし歩みを進めても見えてくるのは根元から折れた電柱や斜めに傾いたビル、
道路には穴とも形容できる巨大な亀裂。遠くには火災が発生したのか黒い煙が何本か
空に向かって伸びている。空はいつの間にか曇った灰色と仄暗い夕焼けが混じっていて
太陽が霞んで見える。聞こえてくるのは裂けた路面からむき出しになって破裂した
水道管から噴き出している水の音、そこかしこで起きている火事の
轟々と燃え盛る音だけだった。
…あまりこういうことは考えたくないが、無事な人はあまり多くないだろう。
駅にも捜索の足を伸ばそうとしたが、断層が起きたのか
道路がごっそり分断されて行く手を阻んでいて、これ以上の捜索を断念した。




411:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/06 07:50:27 FpuxdVAy
「…誰も居ないね…。まさか生き残っているのは私たちだけ?」
「じゃあやっぱりあの時みんな…?嘘でしょ…。つかさ、お母さんにお父さん、
姉さん達は無事なの…?」

何も連絡を取る手段がないだけに不安が膨れ上がっていく。
私はその場でへたり込んでしまった。

「なんで…こんな事に…?これからどうすればいいの…?」
「ごめんね…。私が誘わなければ今頃は…」

こなたが申し訳無さそうな顔をしながら寄り添ってきた。
確かに家に居ればつかさたちと一緒に居られたかもしれない。
だけどこんなことが起こるなんて誰が想像できる?
それに私が居なかったらこなたは独りでどうなる?
あんな状況でも暢気に構えていられたのは私がいるからじゃないの?
強がっているけどきっと心の中では不安がってる。
おじさんはともかく、ゆたかちゃん達が無事なのかどうかも分からないままだし…。
こんな時にまで私に気を使うなんてこなたらしくない。

「どうして謝るのよ。こんな事が起きるなんて分かるわけないじゃない」
「たいした事無いってずっと軽く考えてた。外の様子を見るまでは…。
すぐにまたいつもの日常に戻れるって思ってた。
私、かがみの気持ちも考えずに軽率だった…。ごめん…」

うな垂れている所為でアンテナのようなアホ毛がいつになくしょげかえっている。

「何言ってるのよ。地震の時、あんたは私を不安にさせまいとわざと
あんな風に振舞ってたんでしょ?辛いのはあんたも同じなのに私は
自分の事で一杯になってしまっていたわ。だからお互い様よ。
それよりもこれからどうするか考えましょう」
「かがみ…」
「じめじめするのはもう終わり!とりあえず戻るわよ」

 こなたの家に戻った頃には、太陽はすっかり沈んでしまって、
街が深い青に染まろうとしていた。

「うぅ~寒い…」
「日が沈んだら一気に冷えるわね」

明かりをつけようと壁のスイッチを押したのだが、照明器具がうんともすんとも云わない。
そう、電気の供給がストップしているのだ。

「げ、最悪…。停電までしてるなんて…」
「完全に暗くなる前に蝋燭か何か用意しよう」

 薄明かりの中を必死に探し回って、仏壇に使う蝋燭と懐中電灯を調達することに
成功すると、こなたの部屋で幸いにも常備してあった乾パンをかじりながら
これからの行動を話し合うことにした。




412:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/06 07:53:47 FpuxdVAy
「はぁ~…これじゃ冷蔵庫の中身もパーかぁ。保存食は一応あるけどいつまで持つか…
それよりかがみん、寒いよぉ~!」

そう言うとこなたがドサクサに紛れて抱きついてきた。こなたの言うとおりこれはかなり
きつい。暖房器具が使えないのは相当な痛手である。

「ちょ、こんなときになにじゃれてんのよっ!でも確かにこのままじゃ寒さで体力が
消耗されるわね。いいわよこのままでも。別に特別な意味はないからね?」
「そう言いながら抱き返してくれるツンデレかがみんが大好き~」
「いや普通に寒いだけだから…で、これからどうする?ここに留まっても
どうにもならないわよ?」
「そうだねぇ…水道にガス、その他諸々が使えないのはかなりやばいね」

それは先程見てきた街の有様を目の当たりにすれば言わずもがなである。
町が機能停止とあらば確実にまずい。

「復旧なんてとても見込めるものじゃないし、かといって救援を待つにも
いつ来るのかしら…」
「まぁ災害の発生した当日に来るのはまずないね」
「この被害がどの範囲まであるのかも分からないわ。情報があまりにも少なすぎるわ。
ラジオとか無いの?」

こういうときにこそ役立つのがラジオである。目や足の届かない場所の情報の把握には
昔からそれと相場が決まっている。ところがこなたは何故か重い面持ちで答えた。

「あるよ。…でも有っても無駄だと思うな」
「なんでよ?電池切れてるとか?」
「そうでもないよ」
「何よ?何か知ってるならもったいぶらずに教えなさいよ」
「実はさ、かがみが帰るって出て行ったあとにテレビつけてみたんだけど
使えなかったんだよね。そこで停電してる事に気が付いたんだけど、
一時的なものだと思って敢えてその時はかがみには言わなかったんだ」

まだ遠まわしに言うこなたに痺れを切らして私は迫った。

「だからそれがラジオとどう関係すんのよ?」
「まぁ最後まで聞きなよ。そこでラジオをつけてみたんだけど、
どの周波数帯に合わせてもノイズしか流れてこなかったんだよね」

こなたは片隅に置いてあるラジオを指差してそう答えた。

「単にアンテナの向きとかが悪かっただけじゃないの?」
「もちろん色々試したよ。でもやっぱり結果は変わらなかった…」
「…使えないって事?」
「まぁそうなるね。携帯も未だに通信不能だし、これは電波障害が
発生してるとしか」
「何よそれ…ただの地震でそんなことがあるわけ?」

次第に私は言い知れぬ不安がこみ上げてきて眉を顰めた。
半信半疑で携帯電話の液晶画面を確認してみると地震の時には
気が付かなかったが圏外と表示されていた。




413:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/06 07:57:37 FpuxdVAy
「何これ…こんなに開けた場所で?」
「ほらね?表示されてる時刻もずれてると思うよ。修正効かないままだし」

こなたも一緒に覗き込んで時刻表示の部分を指差しながら説明した。

「これじゃまるっきり隔離されてるようなものじゃない!助けを呼ぶことも
出来ないなんて八方ふさがりだわ」
「まだ行動の選択肢はあるよ。近くの避難所に行ってみよう」
「この辺にそんな場所あるの?街があの状態だと安全そうな所なんてあるとは
思えないんだけど…」
「あの時点で誰も居なかった事を考えるとこれはみんなどこかに避難
してるんじゃないかな」
「それは私もそう信じたいけど…。でも何かおかしくない?私達が家にいた
時間なんて二、三時間くらいよ?そんな短時間で街中の人全員が避難できるかしら?」

かなりの範囲を捜索したけれど、いくらなんでも静か過ぎる。
誰か一人くらいは見かけてもいいはずである。

「ラジオとかがあんな状態だと避難勧告も伝わらないだろうし、すぐには
動けないだろうね。何より最初は何が何だか分からないと思うし」
「でも実際は誰も居ない…」
「となるとここはみんな避難してるって考えるのがセオリーかな。
少なくとも私はそう信じたいよ」
「あんたにしてはいやに前向きね。まぁそうでもしなきゃやってらんないか」
「それで避難所の事だけど、私が通ってた中学校が近いんだよね」
「中学校?じゃあ街の人たちもそこに集まってるのかしら」

 中学時代については今まであまり話題に上がらなかったので、私はこなたの
通っていた中学校に少しばかりの好奇心が湧いた。
私やつかさと出会う前のこなたを知るいい機会だと思った。

「あそこなら必要なものも揃ってると思うし、行って損はないかと」
「このままここに居ても仕方ないし、行ってみる価値はありそうね」
「それ以前に学校が無事だといいんだけどね。あ、うちの学校もどうなってるんだろ」
「さすがにこの状況で授業は…しばらく無理そうね…。とにかく今日はゆっくり休んで
明日早速中学校に行くわよ。」

今後のためにも体力は極力消耗を抑えたい。明日のためにも温存したい。
私が一人で毛布に包まって寝ようとすると、

「そだねー。じゃあ今夜は一緒のベッドで寝ようっ」
「え…。窮屈でしょ?あんたのベッドなんだし、私は別に気にしなくていいわよ」
「いやいやこの寒さを乗り切るにはかがみの温もりが必要なのだよ」

こなたはそう言うと半ば強引に私をベッドに引きずり込んでしまった。

「なっ…変な事しないでよ…?」
「女同士なんだし気にしない気にしない~」
「あんたが言うと何か怪しくなるわね…」
「じゃおやすみ~」

 おバカな会話を締めくくりに明日の可能性を信じて私達は眠りに就いた…。
悪い夢なら醒めて欲しい。そう願いながら…。




414:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/06 08:03:43 xX2asZ18
ヘビィだぜ・・・

415:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/06 08:07:27 a48aAfk9
NG推奨ID:FpuxdVAy

罪状:保管庫引っ張り出し荒らし

416:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/06 08:20:33 FpuxdVAy
さて、随分と時間が経ってしまった気もするが、物語内での時間はそれ程経っていない事をまずはご理解いただきたい。
この話の目的は、こなたとかがみの2人に、恋文、ラヴレターを機関紙と偽装して書いてもらう事にあるのだが、いやはや、これが中々。
2人はダンゼン、日常に終始するあまり、そういった周囲の意図には全く気がついていない。
それに業を煮やした周りの人々がついに反逆の狼煙を上げた……

それは、やはりある日の事。
いつもの4人は休み時間に3年B組で固まりながら、「あ、これあるよね~」といった雑談に終始していた。
こなたが話す貧乳の勧めに各々頷いたり、首を傾げたりしている中、ふと、みゆきが、
「そういえば、泉さんとかがみさんは、田村さんに頼まれた例の物、完成しましたか?」
と、聞かれて、こなたとかがみは顔を見合わせて苦笑。
「いや~……それがさっぱりでね~」
「恋愛小説だっけ?」
つかさの言葉に、かがみは頷きながら、
「そうなのよ。今までロマンスの欠片もなかったのに、恋愛を題材にした小説を書けなんて言われてもね」
「ですが、田村さん……と言うより、アニ研部長の八坂さんがお決めになった納期までもうあまり時間はありませんよ?」
「そう言うみゆきさんやつかさはどうなのさ?」
「あ、私は終わったよ~」
「お恥ずかしながら、私も」
「え!?」
かがみが目を見開きながら驚きの声を上げた。
「い、一体何時、って言うかどうやって?確か2人も恋愛物を頼まれていたんじゃ」
はい。とみゆきはおっとり笑顔を浮かべながら、
「恋愛に関しましては、いい見本と言いますか、まぁ……手っ取り早く題材に出来るものがありましたので」
それはお2人です、とは絶対に言わない。
こなたは、そうかー、と唸りながら、
「みゆきさんは兎も角、つかさまで終わってるとはね」
「! (こなちゃんのくせにー!!)」
「どうしよっか、かがみ?」
つかさの心の叫びは今何処。そんなの関係なくかがみに問いかけるこなた。とは言え、かがみも書けないものは書けない。
「どうしようね」
気丈な彼女にしては珍しく眉尻を落とした。

