08/05/11 22:33:26 k7AcM+Sm
「ホント面白いよね、涼宮さん」
喧騒の空気がハルヒとともに綺麗さっぱり消え去ってから、そう言って笑った
朝倉は、まあ、と続ける。
「彼女の観察がわたしの仕事だから、ちょうどいいんだけど」
さらりと口にした目は、表情と裏腹に笑ってはいない。
そう、どこまでいっても朝倉はやはり朝倉なのだ。あの日、俺の前で一度消えた
朝倉こそ、ここいるこいつそのものだ。
「もう、そんな怖い顔しないでってば。別に彼女にもあなたにも、直接何かしよう
ってわけじゃないんだから」
したらまた怒られちゃうしね、と言った視線の先には長門の姿。
「状況に変化を与えて経過を見るのは普通の考え方だけどね」
「あなたのそれは、極端に過ぎる嫌いがある」
ページをめくる手は止めず長門が言う。返す朝倉は、分かってます、と苦笑。
「本音を言えば、どうにかしちゃいたいんだけどね。前みたいに」
前みたい。あまり思い出したくない話だ。
「うん、でも無いものねだりしてもしょうがないし。わたしはわたしにできる
やり方で干渉する、それだけの話」
何もしないとは言わない辺りがいかにも朝倉らしい気がする。やらない後悔より
やって後悔、そんな言葉を思い出す。
朝倉涼子。
長門と同じ、けれど違う思想を持った宇宙人謹製アンドロイド。
「というわけで、こんなのはどうかな」
益体もないことを考えそうになった俺の思考を、朝倉の言葉が引き戻した。こんな
ってどんなだ、そう問い返そうとして、それが目に入った。
「ふふ、どうかな」
何をどう言っていいかよく分からん。だからありのままを言葉にしてみる。いいか、
笑うんじゃないぞ。
眼鏡をかけた朝倉涼子。
そいつが俺の目の前にいた。
「ねね、似合ってる?」
さて、いったいどう答えたもんか。しばらく考える。
そして。
「朝倉」
「うん?」
「……残念ながら、俺に眼鏡属性はないんだ」
一瞬きょとんとした顔をしてから、朝倉は屈託のない笑い声を上げる。
「もう、どこをどうしたらそんな台詞が出てくるのかなあ。やっぱり有機生命体の
考えることはさっぱりね」
ほっとけ、と明後日の方に呟いた俺の視界に長門の姿が入る。心なしか、無言で
ページを繰るその口元にさえ、笑みが浮かんだように見えた。
「ねえキョンくん」
まだくつくつと笑いながら言う。
「これでもね、わたしも思ったりするんだから」
何を。
「結構楽しい、ってね」
―とまあ、そんなこんなが朝倉を交えた俺たちの日常ってやつだ。
楽しそうだって?
そりゃそうだ、楽しいさ。だから俺はここにいる。
……もうちょっとおとなしめの日常でもいいとは思うけど、な。
おわりっていうか何が書きたかったのかよく分からない。
眼鏡か……