「あのー、高良先輩、ちょっといいッスか?」
と、B組の戸口からみゆきを呼ぶのは、後輩のひよりんこと田村ひより。みゆきの事を何か怖いものを見るような目つきで、ちょっとキョドっているのは貴方の目の錯覚。
「どうかなさいましたか?」
対するみゆきは聖母の笑顔。聖母の背後に般若が見えたら、それは気のせい。
「いや、ちょっとお渡ししたいものが……」
戸口からちょいちょいとみゆきを手招きするひよりに頷くと、
「ちょっと失礼しますね」
そういってみゆきは席を外した。それを見送りながら、
「ひよりんがみゆきさんに用って珍しいよね」
と、こなた。つかさは訳知り顔で、
「風呂ジェクト、なんだよ」
因みに、正しくはプロジェクト。
「何の?」
「内緒♪」

時は移ろい、(恐らく)学校生活の中で放課後の次に貴重なお昼休みという、天上から流れ落ちる甘美な雫のような響きを持った、或いはお風呂上りに小指を立てて飲むコーヒー牛乳のような爽やかさを持った、至福の時間が訪れる。
いつもなら4人でB組の食卓を囲む所だが、今日は誰もいない。
チア等色々やって目立っているこの4人の不在はあまりにも注目を集めてしまう。それは大変よろしくない。
なので―
「布団が吹っ飛んだってね。WAWAWAWAWAWA!」
別な意味で注目を集めるよう大宇宙からの意志を受け取った漢(と書いて犠牲者と読む)が1人。クラス中から生暖かい視線を送られていた。





417:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/06 08:22:35 FpuxdVAy
ここは、屋上へと続く階段。かがみは一通の手紙を握り締め、力強く、そして時には躊躇しながら一段一段を昇っていた。
手にした手紙には短く一文。
『お昼休み、屋上で会いたい。大切な話があります』
と、だけ書かれていた。なぜかローマ字で。
お昼の直前に机の中に入っていたものだ。筆跡は知らないもの。しかし、文面から何が起こるかを察することが出来る。もしかしなくてもこれは、
(ラブレター、なのかしら)
しかし、以前修学旅行で紛らわしい手紙を出した奴が1人いたので、かがみ的には疑いたい所。しかし、卒業間近のこの時期に、しかもわざわざ手紙で呼び出しをかけるとなれば、疑う確率の方が低い。
(ラブレターでの呼び出しなんて、まるで恋愛小説みたいね)
なんて、考えながらかがみの脳裏によぎるのは、自分より17cm低くて、とても友達思いで、とても寂しがりやな、女の子。
(こなたがこれ知ったら、どう思うかな……)
チクリ、と胸が痛んだ。
屋上への扉が、何か恐ろしいものに見えた。行かなければよかったかもしれない。でも、来てしまった。
何故?もし、告白されたら断る為に。
ギィィ、と音を立て、錆付いた扉がゆっくりと開く。空の突き抜ける蒼さが目に沁みた。そして、蒼の中に蒼を見つけた。
ゆっくりと、蒼は振り返った。
蒼の中の碧が驚きに見開かれる。
「こなた―?」

こなたは、屋上に立っていた。
理由は手にした一通の手紙。内容は『お昼休み、屋上で会いたい。大切な話があります』なぜか点字で。
数々のギャルゲーを消化し、糧としてきた彼女にとってこのシチュエーションの続きは想像に難くなかった。
今時こんな手紙もなかろうよ、とは思ったが。ここまで来た。
来る途中、
(もしかがみがこれ知ったら、どう思うかな……)
と思った。チクリ、と胸が痛んだ。手すりに凭れて手紙の主を待つ。
何故?もし、告白されたら断る為に。
ギィィ、と軋んだ音がした。目を向けていた空から目を戻し、音源を見やる。
想像していたのは、男子。見も知らないどこかの誰か。
現実は、違った。逆光の影から出てきたのは菫色。ピクリ、と固まって止まる。
「かがみ―?」




418:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/06 08:24:34 FpuxdVAy
寒風吹き荒ぶ屋上。少女が2人、並んで佇む。
「こなたは、なんでここにいるの?」
「んー、何か呼び出されちゃってね。かがみは?」
「……同じ。呼び出された。手紙でね」
「おお!凄い偶然。私も手紙で呼び出されたよ」
「本当?」
「うん」
「……」
「……」
沈黙が降りた。お互いの顔を見れば、複雑な表情をしている。
「かがみを呼び出したのって誰?」
「分かんない。名前書いてないし。こなたは?」
「私も。名前書いてない」
「こういう手紙って、やっぱり……その……ラブレター、とかなのかな?」
「そうじゃないかな。ギャルゲでは良くあるシチュだし。リアルでやる人がいるとは思わなかったけど」
「やっぱり、告白とかされるのか、な?」
「う~ん……多分ね」
「……」
「……」
再び沈黙の戦艦大和。落ち着かないね、この空気。だから、それを振り払おうと沈黙と饒舌が交互にやってくる。
「「ねぇ」」
声が重なる2重奏。やや間を置いて、
「こなたから先に言っていいわよ」
「いやいや、身長序列でかがみから」
「身長序列ってなんだよ……まぁいいや。もし、こなたは、こくはく、とかされたらどうするの?」
ピクリ、とこなたの体が強張るのが分かった。
「どうって?」
「その……付き合ったり、とか、するわけ?」
「かがみは、どうして欲しい?」
「何で私が出てくるのよ」
「あ……いや、その、まぁ、私は断るよ。きっと」
「何で?」
こなたは、難しい顔をしてしばし沈黙していたが、やがて、
「だって、まぁ、めんどくさいじゃん?」
にへら、と笑った。いつも見ている顔と口ぶりに感心するやら、呆れるやらで、ほうと息を付くかがみ。だから気が付かなかった。こなたの唇が一瞬「かがみが好きだから」と動いたのに。
「かがみはどうする?」
一旦抜けた気が再び張った。何が、と聞かなくても分かる。一瞬にして乾いた唇を舌で湿らせてから、
「私も、断ると思う」
「何で?」
「それは、アンタが……」
一瞬言いかけて、しかし、頭を振ると、
「アンタと同じ。めんどくさいしね」
その言葉に、ほっと胸をなでおろすこなた。だから気が付かない。かがみが口の中で「こなたが好きだから」と呟いたのに。




419:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/06 08:26:29 FpuxdVAy
「遅いね……」
お昼休みも半分過ぎた。だが、手紙の主と思しき人物は未だに現れない。
「からかわれたのかな」
「どうだろう」
ボーっとしてるのもそろそろ飽きてきた。
「ちょっと歩かない?」
と、こなた。
「ま、何もしないで待ってるよりはマシね」
手を差し出すかがみ。2人で狭い屋上の上を散策する。
「この前話したけど、酢豚のパイナップルってどう思う?」
「いや、私はアレいらないと思うけどね」
「ふ~ン。かがみは酢豚のパイナップル嫌いなんだ」
「別に嫌いじゃないけど、存在意義が分からないのよ。だから別に嫌いじゃないわよ、別に」
「おお、ツンデレ」
「何でだよ」
「じゃ、今度作るときは入っててもいいね」
「え?作ってくれるの。酢豚」
「いや~、黒井先生に追加課題出されてね。ただ手伝ってもらうんじゃ悪いじゃん?」
「手伝わないからな」
「え~、ケチ」
「ケチじゃない!大体、普段から真面目に授業聞いてればそんなことにはならん!」
「そんな~、かがみ様手伝ってよぉ」
「えぇい、抱きつくな。泣くな!」
「メソメソ」
「……あ~、分かったから」
「ヤリィ」
「その代わり、最高の酢豚、頼むわよ?」
「まかせたまへ~」
他愛のない会話。でも、そんな日常が手紙で貰った不安を打ち消した。向かい合って笑う2人。
「そういえば、あの手紙だけどね。もし、差出人、こなただったらよかったなって一瞬だけ思った。あ、一瞬だけよ?」
「も~、かがみはツンデレだな~。私はかがみだったら良いなってずっと思ってたよ」
「ホントか~?」
「イエス!マイロード!」
「じゃ、今度出してあげるわよ、手紙をね」
「うえ?そ、それはどういう意味かな~」
「あ!いや、その……」
「ん~?かーがみん?」
「な、なんでもないわよ!!」
「じゃ、私もかがみにお手紙だそっかな」
「ええっ!?」
「愛を込めたラブレター」
「……もうっ」
照れてフイと横を向いたかがみ。と、その視界の先で何か動いた。




420:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/06 08:27:53 FpuxdVAy
「ば、バルサミコ酢~!?」
「つかさ!?」
慌てて隠れようとして転ぶつかさとそれを抱きとめるみゆきがそこにいた。
「ちょ、2人ともなんでここに?」
こなたの言葉に冷や汗を垂らしながら、つかさはアハハと笑い。みゆきはいつもの微笑を崩さないまま、
「お2人はここに呼び出されていたんでしょう?」
と言った。
「何でみゆきさん知ってんの!?」
「だって、あの手紙は私が田村さんに発注して出したものですから」
「えぇぇえっ!」
かくも驚いたこなたとかがみを等分に見やって、初めて苦笑を浮かべると、
「お2人の恋愛小説がまだ書けない、と言うことでしたので。ちょっとした演出です。実際に体験していただければ、何かインスピレーションが得られるかと思いまして」
すみません、と頭を下げるみゆきとつかさを見てこなたとかがみは何だか拍子抜けしてしまった。
散々頭悩ませて、気を揉ませたというのに。
「お叱りはいかようにもお受けいたしますので」
と、頭を下げたままのみゆきを見て、こなたとかがみは顔を見合わせると、ふう、と溜息。
「ヤレヤレ、こんなオチとはね」
「ゴメンね、こなちゃん」
「言ってくれれば良かったのに」
「すみません。驚きを以って迎えたほうが面白……ではなくて、良い案が浮かぶと思ったので」
もう一回、こなたは溜息をついて、
「ま、とりあえず色々後で考えるとして、お昼食べよっか。昼休み終わっちゃうしね」
と言って、歩き出した。つかさがそれに続き、かがみも後を追おうとしたが、
「あ、かがみさん。お話が……」
みゆきによって止められた。みゆきは、こなたとつかさの方を見やって、
「泉さんとつかささんは先に行ってて下さい」
「おk」
「うん」
バタン、とドアが閉まる。その一瞬につかさが頷いたのを確かに見届けてから、みゆきはかがみの方ヘ向き直った。
「さて―」

その頃、教室向かうこなたとつかさ。つかさの前を行き、てっくてっくと階段を下りるこなたの姿は心なしか嬉しそうに見える。
「こなちゃん、何か嬉しそうだね」
「ん~?そぉかな」
「うん。何かいい事あったのカナ?」
「いい事って言えばいい事かもね~」
「ふ~ん」
と、ここでつかさが足を止めた。その気配に気が付いたこなたが後ろを振り返る。
「ねぇ、こなちゃん―」




421:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/06 08:29:39 FpuxdVAy
―屋上。
「かがみさん。先程、もし、泉さんが本当に男性に呼び出されていたら、どう思いましたか?」

―階段。
「もし、お姉ちゃんが本当に男の人に呼び出されてたら、こなちゃんはどう思った?」

それぞれの場所で、避けていた選択を突きつけた。

どう思った?と聞かれて、考えた。
好きな人が、同じように呼び出されていると知った時。私は―
「嫌だ……」
言葉が、口から勝手に飛び出した。
「何故?」
問われて、思う。何故?Why?
だって―
「嫌だ、だって遠くに行っちゃうと思った。私が呼び出されただけだったら断ればいい。でも、もし―」
もし、好きな人が別な人を好きになったら……
「そんなの、嫌だよ」

「だったら、素直になりませんと。想いは、伝えないと」

「だったら、素直になろうよ。想いを、伝えようよ」

「でも、どうやって?」

「もし、想いを言葉に出来ないのでしたら」

「書こうよ」

「そのおつもり、だったのでしょう?」

さっき、2人でした会話。
―じゃ、今度出してあげるわよ、手紙をね
―うえ?そ、それはどういう意味かな~
―あ!いや、その……
―ん~?かーがみん?
―な、なんでもないわよ!!
―じゃ、私もかがみにお手紙だそっかな
―ええっ!?
―愛を込めたラブレター
―……もうっ

「そのつもり、だった」
目の前の親友は、何も言わずに、ただ、微笑んだ。




422:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/06 08:31:33 FpuxdVAy
後日。
アニ研文芸部合同の機関紙は無事発行された。
こなたとかがみの書いたのは、互いに対するラブレター。
文は、物語。小説だ。
恥ずかしくて素直に渡せないくらいなら、こちらに載せて読んでもらおうと。まぁ、誰かが2人に入れ知恵したのだが。

「どうですか、かがみさん。泉さんは想い人の事を考えながらその物語を書いたようですよ。ラブレターですね」

「どうかな、こなちゃん。お姉ちゃんは好きな人の事を考えながらそのお話書いたんだって。ラブレターだね」

二つの物語のタイトルは、
―私の好きなツンデレ少女
―私の愛するオタク少女

……なのだが、
「ねえ、みゆき―」
「ねえ、つかさ―」
「「―これ、誰のことだと思う?」」
……あれぇ?




423:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/06 08:46:00 GU8RsdQK
/~⌒~⌒~⌒~⌒~⌒~⌒ヽ
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r⌒ヽ|.     `二´/' ; |丶ニ |
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ヽンイ        ',.,,.`三'゙、,_  |
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   | ∵∴∵∴∵∴∵∴∴∵|
    \ ∵∴∵∴∵∴∵∴/

424:快晴の日の出来事 -午前-
08/06/06 09:10:52 LqYc0G1m
ちょっと通りますよ

>>243の続きです
今回、百合どころかこなたの影が背景コンビ並に薄いので、txt形式で貼らせて貰います
URLリンク(www.uploda.org)
pass:sage

次回か次々回くらいからようやく本編に入れると思いますので、暫し余興にお付き合いください
それと、悪い点・面白くない点などありましたら遠慮なく言って頂けるとありがたいです

425:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/06 13:13:18 aPuYei+B
バルサミコスわろたw
いい話でしたb

426:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/06 13:22:40 rez3GHfz
「かがみ~、あそぼ~よ~」
「ちょっと待って、今からこっち片付けないといけないんだから」
「え~」
 そう言って唇を尖らせるこなた。そんなこなたを見て、かがみは苦笑しながら、
「後で遊んであげるから」
 と、ポンポンと頭を軽く叩きました。
 くすぐったそうに目を細めるこなた。頭に生えている狐の耳がピクピクと動きました。
 そんな、2人の日常です。

 助けた狐が人間になった。かがみも、そしてその家族も最初は驚きました。
 ですが、昔から狐は何かに化ける動物と言われています。
 なので、神社を営んでいるかがみの家の人達は、それを狐の恩返しと、解釈しました。
 一方、狐であったこなたは、何故、人間になれたのか?そんなことは一切気にせず、ここぞとばかりにかがみに甘えてくるようになりました。
「かがみ~、あの時は助けてくれてありがと」
 そう言ってかがみに擦り寄るこなた。ですが、こなたの中で2箇所、人間になりきれていない所がありました。それは、耳と尾です。
 どういう訳か、狐の耳と尻尾だけは消えることなく、こなたの頭と腰の辺りから生えていました。
 なので、こなたがかがみに擦り寄ると、ふさふさと毛が生えた耳や尾がかがみに当るわけで、
「ちょ、くすぐったいってば」
「んふふ~。か~がみん♪」
 それでも、嬉しそうにしているこなたを見ると、ついつい口元を緩めてしまうのでした。

「あんまり足を動かすんじゃないわよ」
 かがみが言うと、こなたは、は~い、と返事をしました。
 人間になっても、足に負った怪我は治ってなくて、まだ包帯を巻いています。包帯を替えるのはかがみと、双子の妹のつかさの役目でした。
 そのつかさは、今、かがみと一緒に神社の境内の掃除をしています。
 サッサッ、とかがみが竹箒で石畳を掃き、つかさが一箇所に纏める。木々が多いここでは、必然、ゴミは落ち葉が主体になります。
 はじめは、かがみが後で遊んでくれると言ってくれたので、こなたもおとなしく階段に腰をかけ、足をぶらぶらさせていました。
 しかし段々と積もっていく葉っぱの山を見て、悪戯を思いついたのか、ニヤリと笑うと2人に気付かれないようにそっと、立ち上がりました。




427:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/06 13:25:33 rez3GHfz
「お姉ちゃん、これぐらいでいいかな?」
 一通り境内を掃き終えて、かがみが、ふぅ、と息をついたところでつかさが話しかけました。かがみは辺りを見渡して、
「そうね。屋台の設営場所とかが綺麗になっていれば、とりあえずはいいと思う」
 その時です。掃き溜めた山から一抱え葉っぱを持ってきたこなたが、2人に勢い良く、それを被せました。
「わっ!?」
「きゃっ!?」
 狼狽する2人を見て、こなたはニコッと笑うと、
「驚いた?」
「~~~っ、こなた~っ!!」
 かがみが、勢い良く拳を振り上げると、こなたは「かがみが怒った~っ」と、楽しそうに逃げ回り始めました。
「待ちなさいっ、こなたっ!!」
 追いかけるかがみ。ですが、こなたの足は早く、また、元が狐なためか非常に俊敏で、中々捕まりません。
「ここまで、おい……痛っ!」
 と、突然うずくまったこなた。かがみが追いつくとこなたは足を押さえ込んでいます。
「痛いよ~、かがみ~」
「はぁ……だからあんまり足を動かすなって言っといたのに―ほら」
 一つ息をついて、かがみはこなたの肩と腰を抱えると持ち上げました。
「傷口が開いちゃってるか、ちょっと包帯外して見てみなくちゃね」
「うぅ~……」
 ショボン、と目じりを下げるこなた。それと一緒に耳もぺたんと寝てしまいました。
「全く、なんであんなことしたのよ」
 かがみが言っても、こなたは目を合わせようとはしません。不安そうに尻尾が揺れているだけです。
 そんなこなたの様子を見てつかさが助け舟を出しました。
「きっと、見ているだけで退屈だったんだよ。ね?こなちゃん」
「……そうなの?」
 かがみがこなたの瞳を覗き込むと、不安そうに揺れていたそれを伏せて、コクン、と頷くと、
「だって、後で、って言ったのに、かがみ全然遊んでくれないんだもん」
 寂しそうに、そう呟きました。
 そんなこなたの様子に、つかさは苦笑しながらかがみの方を向いて、
「ここは後、私がやっておくから、お姉ちゃんはこなちゃんをお願いしてもいいかな」
 と言いました。それを聞いてこなたは顔を上げると、
「かがみ……?」
「……分かったわよ。ほら、こなた、つかさにお礼言いなさい」
「うん。つかさ、ありがと」
「ううん。気にしないでいいよ」
 そして、つかさを残して、2人は家の方へと戻りました。




428:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/06 13:32:36 MVWzrrNN
「はい、じゃあ、足を見せて」
 かがみがそう言うと、こなたは借りている巫女服の袴の裾を持ち上げて、傷口が見えるようにしました。
「あ~、やっぱり、ちょっと傷口開いちゃってる」
 ちょっと待ってて、と言うとかがみは家の奥の方へと引っ込んで行きました。後に残されたこなたは特にすることもなく、畳敷きの部屋の中を見渡しています。と、
「あら、こなたちゃんじゃない」
 かがみが向かった方とは別の方から、かがみのお母さんの柊みきが盆にお茶とお菓子を乗せて現れました。
「あ、おば……」
 さん、と言おうとした時、一瞬背筋が寒くなった気がしたので、こなたは会釈をしておくだけに留めて置きました。
 みきは、盆を傍の机に置くとにっこりと微笑んで、
「こなたちゃんも、大分人間の言葉について覚えてきたようね」
 と言いました。
「ところで、こんな所でどうしたの?かがみとつかさは?」
 みきが不思議そうに呟くと、こなたは足元の傷口を指しました。それを見て、みきは納得したようで成る程、と頷きました。
「痛くない?大丈夫?」
 と、聞かれて、少しこなたは後ろに下がりました。
「どうしたの?」
 みきが訝しげに眉を顰めます。こなたは、耳と尾の毛をピンと張り詰めさせて、
「人間は、嫌い」
 と、言って四つん這いになると、姿勢を低くし警戒の意を示しました。
 それを見て、みきは苦笑すると、
「あらあら。どうして?」
「だって、人間は私達を罠にかけたり、大きな音を出す棒を持って追い立てるから」
 こなたは、更に姿勢を低くして、唸り声を上げました。その様は、人間になった狐といった佇まいは消えて、元の子狐のようにも見えます。
 ですが、みきは、その様子を見ても動じません。ふっと笑うと、
「じゃあ、かがみは?」
 と、聞きました。
 すると、こなたの張り詰めていた緊張がほぐれ、立っていた毛も元通りにぺしゃりと寝ました。頭頂の一房だけは立ったままでしたが。
「かがみは、好き。人間だけど、優しいし。ツンデレだし」
「え~と……それは狐の言葉、なのかしら?」
「それにね、かがみといると、温かい。ずっと一緒にいたいって思える」
 そこまで言って、でも、とこなたの耳がぺしゃっと寝ました。
「かがみは、私のこと、どう思ってるのか分からない。私、迷惑かけちゃってるよね。自分勝手な狐だし、怪我もしてるし……でも、かがみといると楽しいから、だから……」
 ぐすっ、と鼻を啜り上げ始めたこなたを、みきは制しました。そして、
「大丈夫よ、こなたちゃん。かがみは素直じゃない所もあるけど、きっと」
「きっと?」
 それには答えず、みきは目線を横にずらしました。つられて、こなたもそちらを見ます。すると、
「ゴメン、お待たせ。中々替えの包帯が見当たらなくて。あれ?お母さん?」
 かがみが戻ってきました。みきの姿に一瞬訝りましたが、直ぐにこなたのところに向き直ると、
「大丈夫?痛くない?直ぐに包帯を替えるから」
 そう言ってこなたの足元を優しく両手で包みました。はっとして、こなたがみきを見ると、みきは微かに頷きました。
「あ、そうそう。かがみ、包帯を替えるなら先にお風呂に入れちゃったほうがいいわよ?」
「それもそうね。傷回りも洗わないとだし」
「……え?」




429:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/06 13:36:15 MVWzrrNN
「こらっ、こなた!暴れないの!!」
「ちょっ、かがみ!?ダメ、お湯だけはダメ!!」
 お風呂場、ちょっと早い入浴です。
 かがみはこなたをお風呂に入れようと持ち上げますが、こなたは暴れて抵抗します。
「ヤダッ!毛が濡れると気持ち悪いんだよ?」
「ダ~メ。清潔にしないと傷の治りが遅くなるわよ」
 お互いに一歩も譲りません。狭い浴場の中をじりじりとにらみ合いながらこなたとかがみは間合いを計ります。
 これは、こなたが人間の姿になった初日から続く戦いです。元々、狐であるこなたは毛が濡れる事を極端に嫌います。人間の姿になってもそれは変わらなかったようです。
 しかし、元は野生の子狐。外に出れば泥だらけになるまで駆けずり回ります。それで家に上がられては困ると、無理を承知でこなたをお風呂に入れるのです。
「うぅ~……かがみにはあの気持ち悪さが分からないんだよ」
 こなたが呟くと、かがみは組んでいた腕を解いて、
「そうね、そんなに嫌なら強制するのも悪いかしら」
 と言いました。それを聞いてこなたも、ほぅ、と息を吐きました。
「良かった……」
 無い胸をなでおろしたこなたを見て、かがみは少しだけ微笑みました。
「ちょっとこなた、こっち来なさい。頭撫でてあげるから」
「ホントッ!」
 疑うことなく、こなたはかがみの胸に飛び込みました。お風呂場なのでお互い何も身につけていない状態です。ポフッ、と音がしました。
「ん~、かがみん柔らかい」
「く、くすぐったいってば」
 すりすりと頬と耳をかがみに擦り付けるこなた。その時です、密着した状態のこなたの背中にかがみは右腕を回しました。
「ほぇ?」
 しっかりと捕まえて離しません。そして、かがみの左手にはお湯の入った桶。
「ぁぁぁあっ!?」
 ザパッとこなたの頭からお湯をかけました。
「うみゅぅ~!?」
 そして、こなたが逃げないように両足で挟み込むと布に石鹸を絡ませてこなたの背中を洗い始めました。
「ちょ、か、がみ……ぁ」
「じっとしてなさいよ」
 背中を流し、尻尾の付け根へ。すると、こなたの体がピクっと硬直しました。
「じっとしてなさいって」
 丁寧に、丁寧に尻尾周りを洗います。最初は強張っていたこなたの体も段々と緊張がほぐれてきました。
「次、頭洗うわよ~」
 かがみの声が届いていないのか、こなたは何も答えませんでした。それを肯定の意と取って、こなたの髪の毛に石鹸を絡ませます。
 耳に泡が入らないように気をつけて、ゆっくりと。
「(あ、耳がぴくぴくしてる)」
 こなたは先程から俯いたままで、その表情は分かりません。ですが、ぴくぴく動く耳を見ると、きっと気持ちいいんだろう、とかがみは思いました。
 そっと、こなたの耳に手を当てます。
「(うわ、狐の耳って柔らかい……)」
 ふわふわでもふもふ。そしてぴくぴく動く耳。ゆっくりと、毛並みに沿って指を滑らせます。
 こなたの体がまた強張りました。
「こなた……?」
 流石に心配になってこなたの顔を覗き込むと、潤んだ瞳と目が合いました。
 心なしか、こなたの息遣いも荒くなっているみたいです。
 こなたは、かがみを潤んだ瞳で見上げると微かな声で、
「かがみ、ずるいよ……そんなことされたら、私、私……」
 そう言ってこなたは尻尾をかがみの体に巻きつけました。そして、ゆっくりと、顔を近づけていきます。
 かがみも、こなたにあわせるように顔を近づけます。こなたが、目を閉じました。
 そして、
「にゃぅあ!?」
 頭の上から、またお湯をかけました。
「はい、頭洗い終わったわよ」




430:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/06 13:42:04 MVWzrrNN
「うぅぅ~……」
 お風呂に入った後は、かがみの部屋に行って足の包帯の付け替えです。
 お風呂に入って毛が濡れたことが相当嫌だったのか、こなたはかがみの布団に丸まって唸り声を上げ続けています。
「ちょっとこなた、いい加減機嫌直しなさいよ」
 かがみが言うのに、プイと横を向いて。
「フンだ。かがみひどいよ。頭撫でてくれるって嘘までついてさ」
 と言った時です。こなたの頭をフワ、と撫でるものがありました。
「……嘘は、言ってないわよ?」
 こなたが顔を上げると、ちょっと困ったような、微笑んだような、かがみの顔がありました。
 かがみはこなたを布団から持ち上げると後ろから抱え込むようにしました。
 そして、そのまま、また頭を撫でます。
「嫌だったお風呂、頑張ったからね。ご褒美」
「かがみ……」
 また、耳がぴくぴくと動き、尾がパタパタ跳ねます。短い付き合いですが、かがみには、これがこなたの喜んでいる証だと、分かりました。
 ゆっくり、ゆっくり、こなたの蒼い髪の毛を撫で梳き、耳をかいてあげます。
 気持ち良さそうに、こなたは目を瞑りました。
「包帯替えるの、後でいい?」
 かがみが言いました。
「もう少し、こうしていたいから」
「うん」
 こなたは頷きました。そして、かがみの方を向いて、その頬をペロリ、と舐めました。
「かがみ……好きだよ」





431:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/06 13:47:33 rez3GHfz
こなたに謝る決心をした後、部屋を出てまずは朝食を摂ることにした。
あれだけ悩んでおきながら、よく食欲が出るなと我ながらあきれる。
でもまあ私らしいといえば私らしい。
何事も腹が減っては戦はできぬと言うし、食欲があるのは健康な証。
そう言い訳して前向きにとらえることにした。

部屋を出て、まずは1階に向かう。
さすがにまだ朝早い時間帯だけに、家の中は静まり返っている。
まだみんな寝てるのかな?
そう思って1階に降りると、台所からトントンと小気味の良い音が聞こえてくる。
お母さん、こんな時間にもう起きてるんだ。
早速台所へと向かった。
そこには案の定お母さんの姿が。
いつもそこにある日常の風景に、心が安らいだ。
─毎朝こんな早い時間に朝ごはん作ってくれてありがとう
恥ずかしくて素直に言えないかわりに、心の中でそうつぶやいた。

「あらかがみ、おはよう。こんな早い時間にどうしたの?」
私がいることに気付いたお母さんが、手を止めてこちらに振り返った。
「おはよう、お母さん。なんだか寒くて目が覚めちゃって」
鍋から立ち上る湯気やコンロの火のおかげで、台所は他の部屋よりずいぶん温かい。
おかげで寒さに震えずにすんでいる。
「今日はこの冬一番の寒さらしいわ。待ってね、もうすぐ朝ごはんできるから」
そう言って再び手を動かし始める。
馴れた手つきで料理を作ってゆく姿を、しばらく見つめていた。
そんな私の様子に気付いているのかいないのか、てきぱきと作ってゆく。
あっという間に料理が出来上がってゆく。
さすが、すごい手際のよさ。
料理下手な私は是非とも見習いたい。
「できたわよ」
「はやっ」
見とれている内にできたらしい。
「かがみも慣れればできるようになるわよ」
「そうかな?」
「そうよ。さあ、お味噌汁よそうから食卓に持っていってね」
「うん」
温かそうに湯気を立ち上らせるお椀を食卓に運んでいく。
「お姉ちゃんたちは?」
「もう少ししないと起きてこないと思うわ。かがみが早かったからね」
「そっか」
確かにみんな起きてくるにはちょっと早い時間だ。
つかさなんかはまたお昼におはよ~とか言いそうだけど。
「いただきます」
「はい、召し上がれ」
作ったばかりの温かいお味噌汁をいただく。
今日の寒さもあってか、普段より美味しい。
温かさが体中に染み渡り、心まで温かくなっていくようだ。





432:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/06 13:52:46 rez3GHfz

お母さんは私の向かいに座ったまま、私の顔をじーっと見ている。
どうしたんだろ。
「私の顔に何かついてる?」
「ん? かがみ元気ないなって思って」
その言葉に箸が止まる。
「……そんなひどい顔してる?」
手で顔を触って確かめてみる。
部屋を出る前おかしなところが無いか確認したんだけどな。
「顔はいつも通り綺麗なままよ。でも、何となくね」
そんなに負のオーラでも放ってたのかな。
何事も無いように振舞っていたんだけど。
お母さん鋭いから。
「別に。ただ、勉強に疲れてるだけよ」
何食わぬ顔でそう答える。
「そう……でもずっと辛そうにしてたから」
その言葉にビクッとする。
お母さんは相変わらず私を見ている。
………………
…………
……
さすがに何事も無いような顔をし続けるのが辛くなってきた。

「ふふ、素直じゃないところは変わってないわね」
「なっ」
……やっぱりお母さんに隠し事は無理か。
私が落ち込んでいるとき、最初に気付くのはいつもお母さんだった。
何も聞かずじっと私を見て、私が話すまで根気よく待ってくれた。
意地っ張りな私は、それでも隠し通そうとしたけど、いつも最後は根負けした。
「はぁ、私の負けです」
あっさりと負けを認めた。
相手が悪すぎる。
それに、お母さんと話せてどこかホッとしている自分がいる。
「かがみのことは何でもお見通しよ」
そう言って、微笑んだ。



433:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/06 13:54:53 rez3GHfz
そのまましばらく沈黙が続く。
なかなか本題を切り出せないまま、時間だけが過ぎていく。
……ただこなたと喧嘩しただけ。
それだけを伝えればいいのに、なかなか切り出せない。
……
ただ喧嘩しただけ?
それだけでこんなに悩んだりしない。
ほんとは、私……

一人うつむきながら、ずっと悩んでいた。
お母さんは、そんな私を焦らせることもなく、ただじっと優しく見守ってくれている。
私の心に無理に踏み込もうとせず、かといって遠くはなれることもせず。
私が自分から自然に話せるよう、ずっと待ってくれている。
その心遣いがとても嬉しい。
うつむいていた顔を上げお母さんの顔を見ると、目が合った。
相変わらず優しい眼差しで私のことを見てくれている。
どこかこそばゆい感じがしたけど、私もお母さんの目をしっかりと見返した。
しばらく静かな時間が続く。
そこに言葉はない。
でも、確かな信頼関係がある。
─大丈夫、かがみならできるから
いつもそうやって私のこと励ましてくれた。
言葉なんかなくても、お母さんの気持ちは伝わってくる。
これまでもずっとそうやって見守ってきてくれたから。




434:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/06 13:55:59 rez3GHfz

お母さん……
私の信頼できる人。
私の尊敬できる人。
いつも優しい眼差しで……
私を信頼してくれて……
私のことを大切に思ってくれて……

「……ぐすっ」
気が付けば涙が流れていた。
これまでずっと一人で辛い思いを抱えてきた。
一人で解決できると思ってた。
でも……無理だった。

お母さんは私のそばまで来ると、そのまま何も言わず優しく私を包み込んでくれた。
久しぶりに感じる、人の温もり。
懐かしいお母さんの匂い。
それらを感じた瞬間、心の奥に隠れていた感情が一気に表に溢れ出た。
「……うぅぅ、ぐすっ、……」
涙が止まらない。
いつもの冷静な私からは考えられないほど、感情のコントロールが効かない。
そのまま私は子供のように泣きじゃくった。
お母さんは何も言わずに背中をさすってくれる。
その手の温もりが、凍てついた心を徐々に、徐々に溶かしてゆく。
体を包み込む温かさが、こんなにも安らぎを与えてくれる。
これまで感じていた頭の重さが嘘のように消えていった。

こんなに単純なことだったんだ。
一人で抱えているときは、もう治らないかと深刻に悩んでいた。
でも、こんなにも簡単なことだったんだ。
人と触れ合うだけで、こんなに心が癒されるなんて知らなかった。



435:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/06 13:57:30 rez3GHfz
「誰でも隠しておきたいことはあるから、無理に言わなくてもいいわ」
「うん」
「でも、一人で抱え込まないで。かがみはいつも一人で無理するから」
「……ごめんなさい」
迷惑かけちゃいけないと、いつも自分ひとりで問題を解決しようとしてきた。
解決できない時には誰にも言わず我慢する。
そうやってずっと隠す癖がついてきた。
今回も何とかなると、自分だけで解決しようとした。
でも無理だった。
だって、……今回は特別だから。

「大丈夫よ、かがみならきっとできるから」
「うん」
「それに、いつでもお母さんはかがみの味方だからね」
「……うん」
その言葉にまた涙が出そうになった。
こんなとき、どういう風に今の気持ちを伝えればいいんだろう。
不器用な私には、上手い言い回しが浮かんでこない。
だから、ありきたりな言葉でごめんなさい。
短い言葉だけど、だからこそ、ありったけの感謝を込めて言わせてください。

「ありがとう、お母さん」

─と。





436:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/06 14:00:08 MVWzrrNN
★☆★☆

「はぁ、はぁ、……やっと着いた」
肩で息をしながら目の前に立つ大きな鳥居を見上げた。
これでようやく一息つける。
名も知らぬお母さんと別れた後、そのままかがみの家に向かうことにした。
ずいぶん前に歩いていった時のことを思い出しながらだったので、途中何度も道に迷ってしまった。
さすがにスポーツが得意な私とはいえ疲れた。
こんな大雪の日にマラソンをする人間なんて、私以外いないだろう。
さすがの私も走る羽目になるとは夢にも思わなかったけど。
それもかがみに会いたかったから……て、考えていて恥ずかしくなってきた。

神社に着いたのはいいけど、これからどうしよう。
ここまで来たんだから、かがみに会わない手はないのだけど……
でも、こんな朝から何の連絡もなしに会うのはやっぱり気が引ける。
そうだ、携帯……、しまった、忘れてきた。
いつもの習慣が災いしてしまった。
こんな朝早くから家のインターホンを鳴らすわけにもいかないし……
勢いで来てしまったけど、どうしよう。
それに会ってもなんて言えばいいのか分からない。
後先考えずに来てしまったことを、少し後悔した。

どこかで時間を潰そうかな。
そういや、いつもかがみの家の中ばっかりで、神社を歩くことは余りなかった。
普段見慣れている様子とは異なり、白く雪化粧された境内を見ながらふとそんなことを思った。
いつもなら何人か近所の人が参拝に訪れているんだろうけど、今日の大雪のためか誰もいない。
さっきのマラソンもそうだけど、さすがにこんな雪の日の朝早い時間帯に訪れようと思う人間は、私以外いなかったらしい。
まだ足跡の付けられていない雪の降り積もった境内の先にぽつんと立つ社殿が見える。
しばらく悩んだ後、とりあえず神社にお参りすることにした。

これまで神社にお参りすることなんて初詣を除いてほとんどなかったけど、せっかく来たんだから何かお願い事でもしていこう。
神様とか特に信じるほうじゃないけど、何の神様が祀られているのかなんて知らないけど、ちょっとしたお願い事ぐらいしてもいいよね?
そう思いながら、拝殿の前に立った。
「これを鳴らすんだっけ」
からん、からん、と澄んだ鈴の音が辺りに響き渡る。
詳しい作法は知らないので、そのまま何度か手を打った後、手を合わせてお願い事をした。
願いはたくさんあるけど、とりあえず無難なところからしてみることに。
「えっと、かがみが無事目標の大学に合格できますように」
私がお願いするまでもなく、かがみなら大丈夫なんだろうけど、一応ね。
「それと、私も無事大学に合格できますように……って、自分で頑張らなくちゃいけないんだけどね、ハハハ」
お願いするよりは自分で努力するべきなんだけど、別にいいよね。
「それから、かがみと無事仲直りできますように」
顔を引き締めて改めてお願いをする。
そのために今日来たんだから。
あと、最後のお願い。
「その……私の……伝わりますように……」
恥ずかしくてちゃんと言葉に出せなかった。
心なしか顔が赤くなってる。
けど、神様はお願いを聞いてくれたよね?
かなわない願い、そんなものがあるからみんな神様にお願い事をするんだよね。
だから、私もお願いします。
どうか、願いをかなえてください……





437:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/06 14:02:21 MVWzrrNN


久しぶりに泣いた後、これまで塞ぎ込んでいた気持ちがずいぶんと晴れた。
でも、まだ問題は解決していない。
お母さんにお礼を言った後部屋へ戻り、早速こなたと連絡を取ることにした。
携帯の着信履歴の中からこなたの名前を探すのに少し手間取ったけど、すぐに見つかった。
目的の名前を見つけ、発信ボタンを押そうとする。

こんな時間に電話かけてこなた何て言うかな……
いや、そもそもこんな時間に起きてるかな……

色々心配ごとが頭をよぎったけど、それを振り切って電話をかけることにした。
勇気を出して発信ボタンを押してみる。
プルルル、プルルル…………
「……おかけになった電話は、電波の届かない場所にあるか……」
お決まりのアナウンスが流れる。
出鼻をくじかれ落ち込みそうになるも、これは想定内。
こなたが携帯を余り使わないのは知っている。
今度は直接こなたの家に電話をかけることにした。
プルルル、プルルル…………
何度かの呼び出し音の後、こなたのお父さんが電話に出た。
「はい、もしもし、泉ですが」
「あ、もしもし、朝早くからすいません。柊と申します」
「ああ、こなたの友達のかがみちゃんかい? 久しぶりだね」
「はい。さっきこなたの携帯に電話したんですけど、出なくて」
「こなたなら朝早くから出かけて行ったよ。相変わらず携帯を持っていくのを忘れたんだな」
「えっ、そうなんですか? じゃあ、何時ぐらいに帰ってくるか分かりますか?」
「ちょっと外に出かけただけだから、もうすぐ戻ってくると思うよ」
「そうですか……」
「会う約束でもしてたのかい? 戻ってきたらすぐ電話するように伝えておくよ」
「いえ、そういう訳じゃ。すいません、よろしくお願いします」
「なに、気にしないで。あと少し聞きたいことがあるんだけど、いいかな?」
「はい、いいですけど?」
おじさんから質問ってなんだろ。
想定外の質問がきたらどうしよう。
「いや、こなたのことなんだが、最近学校で何かあったのかな?」
「何かと言いますと?」
「こなたが最近元気なかったもんでね。思わず気になって。まあ、気にしすぎなんだろうが」
「……」

喧嘩した当初、ずっと辛そうな顔してたことを思い出し、胸が痛くなった。
そんな顔を見るのが辛くて、なるべく見ないようにしてきた。
私は逃げていた。
ここ最近学校での様子は、特におかしなところはなかったと思う。
でも、それは普段通りを装っていただけなの?
ずっと辛い気持ちを無理に隠し続けてきたの?

「もしもし、かがみちゃん?」
「え? ああ、すいません、学校では普段通りだったと思いますが……」
「そうか……ならいいんだが」
ずっと辛かったんだ……ごめんね。





438:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/06 14:06:34 MVWzrrNN

「それにしても、遅いな、こなた」
「そんなに朝早く出て行ったんですか?」
「ああ、俺が起きたときにはもう外に出かける準備ができていたみたいなんだ」
「いつもそんなに早く起きてるんですか?」
「いや、いつもは昼まで寝てることが多い」
その言葉を聞き、不安が募る。
いつも休日前は遅くまで起きているんだろう。
なのに今日に限ってこんな朝早く起きて一人で外に出るなんておかしい。
「何の用事で出かけたんですか? 何か練習にでも行ったんですか?」
こなたは昔格闘技をやっていたと聞いたことがある。
もしかすると今でも続けてるんだろうか。
「いや、最近は習い事もしてないから、それはないと思う。ちょっと雪を見にとか言っていたが、何しにいったんだろうな」
「そうですか……」

こんな寒い中一体何しに行ったんだろう。
しかも久々の大雪。
地面もずいぶん滑りやすくなって危ないはず。
今朝のニュースで大雪による事故を伝えていたことを思い出した。
あれは車同士の事故だったけど、この大雪でスリップした車が人にぶつからないとも限らない。
そうじゃないにしても、どこかで転んで怪我でもしてるんじゃ……
もしかしたらそのまま動けなくなって……
心配のしすぎかな。
何とか心を静めようとするも、不安な気持ちは納まってくれない。

「それにしても1時間経っても戻らないのはおかしいな。30分ぐらいで戻ると思ったんだが」
「えっ、そんなに?」
─まさか、本当に事故に遭って……
顔から血の気が引いていく。
「こなたは、こなたはどこへ行ったんですか?」
「えっ? いやあ、行き先までは聞いてないな。すぐに帰ってくると思ったから」
「こなたが行きそうなところは分かりますか?」
「うーん、あいつが行きそうなところといえば秋葉なんだが、出かける時はいつも行き先を告げてから行くから」
「私、今からこなたを探してきます。失礼します」
「えっ、かがみちゃん? どうした─」
おじさんには悪かったけど、そのまま電話を切った。
悠長に電話してる場合じゃない。
早くしないと、こなたが……



439:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/06 14:08:10 MVWzrrNN
すぐにコートを着込み、家の外へ飛び出した。
「こなたの馬鹿、こんな雪の日に倒れたらただじゃすまないのに」
また泣きそうになるのをぐっとこらえた。
今は泣いてる場合じゃない。
早くこなたを見つけないと。
こなたの行きそうなところ、雪を見に外に出かけたのなら家の近所のはず。
秋葉なんて論外。
とりあえずいつもの通学路を探してみよう。
でも、ここからこなたの家の近くまでは時間がかかるし、どうしよう……
とにかく走ってでも早く行かなきゃ。
そのまま一目散に鳥居の外めがけて走り出した。





440:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/06 14:10:50 qIU20wcv

足元の雪が邪魔で上手く走れない。
それに雪と砂利が跳ね返ってコートの裾が汚れる。
でもそんなものどうでもいい。
わき目も振らず、前だけを見て走り続ける。
早く、早く─

すると突然、目の前に蒼い影が飛び込んできた。

─えっ?

急いで止まろうとする。
でも、間に合わない!

ドンッ!

「うわっ!」
「キャッ!」

ドサッ……

ぶつかった勢いで二人一緒に木に倒れこんでしまった。
ついでに枝に降り積もっていた雪が落ちてくる。
私が何とか目の前の影を庇ったおかげで、ぶつかった相手に怪我はないようだ。
私も特に怪我はしていない。
不幸中の幸いだ。
そ、そんなことより謝らないと。

「ご、ごめんなさい、私急いでいて……」
慌てて目の前で雪まみれになっている小さな蒼い影に目をやった。
……蒼い髪?
え、ま、まさか……



441:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/06 14:12:13 MVWzrrNN
ぶつかった相手は私のことを呆然と見つめている。
私もその顔に釘付けになった。
そのまま動けない。
何も考えられない。
…………
……

そのままどれぐらいの時間が経っただろう。
二人とも見つめあったままの時間がしばらく続いた。
やがて、目の前の相手が私に話しかけてきた。

「かがみ、大丈夫? どこか痛いの?」
「ねえ、かがみ。怪我でもしたの? 大丈夫?」
心配そうにずっと話しかけてくる声に、私は正気を取り戻した。

「……えっ、こな……キャッ!」
「う、うわぁ!」

相手がここにいるはずのないこなただと認識した瞬間、思わず悲鳴を上げてしまった。
目の前で大きな悲鳴をあげられたこなたは、驚いた反動で後ろの木にぶつかった。
その振動で再び枝から雪が落ちてくる。
雪まみれになりながら、非難の目をこちらに向けてくる。

「いたたた、いきなり大声出すなんてひどいよ」
「こ、こなた?」





442:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/06 14:14:19 MVWzrrNN

えっ、ど、どうして?
どうしてこんな朝からここにいるの?
雪を見に外へ出かけて……そのまま……
そのまま……そうだ、事故に遭って動けなくなったと思ってたけど。
無事だったのね……よかった。
本当に無事で……
うぅ、こなた……
こなた……!

「こなたぁ!」
「わわっ、かがみ?」
そのまま私はこなたをぎゅっと抱きしめていた。
安心したら、不覚にも少し涙が出てきた。

「よかった、無事で」
「かがみ? ……泣いてるの?」
再び心配そうな顔でこなたは私の顔を覗き込んでくる。

「ううん、何でもない。私の勘違いだったから」
「何をそんなに慌ててたの?」
「そ、それは……」
自分が早とちりしてこなたが倒れていると思ったなんて、恥ずかしくて言える訳ないじゃない。
言ったら、またいつものようにからかうに決まってる。

こなたはじっと私の顔を見つめている。
きっと顔は真っ赤なんだろう。
それに目も赤いし。
またからかわれるに違いない。
でも、そんなことよりこなたが無事でいてくれたことのほうが、はるかに大事だった。



443:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/06 14:15:25 MVWzrrNN
「私のこと心配してくれたんだ。……ありがと、かがみ」
こなたはからかう素振りを一切見せず、私の目をしっかりと見据えたままそう言った。
予想外の展開に、こちらも戸惑ってしまう。
「こなた?」
普段と違うこなたの様子に、目の前にある顔を見つめなおした。
こなたの顔が普段より赤く見えるのは、この寒さのせい?

しばらく見つめ合った後、こなたは珍しく恥ずかしそうに目をそらした。
それをごまかすように、いつものにやけた顔に戻る。
「なーんてね、私を心配して泣きそうなかがみ萌え」
「なっ、またあんたはそう……やって」
目の前のこなたは笑っていた。
こぼれそうなほどの幸せな笑みを浮かべて。
こんな嬉しそうな笑顔を見るのは、ほんとに久しぶりだった。

─そんな顔されたら言い返せないじゃない。
こうやって言葉を交わすのもとても久しぶりに感じる。
もう一度こなたの笑顔を見ようと顔の向きを変えると、すぐ目の前でこなたはこちらを見返している。
……目の前?
そこで、自分がさっきからこなたを抱きしめたままだったことに気付いた。





444:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/06 14:16:16 MVWzrrNN

……!
慌てて離れたものの、恥ずかしさで一気に顔が赤くなる。
こなたはそんなこと全く気にしていない様子。
……嫌じゃなかったのかな、迷惑じゃなかったかな。
喧嘩の発端となった教室でのやりとりを思い出す。
そうだ、こなたは私と会えなくてもいいと言った。
だから、私なんかに触れられても何とも思わないのかな……
私一人こなたと会えて喜んでたけど、こなたは迷惑だったのかな……
そう思うと、再び心に冷たい風が吹き込んできた。

「どうしたの、かがみ? さっきから様子が変だよ?」
「ううん、何でもない……」
落ち込んだ私の顔をしばらく見つめた後、こなたは決心したように言った。
「かがみ、一緒に雪を見て歩かない?」
「えっ、いいけど……こなたは迷惑じゃないの?」
そう言うとこなたは、一瞬驚いた顔をしたものの、すぐに笑顔を返してくれた。
「どうして? 私はかがみと一緒に雪が見たいよ? だって、そのほうが嬉しいから」
まっすぐに私を見て、そう言ってくれた。
「こなた……」
その一言でどれだけ心が温かくなったろう。
「こなた……あり……う」
「ん、何か言った?」
「ううん、何でもない。行きましょう」
「うん」





445:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/06 14:42:03 xX2asZ18
やれやれ、ヘビィだぜ・・・・・・

446:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/06 15:08:38 zi2D7YOR
こういうときこそ、避難所活用じゃね?

447:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/06 15:32:03 oHbzFdbL
       /                     \
      /  ,r'"j                i^'!、  ヽ
    /   </´                `ヾ>  .:;i,
    ,l        _,._,.        _,._,.       .:.:l,
    |       < (ヅ,>      < (ヅ,>     ...:.::|      乙
    !        ` ̄´      .   ` ̄´       ..: ::::::!   
   |           ノ . : . :;i,          ... ::::::.:::|    
     !          (.::.;人..;:::)      ...:.:::::.:::::::::!
    ヽ、         `´  `´    ........::..::..::.::::::::/
      \......,,,,,,,_           .....:::::::::::::::::::::::::/


448:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/06 15:58:06 5orZVc0W
このくらい酷く荒らしやってるのなら、運営に報告してもいいんじゃね?


449:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/06 16:14:16 7z/Vx7CM
>>448
運営が動いてくれればいいんだろうけど、どうなんだろうね
見てる方としてはスルー対処できるからいいけど、
自分の作品がこんな使われ方されてる職人さんが不憫だからなぁ…。

450:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/06 16:59:19 q7CZ1a0e
まあ、考えても仕方ないかな。
運営任せかスルーしかないというか、結局それが一番なのが実証されてるし。

そんな事より、少し気が早いけど七夕も何かイベントやるのかな?
柊姉妹二人の誕生日だから、こなかがこなだけ強調するのもちょっと違う感じだけど。
その辺配慮しつつ、いつもみたいに祭りあると嬉しい。

451:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/06 17:32:43 5orZVc0W
>>450
こなたの誕生日が大盛況だったんだから、かがみの誕生日でも何かしらお祭りやるんじゃない?

とりあえず絵を投下してみたいけど、今のままだとスレ荒れてて気が引けそう orz

452:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/06 18:18:58 GU8RsdQK
              ___
             /  R /\
            /   /\  \
            |  / /=ヽ \  |
            |/ (゚)..(゚) \|
            \ 'ー=三=-'  ノ
              \____/
         r⌒ヽ   /     \
         |    \│;:。:.   :。;|    _____
         |   .i  \.       i    /  m  \
        │  .i    ヽ.  .  i   /  ⌒   ⌒ \
         | . ノ\   .     .¦ |  /\ /\ |      /',⌒:l
         |  ./   ヽ、_iツ    ノ .| <`(゚) X (゚)´> |   /  ノ  i
         | /    /    /   |O \/o\/O | , -厂   /ヽ  i
        / /    /   /   , -\  トェェェイ   ノ   、./    ! l
       (_/    /  /    l   ノ \ しw/ノ / ;:。:; i     /之ツ
            ./ /      ヽ  t │;。 ̄ ̄     .¦   ''´ ヾミ
          / ./         ヽ .ヽ \:   .     :;l 、__
         /./          .   ,}  ,ヽ l.ヽ       ,´ :   ヽ
        / /              '´7/l ; >'´``~`..ヾξiξツ      _ .ノ
       |_/                "Y'   :  :  _,ヾlツ '‐-‐¬丁 ::/
                         l : r‐'ー- ' ´         _l.: /
                          ヽ . l、          〈 i /
                          ヽ. 〉〉          ヽ 〉
                           ヽ,ヾ 

453:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/06 20:26:20 IyhBPpGP
角川書店、ならびに京都アニメーション関係者の方、見ておられますか?
OVAは、「こなかが」ネタ抜きの内容で作ってくださいね。
お願いしま~す! m(_ _)m

454:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/06 20:29:58 XnMt3cy0
ファイルを整理していたらば、
書きかけのこなかがssらしきものを発見したわけなんだ。
それで、まあ折角だし、と書き途中のものを完成させようと思ったんだが
さっぱり何を書こうとしたか続きが思いだせん。
ので無理矢理書いたらグダグダに…orz

と言うわけで荒れ気味の空気読まずに投下させてもらうぜ


455:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/06 20:30:55 XnMt3cy0
三月、
暦の上では春とはまだ少し肌寒い日。

深呼吸をする。
冷たい空気が体を通り、鈍りがちな朝の頭を鮮明にさせた。
ふと、窓から空を眺めて見れば、
空は高く遠く、そして一際青く見えた。


どうやら柄にもなく、感傷に浸っているようだ。
あの空の青さでアイツと過ごした日々を思い出すなんて。

でも、まあ…今日ぐらいはいいか。
最後だものね。
あの場で会えるのも。
感傷に浸ったとしても罰は当たらないだろう。

今日、私達は卒業する。

長いと思っていた高校生活は、意外とあっさり終わろうとしている。

私は私の。
こなたはこなたの。
それぞれの道を進んで行くだろう。
私達が歩んでいた道は決して同じ道ではない。
この三年間が特別だっただけ。
たまたま道が重なり合っただけの話だ


456:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/06 20:31:43 XnMt3cy0

「近くに住んでるんだし大学生になっても会おうと思えば簡単に会えるよ」

こなたのこの言葉は正しい。
だけれど、自分の周りを取り巻く環境でゆっくりと実現しなくなっていくだろう。
私は私で忙しくなりこなたはこなたで忙しい日々を送る事になり、
会いたくても会えず、そしてその会えない日々に慣れて、会うこと自体も少なくなってゆくんだろう。
最初こそはその状況に寂しさを覚えるかもしれないが、きっと慣れる。
そういうものなのだと。

少しづつ少しづつ良い思い出になって行く。
きっと、それは切ない痛みを伴うものではあるだろうけど、
けして悪いものではないはずだ。

緩やかに別れて行く時間はこの想いを
傷つけることもなく傷つくこともなかった、
ただの遠い日の思い出に変えてくれるだろう。

きっと良い思い出になるだろう



457:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/06 20:32:26 XnMt3cy0

きっと良い思い出になるだろう

………なるだろう、と思っていたのよ?
この時は…本当に………。

「なのに何でこんな事になっているんだか…」
「はっはっはっ、やっぱりかがみは詰めが甘いというか見通しが甘いよねー」

折角のセンチメンタル的厨二文章もあっという間にカッコのつかないギャグ文章に早変わりするあたり、
かがみらしいね! ある意味そこに萌える!

などとバカなことを言いながら目の前にいる私の十年来の親友兼…『こ』のつくあの関係
―まあ、なんだ、察しろ―であるところの泉こなたはゲラゲラと笑った。

ここは私の仕事場である事務所。
私はここの事務所のイソ弁をしている。
(事務所の所長に雇われている弁護士の事。居候弁護士の略。ちなみに所長をボス弁と呼ぶ事もある)

そしてこの事務所内にある休憩用のソファー(客用のとは別に何故か置いてある)に
何故かゴロゴロと勝手に人の家に入り込みくつろぎだす猫かのように、
傲岸不遜…いや違った。
傍若無人な態度でこなたがそこに寝そべっていた。


458:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/06 20:32:52 XnMt3cy0


何故に私の仕事場にこいつがいるか。
簡単な話、こいつもここに仕事をしに来ているのだそうだ。
誤解を生みそうなので注意しておくけれども
別にこなたは弁護士でも検事でも警察でも契約顧問先の大手の会社社員でもなく、勿論霊媒師でもない。
ここにいるのはこなたの職業であるゲームシナリオライターとして
あくまでも仕事の一環として次作のための取材として来ている。
…と、言った名目を掲げてサボりに来ている。
実際、次回作のため次回作のためと言いながらも次回作が弁護士モノだった例はなく、
事務所に来て取材のようなものをする気配はない
いや一応は私のボスである所長に話を聞いてはいるが切り出しが
「そういえば所長、所長の息子、今年小学校に入学だっけ?」
と、どう聞いても取材じゃなくて世間話をしだすあたり、
ダメだこいつら…早く何とかしないと…の心境である。
そんなんだから卒業式間際まで
卒論の締め切りとサボりすぎた授業の足りない単位の為の追加課題の締め切りに追われる羽目になるんだ。
そして在学中はもちろん、卒業してからも脚本の締め切りに追われる毎日ときているのだから、
つくづく締め切りとの追いかけっこが好きなようだ。
コイツ実は結構Mなんじゃないか?
本来なら所長もこいつを追い出すべきなのだが歳の差を超えたシンパシーと言うか、
要は同じ穴の狢で意気投合してしまい、ここの事務所のゆるい空気の一因となってしまっている。
そう言えばコイツは昔から趣味を同じくする同士を見つけると
普段のものぐささを感じさせないフットワークを見せネットワークを形成するのが上手かったな、
などと軽く物思いにふけった。

まあこんな日常も悪くはないと思う。
私はそう結論を出し事務所の窓から、あの日の空を眺めようとした。



459:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/06 20:35:50 XnMt3cy0
うん、やっぱグダグダはよくないね

460:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/06 21:03:33 bMX8HFS2
へビィだぜ……

461:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/06 21:03:52 LDz/PIqs
いやよかったよw
GJ

462:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/06 21:10:36 xdoMROlG
>>458
良いグダグダさ加減で好きな感じ。GJ

463:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/06 21:17:11 5orZVc0W
>>459
で、事務所で二人きりになると途端にイチャイチャし始めるわけですねw

464:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/06 22:57:39 /CjzeVI9
>>459
たまにはこんな雰囲気のも落ち着くぜ

465:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/06 23:00:33 3gkXZdHV
ゆーちゃん×の左側伝説

こなた「最近、ゆーちゃんのお陰で私にも姉としての自覚が芽生えてきたよ。
    お姉ちゃんって大変だよねー、かがみん?」
かがみ「とてもそうは思えないんだけど…」
こなた「いや、あのね、やっぱり妹の姉に対する期待の視線が痛いじゃない。
    そうそう失態ばかり見せられないって言うか…」
かがみ「失態ばかりなのか」
つかさ「お、お姉ちゃんも普段プレッシャーを感じてたの?」
かがみ「うーん、私は全然だわ。さらに上の姉がいるからかなあ」
こなた「それにゆーちゃんは、いわゆる所の無邪気攻めだからね…」
つかさ「無邪気攻め?」

ゆたか「こんにちわ~、あの、少しいいですか?」
こなた「どうしたのゆーちゃん?おねーサン達に何でも聞きなー」

ゆたか「えっと…実は中学の時の友達が、告白されたらしいんです…
    相手の子は友達とすごく仲が良い同級生で…
    それで、その相手の子は友達と同じで女の子だったから、友達もビックリしちゃって
   『今は返事できないよ』って言っちゃったらしいんですよ。

    昨日、その友達に会ってきたんですけど、どうも別に女同士が嫌なわけじゃなくて
   『あの子を本当に幸せにできるのかなあ』と悩んでるみたいで…
    でも、相手の子の方は『嫌われちゃった…』って元気ないみたいだし、何かアドバイスを頂けたら…」

こなた「…///」
かがみ「…///」

つかさ「(強い…)」

ゆたか「(ど、どうしよう、すごい気まずい…)」

466:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/06 23:01:50 XnMt3cy0
おおうっ、感想ありがとう。
こういうグダグダな文章しか書けないからそう言ってくれるとありがたいよ。
本当。
どうでもいいが「そこをなんとか」とかの弁護士漫画読むと
弁護士かがみんネタが色々出てきて困る。

>>463
いいえ、所長がいてもツンデレながらもイチャイチャします。


467:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/06 23:08:08 aPuYei+B
バルサミコスわろたw
いい話でしたb

468:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/07 03:15:01 TLRLJ4a2
投下したいのに、投下したくない。
今のこの状況なんとかならないかな。
いっそのこと、板変えることも考えないか?

469:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/07 04:48:46 mYtKeg9L
お前が移動しろ

470:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/07 04:53:03 CQdSlUF6
これはひどい

471:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/07 05:48:38 yY956Agd
書いてあるレスは少ないけど、スレ読んでる人はコンスタントにいるので
強力なネタがあるなら、投下すればいいと思う。
良いネタなら雰囲気は変わると思うんだ。

つまり、反響が薄かったらつまんなかったことがバレバレ。
自分のようなMにはヨダレもんです。

472:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/07 08:21:58 3DpSaFl4
>>468
板変え賛成。
こんな状態じゃもう無理だろ

473:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/07 08:29:34 jxFF3sOU
いずれにしろ、作品投下が多いほどいいと思うよ。
大半の人には荒らしとか路傍の石だからスルーするけど、作品には反応返すし。

474:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/07 08:56:59 EV2zFVl1
とにかくこのスレを終わったことにしたい人がいるのはわかる

475:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/07 09:29:42 +/PiRcle
>>474
同意。全くネガティブキャンペーン乙だな。
移動したらそれこそつぶしたい側の思う壺だつうのに。

ていうか、議論は避難所でやってくんないかな。

476:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/07 09:36:32 vzFgXJlV
これくらいの荒らしで板変えとか…どんだけだよ
投下するのが怖いなら避難所あるだろ?

ここでのネガキャンはお断り願います

477:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/07 09:42:12 x6s/5QAD
雰囲気ってかコピペで埋められてる状況だろ
こちら側の反応は関係ないぜ
移動するより荒らされ続けるほうが人が減る

また最萌の時期も近づいてきたし
致命傷負う前に態勢整えたほうがいいんじゃね

>議論は避難所でやってくんないかな
移動賛成でも反対でもいいから避難所の議論に参加してくれ
ほとんど機能してない

478:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/07 11:51:46 5CK6+Lfw
ゆーのすさんのブログを読むと
きら☆キラ かがみん後もらきすた本は作るのか

主役は別のキャラになっても、
こなかがは既定のカプみたいな設定になるのかな

そういうのむしろ好きだ

479:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/07 14:00:24 cxEVMW+D
ゆーのすさんとこの本はらき☆すた本として見ても面白いから、今後も続けてくれると嬉しいねぇ。
ほかのとこはどうなるんだろ。サンクリはともかくOVA出てからの夏コミではまた盛り返してくれるかなぁ

480:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/07 14:35:14 2kUPySqx
転載
URLリンク(rtngslin.moe.hm)

481:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/07 14:40:44 lZKHsuwD
       /                     \
      /  ,r'"j                i^'!、  ヽ
    /   </´                `ヾ>  .:;i,
    ,l        _,._,.        _,._,.       .:.:l,
    |       < (ヅ,>      < (ヅ,>     ...:.::|    みんな乙
    !        ` ̄´      .   ` ̄´       ..: ::::::!   
   |           ノ . : . :;i,          ... ::::::.:::|    
     !          (.::.;人..;:::)      ...:.:::::.:::::::::!
    ヽ、         `´  `´    ........::..::..::.::::::::/
      \......,,,,,,,_           .....:::::::::::::::::::::::::/


482:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/07 14:54:51 ZnRW4+sZ
>>480
ウェディングドレスとは違った良さがあるw

483:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/07 15:41:25 jRZr6oNX
>>480
可愛いですね。
上の文、何て書いてあるのか気になります。

484:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/07 15:48:06 DahA6PjR
>>480
こなた×かがみの組み合わせは国をも超えるということか…。
いろんな意味で凄まじいな

485:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/07 16:38:45 LZ3dyrWA
>>480
これ外国の人が描いたの !? 中国語だと思うけど (台湾かも)
すごいね、外国の人たちが見てもこなたとかがみって熱々カップルなんだ・・・

486:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/07 17:05:28 aO9bw6bo
以前スレで話題になったけど、
確か中国のオタランキングで、かがみとこなたはカップル部門受賞だったなw

487:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/07 17:16:51 atr6YtDM
所渭人生的?家就是即使生的是女八将来也不用煮赤豆飯!

こう書いてあるみたいだけどね。ちなみに繁字体だから台湾はほぼ確定(台湾角川もあるわけだし)


※文字化けして"?"になってるところがあったらその文字はUnicodeの0x8D62

488:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/07 17:29:44 l6TNEBlj
台湾もこなかがかw

489:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/07 17:30:09 NO+seoyJ
話が書けなくなった職人が荒らしてるんだろ
くやしいのうwwwwwwくやしいのうwwwwww

490:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/07 17:44:12 Mjeb23PP
日本のどっかの絵師が描いた絵に台湾語を付け加えたという可能性もあるが

491:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/07 18:53:39 a6kiCGFI
>>479

ゆ~のすさんは、ぶっ壊れ柊一家(『アトのまつり!』)シリーズに走りそうな感じ。
ちゃんとかがこなテイストも入ってたし、面白かったから全然おk。

ただおさんとみきさんクソワロタw

492:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/07 19:00:30 OPH2srlS
こなたとかがみの結婚絵は結構多いんだけど、和式だとこなたが男装で洋式だとかがみが男装が多いね。
単純にその方が似合うからだろうけどw

493:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/07 19:13:47 +/PiRcle
ていうか、結婚ものは洋風しか見たことが無かったから和風は新鮮だ。
和風だとこなた男装が多い理由?
どう考えてもこなたに袴がバッチリマッチ過ぎだからwww

494:5-974
08/06/07 19:21:11 CNyyqXeH
SSいきます。結構長めになってしまったので、規制にひっかかったら避難所に1からまとめて投下します。
5分後から投下します。

今回はまともなSSかとw


495:名無しさん@お腹いっぱい。
08/06/07 19:23:12 OPH2srlS
うんうん、こなたの紋付き袴はかわゆいww


496:5-974(1)
08/06/07 19:26:18 CNyyqXeH
太陽が空のてっぺんに登る頃。
お昼休みの学校の屋上に一人の少女。
柵に腕をのせてぼーっと、遠くに浮かぶ雲を見つめる。

空はとてもきれいな青。

しかし、青空を見つめる少女は、この空とは正反対の表情だった。



クラス発表の日。かがみにとっては、とても重要な日だった。



…また同じクラスになれなかった。今年が最後のチャンスだったのに…
いろいろ手を尽くしたけど、やっぱりダメだった。ショックが大きい。
わざわざ文系まで選んで、可能性を増やそうともしたのになあ…

…今年こそはつかさと…みゆきと…それにアイツとも…一緒のクラスになりたかったなぁ…

「はぁ…」
ため息が出る。
どうして私だけ…
やっぱり私、ハブられてんのかなあ…
暗くてネガティブなことばかり考えてしまう。



屋上で一人。
何もする気が起きない。
そういえば、今日ご飯持って来てなかったわ…いっか、もう…ダイエットと思えば。


今年こそは、と思っていたのに。
想いが強すぎて、いつの間にかそうなれると勝手に自分の中で思い込んでいたくらいだ。
だからこそ、余計悲しかった。
…冷静に考えてみたら、叶うなんてことあるはずないのにね…
かがみは俯いて、ため息をつく。


4人が同じクラスになった時のことを何度も、何度も思い描いていた。

「わ~い!やっとおんなじクラスになれたよ~」「そうね、良かったわ」
大喜びするつかさと私。

「かがみ~!宿題見せて~!!」「同じクラスになってもこれかよ!!」
相変わらず私に宿題を見せてとせがんできて、私に怒られるこなた。

「ここはこうすればいいんではないでしょうか?」「あ~、なるほど。さすがみゆきね!」
私とみゆきが一緒に考えれば、どんな難しい問題でも解けそうな気がする。


そして、4人の楽しい時間がもっと増える。
授業も一緒になるし。

そう思うと、虚しくなってきた。

「どうして…私だけ…」


497:2
08/06/07 19:27:25 CNyyqXeH
  
こんないじけてる所、誰にも見られたくはない。
私は強がりだから…お姉ちゃんだから、弱いとこなんて見せらんないのよ。
それに、こなたになんかなおさら見られたくない。また、からかわれるネタにされるし。


でも…


「…一緒になりたかったなあ」

寂しいー。

神社で熱心にお願いもしたし、先生にも何度もアピールした。
その苦労が全く実らなかった。結局いつもとおんなじ。

それでも、私はずっと期待してた。そんな自分が愚かしい。

「…」
胸がくやしさでいっぱいになる。手をのせた柵を思いきり握りしめる。

「もう…!!なんでよおっ!!!」

それに何やってんのよ私は…もう、なんで、なんで、どうして……!!?




ガチャン!

突然、後ろから屋上への扉を開ける音がして、驚いた。

振り向くと、背の小っこいアホ毛が出て来た。あー…今一番会いたくない奴だわ。
どーせ、『こんなとこでいじけてるかがみ萌えw』とか言うんだろうな…

やれやれ、とかがみはまた外の方を向いて、こなたに背を向ける。

「かーがみっ!」
「…何よ」

…うるさい。今は一人でいたかったのに。
すごい腹が立ってるし。これから、からかわれるのが目に見えるようでなおさら。

こなたは私の隣に来たが、私は全く見ようとはしなかった。

「どしたの?うちのクラスに来ないの?」
「…」
何も返さなかった。どうやって追い帰そう…

「かがみはまた違うクラスになっちゃったから寂しいんだよね~」

はあ…思った通りのことを言われてため息が出る。

「それで、一人屋上でいじいじしてんの?かがみ、かわい~い♪」
きっとニヤニヤ顔言ってるであろうこなたに、私は怒りを通り越してただ呆れる。…あーあ。




498:3
08/06/07 19:28:36 CNyyqXeH
「よしよし」
こなたが突然私の頭を撫でてきた。
「なっ…!や、やめてよっ!!」

やっと、私がこなたに反応したのかちょっと嬉しそうにするこなた。…やっぱりこいつ、むかつく…!

「さびしんぼなかがみw」
「…」

もう何も言い返してやんない。

「ねえ~かがみぃ」
「…」

「かがみさぁ…さびしいんだったら、うちのクラスにくればいいのに。いつでも来ていいんだヨ」

「…」

「たまには素直になったっていいんだよ。私だって、かがみと一緒のクラスになりたかったんだからさ」


「そう、なの…?」
「うん、だからやっぱり私も残念」
…意外だった。こなたが私にこんな優しい言葉をかけてくれるなんて。
そういえば、こいつは人のことを気にかけてくれるとこあるんだよなあ…たまにだけど…でも…

「元気出してよっ!かがみぃ~」
まさか、こなたがなぐさめてくれるなんてね…
さっきまでガチガチになってた私の心がほんのり温まってきた。

そして、急な寂しさが襲って来て涙が込みあげてくる。



「かがみはさびしんぼだからね。私たちが一緒にいてあげるよ!」



…おねがい。これ以上言わないで、泣いちゃうから。

目に涙が溜まってくる。私は外を見たまま、必死で泣くのをこらえた。人前で泣きたくない。ぜったいに。
かと言って、手で涙を拭おうとすればばれちゃうからできない。

「ね…かがみ。だから、元気出してヨ!」
と言って私の頭を優しくなでてくれた。


…もう限界。


私の目から涙が、ぽろっと落ちた。




499:4
08/06/07 19:30:11 CNyyqXeH
「こなたぁ…」
「…かがみ…?」
「うぅ…ひっく……ひっく…ぐすん……私っ…一度くらいっ、…つかさや、みゆきや…あんたと…一緒のクラスになりたかったよお…」

急に私が泣き出してしまって、こなたは少し慌ててるようだった。
「あ~…かがみ、な、泣かないでよ…」


「…よしよし」
また私の頭をなでてくれる。
優しい。こいつがこんなに優しくしてくれて…余計涙が止まらなくなる。

「よしよし、悲しいよね。かがみ、ずっと同じクラスになりたいって思ってたからね…」

「私…おんなじクラスになって……一緒に授業で考えたり…一緒にグループ発表したり…学園祭の出し物一緒に作ったりしたかった…!今年で最後だったのに…!」

「あーもう…そんなに泣かないでよ、かがみ……もう……よしよし、今日は、目一杯私に甘えていいよ、かがみ」
「うぇえ~ん……こなたぁ~…」
私は、こなたの肩に頭を寄せて泣く。

「黒井先生に一緒のクラスになりたいって頼んだのに…神社で何度もお願いしたのに…」
私は、こなたの小さい体にすがりつく。
こなたはうんうんと相づちしながら、私の背中を優しくさすってくれる。

「ふえぇぇぇん…」
もう我慢なんてできなかった。
もう私は泣くことしかできなかった。
でも、こいつは……こなたは…私の悲しみを全部受け入れて慰めてくれた。





「だいぶ落ち着いてきたカナ?」
「くすん…くすん…、うん…」
「ところで、かがみ…ごはんは?」
「ぐしゅ…あ…今日は……ないんだった…」
「じゃあさ、私のお弁当、はんぶんこしよ!ね?」
そう言って、持って来た包みを出す。
「………ぅん。…くすん、ありがとね…こなた…」


こなたが、自分のお弁当の箱を開ける。
中には、おいしそうなおかずがきれいに並べられていた。こなたの料理の才能はつくづく意外だと思う。

こなたは、お弁当の卵焼きを箸でつまんで、私の前に出す。
「はい、あーんして!」
「ふぇ?」
「ほら、口開けてヨ」
「…………はずかしい」
「誰もいないから大丈夫だって」
「…」


500:5
08/06/07 19:31:20 CNyyqXeH
「ほ~ら」
私はちょっとだけ考えて、恥ずかしいけど、そのまま食べさせてもらった。
「…あ…ん…」
ぱく…

「どう?おいしい?」
「…うん。とっても…」

こなたは、私の頭をなでてくれながら、ごはんを食べさせてくれる。
食べさせてもらってる時でも、こなたの気持ちがただただうれしくて、時々涙が出ちゃうんだけど、その度にこなたが、ハンカチで涙を拭いてくれる。
私の中の悲しみがどんどん溶かされていくみたいだった。

やさしい…

普段のこなたと違って、弱々しくなってる私にとても親切にしてくれる。


「ごちそうさま。…ありがと、こなた。こんなにしてもらって、すごい嬉しい…」
「かがみ、もっとお願いしたっていいんだよ…もっと甘えたっていいんだよ!今日は私のサービスデイだからね!何かしてほしいこと、ある?」

「…ん……」

考えてみる。
ふと、私は去年のある日の光景が思い浮かんだ。

しかし、ちょっとお願いしにくいことだったので、他のことを考えてみる…が、他には全く思い付かなかった。

「でも…」
「なんでもいいよ。…言って」

「じゃあ、…………………………………その、ひざまくらとか……だめ?」
私は、こなたの目を見ずに言った。
「…いーよ。はい」

「…うん」
私は、ゆっくりと、こなたのお腹の方に顔を向けながら、こなたのひざの上に頭を乗せた。
こなたのぬくもりを感じる。
静かに、息をはく。
胸がドキドキする。
…とっても……気持ちいい。


「でも、どうしてこれなの?」
「つかさがね…この前、泣いちゃった時、お母さんにこうしてもらって甘えてるとこ見て…うらやましかったんだ…
つかさは…素直だから、すぐ誰かに甘えることができるけど…私はさ…こんなだから…誰かに甘えることなんてできなくて……」
「かがみは強がりだもんね」
「うん…そのくせ、あんたの言う通り、さびしんぼでさ…いっつも一人で何でもどうにかしようと思ってたから…」
「そっか」
こなたは私の髪を優しくなでる。とても気持ちいい。
今まで、こんなに優しいことはしてもらったことがなかった。
また、涙が出そうだったので、目をつぶる。

「だからね…例えあんたでも…こうしてくれるの、すごく、安心する…」


501:6
08/06/07 19:32:23 CNyyqXeH
   



「…でも、つかさやみゆきには言わないでね。他の皆の前では…しっかりしたお姉ちゃんでいたいから…
あんたの前だけだからね…こんなことするの…」
「…かがみのツンデレ」

こなたは、口元に笑顔を浮かべながらかがみの紫色の髪を梳いた。
私は嬉しくなって、目をつぶったまま、こなたにさらに寄り添った。


「ありがとね…こなた」
「…うん」
今なら言える。素直になれる。
私は弱々しい声で話す。私がこうしているうちは、こなたはすごく優しくしてくれるから。
いつもみたいにからかわれないもんね。…だから、私はそれにめいっぱい甘えちゃう。

こなたが優しいから、こなたが優しく話してくれるから…私はこなたに甘えられる。素直になれる。

こんなに人に優しくしてもらって…幸せ…


甘える…か、

つかさが甘えたがる気持ちが分かるなあ…



あったかい…
今日くらい…この小っちゃい奴に…甘えたっていいよね。
後でこれをネタにして、からかわれたっていいや…今は…こなた、すごく優しいんだもん……

今日は温かい。
屋上で二人きり。
自分より小さい奴に甘えてるわたし。
…いいのよ。
友達だし…それに、こいつの方がちょっと年上だもんね…



こなたに気付かれないように腕時計をみる。あと10分だけか…こうしていられるのは。
だからあと少しだけ…いっぱい甘えさせてもらおう…


「ねえ、かがみ…」
「…なあに?」

「そろそろ…いいんじゃない…?」

「え…」

なんで…まだ少しだけ時間あるのに…



502:7
08/06/07 19:33:35 CNyyqXeH
「なんか恥ずかしくなってきちゃってさ…だから、もういいよね…?」

…!!


どうして…どうして、そんなこと言うの…!?

私の顔がまた悲しい顔に戻ってしまう。


「…いや……!!もっと…このままでいさせてよ…!!」

「…で、でも…」

「こなた、今日だけは甘えさせてくれるって言ったじゃない…!!」
私は離れたくなくて、こなたのお腹にすがりつく。

「…」

「こなたぁ…!」






「…でも、人に見られてるのはさすがに恥ずかしぃよ」

私の動きがピタッ、と止まる。
そしてゆっくりと首を後ろに向ける。
すると、つかさとみゆきが気まずそうに、見ていた。

「…やっ…!!!な!な!!なぁぁ!!」
私は慌てて体を起こそうとした。が、こなたにがっしりと押さえ付けられてジタバタする。

「いっ、いつからいたのよ!!あんたたち!!…てか、こなた離せ~!!」
「え~~?だーってかがみこのままでいさせてって言ったじゃ~ん?」
「あんた、さっきもういいんじゃないって言ったくせに~!!」


どうかしてた!絶っっ対どうかしてた!!!こいつに甘えてるなんて!!!!!!

私はいつも通りに戻っていた。

こなたもいつもの調子に戻って私をからかってくるし…






503:8
08/06/07 19:35:07 CNyyqXeH
私はこなたから1メートルくらい離れて座っている。真っ赤になった顔が元に戻らないから、顔を背けている。

「お姉ちゃん、すごい甘えんぼさんだったね…」
つかさがえへへ、と笑う。
「うぅぅ…」
「ごめんなさい…お邪魔してしまいましたね…」
みゆきが申し訳なさそうに笑った。
「違うわよっ!!そんなんじゃないんだからっ!!」
俯いたまま叫ぶ。


「あのね、私たち今日お弁当ないって言ったらね、こなちゃんがお姉ちゃん探しに行くって言ったから…」
「もうすぐ授業が始まってしまいますので、探しに来たのです」

「あ…そう」

「…」

沈黙。


「かがみ~もっと、甘えて~!」
こなたが私に倒れこんでくる。
「うるさいっ!!もういいわっ!!」
「こんなデレかがみ、滅多に見る機会ないからさ~。すんごい可愛かったよ~」
「……!!」



やっぱり今日はさいてーの日だっっ!!!




その日の夜
私は自室のベッドに横になった時に昼間の…こなたにしてもらったひざまくらの感触を思い出す。
「はあ…」
ふと息をつく。
「なんで、あんな恥ずかしいことしちゃったんだろう…」
ぼーっとしながら、昼間の出来事を思い出す。たぶんまた顔、赤くなってる。
帰り道、ずっと今日のことをこなたにからかわれるし…

なんでそうなったんだっけ…?

確か…そっか。また私だけ違うクラスになってへこんでて…
それで…

ひざまくらされてる私の情景が浮かぶ。


温ったかかったな…





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